霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 新しく年があけました。今年もよろしくお願いします。

 


暁闇

 

 僕とマグーの前には伝説の海賊と呼ばれているらしい金獅子のシキさんが浮いている。僕とマグーがみんなと離れて降り立った島にいきなり来たんだ。僕はシキさんの娘のエレカさんに何とか勝ててる実力差だから、彼女の父親に勝てるかどうかははっきり言って、自信が無い。でも……ここであの人に勝たなきゃどっちにしろ、四皇になんてなれない。やるしかない。

 

「いきなり全力でいかしてもらいます。霧隠れ 呑雲吐霧」

 

 シキさんがこの幻覚の霧に耐えれるかどうかでここからの僕の戦い方は大きく変わってくる。出来れば幻覚を見て欲しいけれど、覇気が大き過ぎる人には効かない。希望は薄いかも。

 

「こざかしい。ハッ!!」

 

 予想通り、幻覚霧は容易く払われてしまったけれど、通常の霧は辺り一面を覆い続ける。念には念を込めて張っておいて良かった。

 

「私の方にも気を張って下さいよ。魚人空手 三千枚瓦正拳」

 

 霧の中から現れたマグーの正拳がシキさんにヒットする。だけど、その正拳はシキさんの手で容易に止められる。人獣型のマグーの攻撃を軽々しく止めるなんて。

 

「良い技だ。だが、制御が甘い!」

 

 僕がシキさんの後ろに移動すると同時に、マグーが吹っ飛ばされて、地面に叩きつけられる。あんまり、ダメージは食らってないみたいだけど、このペースで二人とも持つかな。

 

「霧細工 賤ヶ岳!」

 

 何本もの太い槍がシキさんに刺さる。でも、武装色でガードしているのか、血は全く出ずに直ぐに腹へ拳が飛んできて、僕も地面に叩きつけられる。

 同じように何度も何度も交互にかかっていったけれど、シキさんに全く傷を負わせることは出来なかった。勝てるという気すら無くなっていくこの戦い。僕とマグーの体力や限界がくるのはもう、直ぐそこまで迫ってきていた。

 

「どうだ。俺の部下にならねぇか?傘下の方がいいか?」

 

「どちらでもご勘弁です。あなたは部下の扱いが悪そうですから」

 

「ジハハハハ、間違っちゃいねぇな。お前はどうなんだ船長よ」

 

「僕も同意見です。貴方の下につくよりも逃げることを選びます」

 

「覇王色の才能も無い若僧らが、俺の慈悲を無碍にするもんじゃないぞ」

 

 シキさんの威圧感が一段と増す。それはチンジャオさんやミホークさんから感じたものよりも数段と研ぎ澄まされていて、修羅場の数なんて僕の比にならないことは明らかだった。

 

「獅子威し!!!」

 

 そして、何処からともなく現れた獅子を模した何かの塊が僕らに襲いかかる。これをくらったらお終いだ。絶対に防がないと!!

 

「マグー!! 霧細工 長篠大嵐」

 

 何千、何万もの弾を空中へと生成する。前よりも形も鋭くなり、大きさも増している。今、生成出来る霧をここに全てかける。

 

「分かっていますよ!!! 鮫肌掌底!!!」

 

 獅子となっていた塊は僕らの攻撃で受け流して、周りに分散出来たんだけど、周りに散っていったものでさえ、地面を削り、砂埃を大きく舞わせることになるほどのものだった。これを受けていたと思うだけど、背筋が凍る。だけど、ずらすことでさえも、僕たちはこれまでのこともあって膝をつく結果になった。

 

「獅子・千切谷」

 

 そんな膝をついた隙すらも許してくれないというように、シキさんは足の義足代わりの刀を斬撃を飛ばしてくる。それを避けてから、攻撃に転じれるほどの余力はもう、僕には残されていない。

 

「こうなったら、使うしかないみたいですね。李─」

 

「マグー。それだけは駄目だ。マグーがマグーじゃ無くなってしまう」

 

「だからって、このままじゃ死にますよ」

 

「だから、僕らの得意分野を使うんだ。霧隠れ 五里霧中 三倍霧」

 

 自分の体力の残量を無視して、マグーを連れて、霧に隠れて逃げる。こうやって、何度も逃げてきたんだ。あまり言いたくは無いけど、僕は逃げることに関してはそれなりの自信がある。

 

「……逃げたか。いずれ、俺のところに来るだろう。それを待つか」

 

 ああ、島の端っこ。でも、もう意識が。

 

「ルー!何とか海に落ちるのは避けないと」

 

 いつもより音の波長が違う、マグーの翼の音がする。その音を聞きながら、僕の意識は久々に虚空に消えた。

 

 

★ ★ ★

 

 

 しゃらくせぇ。しゃらくせぇ。しゃらくせぇ。ルーファスを打ち負かすまでの時間が勿体ねぇ。あの飄々とした野郎もあの鳥と縄も、あいつらの一味、全員がムカつくぜ。何の為に戦ってるんと思ってんだよ。

 

「クソが!!イライラするぜ」

 

「ピーロピロピロ。こんなにも苛立っているのは初めてじゃないか?」

 

「勝手に入って来たんじゃねぇぞクソ科学者。大人しくジジイと遊んでろよ」

 

 俺が生まれた時からこいつはいるが、気に入ったことなんて生まれたこの方ありゃしねぇ。こんな、白色に顔が染まった頭のイかれた奴を気にいる奴なんてジジイ以外いねぇしな。

 

「シキの親分はあのルーファスとかいう奴にお灸をすえてるよ。無事に生きてるといいがな」

 

「チッ!!!クソジジイが勝手にしやがってよ!!俺のことを分かってる癖にそんなことやりやがって」

 

 イライラする、イライラする、イライラする。あんなクソみたいなジジイに支配させるのも。それに気づいている癖に逃げる選択肢を無くしてる俺にもよ!!!

 

「おや?どこに行かれるですか。エレカのお嬢さん」

 

「決まってんだろ。もう戻ってんだろ?ジジイのところだよ」

 

 今回ばかりはクソジジイに一言いってやる。初めて出会った俺が満足出来る相手だ。簡単にジジイに手、出されてたまるかよ。

 

 

「ジハハハハ。よく来たな、愛すべき俺の娘よ」

 

「思ってもねぇ癖にいうなよ。俺のことなんて、どうでも良い癖によ!!!」

 

 俺の黒々と光った刀なんて、いつも通り手で逸らされて、もう片方の手で地面に押さえつけられる。あー、いつも一緒かよ。なんで、なんで、なんで、俺はこのジジイに勝てやしねぇんだよ!!!

 

「ジハハハハ、残念だったな。まだ俺には勝てねぇよな。で、何の用だ?」

 

「また俺の相手に手出ししやがっただろ!?ふざけんなよ」

 

「お前のことを心配してだぜ?あいつにお前は勝てないからな」

 

 そんな事は分かってんだよ。俺があいつに劣ってるってことぐらいな。だけどな、俺にだってあいつを倒す切るのは出来ないことじゃないんだよ。

 

「余計なお世話なんだよ。俺はもう行くからな」

 

 ジジイの手から逃れた俺は趣味の悪いこの部屋を出る。チッ、ジジイ相手で、生き残っていんのか?ルーファスの奴。……微妙なとこだな。とっとと探しに行くか。死ぬんじゃねぇぞ、俺が勝つんだからな。

 

 

★ ★ ★

 

 

 分からない。此処が何処か分からない。何かの気配が三つぐらいある気がするけど、それが誰かも、人かも分からない。僕はどうしてたんだっけ?

 

「う、あぁ、うん?」

 

「お目覚めか?ルーファス」

 

 僕が目を覚ますと、そこにあったのは知らない天井だった。そして、隣にいるのはヴィレムさん。前にも似たような構図があったななんて呑気に思った僕は記憶を思い出そうとする。マグーと一緒にシキさんから逃げたことは覚えてるんだけど、それ以降は全く記憶に無い。

 

「うん。ヴィレムさん、ここは何処なの?僕らの船じゃないよね?」

 

「ああ。ここは浮いている島の中にある村だ。ちゃんと、話の通じる奴らがいたぜ?」

 

 シキさんに支配されたこの島群の中にも人が暮らしてる村があったのか、部屋の中をざっと見る感じ、そこまで潤っている生活では無いみたいだけど。

 

「他のみんなとは合流出来たの?」

 

「出来た。と、いっても船はまだ見つかってないがな」

 

 ……幹部のみんなはいるけれど、水夫のみなさんとは合流出来ていない感じか。エレカさんとの対決をする前後には見つけたいけれど、いや、今はいつなんだろう?

 

「ヴィレムさん。エレカさんとの対決は今から何時間後?」

 

「いやーそれなんだけどよ、もう来てんだよ」

 

 そのヴィレムさんの言葉に合わせたようにエレカさんが玄関の扉を開けて、部屋の中に入って来た。

 

「よお!ルーファス。てめぇが起きるまで待ってやったんだ。さぁ、勝負と行こうぜと言いたいとこだけどよ……その前に、ジジイが悪かったな」

 

 彼女は人に謝るような人物には見えなかったから、こんな風に謝られると、少し意外に感じてしまう。その表情も戦っている時のような気迫に迫ったものじゃなくて、バツが悪そうな、そんな顔だった。

 

「大丈夫。弱かった僕が悪いから。僕はもう大丈夫だから、勝負をやりましょう」

 

「そうこなくっちゃ、やりがいがねぇよなぁ!!」

 

 笑顔のような興奮し切った顔をしたエレカさんと外に出る。流石にこんな場所でするにはやりずらいし、村の近くにある大きな木から離れると、草原でエレカさんと相対する。

 

「僕は貴方という人間が知りたい。何故、こんなにも好戦的に人に挑むのかとか」

 

「シハハハハ、俺に勝ったら教えてやるよ!!!!」

 

 エレカさんの笑いは前よりも笑い声が増していて、気合いが大きく入っているように思えた。僕も気合いはいつも以上に万全。彼女に勝てなければどうせ、シキさんには勝てない。彼女に勝つしか無いんだ。

 

「そうですよね。僕も自分という人を貴方に知ってもらう為に戦いますよ」

 

「シハハハハ、俺にか?物珍しい野郎だぜ」

 

 僕とエレカさんは戦い始める。何故、彼女が戦い好きなのか、僕という人間を彼女に知ってもらうために。

 

 

★ ★ ★

 

 

 ルーファスが目覚める数時間前、シオン、ルッカ、アデルを背負ったり、引っ張ったりして、ヴィレムが村に着いてから、数時間経った頃、比較的元気だったカリーナが他のみんなを看病している中、回復したシオンはヴィレムに会っていた。

 

「貴方に聞きたいことがあります」

 

「なんだ?俺は忙しいんだけどな」

 

 落ち着いているシオンの神妙な表情にヴィレムは聞かれるであろうことを予測し、ニヤニヤと笑いながら、対応する。

 

「何故?私たちが戦って所をじっと見ていたんですか?仲間が戦っているにも関わらず。理解出来ません」

 

「いんや、ちゃんと、理由はあるんだぜ?俺は医者だ。医者が死んだら、元もこも無いだろ?それに……俺に勝てる見込みは無かった。それならば、見ている方がマシだと思ったまでよ」

 

 ヴィレムの言う事は筋が通っている。だが、シオンは納得し切れていなかった。ヴィレムの言うことが全部では無いように感じて。

 

「まっ。いつか、理解出来る日が来るだろうよ」

 

 あいも変わらず、のらりくらりとしながら、ヴィレムは離れて行く。そんなヴィレムをシオンはやはり、理解することが出来なかった。

 




 シキはもちろん三種類の覇気を持っています。
 エレカが戦闘狂だけじゃない面も見せていきます。

 映画に登場するI.QやS.I.Qはスマイルの能力者にも作用するだろうと思っています。

 
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