霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。 作:地支 辰巳
家出せしは復讐思いき女子
3億ベリーを求め、デッドエンドレースが開催されるハンナバル島へとやって来た。世界政府非加盟の島ということもあって、治安が悪い感じだけれども、住民は大体ワイワイお酒を飲んでいるから住みやすくはありそう。僕はお酒が無理だから、この島の匂いは苦手だけど。その分、マグーやカリーナ、ヴィレムさんなんかはお酒をチビチビ飲んで気分が良さそうだった。
マグーが海賊から搾り上げた情報ではここのバーの酒場の店主に2枚コインを見せれば良いらしく、中々に凝った仕組みだと思う。店までの通路に僕とマグーの手配書も貼ってあったから、店主の人は僕たちが海賊ということに気づいているんだろう。
「あ、あの人ですかね?」
「いかにもという雰囲気ですね」
「不用意に近づくんじゃねぇぞ。いきなり攻撃してくるかもしれねぇ」
未だに他人を信用することが出来ないルッカの心配を他所に、お酒の飲み過ぎで酔いが回ってきているカリーナが一人でに店主の方へと近づいて行った。
「ねぇーおじさん。あたしたち3億ベリーが欲しいなぁ。これ、コインいいでしょー?」
酔いが回っているせいで、いつもより妖美な雰囲気を漂わせながら胸元を強調している。僕はあまり気にしていなけれど、マグー曰くイカサマをしたのかと思うぐらい、胸の大きさや体のプロポーションが良いらしい。
「はぁ、もっとマシな奴は参加しないのか。おい、そこの奴らも着いてこい」
店主のおじさんは凄く良い声で、僕たちへも呼びかけると裏への入り口を開けた。そこはまるで洞窟を刳り貫いたようになっていて、進んで行くと新しい扉の前に如何にもヤバそうな人が警戒心を顕にしながら無言で佇んでいた。
「ルーファス。ここはコインを見せるんですよ」
カリーナがさっきも見せたコインを見せるとその人は警戒心を解いたようで、丁寧にドアも開けてくれた。ここまで厳重にするなんて、本当に3億ベリーが期待出来るかもしれない。
「どうしてコインを見せるって分かったの?」
「にしし、こんなのは泥棒をする上では常識ですよ」
そうなんだ。僕は泥棒になることは無いけれど、案外泥棒の技術は世の中を生きる上で役に立つのかもしれない。
「凄すぎ」
アデルの関心の通り、ドアを超えた先に広がっていたのは、まさに海賊にとっての理想郷といっても良いような場所だった。飲み食いする様々な海賊団の人達、辺りに掲げられた海賊旗、この場所そのものが自由という言葉を表したようだった。僕的には濃厚なお酒の匂いで気分が悪くなりそうだったけれど。
「大丈夫ですか、兄様」
「う、うん。お酒は本当に苦手で」
とりあえずは、デッドエンドレースを開催している主催者に参加の旨を言わなければならないので、各々探すついでに無料の食事を食べる。僕はお酒を飲むことが少ないアデルとルッカと一緒に行動することにした。シオンは昔から儀式?的なやつで良く飲んでいたらしいので、お目つけ役も込みで名乗りでてくれた。
「はぁ、どいつもこいつも酔ってやがるな。ルーファスなら、全員倒せるじゃないのか?」
「多分……出来る。だとしても、ここで起きたことは海軍も察知しずらいだろうから、ただの虐殺になっちゃうね。それは僕はしたくないな」
「そうそう。ルー兄は私を助けてくれたし、ヒーローみたいなものなんだから」
アデルは偶に僕とマグーが助けた話を本当に嬉々とした笑顔で語る。朧げな記憶が多いものの、助けれられたという記憶だけはしっかりと記憶しているらしい。でも、僕なんてヒーローといえるほどの高潔な人間じゃない。
「……ありがとうアデル」
時々少量の食事を接しながら主催者を探す。やっとのことで、上の階層でそれっぽい人物と出会えることが出来たけれど、凄く胡散臭い。まぁ、こんな危ないレースなんて開催する人はそんな人しか居なさそうだけど。
「へっ、西の海の掃除屋が来るとは中々じゃねぇか!」
西の海の掃除屋?そんな呼ばれ方もしていたのか。ベッジさんのお手伝いのせいだとは思うけど、偉大なる航路でもその事を言及されるとは思わなかった。
「その呼び方浸透してます?」
「そら、そうじゃねぇか。お前のせいでここ最近は西の海出身の海賊が減ってるからな。一部の人間からの反感はすごいぜ?オメェもレースに参加するんだろ?」
「ええ。賭けもしているですよね?誰が人気か教えてくれませんか?」
ここの光景を見ればレースに対して賭けをしているのは明白だった。そんなことをするなら勝った方が良いからするつもりは無いけど、ライバルは知っておくに越したことはない。
「へへ、いいぜ。賭けの二番人気は魚人のウィリー。あのアーロンのライバルだな。懸賞金は2000万ベリー。一番人気は大差をつけて、将軍ガスパーデ。懸賞金9500万ベリー。どうだ、これでも参加するか?」
ガスパーデ。あの時戦って以来かな。あの時よりも懸賞金は上がっているみたいだけど、僕たちも懸賞金は上がっている。あの時の決着をこのレースでつけてやる。……アデルは俯いていて表情は分からなくて、どんなことを思っているか分からないけれど、後でじっくりと話してみようとは思う。
「もちろんです。期待しておいて下さい」
主催者から永久指針をもらい、ガスパーデがここで食事を摂っていると聞いたので宣戦布告を込めて挨拶をしにいくことにした。武装色の覇気だって習得したんだ。もう負けるようなことはしない。
「あ、すみません」
「いや、大丈夫だ。こちらこそすまんな」
その途中で高齢にも関わらず体格のしっかりしている人とぶつかってしまったけれど、丁寧に謝ってくれた。こんな場所にいる人でも良い人はいるんだ。そんなこともあったけれど、海賊の死体などで汚くなっている場所の一角を貸し切りお酒を飲んでいるガスパーデのところに来た。
「お久しぶりです。僕のこと覚えていますか?」
「ああ?……ああ、覚えているぜ。確かもう一人はいただろ。そいつはどうした?流石に死んだか?」
前に会った時も思ったけれど、この人は清々しいほどのクズだと思う。本当に。アデルを連れて、そのまま来るのは間違いだったかもしれない。ガスパーデの名前を聞いた時から黙ったままだったから。
「生きて、しっかりここに居ますよ。今は別行動です。それよりも、僕もレースに参加します。レース中にあの時の決着をつけましょう」
ガスパーデはニヤッと笑う。まだ自分が勝つのが当然だと思っているんだろうか。僕は怒ることは無いけれど、舐められるのは昔から好きでは無い。
「次はおもちゃよりも良くなることを期待しているぜ。ニードルス」
ガスパーデの声に応えるように隣で立っていた鉤爪を両手につけた男が迫ったきた。そのスピードは中々でCPの剃などと同じくらいスピードだろうかな。
「駄目。ルー兄には攻撃させるわけないじゃん。ましてやガスパーデの一味なんかに」
「ああ。船長クラスでも無いやつがうちの艦長に手を出すんじゃねぇよ」
僕も刀を構えたけれど、それよりも手前で自分の能力で出した縄を手に何十に纏ったルッカと何処で拾ってきたかは分からないけど、フエフエで増やしたと思われる二本のサーベルを持ったアデルが防いでくれた。本当に頼もしくて嬉しい。
「じゃあ、決着はレースで」
これ以上あちらも争うつもりは無いのか、僕たちがそこから去ろうとしても、手を出してくることは無かった。また、この場所を歩き回ってマグー達も合流すると、レースに参加したこととガスパーデが参加することを伝えた。マグーも前の悔しさを覚えているらしく、やる気バッチリだった。さっきまで、主催者を探すつもりは無くずっと飲んでいたらしいけど。
朝起きると、アデルがあいつを殺しに行きますという手紙を残して居なくなっていた。
★ ★ ★
ルー兄には悪いけれど、私は一人で行くことにする。ルー兄がガスパーデと戦っちゃったら絶対に勝っちゃう。それは嬉しいことだけれども、私は家族の供養の為にあいつを倒したいんだ。だから、自分の手で倒す為に少しだけ家出させて下さい。
「密航するなら船を間違えたな。これは海賊船だ」
ガスパーデの船に乗り込むのはリスクがあるかなと思ったから、船員も少なそうな小さめの海賊船に乗っとるつもりで乗ったんだけど、直ぐ見つかっちゃったよ、お風呂場なんかよりももっと良い場所に隠れるんだった。
「そんなこと分かってるって。私、分かって乗り込んでるから」
「餓鬼!?それは子供のおもちゃじゃねぇぞ」
私の年齢にビビっちゃったみたいだけど、銃の脅しは効かなかったみたい。全然ビビってない。とか、思ってたら、三本ぶら下げた刀の内一本を抜きながらこっちに迫って来た。早っ。
「フエフエ!!」
「は!?風呂場が」
風呂場を増やして防壁にしようとしたけど構わなくぶった斬って来た。でも、それのお陰で視線をずらして隙が出来たので、転がるように部屋を突破して甲板へと脱出。完璧じゃない?
甲板には麦わら帽子を被った男子、肩にタトゥーを彫ってある女子、狸?シカ?みたいな生物が海を見てた。やっぱり人数は少ないみたいだったし、頑張れば私でも制圧出来そう。
「ん?誰だお前?」
「私、アデルっていうんですけど船長出してもらえます?」
頭さえ潰せば他のやつは言うことを聞くってマグー姐が言っていたし、とっとと、船長を倒してこの船を乗っ取ろっと。
「船長は俺だけどよ。何か、用でもあんのか?」
「ちょっとすみません」
見えた中では一番年齢が低そうな人が船長だったみたい。不意打ちで発砲したけれど、大丈夫だよね?多分。
「んーーー効かん!!!」
「えっ、」
なんか弾が戻って来たんだけど、え?悪魔の実の能力者だったの?ヤバ。どうしよう。
「驚いた?うちの船長悪魔の実の能力なのよねー。……それじゃあ、乗り込んで来た目的教えてもらってもいい?」
刀の人も戻って来たし、全員が私に注目しちゃってる。海になんて逃げれないし、お願いでもする?でも、失敗したらなー。うん、やるだけやっちゃおう。
「おい!気をつけろそいつも能力者だ!」
「フエフエ!!」
周りにあった柵やドアなんかを増やして撹乱して、階段の上へと登る。ここから、色んな物を増やしつつ、反撃出来ればベストなんだけどなー。
「そこまでよアデル」
「ロ、ロ、ロビンさん?」
いつかは再会したかった人との会いたく無い場所での再会に私は足の力が抜けてしまった。
補足
アラバスタの豪水強奪事件はコブラ国王の方針により、無駄な不安を抱かせない目的で国民や麦わらの一味には知られていないが、実際に会ったゾロだけには軽く説明されている。海軍にはある筋とスモーカーから豪水強奪事件についての報告されてる。
デッドエンド編はルーファス視点とアデル視点を行き来します。途中で会った高齢の人はこの章での重要なオリキャラです。