霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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語らいの回


世界の中心

 

 マリージョア付近で迎えに来てくれた海軍の中将さんについて行くように僕はみんなと一旦分かれるマリージョアの領土の中へと入っていく。分かれるときのみんなの顔は心配するようなもの、応援するようなものとかそれぞれだったから、それを真摯に受けて頑張っていこうと思う。

 

「これから、何処に向かうんですか?」

 

「……七武海が集合している場所だ。まだ全員揃っていないがな」

 

 七武海が揃っているんだ。今から考えるだけで空気が重い。七武海になるに当たって全員の情報は仕入れてきたけれど、調べれば調べるほど本当に協力出来るのか疑問が深まってきていた。そうして、室内へと入り、どんどん進んで行くと、一つの部屋へと案内される。

 

「ここで食事が行われている。戦に備えてお前も取っておけ」

 

 いささか海賊に対して高圧的な中将さんの言葉を受けて、呼吸を整えてから、扉を開ける。そこに広がる光景は圧倒されるものだった。七武海のドフラミンゴさん、ミホークさん、くまさん、モリアさん、黒ひげさん。錚々たる人たち5人が居た。食事はテーブルの上にいっぱいあるけれど、食べている人と食べていない人がいて、食べにくい。

 

「キシシシ、おい、ルーキー。てめぇにはこの席は重いんじゃねぇか?」

 

「フフフフ、麦わらにやられたお前よりは強いんじゃないか?」

 

「おい、二度と言うんじゃねぇぞ!!殺すぞ!!!」

 

 僕が何かを口にするよりも早く煽られ、ドフラミンゴさんがフォローしてくれた。うー、本当に胃が痛くなる。やっぱり僕にはこの人らみたいな威圧感は出せない。

 

「えと、新しく王下七武海を拝借しましたエルドリッチ・ルーファスです。皆さんの足元にも及ばない実力ですが、頑張っていくので、よろしくお願いします」

 

 海賊の集まりだから当然なんだけど、拍手はされる事なく、全員が僕の方を少し見るだけで終わった。こんな調子で戦争で死なないかが心配。

 

「ゼハハハハ、まぁ、新人同士仲良くしようじゃねぇか!こんな奴らに気後れしても仕方ねぇ!」

 

 口に食べ物を含みながら、僕に話しかけてくるのは黒ひげさん。一時は七武海の椅子を争って負けたけれど、今は二人ともが七武海になってるんだ。水に流して、仲良くしようかとは思ってる。食事中にあんまり喋らないで欲しいけれど。

 

「そうですね。ですが、みなさんの海賊経験は多いので、色々学ばさせてもらいます」

 

 身長も同じ人なのか?と思うぐらい離れているから、萎縮しがちでこの顔合わせ兼食事会は終わった。もう一人の七武海のハンコックさんはもう少し話せる人ならいいな。でも、遅刻ぎみな今の時点であまり期待はしていない。あと数日あまりここにいることになるけれど、やっていけるかな。

 

 

★ ★ ★

 

 

「さてと、私たちの戦争中の動向でも決めましょうか」

 

 ルーファスがマリージョアに入ってから数時間後、オエステアルマダ号の甲板の上では今、起きたばかりのマグメルが幹部、水夫を集めて作戦会議を初めていた。

 

「それって、ルーファスの指示なの?」

 

「いえ、ほとんど私の指示です。ルーには戦争に集中して下さいと事前に言ってあるので、言伝以外は私が考えました」

 

 エレカが来てから変わったものの、それまではマグメルが一番好戦的な人物であったため、はっきり言えば、全員少しのヤバさを感じとっていた。だが、この場ではマグメルが指示を出す役職であり、その下にカリーナ、他幹部、水夫という順位なので、殺されないとは確信出来ていても、何かを言える空気感ではなかった。

 

「なんでも良いから、言ってくれ」

 

「はい、じゃあ。とりあえずはルーの言伝からいきましょうか。ルーは僕も無理しないから、みんなも無理だけはしないでと言ってました。これについては私も賛成ですが、ルーだけが多くのことを経験するのは嫌です。私たちも色々しましょうよ」

 

 その後マグメルは方針を伝えた。この戦艦は正規の手続きを取った上で正義の門を抜けた先で戦争の警備をする。もちろん、白ひげ海賊団関係は無視し、本当に関係ない野次馬だけを追い出す役目だと言うことを説明して。

 

「これだったら万が一もありませんからね。あ、その時の指揮はカリーナに任せますから」

 

「え!?あ、あたし?マグメルがやってよ。ルーファスがいないんだったら、そうなるのが順当でしょ?」

 

「いやー私はちょっと用事があるので、無理なんですよね。この通り、お願いします」

 

 珍しくマグメルが頭を下げていることで、それ以上何も言えなくなったのか、カリーナはため息をつきながらも了承する。その光景を事情を知っているシオンとアデルは何とも言えない表情で見守る。

 

「伝えることはそれだけです!あと数日後に世界は変わります。それに置いていかれないようにしましょう。ルーを支える為にも」

 

 以上でマグメルの演説は終わった。終わったみれば、不安視していたようなことは言われずに各々安心していた。多くの者がマグメルの言葉にも説得力を感じたようで、気合いを入れてその任務へ意気込んでいた。

 それから、自室で計画書を書いているマグメルの所へシオンが来た。

 

「何しに来たんですか?シオンにはまた後日、言うつもりだったんですけど」

 

「それは分かっています。一つだけ確認したいことがあります」

 

「何?」

 

「今日伝えたことは全てマグメルさんの本心ですか?」

 

「うん、本心だよ。ルーだけが戦争でレベルアップするのは癪だし、私たちだけインペルダウンで経験するのも申し訳ないですから。それにやっぱりみんなでルーを支えたいですから、少しでも強くなれる可能性のある選択は取らないと」

 

 マグメルはシオンの質問に対して即答する。その目には一点の曇りも無く、ルーファス、この海賊団のことを思ってのことだと言うことは見れば確信できたことだった。そして、普段から強さを求めているマグメルが言うと説得力が違うなとシオンは実感する。

 

「……分かりました。マグメルさんが自分の思いを通す為では無いと確信出来ました。私も安心して貴方に命をかけれます」

 

「今まではかけて無かったってことですか?」

 

 マグメルの嫌味とも言える質問にシオンは無表情な顔を笑顔へと変えて部屋から去って行った。人に素直に好かれることに慣れていないマグメルは照れ臭くなったのか、そのまま布団の中に潜っていった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 ある海賊が侵入してくる前日。ポートガス・D・エースが収監されているインペルダウン。そのLEVEL5のとある牢にはある少年が寒さを感じていないように胡座をかいていた。

 

「…………」

 

「久しぶりの再会だな。気分はどうだユーシス君」

 

 その少年、ユーシスはインペルダウンにいる囚人がまずしないような穏やかな笑みを向けて、その人物、イナズマへと声をかける。

 

「こちらこそ、お久しぶりです。こんなみっともない姿で申し訳無いっすけど。ここに居たんですね」

 

「そうだ。提案だが、牢屋から出る気は無いか?あの人も歓迎するだろう」

 

 ユーシスは悔しそうに顔を背けた後、イナズマの方と目を合わせる。その目には寒さのあまり出はしないが、確かに涙を流しそうになっていた。

 

「今更……どんな顔して会えって言うんだよ。俺は親父に着いて革命軍を裏切ったんだ。何年も何年も過ごしてきた仲間と訣別したんだ。そんな俺を誘うのはやめてくれ。帰ってくれ」

 

 ぐちゃぐちゃの感情、頭の中でも何とか理由を出そうとするユーシス。言っていることは全て真実、しかし、それが本当に拒否する理由では無いことは等のユーシス本人が一番分かっていた。だからこそ、何とか自分の本心を口にしようとする。

 

「……ごめん、イナズマさん。こんなことを言ってるけど、本当は誘われて嬉しかった。でも、俺がこのまま革命軍に戻るのは違うと思うんだ。なんか、違うんだ。筋が通らない。だから、ごめん」

 

「……君が筋を気にする人間なのは分かっている。分かった。だが、君ならば、いつでも歓迎するとは言っておこう」

 

 そのままイナズマは吹雪の中、森の方へと向かっていく。その背中を見て、ユーシスは自分のどうしようも無い性格に申し訳無く思うも、これで良かったのだと後悔はしなかった。そして、自分の新しい人生があったなら、何をしたいかを考えながら、ユーシスは目を閉じた。

 

 

★ ★ ★

 

 

 ポートガス・D・エースの処刑まで残り数時間。僕はこの中々にストレスの強かった生活がやっと終わり、戦争が起こる時間になるのだと慌ただしく動く海兵さん達を見て何となく実感する。つい数日前までは大物海賊の人たちに囲まれてストレスしか感じなかった。でも、やっと始まるんだ。僕にとって人生初めての大舞台が。世界中の何処よりも今、ここ以上に注目されている場所は無い。だからこそ、僕は夢を欲望を叶えたくなる。

 でも、駄目だ。ここで死んだって、単に七武海の一人が死亡として新聞に数日載るだけ。そんなの誰の記憶にも残らない。メインは白ひげと海軍なんだから。そんな決心を固め、やっとマリンフォードで配置につこうとしている僕の前で、何処か別の場所に行こうとしている黒ひげさんを見つけた。

 

「どうしたんですか、こんなところで。もうすぐ、戦争が始まりますけど」

 

「ゼハハハハ、見つかっちまったか。おれぁ、夢を取りに行くんだ。おめぇも持ってるだろ?夢」

 

「ええ、夢は持っています。誰かに言えるような物では無いけれど」

 

 その時の黒ひげさんは不気味だった。ミホークさんに挑んだ時の僕のように夢に囚われている感じ。まるで、夢見たことが叶いそうな少年みたいに純粋な顔だった。

 

「夢見られれば充分だ。おめぇもどうだ。取りに行くか?おれぁの夢を」

 

「やめておきます。僕の夢は黒ひげさんの夢とは相容れないと思うから」

 

「ゼハハハハ、そうか。お互い叶うと良いな、夢がよ!!」

 

 そのまま僕と黒ひげさんは真逆の方向に歩いて行く。黒ひげさんが何か良くないことを企んでいることは分かっていた。だけど、夢を追う海賊を止めるなんて、同じ海賊として無粋だと思ってしまったんだ。それに、僕の夢よりはよっぽど海賊らしい夢だろうから。でも、もし、僕の夢のいく先で黒ひげさんが立ちはだかるというならば、僕は全力を持って叩き潰す。それくらいの覚悟ぐらい、僕は自分の夢に持っている。

 もうすぐ、戦いが始まる。

 




次回から頂上戦争開始です。
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