霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 すごく展開に悩んで遅くなりました


会ってしまったのなら

 

「私達とはずっと仲間なんだよね?そうでしょロビンさん」

 

 少し狭い船室で、ロビンさん含めた総勢7名の海賊の一味に囲まれながら、私は少し声を張り上げる。ロビンさんが色々な所を転々として来たことも知ってるし、私たちに会う前には海賊団に居たことも知ってる。でも、ロビンさんが新しい人たちと仲良くしてるのは何か嫌だ。

 

「ええ、そうよ」

 

「じゃあ、その人たちとも仲間なの?」

 

「おう。ロビンは俺たちの仲間だ」

 

 麦わら帽子の船長ルフィが割って入って来た。ロビンさんから聞いた話だと、刀三本持ってるのがゾロ、長っ鼻がウソップ、金髪のコックがサンジ、もう一人の女の人がナミ、トナカイらしいのがチョッパー。ルフィはゴムゴムの実で、チョッパーはヒトヒトの実を食べたらしい。私たちの方が絶対すごいし、強いに決まってるし。

 

「あんたは黙ってなさい。私も口を挟んで悪いんだけど、そのアデルが居て、ロビンが居た海賊団ってどんな海賊団なの?」

 

「そうね……名前はミスト海賊団。艦長はエルドリッチ・ルーファスで自然系キリキリの実の能力者、今の懸賞金は先日上がって7800万ベリー。副艦長はマグメル、動物系ネコネコの実幻獣種モデル窮奇。懸賞金は上がって7600万ベリー。泥棒役としてカリーナもいたわ。それぐらいかしら」

 

「ミスト海賊団?」

 

 ゾロが私たちの名前に反応して顰めっ面をしてたけど、多分、嫉妬ってやつだね。ここの船長のルフィは懸賞金が3000万らしいから。

 

「クロコダイルと変わんねぇじゃねぇーかよ」

 

 怯えたようにルー兄とマグー姐の懸賞金に震える長っ鼻のウソップ。王下七武海と変わらないなんて流石ルー兄だよねー。

 

「ロビンさんが居なくなってからもシオンやルッカ、ヴィレムなんかも増えたよ。今、一番勢いがある海賊団はうちらのとこでしょ」

 

「ふーん、そういや、お前も能力者なんだよな?どんなんだ?」

 

 全員が興味津々に見てくるし、あんまり情報を教えるのはダメってマグー姐が言ってたけど、ロビンさんにも色々聞いたし、今さらか。

 

「私の能力はフエフエの実。なんでも増やせちゃうんだ。あ、人間なんかは無理だけど」

 

「それっていうと、メリー号なんかも増やせるってことか?」

 

「この船?うん、出来るよ。でも、船を増やすと眠気がすごくなるから、あんまりしたくないかなー。いっぱい増やすことも出来ないし」

 

 船は増やせないって言っても、他のでいいから見せて欲しいみたいな目線が凄いから、ちょっとだけ見せちゃった。めちゃくちゃ目を光らせて、喜ぶから、私も嬉しくなったりもした。

 

「そういや、あんたの腕のタトゥーは何の柄なの?」

 

 今日は半袖を着てるから、見えちゃってたタトゥーについて聞かれた。このタトゥーは私にとっては誇りみたいなもんだから、どんどん見せつけちゃっていいんだけどね。

 

「これはねー霧と虎。私たちのミスト海賊団のシンボルなんだ。これを汚されるのだけは私は絶対に許さないつもりしてるよ」

 

 ルー兄やマグー姐、ヴィレムを除いた私たちはタトゥーを見せがち。ルー兄とかマグー姐とかは胸とか背中とかに彫っているから見せにくいだろうなーとは思ってるんだけど、いざという時に見てみたい。

 

「お願いなんだけど、ガスパーデの船に連れてって。あいつを倒したい」

 

 あんなににぎやかだった船の中がすって静かになった。ふざけてばかりで、真面目な戦いなんてしない海賊って思っちゃってたんだけど、こんなにも重い空気を出すことが出来るんだ。その沈黙を破るみたいにルフィが私の方を向いた。

 

「いいぜ、俺もあいつをぶっ飛んばしたいって思ってたしよ」

 

「ちょっと、ルフィあんた……いいわ、その代わり、ゴールしてからね」

 

「おう!分かった」

 

 このルフィがどれだけ強いかは分かんないけど、船長としてしっかり認められるんだ。カリーナとほとんど年齢も変わんないのに。

 

 私はゴールに着くまでの間、この船で過ごすことになった。もちろん、うちの船なんかには敵わないオンボロな船で、乗っている人も少ないって感じだけど、居心地は案外悪く無いし、料理なんかはルー兄が偶に作るやつと張れるぐらいの美味しさがある。ロビンさんがここの船が乗ることを選んだことも納得しちゃうなー。ちょっと悔しいけど。

 でも、私はこんなにも穏やかな気持ちでいていいのかな?家出同然に船を出てきた割に、未だにガスパーデにも会えてない。もしかしたら、もうルー兄が戦って勝っているかもしれない。そんなことになったら、色んな思いがぐちゃぐちゃになっちゃう。ルー兄には負けて欲しく無いけど、私の手でガスパーデを殺したい。それに、手紙だけ残して家出した意味が無くなっちゃう。

 怒ってるだろうなー勝手に出て行ったこと。謝ったら許してくれるのかな?分かんないけど、なるようになるとは思いたい。そんな、モヤモヤした気持ちを胸に持ちながら、目を瞑ろうと頑張る。

 

 

★ ★ ★

 

 

 いつもと変わらない船内で、この船はライバルである海賊たちを倒しながらどんどんと進んで行く。永久指針の指す場所へと。そして、ゴールと示される場所にあったのは海軍の要塞だった。ボロボロに崩れ去った船達に絶えず飛んでくる砲弾。いきなり過ぎて、何が何だか分からなかったけど、これだけは分かる。僕らは騙されたということに。

 

「……あの主催者にやられましたね」

 

「みたいだな。どうすんだ、艦長さんよ」

 

 ゴールへと着けば、必然的にガスパーデの船とアデルに会えると思ったけれど、こんな状態なんだったら、ここへ来たかも来ていないかも分からない。いや、ガスパーデが騙させるなんて想像出来ない。もしかしたら、すでに本物の永久指針を手に入れて、本当の島へ行っているのかもしれない。

 

「兄様。海軍の要塞の中で何かが起こっているみたいです」

 

 類い稀な見聞色の才能を持つシオンが言うことだから間違いは無いんだろうけれど、何が起こっているんだろうか。でも、ここはチャンスかもしれない。海軍の基地なら、この周辺の海図を持っている可能性が高い。この混乱に乗じて盗めればいいけれど……なんか、僕盗んでばっかりだな。

 

「進もう。もしかしたら、ガスパーデを追える手立てが見つかるかもしれない」

 

 要塞の一部がいきなり壊れたことで大砲の応酬が一度終わったので、僕らは中の方へと進んで行く。そして、要塞の入り口の近くに砲弾を受けていないドクロが描いていなくて、海軍の船でも無い船が置いてあった。見たところ誰も乗っていないようだけど、この船に乗っていた人が要塞を襲撃したのかな?

 

「進みましょうルー、本物の永久指針も手に入れて、アデルを迎えに行く為に」

 

「うん、分かってる」

 

 周りを警戒しながらどんどんと進んで行く途中には、様々な階級の海兵達の死体がそこら中に落ちていた。

 この感じをを見る限りここを襲撃したのは相当な手練れ達だろうとは思うけど、どのくらいの実力者かは分からない。もしガスパーデ以上の人だったら僕たちに勝てるんだろうか。

 

「気をつけろ。ルーファス!」

 

 ヴィレムさんが怒鳴ったとたん、足元の木の床が崩れ去った。下が海だったら溺れてしまうので、下の階層を一瞬見たけど、そこには先日ぶつかったしまった初老の男が居合の構えを取っていた。

 

「すまんな」

 

 これまで見た中でミホークさんには劣るとは思うけれど、想像以上のスピードで僕に振り払われた刀をなんとか鞘から抜いた刀で防ぐことが出来た。

 

「やりますな。油断していると思ったんだが」

 

「いえ、油断はしていました。それよりも、貴方は誰なんですか?」

 

 その初老の男性の佇まいは強者がするような隙が全く無いようなものをしていて、前にぶつかった時には全く感じることが出来なかった。

 

「名乗るほどの者じゃない」

 

「何言ってんだよ親父。戦う前に名乗り合うのは礼儀だろ?親父言ってたじゃないか」

 

 その男性の近くに別の部屋から現れたのはその男性と似ても似つかない僕よりも何歳か年下の中性的だけど、キリッとした目をした少年だった。でも、分かる。彼は何かしら抱えているものがあることは。

 

「そうだったな。私は元革命軍参謀エンドルフだ。今も似たようなことをやっている」

 

「俺はユーシス。親父には拾ってもらった。民衆の味方だ」

 

 元革命軍なんて弱いはずが無い。かなりの強敵だと思う。多分、ガスパーデよりも。ここはこの人達の相手をせずに海図を探すことを優先した方が良いんじゃないかな?

 

「僕たちには戦う理由がありません。ここにある海図さえ手に入ればそれで大丈夫です」

 

「いや、お前らは市民の国を襲った。到底許すことは出来ない」

 

 落ち着いている声色をしているようだけど殺気はどんどんと溢れてきていて、いつ攻撃してきてもおかしくは無かったし、僕がどんな攻撃をしても、いなす事が出来ると思う。

 

「マグー!あっちの人は任せる。僕はエンドルフさんを相手にします。四人は先に目的を果たしてください」

 

 この二人は強敵だ。僕とマグーで何とかというところだと思う。それだったら、みんなには目的を達成してもらった方が良い。それに、エンドルフさんが言うことは僕がやったこと。僕が責任を取って決着をつけないと。

 

「了解ですよルー。甘っちょろいこの人を倒してみせますよ」

 

「誰が甘ちゃんだよ。倒せるもんなら、倒してみろよ」

 

 視線を逸らして四人に向けて頷くと、その意味をしっかりと受け取ってくれたのか、みんな海図を探しに行ってくれた。これで、僕が負けてしまっても、アデルを迎えに行くことは出来る。

 

「では、いかせてもらう」

 

 早い!一瞬で僕の元に。なんとか、能力で避けたけれど、これじゃあ、いつまで持つかなんて分からない。早く決着をつけないと。

 

「流石、期待のルーキーだな。大体の人は避けられない」

 

「過信してると、足元救われますよ」

 

「鴎突き!!」

 

 僕が刀を喉元へと突き刺そうと足を踏み込んだ瞬間、足元の木が崩れ去った。そのせいで、技を打つことは出来なかったばかりか、バランスも崩して隙が出来たけれど、そこを狙った攻撃はギリギリの所で刀で防げた。

 

「運が悪かったな。偶々、足元の木が脆いなんて」

 

 僕をからかっているような微笑は何か不気味で、まるで分かっていたような……もしかして、この人がやったのか?

 

「エンドルフさん。貴方は能力者なんですか?」

 

「さぁな」

 

 この人の能力をしっかりと理解しない限り、僕に勝ち目は無いかもしれない。

 

 

★ ★ ★

 

 

 和風に統一された部屋。その一室で、電々虫から連絡を受けた厳格な雰囲気を崩さない海軍本部元帥センゴクはため息を吐き、何故か部屋にいる海軍の英雄ガープを無視して、同じく部屋にいるクザンこと海軍本部大将の青雉に声をかける。

 

「エンドルフが現れたそうだ。もう、看過することは出来ん。行ってくれるか?」

 

「……了解です、センゴクさん。しっかり捕らえて来ますよ」

 

 何の反論も聞き返すことも無く、青雉が音もなく消えた後のこの部屋は静かで、ガープも珍しく口を閉じ、センゴクはお茶を啜る。

 

「その辺の海賊どもより好いてたんがな」

 

「今から言うなガープ。いくら、市民に手を出していないとは言え、こちらの被害は甚大だ。捕らえるのは仕方あるまい」

 

「そうだな」

 

 ガープのおかきを砕く音が響く。全ては仕方ない事柄とは言え、二人は簡単には唾を飲み込めなかった。




 設定的にはサボの前任者ってことになります。
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