霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。 作:地支 辰巳
むいんたゃんさん誤字報告ありがとうございます!
「何ですかこれ? 何があったんですか?」
マグメル達が降り立ち、戻った戦艦の上には目立つように傷だらけでボロボロのエレカが大の字で寝転がっていた。側にはヴィレムやルッカ、カリーナが集まっており、ルーファスやマグメルが帰ってくるのを長い首で待っていたように見えた。
「自業自得だけどね」
「本当にな。まっ、喧嘩を売る相手が悪かったな」
「シハハハハ、うるせぇ。赤髪のシャンクス。絶対に殺してやる」
既に出来事を把握している面々は呆れているようだったが、その負った傷により、動くことすらままならないエレカはその目は決して闘志を忘れるようなことはしなかった。自身がそいつを殺すまでは死ぬことは出来ないというように。
「何があったか説明を」
「赤髪のシャンクスが来たんだ。四皇のな」
説明する気の無いというよりも呆れているようなカリーナとヴィレムに代わり、未だに落ち着いた態度を崩さないルッカがこれまであったことを説明していく。
「ここを守るように頼んだのは私ですし、エレカを置いていったのも私です。赤髪が来たとはいえ、責任は私が取りますし、ルーにも私から言っておきます」
「それは嬉しいじゃねぇか。どうせ、怒られるのは俺だったからな」
「うしし、少しは反省したらどうですか?」
「やなこった。こうすることでしか、俺は俺でいらねぇからよ」
全く反省する気の無いエレカ。しかし、彼女は赤髪のシャンクスという巨大な敵、四皇を殺すという新しい目標を見つけることが出来た。それが終わるまでは死なない。彼女は一段と生き続けることを誓った。
「それで、そいつらが求めたものか?」
「概ね合ってますね。一人は成り行きですけど」
成り行きと呼ばれた一人の女性は戸惑ったようなような態度を取りながら、集まっている面々に向かって改めて挨拶をする。
「え、えと。俺? 私? プリンス・ベレットです。何か、色々とどうでも良くなったので、成り行きで来ました。何でもする気っす」
訳があり、口調が定まっていないベレットであったものの、きちんと挨拶をしていく。その丁寧な姿勢や改まった言葉使いから、マグメルを始めとした面々は彼女が良い家の出であることは察する。
「彼女を戦闘用員にするつもりはないので、そうですね……給仕係と料理係やってもらいましょうか。いつまでも料理関係をルーに任せるわけにはいきませんからね」
この船では結成当時からルーファスが料理のほとんどをしており、水夫が増え、人数の多くなった今でさえ、カリーナやシオンなどが手伝っていたものの根本的な料理担当は変わっていなかった。
「いや、お、わ、私。料理なんか出来ない」
「私が教えてあげますから、安心して下さいよ」
マグメルが笑顔で教えるというものの、マグメルはよく分からない隠し味が多く、全く持って教えるのには適していない。それを分かってる他の面々は厨房に連れて行こうとするマグメルを止めて、ユーシスに関する紹介を促す。
「そういえば、こっちの紹介がまだでしたね。ユーシスです」
「ユーシスだ。FNは言いたくないから言わない。俺は俺の目的の為にこの船に乗った。それは理解しておいてくれ。よろしくな」
ミスト海賊団の人と仲良くしたいのか、したくないのか本人ですら分かっていないかのような自己紹介。しかし、そのユーシスの顔には後悔という表情は一つも無かった。そして、どう対応すればいいのか分からない自己紹介に全員が困ったが、そこに寝転びぱなしのエレカの高笑いが響く。
「シハハハハ、それでいいじゃねぇか。全うに忠誠を誓う必要なんてねぇよ。ぼちぼち仲良くやろうぜ。お前だって強いんだからよ」
「ああ、好意的に受け止めさせてもらうよ」
他の人には出来ないような受け入れ方をするエレカに対しても動じずに感謝を申すユーシス。その全員を合わせた上でも上位の強さを持ち合わせているユーシスをエレカは一目見たときから気に入っていた。
「じゃあ、ユーシスは第七席ですかね。……遊撃隊長とかでいいですか?」
「いえ。それは兄様が決まるべきです。兄様がいないところで勝手に決めるべきではありません」
とんとん拍子で話が進んでいく中、ルーファスのことをマグメルと変わらない感情を向けているシオンはマグメルのその提案に待ったをかける。その瞳は本気であり、他の人間は声も出すことを許されなかった。
「うっ、まぁそうですね。一応、ルーも同じ事を言うとは思いますけれど。改めてユーシスには言います」
「それでいい。肩書きなんてものは気にしたくないからな」
肩書きというものに何か思うところがあるのか、ユーシスは遠くを眺め、後悔するような、何かを思い出すようなそんな悲観的な表情を取っていた。
「とにかく、これからどうするんだ?」
「お祝いの準備をしましょうか。……私は迎えに行ってきますよ」
水夫、幹部合わせて全員に命令するとマグメルは獣形に変身し、空を飛び、マリンフォードに向って行った。もう今更なのか、他の面々はその行動に言及することは無かった。
「料理作りに行きます」
「私、教えに行ってくるねー」
「私も行きます。貴方は料理出来ませんから」
穏やかで和やかな雰囲気が漂う船の上。そこはマリンフォードを中心として起こっている世界を揺るがす騒動に比べて、幾分か静かな場所だった。
★ ★ ★
エースさんが死んだことで白ひげ海賊団のみなさんはもうここにいる意味を失った。それを白ひげさんも分かっているのか、ルフィさんも含めた味方全員を逃がすため、海軍全員を前に立つ。この戦争中、僕は白ひげさんの姿ばかりを見てきた。彼のような素晴らしい大海賊に僕もなれたら。
「ゼハハハハハハ。久しいな。死に目に会えそうでよかったぜオヤジィ!!」
そこにはあの時自分の目的の為に何処かに消えた黒ひげさんが明らかに強そうな仲間たちを連れて往々と立っていた。何故、あの人がここに来たかなんて分からない。でも、彼が現われたことで、時代が大きく変わっていくようなそんな胸騒ぎのような嫌な感覚がしてたまらない。
「おい、ルーファス。お前、この戦争が終わったらどうする気だ?」
この状況になって唐突にドフラミンゴさんが僕に問いをかけてくる。こんな状況を一番を一番楽しんでいそうなのにどうしたんだろう。いや、これからの時代が変わることを察したからこそ、聞いてきているんだ。
「僕は……四皇になりますよ。僕の生涯の目的にも繋がりますから」
「フフフフフ、おもしれぇ。新世界に来たら、俺の島まで来い。拠点として貸してやるよ」
何故ドフラミンゴさんがそんなことをしてくれるのかは分からないけれど、新世界では四皇に潰されるか、四皇の傘下に入るしか生きれないとは聞く。僕らが生き残る確率を少しでも上げる為にはお言葉に甘えた方がいいのかもしれない。
「分かりました」
僕らの話が終わったら頃、白ひげさんという伝説は黒ひげさんによって倒されそうになっていた。その光景は無残なものだったけれど、白ひげさんを倒すにはここまでしなければならないとならないんだろうな。
「
白ひげさんはその言葉を残して立ったまま死んでいった。僕が白ひげさんのことを知ったのはこの戦争が初めてだ。でも、僕は確かにその生き様、死に様に感動した。彼のようになりたいとも思えた。不謹慎かもしれないけれど、僕はその意味ではこの戦争に参加出来て感謝している。
「貴方は確かに今の時代の主役でした」
黒ひげさんは黒い布の中に白ひげさんとともに入り、何かをしているようだった。そして、海軍の人たちは白ひげさん、エースさんが死んだにも関わらず、海賊を皆殺しにする勢いで迫っていた。僕はこの気持ちのままこれ以上、戦う気にはなれなかった。
「ゼハハハハハ……そう、ここから先は俺の時代だ!!!」
何故か黒い布から出てきた黒ひげさんがグラグラの実の能力を使った。何をどうしたのかは分からないけれど、確かに黒ひげさんは能力を使った。そんな黒ひげさんをセンゴクさんは攻撃したけれど、時代の流れはどうしても黒ひげさんに向かって行った。
「命がもったいない!!!」
シャボンディ諸島にもいたローさんがルフィさんを救いに現われた。そんなに親しかったのは意外だけど、それとは別にある海兵が赤犬さんの前に立ち塞がった。その海兵の人が言うことはもっともだし、海兵の形としては素晴らしい。だけど、相手が赤犬さんでは死ぬかもしれない。
その時、四皇赤髪のシャンクスさんがその海兵の前で赤犬さんの攻撃を受け止めた。なんでまた大物がこんな所にいるんだろう。新世界に拠点を構えているはずなのに、ここまで来たんだ。自身には関係無い戦争なのにここまで来るなんて、シャンクスさんは他の海賊の人たちとは違うのかもしれない。
「この戦争を終わらせにきた!!」
シャンクスさんの登場によって戦争は終わりを迎えるような空気になった。この人が登場しただけでここまで戦争の行く末が変わるなんて。新世界に行っても会いたくは無い。そして、シャンクスさんによってエースさん、白ひげさんが弔われることになった。
「戦争は……終わりだ!!」
そのセンゴクさんの言葉によって戦争は終わりを告げた。これによって僕の役目は終わった。この戦争は僕に色々なものを教えてくれた。この戦争でも生き残った同期、本当の海賊の格を教えてくれた白ひげさん、意思を貫き通すことを教えてくれた赤犬さん。この戦争に参加出来て良かった。僕は……ここから四皇を目指す。僕が有名になって死ぬ為にもそれは絶対だと思う。それに、白ひげさんのように成りたいとも僕は思ってしまったんだ。
帰ろう。マグーと仲間たちのいる船へ。そういえば、こんなにもあの船やみんなのことがすごく恋しい感覚になったのは初めてかもしれない。僕が居なくてもこの戦争の結果も経過も変わらなかったかもしれない。でも、僕はここにいた。ここまでこれたんだ。
後、日記形式のものと設定集3でこの章は終わりです