霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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新章開幕は急展開になりがち


超新星編 STRONGWORLD 俺は最強
何故鳥は空を飛ぶのか


 

 ウォーターセブンを出発して早数週間。億越えの賞金首になったにも関わらず、僕たちの生活はさほど変わりはしなかった。このまま行くと、もう折り返し地点のシャボンディ諸島に問題無く着けそうかな。ここまで来るのに、あっという間の時間だった気もするけれど、もう10年も経っていると思うと感慨深いな。

 

「ルー。ここから、海域も安定するらしいので、久しぶりに一緒にお風呂入りません?」

 

 本当に久しぶり。この船に僕以外に男がいなかった時以来かな?ルッカやヴィレムさんが入ってからは年一にあるか無かったぐらいだったから。でも、昔に比べて色々と慣れちゃったから、一緒に入ることに今更緊張しない。

 

「そうだね。大きな気配を感じることも無いから、行こうか」

 

 見聞色で探ってみても、敵がいそうじゃないし、もし、居たとしても今のみんななら僕とマグーが居なくても大丈夫だと思う。ゆっくり入ろうかな。そんな風に、僕自身もリラックスして、船のみんなもリラックスしている時、雲の上から何かが落ちていきた。

 

「シハハハハ、てめぇら。俺と勝負しやがれ」

 

 雲の上から甲板に落ちてきたその人は、金髪のザラザラした短い髪をしていて、前腕辺りからは鳥の羽のような白い羽が生えている。服装は金と黒を基調とした着物を着崩すように着ていて、その着崩した間からはその粗暴な口調とは似合わない大きめな胸。その全身からは言いようの無い威圧感をビリビリと感じる。

 

「いきなり、船に来て何ですか?僕たちに貴方と戦う理由はありません」

 

「かてぇことを言うんじゃねえよ。俺が戦いたい。理由なんてそれだけで充分じゃねぇかよ!!!」

 

 その子は腰に携えた二刀の大太刀を抜くと、容赦なく近くにいた水夫の人に切り掛かった。僕も海賊だから、人のことは言えないけれど、あまりにも見境が無さすぎる。

 

「分かりました。僕が戦います。それで構いませんか?」

 

 水夫の人に斬りかかろうとした二刀の大太刀を刀で止めながら、僕は会話を試みる。名も所属も、何故空から来たかも分からないこの人と戦う為に。

 

「話が分かるじゃねぇかよ。そういえば、てめぇ、名前は何だよ。覚えておいてやるよ」

 

「僕の名前はエルドリッチ・ルーファスです。貴方の名前は?」

 

「ハッ、てめぇが西の海のルーファスか。億越えの賞金首だろ?聞いたことあるぜ。骨がありそうで嬉しいぜ。俺の名前はエレカ、金獅子のシキの娘だ」

 

 僕の名前も知られるようになって嬉しいけれど、金獅子……?何処で聞いたことがあるような。

 

「おいおい、マジかよ。あの金獅子に娘がいたなんてな」

 

「知ってるんですか?ヴィレムさん」

 

「お前らが知らない方が驚きもんだぜ。金獅子って奴はロジャーのライバルだった海賊だ。昔インペルダウンから脱獄して姿を消してやがったが、まさか娘がいたなんてな」

 

 そんな伝説の大海賊の血を継いだ人がこのエレカさんなんて。でも、それだったら、こんなにも姿だけで威圧感を感じるのも納得かもしれない。柄にも無く冷や汗をかいてきたかも。

 

「そういうこった。俺と戦うことなら覚悟するこったな!あ、そういや、あれ、忘れてたぜ。おい、ルーファス。なぜ鳥は空を飛ぶと思う?」

 

 いざ、始めようとしたところで、エレカさんから、哲学的な質問がされた。彼女はこんな質問をするような人間じゃなさそうには見えるけど、この質問にどんな意味が込められているんだろう。でも、僕だったら……。

 

「鳥は翼を持った責任があります。その責任を果たすために翼を使って空を飛ぶんです」

 

「シハハハハ、67点ってとこだな。鳥はな、翼という利用出来るものを利用して相手より優位に立つ為に、空を飛ぶんだよ!!」

 

 言葉を切った瞬間、エレカさんは切り掛かってきた。それをまた僕は刀で受け止める。さっき、受け止めた時にも思ったけれど、彼女の腕は僕よりも華奢なのに一体、何処にこんな力があるんだろう。

 

「いいじゃねぇか。流石、億越え。だが、俺には敵わねぇぞ!!!」

 

 エレカさんの威圧感が一気に増した。いや、これは覇王色。しかも、前にユーシスさんが見せたみたいに覇王色が分散して本来の力が出せていない感じじゃなくて、僕以外の全員を狙い撃ちにしている。マグーとかアデルなんかの会議に参加しているメンバーは倒れたりはしなかったけれど。

 

「シハハハハ、優秀な仲間を持ってるようで、羨ましい限りだぜ!!だが、上が討ち取られらば終わりよ!!」

 

 一太刀、僕と打ち合う度に、素早く後ろに回って次の一太刀を下ろしてくる。同じ戦いが好きそうなマグーとも違う……相手を殺すことに躊躇も無いし、どれだけ良い戦いが出来るかじゃなくて、相手にどれだけ勝つかを優先してるように思える。

 

「何の為に勝負をしたいんですか?」

 

「相手よりも上だと証明したいからに決まってだろ。俺は世界最強になりたいからな」

 

 僕なんかよりも素晴らしい夢を持っていると思う。でも、これじゃあ、埒が明かないと思ったのか、エレカさんは後ろに回る戦法を止めると、一度僕から離れる。

 

獅子形成刃(ししけいせいじん)!!」

 

 離れた所から飛ぶ斬撃をいくつも飛ばしてくる。ミホークさんが使っていたのを見たことがあったけれど、斬撃はここまでの数を飛ばせるものなんだ。でも、だからと言って、受ける訳にはいかない。

 

「鷺!落とし!!」

 

 いくつも飛んできた斬撃をその身に受けたり、弾いたりしながら、空に飛び、刃を振るう。その技はエレカさんに受けきられてしまったけれど、少しの拮抗の末、パキンという音と共にエレカさんの両刀が折れた。

 

「チッ、またかよ。やっぱ、なまくらじゃ無理だな。あーあー、辞めだ、辞め。勝負はまた明後日な」

 

 エレカさんは服から電伝虫を取り出すと、誰かに連絡をする。これって勝負が着くまでやるのかな?でも、あんまりやっていると、マグーが怒るだろうから、やりたくは無いんだけど。

 

「ジハハハハ、俺を足に使うなんざお前ぐらいにしか出来ねぇな、エレカ」

 

「思ったより早いじゃねぇかよジジイ。また見てやがったのか?」

 

 エレカさんが電伝虫をしまったと思ったら、直ぐに空から頭に舵輪がハマっていて、足が刀になっている金髪の人がまるで浮いて来たかのように降りてきた。

 

「娘の活躍を見るのは親の嗜みだからな。少々、スパンが早く過ぎるがな。せいぜい島を楽しみやがれよルーキー共!!」

 

 浮いてきた人がいきなり僕たちの船に触れると、船が空を舞った。意味が分からない。何で空を舞ってるかも、浮いた先の雲の上に島があるのかも。

 

 

★ ★ ★

 

 

『『海』あーあー、聞こえっか?』

 

『『霧』聞こえちょるわ。またお前んとこの海賊団が何かしたんか?』

 

『いいや、そういうのじゃない。ただ、面白い報告があるんでな』

 

『そりゃええこったな。わしからもお前に伝えたいことがある』

 

 空に浮かぶある島で1人で電伝虫と話しているヴィレム。電伝虫の相手の口調は訛っているようで威厳も声から感じられたが、ヴィレムの口調はいつもと変わらずも、キョロキョロと周りは警戒しているような様子だった。

 

『おいおい、せっかく気分が良いのに、悪い情報は無しだぜ?』

 

『相変わらずの口の聞き方。また、上下関係を叩き込まなあかんようじゃけんのう!』

 

『怒らんでくれよ。情報は渡すからよ。金獅子のシキに娘がいた。しかも、本人も発見だ。海軍の派遣でどうよ?』

 

『今、海軍はそれどころじゃないんじゃ。黒ひげとかいう奴が白ひげの2番隊隊長の首を持ってきよって、戦争準備中じゃ』

 

 まだ世間にも出回っていない情報。それを聞いたヴィレムはいつもの飄々さをも無くし、声を失った。その回転の早い頭脳でどれだけのことが起こるのか容易に想像出来たが故に。

 

『正気か?』

 

『いつまでも頂点の前に座っとる海賊にはそろそろ引退してもらわなあかんけんの。情報は黒ひげは七武海に任命されおったことじゃ。残念だったな』

 

 ヴィレムは苦悶に顔を歪ませる。電伝虫を通じた相手が決めてないにせよ、その選択肢はダメだろうと心底残念がるように。

 

『おいおい、何のために俺がミスト海賊団の功績を報告していたと思ってるんだ。……まぁ、どうせ、海峡なんかは白ひげとは敵対しないだろ?そこに入れるってのはどうだ?最近のクロコダイルの例もあるから、採用すべきだろ』

 

『いつもよりも饒舌やのう。まぁお前の意見は考えてにいれちょいたるわ』

 

 電伝虫は切れる。要件は済んでいたので、問題は無かったことだが、ヴィレムはいつも以上に疲れたような表情を見せる。

 

『本当にサカズキさんは疲れるぜ。さてと、黒ひげが七武海か、あいつが知ったらなんて言うもんかな。七武海にはしてやれそうだけどな』

 

 ヴィレムは空に浮かんだ島で1人、大きく頭を悩ませる。自分は何なのか。自分の正義とは何なのか。そんな答えの無い問答を飄々とした顔の中に隠しながら。

 

 

★ ★ ★

 

 

「面倒な報告ばかりよこしおって」

 

「そういうな赤犬。先のエンドルフやガスパーデのような頭の上のたんこぶだった連中を鎮静化出来たのもあいつの報告おかげだ。それにヴィレムの母親はお前の上司だったじゃないか」

 

 海軍本部の和風に統一された元帥の部屋で、海軍本部元帥センゴクと海軍本部大将の赤犬は先ほど連絡受けた件について話し合っていた。

 

「それが余計に面倒なんですけ。あいつの声を聞くたび、海賊との子供の産んだ馬鹿な上司の顔がちらつくんで。それより、金獅子は放っておくことで決定でいいんですかい?」

 

「お前も言っていただろ。起こるであろう白ひげとの戦争に備えて、犠牲は出来るだけ避けたい。もし、あの海賊に金獅子が敗れるとしたら、軍は派遣するが」

 

 そんなことは万に一つ無いだろう。その言葉を確信して言えたのは何十年も前。今はセンゴクも年を取り、シキも老いた。そのことを思うと、センゴクは金獅子が負ける可能性を捨てきれなかった。

 

「そん時はあいつの提案通り、七武海に推薦しときますじゃけぇ。戦争に参加しない七武海の代わりぐらいにはなるじゃろ」

 

「そうだな。海賊女帝かジンベエ辺りが濃厚か。戦力は1人でも多い方が良いからな。例え、新生の海賊でもな」

 

「それでええとちゃいますか。今の話、おどれの正義も決められん馬鹿に連絡してきますわ。ルーキーに期待かけるのもどうかと思いますけど」

 

 センゴクは茶を飲む。七武海に頼ってしまう今の海軍本部の戦力不足さを少し嘆きつつ。

 赤犬は威風堂々とした佇まいで元帥の部屋から去り、廊下を歩く。母親のように海賊に情などを入れ込まぬかと馬鹿な部下を憂いつつ。

 




 広島弁難しい
 ヴィレムの正体?は大体経歴からお察しの通り海軍のSWORD所属です

 ロジャー、白ひげ、ビッグマム、カイドウ、シャンクスなどなど、大海賊達には実子、養子問わず子どもがいるので、シキにもいて欲しいってことで追加しました。
 オリジナル展開が多くなりますが、シキの格を映画よりも上げれるよう頑張ります。

 ベルセリアの問答がすごくおしゃれだと思いました。
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