霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 決着はどんどんと付いていきます。


己の中の匙と信念に従え

 

 ルーファスとマグメルに通され、進んで行くルッカの歩みはこれまで走ってきたどんな走りよりも速かった。見聞色の覇気は使えないながらも、感覚は分かっているルッカはその感覚を頼りに進んで行く。その感覚の示す方向はしっかりとシオンが歩み始めた方向と一緒だった。

 

「シオン!! 無事で居てくれよ! 絶対に……俺が」

 

 何処までも覚悟と命をかけて走り続けるルッカの前に巨漢の男が立ち塞がり、何の言葉も無く、拳を振るってくる。ルッカもそれに応えるように何の躊躇いもせずに縄を伸ばし、その男に向けて放つ。

 

「押し通る!!!」

 

「国を犯す族が!!」

 

 その男……シャーロット家3男のシャーロット・オーブンの熱くなった拳とルッカの勢いのついた縄が激突する。お互いに絶対に譲れぬ思いがあるのか、お互い譲ることはせず、拳と縄はどちらともが弾かれる。

 

「てめぇら、人の妹を攫っておきながら何が国だよ。とっとと返しやがれ!!」

 

「お前の気持ちは分からなくは無い。だが、国を攻められて、黙っていることなど出来ない!!」

 

 互いに睨み合い、動かない。それは互いを警戒してか、それとも互いに何か通ずることがあることを分かっていたのか、どちらにしても、ルッカもオーブンもこの相手を避けて通ってはいけないのだと直感で分かっているかのようだった。幾多もの熱気と縄が辺りに舞う戦場がここに始まった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 戦場はまたも戻り、ユーシス対タマゴ男爵、ペコムズの場。ユーシスはその能力と格闘術によって、二体一にも関わらず、引けを取ることなくタマゴ男爵をヒヨコ子爵、ニワトリ伯爵に変身させるほどのダメージを与えていた。

 

「今の俺は海賊だ。だから、一定の理解は出来るが、卑怯じゃないか?」

 

「今更そんな事を言うなんて、覚悟が足りないでソワール。海賊ならば、勝つ為なら何でもするものでボン」

 

「……そうだったな。すまん、俺が悪かった」

 

「そうだ。お前の能力は俺たちの能力と相性が悪い」

 

 ペコムズの言葉通り、ユーシスのタメタメの実は動物系の相手とは相性が悪く、とりわけ持久戦に向いている二人の能力には突破口というものが見えていなかった。

 

「そうだな。だが、俺だって後のことを考えなければやりようはある」

 

 ユーシスはその覚悟を示すように前よりも重苦しくなった籠手をつける。籠手をつけただけで何が変わると思うのは三流の海賊。一流の海賊である二人はその籠手に対して最大限の警戒心を露わにする。

 

「行くぞ。俺の溜めも充分だ」

 

 縮地法を使い、懐へと寄っていくユーシス。先ほどまでと同じように能力を適度に使い、ペコムズとニワトリ伯爵のコンビネーションと渡り合っていく。そんなユーシスに対して自身たちの耐久力に自信があるのか、ユーシスの能力を気にすることなく二人はダメージを与えていく。

 

「魚人空手 四千枚瓦正拳!!」

 

 受け身になりつつ、僅かに出来た二人の隙をつくようにここ一番の技を自身の能力も織り交ぜてニワトリ伯爵に放つ。その攻撃の後をペコムズに託す為か、もろに受けたニワトリ伯爵の体は崩壊し、変身し始める。

 

「隙だけらガオ」

 

「エレクトロ!!」

 

 そのタマゴ男爵の意図を察するように的確に技の後の硬直を狙い撃つペコムズ。その電撃を帯びた正拳を籠手で受け切るユーシス。しかし、いくら籠手で受けたと言ってもその衝撃は計り知れないもので、ユーシスはそれによって膝をつきかける。

 

「ハァ、ハァ、俺の籠手には貝が仕込んであるんだ。あんたの衝撃が残ってる貝がな」

 

 ユーシスの籠手。以前まではそこには衝撃貝が仕込んであったが、今はドフラミンゴのところで新しく調達した貝を仕込んでいた。その貝は排撃貝。衝撃貝の10倍の衝撃を放出する貝だった。

 

「俺の腕も犠牲にしていってくれ」

 

天空波動(スカイバレット)!!」

 

 その籠手から放出される強大な衝撃波とユーシス自身の能力から出される衝撃波はペコムズの身体にしっかりと直撃し、ペコムズはお菓子の家へと叩きつけられ、気絶するように動かなくなる。

 

「ガハッ、ハァ、ハァ。不良品だろ、これ」

 

 しかし、排撃貝の副作用によってユーシスの左手はほとんどが折れかけ、内臓や臓器にもダメージが来て、口から危険と言えるほどの量の血を吐く。

 

「あんたも終わりだ。タマゴ男爵」

 

 変身が完了しようとしているタマゴ男爵の隣でユーシスはその能力によってダメージを外に弾き出し、タマゴ男爵も戦闘不能にする。だが、その酷使し過ぎた体は限界を迎え、ユーシスの体は倒れ込む。

 

「寝れば治るか」

 

 その場は衝撃波などで荒れ果て、立っている勝者は一人も居なかった。しかし、この場の戦いはユーシスが制したと言っても過言ではないだろう。

 

 

★ ★ ★

 

 

 「シキの野郎はいわば、前時代の敗者。そんなシキの娘のてめぇにおれが負けることは無いんだよ。ペロリン」

 

「俺はな。クソジジイのことは好きじゃねぇ。だけど、てめぇみたいな弱えやつに悪く言われるほどクソジジイは弱くはねぇんだよ!!

 

 場所はまたも進んで、シャーロット・ペロスペローとエレカの戦いの場。その場でも戦闘は熾烈を極め、辺りには所々切られたキャンディが散らばっていた。その細身な身にも関わらず、ペロスペローは自家製のキャンディで作った斧でエレカの剣戟と渡り合っており、その煽るような口と合わさってエレカの熱狂度合いは高まっていた。

 

「ペロペロ。大人しくそんなシキの娘をやっていれば、こんな傷を負わなくて良かったのにな」

 

「ハッ! てめぇは何も分かっちゃいねぇよ。クソジジイのところじゃ味わい切れなかった生きる心地が今あるんだよ!!」

 

 いくつもの傷を負いながらも、キャンディの硬さをもろともしないほどの刀を振るうエレカ。その白熱した気合いや勢いに、余裕を崩さないペロスペローといえども、内心引きかけていた。

 

「キャンディメイデン!!」

 

 どんどんと攻撃速度が早くなっているエレカから一度距離を取るというようにペロスペローはキャンディで出来たアイアンメイデンをけしかける。

 

獅子炎王斬(ししえんおうざん)!!」

 

 そのアイアンメイデンも何処から発火したのか、炎を纏ったエレカの刀によって一刀両断され、その勢いのままペロスペローの顔をかする。

 

「てめぇ。イカれてるだろ?」

 

「ああ? イカれてねぇな!! 俺はただお前をぶっ潰すこと以外の考えを捨ててるだけだよ!!」

 

 もはや、ペロスペロー以外の周りは見えておらず、攻撃すること以外を考えていないエレカ。その覇気は凄まじもので、覇王色の覇気によって段々と近い人から気絶する人が増えていくほどだった。

 

「これは……早々に片付けないと不味そうだ」

 

「さぁ、とっとと俺に敗れやがれ7億が!!」

 

 その危険なエレカの動きを制限するように出したキャンディもエレカの武装色を纏った刀の前にはただの木のように切られてしまう。その大振りで、勢いだけの剣戟だが、それにペロスペローは段々と追い詰められていく。

 

「本当にここから生きて帰れると思ってるのか!!」

 

「知らねぇな、そんなこと。そんな先のことまで考えてねぇよ!!」

 

 気合いの入ったエレカの言葉とともに振られる刀によってペロスペローの斧は折られる。それをエレカが悟るよりも早く、その事態に気づいたペロスペローはその長年の経験から瞬間的に自身の体にキャンディのアーマーを纏い、エレカから来るであろう大技から身を守る。

 

白金獅子終焉斬(はっきんじししゅうえんぎり)!!」

 

 しかし、それすらも超えていくという言うようにエレカの武装色、覇王色の籠ったことで黒く光り、稲妻を纏ったエレカ渾身の一撃がペロスペローのキャンディの鎧をも超え、その身に刺さる。

 

「こんな……ママに勝てなかった敗者の娘なんかに俺が」

 

「いちいちあのクソジジイのことを言うんじゃねぇぞ。俺は俺だ」

 

 もう勝負はつき、この場所には用は無いというようにエレカはこの場を去っていく。そのエレカの向かう先は島の奥の戦場だった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 島の中心にある城の内部。そこにはお菓子を食べているこの島の支配者、シャーロット・リンリンとシャーロット家の次男であるシャーロット・カタクリが居た。お菓子を食べているシャーロット・リンリンことビッグマムの表情は晴れていたが、カタクリはその堅苦しい表情をいつも以上にしかめていた。

 

「ママ。ペロス兄、タマゴ男爵、ペコムズまでやられた。ここまで来るかもしれん」

 

「心配することは無い。まだスムージーもクラッカーもいる。お前が出るのはそれからでも遅くないよ」

 

「ああ。だが、これ以上犠牲が出れば」

 

「カタクリ、いつもお前が出てばかりだと他の奴の示しがつかない。今は待ちな」

 

 ママの意見には絶対に逆らうようなことはしないカタクリでも今回の襲撃には何処か胸騒ぎというものを感じており、自身の手でこの不満をとっとと消し去りたかった。しかし、ビッグマムの言うことにも理解を示しており、兄弟姉妹の活躍の場を奪うわけにはいかないということも自身の心に言い聞かせていた。

 

「ママ! 大変だよ。生意気なルーキーの怪僧のウルージが縄張りに入って、どんどん船を壊してるよ!」

 

 トラブルにはトラブルというようにこんな時に限ってまたもルーキーからの襲撃にあうビッグマム海賊団。これには落ち着こうとしていたカタクリ、お菓子を頬張っていたビッグマム共に、イラッとしたような顔を見せる。

 

「面倒だねぇ。スナックを行かせな。終わり次第、今のあいつらの迎撃に向かわせな!」

 

 手早く済ませる為に今手の空いてる中での実力者を向かわせるビッグマム。その威厳溢れた命令には伝えにきた兵士も急いでその事を伝えに去っていくほどだった。

 

「最近のルーキーは生意気なやつばかりだよ。言えば傘下にしてやるのに」

 

「つい先日もユースタスの奴が船を沈めたからな」

 

 ここ最近のビッグマムの縄張りは今回のことも合わせて立て続けに喧嘩を売られてており、同じ四皇のカイドウが立地もあって、攻められることが少ないことも相まって、ビッグマムの頭痛の種だった。

 

「叩き潰して分からせるだけの話だけの話だけさ! ハ~ハハママママ」

 

 ここまで攻められてもなお、余裕を崩さないビッグマム。その余裕や威厳は伊達に40年以上も海賊としてのキャリアを重ねてきたという証拠でもあった。




 まだ戦況はビッグマム側が有利となっています。
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