霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

33 / 90
この小説の主人公はルーファスです。想像したらグロイ場面が今回の話はそこそのあるかも。


ふふふさん誤字報告ありがとうございます!


いつまでも甘く見られたくない

 

 ガスパーデの拳を余裕を持って避ける。思ったよりものろのろしてるパンチだったから、もしかして弱いのかなとは思ったけど、そんな弱い奴にお兄ちゃんがやられたとは思いたくも無い。大ぶりなパンチで空いたお腹に増やした二つのピストルの弾を何発も打ち込む。

 

「霧野郎から聞いてなかったか?俺はアメアメの実を食べた水飴人間。攻撃なんて効かねぇよ」

 

 ルー兄には能力者だってことは聞いてたけど、まさかここまで凄い能力なんて思わなかった。やばいかもしんない。武装色とか持っていれば良かったんだけど、まだ持ってない。

 

「そんなんだったら、原型なくしちゃうから」

 

 勝てるか分かんない。だけど、やらなきゃいけない。あれだけ会いたかったお兄ちゃんとも会えたんだ。限界まで出来る。でも、ルー兄の夢の最後だけは見たかったな。それだけが心残りだけど。

 

「大口叩くんなら、そいつよりも良いおもちゃになってくれるんだろうな!」

 

 さっきよりも、速い殴りが飛んでくる。さっきは自分の能力を見せつける為に遅くしたってことを嫌でも意識する。それを瞬間的に避けながら能力を使って、あいつの体に木の板とか樽とか鉄のやつとかを投げつける。体力なんて気にしない。

 

「うっとしい能力だな。意味ねぇことしてんじゃねぇぞ」

 

 上手く避けながら逃げてたのに、いきなり鋭くなって伸びた腕に刺されて動けなくなった。何度も何度も、痛い。ほんと痛い。こんなに痛いのなんて、初めてかもしんない。痛い痛いけれど、こんなに痛いからこそ、覚悟を決められる。

 

「フエフエ 巨大戦艦(ネクストガレオン)!!!」

 

 手で触れている船の甲板からフエフエの能力によって船の先端がどんどん出てくる。この船はでかいから、私の能力で増やすともう体力なんて残らないけれど、これで倒しちゃうから問題無し!!!

 

「これは」

 

「これでいけーーー」

 

 私の手から自分達が今いるのと同じ大きさの船が出てくると、それはガスパーデをも巻き込んで、この船の隣に勢いよく降りたつ。これで能力者のガスパーデは溺れると思う。これで、死ななかったら、私にはもう無理かな。もう、立つことさえ出来ないし、吐き気も凄い。

 

「おい、大丈夫かお前」

 

「う、ル、ルフィ?ほどほどにマシな感じかな。ガスパーデどうなった?」

 

「チッ、久々にバラバラになっちまったぜ。覚悟出来てんだろうな。てめぇ」

 

 意味わかんない。あんなにも船が押しつけられたはずなのに、無事なんて。こんな相手にルー兄とマグー姐は逃げ切ったの?ああ…展開私死んじゃうのかな。

 

「ゴムゴムのバズーカ!!!」

 

「俺が相手だ。ガスパーデ」

 

「ゴム野郎が。次から次へとそろそろ鬱陶しくなってきたぜ」

 

 

 ★ ★ ★

 

 

 アデルが自身で出せる最大の技をぶつけたにも関わらず、生きていたガスパーデと麦わらの一味の船長である麦わらのルフィが戦っていた。ルフィは効かないと分かっていても何度も攻撃を繰り返していた。しかし、流石に鬱陶しくなってきたガスパーデによって致命的な傷をいくつも負わされていた。甲板に倒れているアデルとシュライヤ。戦況は中々に絶望的かに思われた。

 

「上手く使えよ、ルフィ」

 

 そんな戦況を変える一手のように麦わらの一味のコック、サンジが小麦粉をルフィに投げた。ルフィはそれを使い、水飴の能力者であるガスパーデが攻撃を絡め取れないようにした。

 

「はぁ、麦わら。絡め取れねぇんだったら、仕方ねぇな。先にこいつを始末してやるか」

 

「おい!やめろよてめぇ。そんなことして、ただで済むと思うなよ」

 

「死ぬ気で俺に挑んできたんだ。死んだって文句は無いだろ?」

 

 ガスパーデはアデルに近づくと、その手を鋭い刃物のようにして首を刈るような構えを取った。近づいても殺される。見ていても殺される。ルフィは知り合った人間を簡単に見殺しに出来る人間では無かった。ガスパーデが何も予告も無くアデルの首に振り下ろそうとし、ルフィが走り出し、間に合うか間に合わないかという瀬戸際。辺り一帯が霧に包まれ。ガスパーデの下ろした鋭い手が刀によって受け止められた。

 

「遅くなってごめん、アデル。家出したとはいえ、僕はアデルを失いたくは無い。だから、余計なお節介かもしれないけど、僕はアデルを助ける」

 

「……ありがとう……ルー兄。助けてくれるってちょっとだけ期待してた」

 

 自分の言葉が昔、マグメルに言われた言葉と似たようなものなんだと感じ、照れ臭くなったルーファスはその思いを心の片隅に寄せて、精一杯の睨みをガスパーデに向かってきかせる。

 

「やっぱり貴方だけは嫌いです……貴方を本気で殺します」

 

「あの時とは大違いってか?やれるもんなら、やってみやがれ!!」

 

 ガスパーデの武装色の籠った水飴の刃とルーファスの刀がせめぎ合う。どちらも引かない攻防だったが、ガスパーデの刃が弾かれる。その隙を逃さないルーファスはガスパーデの足に刀を突き刺し、抜く。

 

「勝ったと思うんじゃねぇぞ霧野郎!!」

 

 身体中から水飴で出来た針を何重も出したガスパーデは勢いそのままにルーファスに襲い掛かる。だが、そんなガスパーデにも冷静な顔をしたルーファスはゆっくりとした動作ながらもしっかりと指を結ぶ。

 

「霧細工 幾十指切り(いくそのゆぎきり)

 

 霧で作られた小さな針のような物が空中に千、二千、三千と段々と増えていき、その数は優に五千を超える本数となる。そして、それはルーファスが指を離すと同時にガスパーデに向かって、放たれる。

 その全ての針はガスパーデに当たったものの、ガスパーデも水飴で作られたとは言え、強固な針を身体中に纏っていたことにより、大きなダメージを防いでいた。

 

「てめぇ。調子に乗るんじゃねぇぞ」

 

 針の量、長さが増したガスパーデは針のようなものをルーファスに向けて、伸ばし、放つ。ルーファスの目からは視界全てが水飴の色である緑一面に染まっていたが、冷静に刀を構え、ガスパーデを見据える。

 

「霧隠れ 雲合霧集」

 

 晴嵐に対してどんどんと霧が集まっていき、その刀身は長く、太さは増し。見た目からしても、鋭さが増していることは明白だった。

 

「アデルの分まで代わりに。鴎突き」

 

 突きの構えをし、身体の至る所をガスパーデの針によって傷つけられ、血が流れ落ちながらもルーファスは進み続ける。そして、ガスパーデの目前まで迫り、その強化された晴嵐でガスパーデの心臓を狙い、突き刺す。

 その一突きの勢いが余程強かったのだろう。突き刺されたガスパーデはその突きで絶命し、余波で船から吹っ飛ばされ、海、迫って来ていたサイクロンの近くまで飛んで行った。

 

「すみません。貴方の戦いを邪魔してしまって」

 

「気にすんな。俺もぶっ飛ばしたかったけどな」

 

 その屈託ない笑みにルーファスは唯ならぬ物を感じた。脅威を感じたわけでは無い、ただ漠然とした何かにおいてはこの人物には勝てないだろうという、そういった感情だった。

 

「ルフィーー!サイクロンが来る。早く、脱出ーー!」

 

「行ってください。ここの後始末は僕がしておくので。後……アデルをありがとうございました」

 

「おう」

 

 ルーファスはアデルを自身の背中に背負うと、麦わらの一味の船を見送る。ここから麦わらの一味はゴールに向かい、自分達もゴールへと向かう。その時は敵同士だということを心の内に募らせて。

 

「ルー兄。ごめんなさい。私、家出した癖に何も出来なかった。ルー兄のそばにいる資格なんて無いよ」

 

「そんなこと無い。アデルは頑張った。それに、僕なんかのそばにいるのに資格なんていらないよ。僕はアデルに居てほしい」

 

 アデルはルーファスの顔を直視出来ず、ルーファスの背中で顔を隠す。自分の永遠のヒーローは彼なのだという自覚を隠すことが出来ずに。

 

 

★ ★ ★

 

 

 デッドエンドレース、ゴールの島近く。麦わらの一味がゴールしているだろうという思いがありつつも向かうと、その麦わらの一味の船が海軍に追われながら、ゴールの島から離れていくところだった。

 そんなよく分からない状況に戸惑いつつも、ルーファス達は島に入り、賞金3億ベリーをもらう。カリーナを除いて、全員素直に喜べないなかったが。

 そんなこんなで一端は落ち着いたということでルーファスは会議を始めることにし、いつもの会議室と化した場所で幹部である全員がそろっていた。

 

「アデル・バスクード。責任取らせていただきます!!」

 

 会議が始まった開口一番。アデルはナイフを手に取り、自分の目に刺そうとした。咄嗟に起こったことだったので、全員対応が遅れてしまったが、マグメルだけは直ぐにナイフを持った手を掴んでいた。

 

「ここに入る時、様子が変だから、こんなことだろうと思いましたよ。ルーに憧れるのは良いですが、いきなりこの部屋を血だらけにするのは止めてください」

 

「でーもー。何もしないままじゃ私の気持ちが収まらないんです。私にやる許可を下さいルー兄」

 

 責任を取るという行為についてだけ言えば、ルーファスは寛容であり、ルーファス自身の目的も含めると、アデルに対して強く言える立場でも、言う気もあまり無かった。

 

「分かった。マグー離してあげて。アデル。覚悟はあるんだよね?」

 

「うん、あるよ。自分の責任ぐらい自分で取れるから」

 

「……分かった。僕はアデルの判断に任せる」

 

 このルーファスとアデルの問答にこの部屋にいる他の面々は口を出すことが出来なかった。ルーファスがアデルに強要した訳では無い。ただ、アデルが自分で自分のやったことに始末をつけるだけ。それを分かっていても、他の面々はルーファスとアデルを直視出来なかった。

 

「アデル・バスクード。勝手に家出して、みんなに迷惑をかけたこと。仇を取れなかったことで、責任を取らせて頂きます!!」

 

 アデルは勢いよく自分の左目にナイフを突き刺した。血が吹き出し、叫ぶほどの痛みだろう。しかし、アデルは小さくうめき声を上げるだけで、その視線はじっと正面を見続けていた。

 

「ヴィレムさん。アデルの治療をお願いします」

 

「結局は俺の仕事じゃねえかよ。まぁ、いいけどな」

 

 血が出ている片目を押さえながらアデルはヴィレムに連れられて行く。そんな事があった後も会議は続いていき、サイクロンを避けながらも回収したガスパーデの船でこの船の改修する為に近くにあるウォーターセブンに行くことが決まった。

 

 

 ★ ★ ★

 

 

 

「おっはー。元気……してる?お兄ちゃん」

 

「海賊の船でもてなされて、妹とも会えた。満足と言ったら満足かもな」

 

 お兄ちゃんは口では満足とか言ってるけど、顔はなんか燃え尽きたみたいに色が無かった。この数日間、衣食住はしっかりしていたから、多分、私と一緒で復讐の為に生きてきたから、それが無くなって燃え尽きちゃったんだね。

 

「その目。どうしたんだ。あいつらにやられたのか?」

 

「ううん。自分でけじめをつけただけだよ」

 

 私の左目には今、眼帯がかかってる。もう、左目は見えないから付けてるんだけど、眼帯を取っても傷跡があるだけだから、外すことはこの先無いんじゃないかなーって思ってる。

 

「俺と区切りをつけるためか?」

 

「……お兄ちゃんはやっぱり私のお兄ちゃんだね」

 

 こんな汚れた私はお兄ちゃんの妹には相応しくない。お兄ちゃんも自分は汚れたとか言ってるけど、まだ戻れる。それに、私はもう生きる目的が無くなっちゃったから、新しい目標をつける区切りでもある。

 

「俺がお前にしてやれることは無い……みたいだな。次の島で下ろしてくれ。俺は俺の目標を探すことにするさ」

 

 自傷気味に笑ったお兄ちゃんの顔に私は真正面から耐えることは出来なかった。いつかまた会えるとしても、別れは辛い。ロビンさんの時にも学んだから。

 

「……分かった。会えて嬉しかったよお兄ちゃん」

 

「死なないでくれよ。アデル」

 

「私はミスト海賊団第一席アデル・バスクード。そう簡単に死なないから!」

 

 振り向かずに足を進める。船を降りる時にも会うと分かっていても、こうしなきゃいけない気がした。私にとってのお別れは今だから。

 




アデルも出番もそこそこ書けたかな?主な元の映画からの変更点は下記に

•アデル・バスクードという人間の色々

•ガスパーデの船が爆発しない

•ガスパーデとの決着が映画よりも早まった

•麦わら帽子が破かれない

•モグラことビエラさんの出番の消滅

•シュライヤ・バスクードとアデル・バスクードとの歪な再会
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。