霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。 作:地支 辰巳
何処かボロボロなインペルダウンを歩くマグメル、シオン、アデル。真面目に階段を目指していた三人だったが、段々と進むごとに違和感に気づき始める。
「ねぇ、ここも囚人が居るフロアなんだよね? 囚人がほとんど居ないんどけど」
「ええ、おかしいですね。檻にいるのは腑抜けた面の囚人ばかり、それに数も少ない。何かあったとしか思えませんね」
「白ひげの仲間が監獄にいる段階で火拳のエースを奪還しようとして、失敗した結果では?」
「ありえますね。それだったら、より好都合です。混乱に乗ずることが出来ますから」
マグメルは嬉々とした表情を見せると、二人を自身の側に寄せる。そのまま、獣型へと変身すると、床へと手をつける。
「核っていうものを最近分かるようになってきたんです」
「竜爪拳 竜の息吹き!!」
マグメルが地面に力を込めると同時にいとも簡単に床が崩れていく。いきなり崩れたことで、次のフロアへと落ちた三人だったが、そのフロアもLevel1と変わらない殺風景なフロアで、ここでもマグメルは同じ技をし、このフロアも壊す。
次のフロアはこれまでのフロアと違い、辺り一面が砂漠になっており、落ちた瞬間に三人も体に確かに乾きを感じた。
「暑ーい。いきなり難易度変わり過ぎじゃない?」
「同じようなものばかりだと囚人も慣れますから、その対策ですね。このフロアは砂が邪魔で、上手く壊せないので、大人しく階段を探しますか」
三人は汗をダラダラとかきながらも、階段を探すべく動き続ける。何かを考える余裕も無く、会話も少なくなりながらも進む三人は数分かけて階段をやっと発見する。
「この下も凄い熱さのようです。気をつけて方がいいと思います」
「熱さだろうが、寒さだろうが、ここは地獄です。そんなことは織り込み済みですよ」
虚勢でもなんでも無く、気合いがたっぷりなマグメルは臆すること無く進み続ける。そこまでして追い求めるユーシスを選んだのはただの直感にも関わらず。
そして階段を降り、灼熱に燃え上がる光景を目に入れながらも進む三人の前には囚人服でも看守の制服でも無い男が五人と看守の格好をした男が一人会話していた。
「おい、こいつらもお前の連れか?」
気配から強者だと感じ取ったシオンの目配せにより、適度な距離を保ったマグメル達に対し、看守の制服を着た男、雨のシリュウはめざとく気づく。
「ゼハハハハ、いや。だが、知ってる顔だ。おめぇはルーファスとこの右腕だろ? おめぇらのとこの頭は戦争中だってのに、何してやがんだ?」
「それはこちらの台詞ですよ。貴方こそ戦争に参加せずにこんな場所で何をしてるんですか?」
お互いに正体に気づいているマグメルとマーシャル・D・ティーチ。通称黒ひげは睨み合う。懸賞金だけで判断せず、決して、相手が格下であると侮ることは無く。
「復活の祝いの肩慣らしといこうじゃねぇか!! ゼハハハハ」
「闇穴道」
石で出来た通路に広がる闇。急激な速度で迫ってくるそれにマグメルは本能的な危険を感じ、人獣型に変身し、空を飛ぶ、それに倣うようにシオンもアデルを乗せて空を飛ぶ。相手が動物系の能力者ならば、マグメルも嬉々として挑んでいけただろう。しかし、黒ひげの得体の知れない何かと能力を感じ取ると、不用意に行動は出来なかった。
「ウィッハハハァ!! やってもいいんだよな船長!」
「構わねえ。どうせ本気でやるつもりはねぇんだ」
当たらなかった闇が引いていったところで、黒ひげ海賊団一の怪力自慢が飛んでいるマグメルの所までその脚力を使いジャンプしてくる。
「パワーエルボー!」
「マグー姐、こいつは私が相手するから、あいつを!」
マグメルの元へ飛んできたエルボーを防ぐように増やした警棒を持つアデル。そんなアデルの実力と相手の実力を瞬時に分析したマグメルはアデルに任せる。
「任せましたアデル! 死ななければ何にしても構いません。私はこいつを」
武装色を手に纏い、闇を手に纏った黒ひげとマグメルの人獣型の拳が激突する。全力のパンチのはずなのに狙いが定まっていない感覚に陥るマグメルは本能的に離れる。
「仲良くしようぜ、おい。俺らの目的は違う、そうだろ?」
「多分、そうですね。でも、七武海として呼ばれていたのに今、ここにいる貴方のように、約束を破る人を私は大っ嫌いです。だから、殴ります」
マグメルの自分本位な喧嘩の理由に対しても、黒ひげは面白いというように笑う。マグメルのことを面白い相手と思っているからこそ、黒ひげはヴァン・オーガーとドクQに最低限度しか援護をさせていなかった。
「看守が何故、海賊の味方などしているのですか?」
「ここの看守をしていても未来はないからな。未来のある男に着いていったまでだ」
黒ひげ海賊団へと裏切ったシリュウと交戦しているシオンはシリュウのその不義理さに気分を害していた。ここがどんな労働環境かは定かに無いにしろ、自身がいた場所の壊滅に手を貸すことを許すことが出来なかった。
「しかも、強い」
「これでも、手を抜いてやってるんだぜ?」
シリュウの抜刀術と力をかかった大振りにより、シオンは三つ目を隠す余裕も無いほどに押されており、やられるかもしれないという恐怖をこの海賊人生で初めて感じとっていた。
「お前、三つ目だな。噂では開眼すれば、歴史の本文を読めるらしいが、本当か?」
「読んだこともありませんし、そんな歴史になんて興味もありません。私の命は全て兄様と兄さんの為にあるんですから」
人獣型に変身し、その乱撃のスピードに磨きがかかったシオンはシリュウの刀についていくことが出来ていた。どれだけ早くなっても、動物系の特性により、疲れを知らないシオンにシリュウはほんの一瞬本気でガードをしてしまっていた。
「ウィッハハハァ!! 珍しい能力を持ってやがんな。だが、そんなちんけな能力でこの俺様に勝てんのか?!」
「一辺倒な戦い方しか知らない人とは違うよ。私には手数があるから」
力任せな攻撃でアデルに大ダメージを与えようとするバージェスだったが、そんな攻撃を辺りにあるものや、自身の持ち物を増やして、アデルはギリギリで回避していた。
「大きな図体で、単純な攻撃ばっきり頭まで筋肉なの?」
「煽るんじゃねぇ!」
お互いに決め手に欠けたまま戦いは泥沼化していくことになる。この場では時間稼ぎこそが最良だと知って知らずか。
★ ★ ★
落ちてきた軍艦から出て来たのは僕ですら見たことある人ばかりだった。ガスパーデのところで会ったことのある麦わらのルフィさんや僕が後釜に座った海峡のジンベエさんやクロコダイルさんなど、錚々たるメンツだった。天竜人を殴ったらしいルフィさんがここにいるのも驚きだけど、あの囚人服やメンツからインペルダウンから脱獄してきたのは明白だった。
「僕らの世代のロジャーは彼かな」
聞いた話だと彼はエニエスロビーにも攻め込んだらしく。そして、今回のインペルダウンにここ、マリンフォード。同じ時期にシャボンディ諸島に乗り込んだ超新星だけど、頂点に立てる器というのは彼のようなことを言うかもしれない。羨ましいな。
「やはり貴様はそっちに着くのかジンベエ!」
「そうじゃ、わしの代わりもいる。問題ないじゃろ!」
何と無く心の痛い問答を聞きつつも、ルフィさんの方を改めて見ると、あの白ひげさんとタイマンで話していた。やっぱり、彼は他の人とは違うのかもしれない。
「でも、霧だって展開してる。僕にも勝ち目はある」
「霧細工 賤ヶ岳」
七本の大きな槍をルフィさんに向かって放つ。そこまで大きく距離は離れていないから、当たると思ったんだけど、隣のデカい顔の人のウィンクに何本か消され、当の本人にも避けられて掠っただけだった。
「革命家ドラゴンの実の息子だ!」
次の攻撃へと移ろうとしたところへ、センゴクさんからまたも衝撃な告白があった。あの革命家ドラゴンの息子なんだとしたら、このカリスマ性というか、雰囲気も頷けるものがある。
「フフフフ、そろそろ前に出てやるか」
「そうですね。勢いが凄いですから」
ルフィさんが来たことで、勢い付いて来た敵軍を全員止める為、七武海のみなさんがどんどんと前に出ているので、僕もそれに続くように前に出ていく。そんな風に七武海の皆さんですらどんどん交戦していく中、僕も白ひげ海賊団の傘下の人たちだけでは無く、白ひげ海賊団の人たちとも交戦していた。はっきり言って、傘下の人たちと白ひげ海賊団本隊の人たちでは実力で分かる程度の差があって、本隊の人たちは僕よりも強い見聞色や武装色を持っていたけれど、何とか見聞色の霧でアドバンテージを取れて、勝利は出来ていた。
「待ちくたびれたぜ。やっと出番だ!!」
そんな戦いが硬直化しようとしようとしてきた頃、くまさんと同じ体、同じ顔をしたパシフィスタという人たちを連れて、まさかりを持った人が敵軍を挟み込むように現れた。どういう技術かは分からないけれど、これは凄い技術なんだということは分かる。
「後方の敵に構うな野郎共ォ! 一気に広場へ攻め込むぞォーーっ!」
それを受けた白ひげさんの号令を合図とするようにどんどんと流れ込んでくる白ひげ海賊団の人たち。それに続くようにルフィさん含めた合流組も流れ込んでくる。そんな人たちを迎え撃つように僕も動くけれど、そんな僕の前に明確に立ちはだかる人が居た。
「七武海。止めさせてもらう!」
「白ひげ海賊団の人ですね。誰ですか」
「16番隊隊長、イゾウだ!」
「僕はミスト海賊団艦長。エルドリッチ・ルーファスです。いざ、勝負です」
腰に刀を携えながらも、二丁拳銃を使って攻撃してくるイゾウさんの銃弾を何とか避けたり、弾いたりする。流石、白ひげ海賊団の隊長。他のその辺にいる海賊とは実力や気迫が大違いだ。
「全力で来てください」
「今は戦争中、いつだって死ぬ気だ」
彼の二丁拳銃。軌道が大体分かる。多分、それは二丁拳銃を使うマグーと戦っている経験のおかげに他ならないとは思う。それが無かったら、今頃、僕は彼に対して渡り合えていないと思う。
「隊長ぐらい、一人倒さなきゃ。いる意味なんて無い」
「霧隠れ 黄霧──」
僕が自身の本気で挑もうと思った時。それは色んな人の大声が聞こえ、白ひげさんがまさに傘下として名乗りを上げていた一人に刺されるまさにその時だった。