霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 少しづつ進んでいきます。


命をかけなければならない戦い

 

 ホールケーキアイランドの中心へと全力で走っていくルーファス、マグメル、ルッカ、エレカの四人。途中、途中に雑兵によって道を阻まれるも、その気迫と実力で薙ぎ倒していく。そして、城の入り口へと差し掛かろうとしたところ、四人の前にキャンディの壁がそり立つ。

 

「邪魔なんだよ!!」

 

 武装色を纏った二刀をエレカが振るうも、その刃とキャンディの壁がぶつかる時、金属音と共に刀の方が弾かれる。そのまま、キャンディの壁の上から長男であるシャーロット・ペロスペローが現れる。

 

「ペロリン。てめぇらごとき弱小海賊が本気でやれると思ってるのか? あきらめてとっとと帰りな」

 

「おい! ルーファス。こいつは俺に任せて先に行け。この飴野郎を切ってやりたくなった」

 

「うん。くれぐれも暴れすぎないようにね」

 

 エレカにペロスペローの相手を任せて、また三人は城の方へと向かっていく。その背を全く見る事無く、エレカはペロスペローの方をじっくり眺めて、値踏みする。

 

「ハッ! そこそこの実力ってとこか? 俺に切られることを光栄に思うんだな。懸賞金7億の野郎がよ!」

 

「金獅子の小娘がナメ過ぎなんだよ」

 

「クソジジイのことを一々言うんじゃねぇよ!」

 

 エレカは覇王色を撒き散らしながら、ペロスペローに斬りかかる。この覇王色を始めとした二人の戦闘によって、周りには誰一人近づくことが出来ないほどの戦場となっていた。

 

 

★ ★ ★

 

 

 エレカと別れてほとんど直ぐといったところで、三人の目の前にはスイート四将星で身体をクッキーの鎧に身に包んだクラッカーと自身の能力で充分に水分を溜め込んでいると思われるスムージーが立ちはだかっていた。

 

「これは厄介ですね。まさか、わざわざ大幹部が2人も出てくるなんて。もちろん、私たちがやりますよねルー?」

 

「うん。ここは僕とマグーに任せて。ルッカはシオンの元へ行くんだ。多分、もう少しだと思うから」

 

「ああ。絶対にシオンを救ってやるよ」

 

「逃すと思うのか? お前達はここで殺すぞ」

 

 ルッカに振るわれそうになったスムージーの刃をルーファスが止め、弾く。そして、段々とルーファスの体から霧が出てくる。その霧はこの周囲だけを深く包んでいく。

 

「霧隠れ 五里霧中」 

 

「僕の能力を知っていますか? 誰よりも逃すことには向いてます」

 

 その霧に紛れるようにしてルッカは城の方へと消えていく。それを見送った二人は四将星というビッグマムの大幹部と戦う覚悟を改めて決め、お互いに顔を見合わせ、敵を見る。

 

「ルー。私はこっちのクッキーをやります。何処まで力が通じるか楽しみですね」

 

「僕たちだって、ここまで生き残ってきたんだ。通じなきゃ人生やってられないよ」

 

 スムージーの剣とルーファスの刀がぶつかり、クラッカーの鎧にマグメルの拳が入る。この場所でどこよりも激しくなる勝負が幕を開けた。

 

 

★ ★ ★

 

 

 ルーファスとマグメルが勝負を始めた頃、敵陣の本拠地を狙おうとしたビッグマム海賊団の戦闘員や家族たちによってオエステアルマダ号は襲撃されていた。しかし、戦艦の名に恥じないほどの大砲を備えているこの船はその大砲たちを撃つ事によって近寄られることをさせなかった。

 

「どんどん打てよー。ここで死んだらお終いなんだからよ」

 

 船を守る為に残ったヴィレムは水夫たちに発破をかけながら命令をする。そのヴィレムの後ろには最初の攻撃で体力のほとんどを使ったアデルが眠っており、ヴィレムは後ろのアデルを守りながらも、命令を出すという器用なことをやってのけていた。

 

「ったく、いつまで寝るんだか。俺一人と変わらないだろ、これ」

 

「おいおい! 誰かと思えば前に俺らのとこに攻めてきた海賊船にいたやつじゃないか!? ママの怖さを知っているはずなのにまた来たのか?」

 

 雑兵やホーミーズでは埒が明かないと思ったのか、19男のシャーロット・モンドールが率いるビッグマムの子供たちを中心とした部隊が船を攻めにきた。その進行度合いはこれまでとは比にならない程度であり、牽制の大砲でも止まることは無かった。

 

「前回のことはあの船長が七武海になったということで張り切ってただけだぜ? だが、今回は大義がある艦長だからな。前と同じじゃないってことだ」

 

 そんな危機的な状況にしてもヴィレムは苦笑をするほどの余裕があり、自分一人でその部隊を倒せるほどの実力があると示すようにボウガンを船首に刺し、背負っていたサーベルを取り出す。

 

「艦長には期待されてんだ。ちっとは頑張るしかないってことよ」

 

 ヴィレムは剃と月歩を使い、船首から船の近くまで迫ってきていた3女シャーロット・アマンドの懐に入り、その刃を振るっていく。その攻撃に反応出来ていたもののアマンドは防ぎ切れず、一撃を受け戦闘不能にされた。

 

「嘘だろ!? あのアマンド姉さんだぞ? お前前回は逃げてただけだろ」

 

「まっ、本気になればな」

 

 モンドールを睨み上げるようにしながら、ヴィレムはそのまま加速し、2女のモンデ、4女のアッシュ、5女のエフィレを立て続けに切りつけていき、倒す。その太刀筋、立ち振る舞いはいつもの様子とは違い強者の気迫が漂っていた。

 

「無理するもんじゃないな、全く」

 

 そんな圧倒的な力を見せたヴィレムを捕えるように正面から来た本をヴィレムは切り裂くが、後ろからも迫ってきていた本に閉じ込められてしまう。その本はモンドールの能力であり、ビッグマム海賊団の中でも一際トリッキーな能力だった。

 

「はぁはぁ、よくも姉貴たちをやりやがって。だが、これでてめぇが出てきた頃にはてめぇらの海賊団は全滅だ」

 

 閉じ込められただけとはいえ、モンドールの本の中はそこら辺の牢屋なんかよりもよっぽど強力で、ヴィレムが自力で出ることはほぼ出来なかった。そして、一時の指揮官を失った船防衛側は混乱が生じ、一歩一歩ビッグマム海賊団がまた迫ってくることになった。

 

 

★ ★ ★

 

 

「俺があの卵とライオンをやる。カリーナは他の奴らを」

 

「そりゃそうでしょ。あたしには荷が重過ぎだから」

 

「会議は終わったソワールか? いくら元革命軍とはいえ、しっかり潰させてもらうジュール」

 

 その言葉とともにタマゴ男爵の蹴りがユーシスに向かって蹴られる。その蹴りを手で受けつつ、畳み掛けるようにきたペコムズのパンチもまた、逆の手で受ける。

 

「俺をそう簡単に潰せると思うなよ。お前らみたいな海賊をいくらでも倒してきたんだからよ」

 

 ユーシスは少し勝ち誇った笑みを見せる。あまり戦いそのものに対して重きを置かないユーシスには珍しくこの戦いに意味を見出しており、足止めとはいえ、この戦いを通して自分が仲間を救うことに役立つということに喜びを感じていた。

 

「結局、戦いが好きな人ばっかり。やっぱりあたしって浮いてるじゃん」

 

 自身の薙刀をぶん回しながら、カリーナは戦う。他の仲間よりも自他共に認める低い戦闘能力だが、それは仲間内だけの話。世界全体で見ればその戦闘力は並大抵の者たちを上回っており、今回の戦いでは苦戦することも無く、割と善戦して戦えていた。そんな時、カリーナを薙刀が剣に止められる。

 

「お前。殺すが良いよな」

 

 ビッグマム海賊団における始末屋であるボビン。他の並大抵の兵士とは実力が違う彼にカリーナは冷や汗をかきながらも、薙刀を1度引き下げ、距離を取る。しかし、その薙刀を握る手はより一層強く握られていた。

 

「強い。でも、あっちよりは強くない」

 

 しかし、近くで繰り広げられているユーシスとタマゴ男爵とペコムズの激しくもスピード的な戦いを見ていると、自身の相手は幾分かましだと考え直し、戦いという場では自身だけで全力を出したことが無いカリーナは上着を脱ぎ、動きやすさを追求した格好になる。そして、その狐のような目をさらに細め、覚悟を変える。

 

「命懸けでやるしかないよね」

 

 

★ ★ ★

 

 

 プリンの部屋。そこには三つ目族であるプリンとシオンがお茶会を開いていた。しかし、その二人の表情は曇っており、お茶会というには似つかわない重苦しい雰囲気が漂っていた。

 

「あ、あんた。仲間来てるみたいだけど、死んじゃうんじゃないの!」

 

「ええ来たのは感じてました。こんなに早く来るとは思いませんでしたが」

 

 二日ほど一緒にいたが、相変わらずシオンの前では態度が安定していないプリンはついつい変な態度を取ってしまっていた。そんなプリンの態度にもう慣れていたのかシオンは冷静な態度を崩すようなことはしなかった。

 

「死んでもいいの?」

 

「死にませんよ、あの方々は。しかし、私が行かない訳には行きませんよね」

 

 何か決意が固まったのかシオンは黙々とお茶を飲み干すと、目をきっちりと開き直し、立ち上がる。その立ち上がった時に溢れ出た気迫のようなものは隣にいたプリンでもふわっと感じるほどだった。

 

「どこいくの!?」

 

「迎えに来てもらったのに私が行かないのは筋が通りません。自分からも行きます」

 

 シオンのその足取りは窓際へと向かい、窓に向かって小刀をゆっくりと構える。

 

「あんたも死ぬかも知れないのよ!!」

 

「死にませんよ。私も兄様と一緒で逃げるのは得意ですから」

 

 シオンはプリンなりの心配を余所にしかめっ面をやり慣れないながらも良い笑顔に変える。その笑顔は四皇にさらわれた自分のことを助けに来てくれたみんなへの嬉しさから来る笑顔だった。

 

「私。あなたのことは好きです。数少ない同胞ですし、同じ悩みを抱える人間ですので。でも、私はそれ以上にあのみんなといる場所が居場所なんです。不揃いで個性ばかりが強くて、何とも言えない仲ばかりのあの絶妙な空間が私は好きなんです」

 

「だから……すみません。私はあの場所に戻ります」

 

 先ほどの笑顔から一転して、プリンと離れることに対してシオンは少しの寂しさを表すような悲しそうな表情をする。その感情の起伏を敏感に感じ取ったプリンはあえて言う。

 

「さっさと行けば!! あんたなんかぜんぜーん好きじゃないから」

 

「そういうところも新鮮で良いですね」

 

 窓をガッと割って、シオンは外へと飛び出る。その体は自身の行く方向が分かっているかのように進んで行く。その方向は偶然か必然かルッカが向かって来ている方向でもあった。

 

「プリンの野郎は何をしてやがるんだ!! こいつを見張っとくのも、やることの一つだろ!」

 

 しかし、シオンが少し進んだところで、シャーロット家の3男のシャーロット・ダイフクが通せんぼうをするかのように立ち塞がる。そのダイフクの危険性を覇気や直感で直ぐに察したのか、シオンはしっかりと距離を取るために下がる。

 

「侵入するのも脱出するのも容易なものではありませんね。ですが、私はミスト海賊団第3席右大将。押し通らないわけにはいきません」

 

「行くぞ魔人!! 殺すなよ!」

 

「あいよーご主人様〜」

 

 ダイフクの体から出てきた魔人の持つ槍とシオンの小刀が交差する。どちらといえば、パワーに振ったダイフクの戦闘スタイルとスピードに振ったシオンの戦闘スタイル。懸賞金の差は大きくあれど、勝負はそう簡単に決まるものでは無さそうだった。

 

 





 段々とマッチアップが決定してきましたが、まだまだ戦況は前半戦です。
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