霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 頂上戦争編ももうすぐ終わります。


 丹砂さん シャム猫白黒さん誤字報告ありがとうございます!


思いを貫いていくということ

 

 気持ち悪い感覚。また、自分の体がバラバラになくなってしまうようなそんな感覚。ここが何処かも分からない中、僕は三人の人に見られていた。誰かも分からない。だけど、一人は確かに最近僕の周りにいてくれたようなそんな人だったと思う。

 そんな夢なのかどうなのか分からない場所から僕は強烈な覇気を受けて、目を覚ます。状況を確認するために周りを見渡し、覇気を放った人物が誰か理解する。

 

「……麦わらの……ルフィさん」

 

 ああ、僕の心が折れた音がした。そんな幻聴が聞こえてくるほど、僕には嫌な現実しか襲ってきていなかった。現四皇に全く手も足も出ずに破れ去る自分。自分の兄だと言っている火拳のエースさんを助けにマリンフォードまで乗り込んで来る同世代のルーキーで、覇王色を持っているルフィさん。

 

「勝てるわけなんて無いじゃないですか」

 

 彼を超えて、語り継がれるような死に方なんて出来る気がしなかった。まるで、物語の中の主人公。僕はもうこれ以上、自分の足で進めない。

 

『このマフィアを潰して私と一緒に生きてくれませんか?』

 

『じゃあ改めて、これからよろしくお願いしますねルー。明日から私たちの人生は変わるんです』

 

 違う、違うんだ。僕がここで止まってどうする。僕の第二の人生はマグーと共に生まれたんだ。ここで、僕が止まる訳にはいかない。マグーがいる限り、僕は止まってはいけないんだ。

 

「僕は、僕は、止まれない。いや、止まらない」

 

 勢いよく立ち上がって、多くの味方を引き連れ、エースさんの処刑台に向かってくるルフィさんの元に向かう。狙いを定め、勢いよく、刀を振るう。

 

「お前の相手は俺だ。エルドリッチ・ルーファス」

 

「お久しぶりです。ダズさん。僕はあの時よりも強いですよ?」

 

 僕の一撃を腕で受け止めたのはもう何年も前に会った殺し屋のダズさん。こんなところで会うことになるとは思わなかったんだけど、前回も勝てたんだ、今回も負ける道理は無い。

 

「社長命令だ。足止めだ」

 

「居合い 雷鳥一閃・改!!」

 

 僕の刀は鉄の体を持つダズさんを容易く切り裂く。血を出し、倒れさるダズさん。でも、その間にルフィさんは多くの海兵を超え、自身の祖父さえ超え、ついに処刑台に降り立った。

 そして、センゴク元帥をも退け、彼はエースさんと共にこの広場に戻ってきた。もう、負けかな。火拳のエースさんを奪還されて時点で海軍の負けは濃厚。後は消化戦になる。

 

「ふぅ」

 

「フフフフ、どうした? やんないのか?」

 

「もう敗北です。エースさんを奪還された時点で白ひげさんは全力で逃がそうとするでしょうし」

 

「そうだな。その方が面白ぇ」

 

 僕の予感通り、白ひげさんは自分の命を全て使ってでもエースさんを逃がすつもりのようだった。これは正しい。だけど、何を思ったのか、エースさんは赤犬さんへと挑んでいく。無茶だ。こんなタイミングで挑むにはあまりにも強敵すぎる。

 

「なんで……そんな事を」

 

 そして、火拳のエースさんは麦わらのルフィさんを庇って、死んだ。倒れさるエースさん、泣き叫ぶルフィさん。何というか、見ていても心が痛くなってくる。一時、この戦争の場が全て止まる。敵味方問わず、この事態に対応出来ていなかったんだろう。

 そんな中でも、赤犬さんはルフィさんを倒すべくジンベイさんや白ひげさんと交戦しながらも追い続ける。彼は何処までも海軍らしい人だ。僕にはその信念を貫き通す彼を羨ましく思える。

 

 

★ ★ ★

 

 

 インペルダウンLevel3。Level5から上がってきたマグメル一行はLevel1から開いた穴の元へと近づいていたのだが、その穴の周辺には既に獄卒獣と呼ばれる看守達が集まっていた。

 

「何このー牛とサイみたいな奴って」

 

「こいつらは獄卒獣だ。インペルダウンの中でも危険な奴らだぞ」

 

 ユーシスが警戒を促す中、マグメルとシオンは呆然と立ち尽くしていた。あの獄卒獣達に何か思うことがある。いや、それよりも感じざるを得なかったというような様子だった。

 

「嫌です。貴方達みたいになるなんて」

 

「はい。私はそんな精神じゃありません」

 

「二人とも何言ってるのー?」

 

「さぁ、よく分からないな」

 

 自分たちが動物系ということで、獄卒獣達がどういう存在なのか薄々分かった二人は覚悟と自分たちの戒めとしていつも以上に攻撃的な構えを取っていく。

 

「生半可な攻撃じゃ倒せないぞ」

 

「分かってます。私とユーシスの二人の一撃でやればいいだけです」

 

 何故か歩き方すら上手くなっていないベレットは論外として、アデルやシオンの攻撃は手数に頼り切って力には欠ける。消去法として、マグメルとユーシスしか対抗する人間が居なかった。

 

「魚人空手 五千枚瓦正拳!!」

 

「俺も習ってたんだよな」

 

「魚人空手 三千枚瓦正拳!!」

 

 マグメルとユーシスの同時攻撃が2体同時に当たる。しっかりと鳩尾に入った二人の攻撃で2体の獄卒獣の壁に叩きつけられる。しかし、そんなダメージが入ったにも関わらず、2体の獄卒獣は何も問題が無いようにアホみたいな面のまま立ち上がってくる。

 

「やはり、倒し切るのは無理そうですね」

 

「どうしますか、マグメルさん」

 

「……ここはアレしか無いんじゃないー? 私たちの海賊団の十八番で」

 

「良いアイデアですアデル、逃げましょう!!」

 

 素早く獣型になったマグメルとシオンに三人は乗ると、獄卒獣が攻撃を出す前にとっとと、穴からLevel2へと行き、そのままLevel1へと着く。

 

「まっ、ザッとこんなもんですね」

 

 獄卒獣を振り切り、Level1へと降り立った5人は周りを見渡し、辺りに誰も居ないことにほっとすると休憩がてら座り込む。

 

「いやー疲れましたね」

 

「そうですね。しかし、早く戻るべきです。兄様が待っているかもしれません」

 

「そんな早く終わりませんよ、多分。でも、船に戻りはしますか」

 

 休憩を監獄の中とは言え、おこなった5人はそのまま出口へと歩いて行く。しっかりと任務を達成したマグメル。ルーファスのことも船のみんなも心配していないマグメルは上手くいっている今の状況に満足し、意識しなくても笑みを浮かべてしまっていた。

 

 

★ ★ ★

 

 

「誰も! こねぇ! じゃねぇかよ!!!」

 

「おいおい、怒り立つなよ。疲れるだけだぜ?」

 

「関係ねぇよ。俺がこんなのんびりしてる間にもあいつらは戦ってんだ。腹立たしくて仕方がねぇよ」

 

 自分が先頭に立って闘いたくて、船に残ったエレカ。そんな打算的な考えで船に残ったエレカの思いとは裏腹に海軍の船が不自然に通った以外マリンフォードへ向かう船は無かった。

 

「逆に誰が来ると思ったんだ? 俺はこの船が危険にならなきゃそれでいい」

 

「うるせーよルッカ。あれだ、あれ。カイドウとか好戦的だろ。来るかもしれねぇじゃねぇか」

 

 四皇がわざわざ自身の島を放って、海軍本部に来るなんて荒唐無稽な話、誰もそんな訳が無いと思っていたが、カイドウはそんなことを実行しようとするほどのイカれた人物ではあった。

 

「四皇って言ったら、ビッグマム、カイドウ、白ひげ、赤髪。この四人がバランスを保って新世界を支配してるんだぜ? 分かってるか? 早々の事態じゃなければ動かない」

 

「チッ、しょーもねぇやつらだぜ。だったら、俺もう寝るわ。何かあったら言ってくれよ」

 

 一気に興味が失せたのかエレカは甲板に寝転んだ寝ようとする。しかし、悪寒のようなものを瞬間的に感じたエレカは辺りを見回し、警戒する。

 

「突然、何やってのエレカ。……何かいた?」

 

「……ああ。何かが来てやがる。警戒を解くんじゃねぇぞ。油断したら、死ぬぞ」

 

 エレカの警戒通り、どこからともなく海軍本部へと向かう海賊船が現れる。その船はどんな田舎の海でもその船の正体に気づいてしまうほど、有名な船。赤髪海賊団のレッド・フォース号。

 

「おいおい、こいつらが何やってるんだ。こんなところで」

 

「赤髪海賊団の船か。逃げるか?」

 

「ハッ、馬鹿なこと言うんじゃねぇ。ここで逃げたら、意味ねぇじゃねぇか」

 

 エレカが汗が流れ落ちるのも気にすることなく、赤髪海賊団から目を離さずに見る。そんな赤髪海賊団の船の甲板には大頭のシャンクスが立っていた。

 

「おい、お前ら。そこをどいちゃくれねぇか。急いでるんだ」

 

 赤髪のいきなり攻撃してくることは無いその紳士的な態度にエレカの以外の人間は交戦していく必要のなさを悟り、武装を解いていく。しかし、エレカのみはそんなことをすることなく、逆に一層強く刀を握り込む。

 

「てめぇらよ。ここを守れって言われたんだろ? 七武海の船員がそんなじゃだめじゃねぇか?」

 

「だが、相手は四皇。艦長も副艦長もいねぇうちには無理だ」

 

 ヴィレムの意見に一定の同意は示したエレカだったものの、そんなことは関係無いといういうように舌打ちをしながら前に出る。

 

「ベック。押し通るぞ」

 

「あいよ」

 

 段々と接近してくるレッド・フォース号にオエステアルマダ号は動く気配は無く、船首に1人立ったエレカは構えを取る。

 

獅子鳳凰刃(ししほうおうじん)!!!」

 

 エレカの二刀から繰り出される覇王色を纏った横一線の斬撃がシャンクスを中心に襲ってくるが、その本人は全く動じる事無く、自身の得物であるサーベルを少し振るい、その攻撃を被害の無いように逸らす。

 

「急いでるんだ。手加減は出きんぞ!」

 

 攻撃を逸らした後、直ぐにシャンクスは空を駆け、エレカの目の前まで来て、覇王色を纏った一撃を振るう。ギリギリで刀を合わせてガードするものの、その攻撃はそんな刀すら無かったようにエレカの体に大きくダメージを与え、その体を海面へと叩きつける。

 

「すまんな。行って良いか?」

 

 その軽快な言葉と口調とは違い、シャンクスからは断るのを許さないような、断ると容赦の無いようなそんな予感が躊躇さえ無いように全員の神経全てに響いた。

 

「勝手に行ってくれ。俺はあいつを引き上げなきゃいけないからな」

 

「あたしも構いませんよ」

 

「とっとと、行ってくれよ。こっちだって、忙しいんだしよ」

 

 幹部達が間髪を容れずに否定したことで、赤髪海賊団は急いだことも相まって、船を離し、マリフォードに向かってどんどんと進んで行く。

 

「……獅子海竜刃(ししかいりゅうじん)!!」

 

 しかし、動け始めたレッド・フォース号に海から海流と共に斬撃が飛んできて、船の一部を欠けさせる。

 

「……どうする」

 

「放っておこう。これ以上も何も出来ない」

 

 シャンクスの予見の通り、それ以上は何も来ずにシャンクス達はマリンフォードへと進んで行った。そして、斬撃が飛んできた辺りに縄が投げられ、エレカは無事に回収される。

 

「シハハハハ、やっぱ四皇って別もんだな」

 

「お前自身がボロボロじゃ笑えねぇよ」

 

 誰が見ても、ボロボロで血だらけなエレカは一撃だけしか受けていないとは思えないほどの傷だった。それをヴィレムが治していたが、ヴィレムの見立てでは一週間以上は安静が必要なようだった。

 

「やっぱ、海に出て来て良かったぜ。自分を実感出来るぜ」

 

「シハハハハ」

 

 エレカは笑う。狂ったように笑う。それは自分の力不足を実感したからか、自分という人間の目標、いや、自分が殺すべき相手を見つけたからだった。

 




 エレカとシャンクスとの闘いはもう少し多くする予定でしたが、シャンクスの強さを再認識したので、パッと終わらせています。
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