霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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不定期ですが、気長にお待ち下さい。

怪盗蜜佳さん誤字報告ありがとうございます。


覇気を知り、高みを知る。

いよいよ決行当日となった。今日は朝から早く夜にならないかなと思いながらも、ずっと緊張しっぱなしだった。あれから得られた情報では、この花の国の王が住んでいるらしい一番大きな建物の宝物庫に国宝があるみたいだ。国宝が宝物庫にあると分かってからはマグーと相談なんかをして、元々の狙いの国宝に加えて中にある宝を出来る限り盗んでくることに決定した。

 

僕の頭の中が不安と緊張でいっぱいいっぱいなのに、マグーといったら笑みを浮かべて、時々鼻歌を歌いながら銃の手入れをしたり、眺めていたりしていた。

 

「マグー、もうちょっと緊張感とか持ってほしいんだけど?」

 

「う〜ん、そうは言われましてもねー。私的には生きて目的を達成して帰るって信じてるんで、いつまでも考えて込んだりするのは時間の無駄かなーって思いましたから」

 

あまりにも楽観的過ぎる気がしないでも無いけど、マグーの話を聞いていたら、なんか考え込むのもこれくらいにしようかな、なんて思えるほどの余裕振りだった。

 

「よし!腹を括るよマグー」

 

「それじゃあ決行しましょうか。一応確認しておきますけど、ルーは宝物庫へ、私は城近くの大通りに行きます。侵入して最悪見つかってもいいですからね?邪魔するやつは倒してしまえばいいですから」

 

こんな状況でも変わらないマグーに対して微笑しながら、僕は自身の体を霧化して、宝物庫へと侵入することにした。

 

「じゃあ行ってくるね」

 

「はい。帰って来るの待ってますから」

 

霧になって、移動するのは流石にこの能力を2年くらい経ったから少しは慣れてきたけど、いまだに少し怖いなと思ってしまっている。

 

そこから進んで行き、誰からも見つかることは無く、城の中に入って探索していくと見張りの二人の兵士が立っている大きな扉の前を見つけた。

どうやって突破していこうかな……。いくら霧になれるといっても多少は僕の姿が見えてしまうからバレる可能性が高い。なら、一層強行突破した方が良いかもしれない。マグーもバレても大丈夫だって言ってからね。

 

「お、おい何かこっちに走って来てないか?」

 

「あ?あ、ああ。確かに。なんだ?ありゃ子供じゃないか。何でこんなところにいるんだ?」

 

「いや、こんなところにいるなんて侵入者に決まってるだろ。俺はあいつを捕まえるから、お前は電伝虫で侵入者と警戒レベルを上げるように連絡だ」

 

「了解だ」

 

僕のことに気づいて一人が捕まえようと手に持っている槍を構えたりしているけど、もう一人は連絡しようとしているから連絡係を無力化するほうが先なのかな?

 

「いくら子供だからってここは通さないからな!覚悟しろよ」

 

容赦なく槍を僕の肩に突こうとしてきたけど、能力で霧になった僕の体には当たらなかったので、そのまま腰に差していた刀を抜いて、電伝虫を持っているやつを切って無力化した。連絡しようとしたから仕方ないよね。

 

「クソ、こいつ能力者かよ。こりゃ八宝を呼ばないと無理そうか……」

 

そのまま流れるように振り返って刀を振ると、一撃目、二撃目は槍に防がれてしまったが、三撃目で倒すことには成功した。多分二人とも死んでいないとは思うけど、今は意識が無いだろうから大丈夫かな。

さてと、霧になって隙間からこの中に入ろう。

 

 

『おい、何があった応答しろ』

 

「ハァ、ハァ、こちら宝物庫前です。侵入……者は能力者の……子供で、今は宝物庫に。八宝をお願い……します」

 

『了解した。おい、八宝水軍へと連絡。警戒レベルも上げておけ』

 

 

僕はただ感動していた。自分には欲が無い方だとは思っていたけど、こんな量の高そうなよく分からないやつ物とか、金銀を見たりすると欲しいなと思ってしまっている。多少は僕も海賊らしくなったということなのかな?

 

その金銀財宝がある中で、真ん中ら辺に置かれた年季のある机の上に他とは比べて違う箱があった。これがそうなんだろうなと思いながら箱を開けると、中には僕が食べたやつみたいに、色や形が普通と変わっている実が入っていた。目標であったそれを袋の中に入れると、周りにある金や銀で出来た物とかも重くならない程度に袋に入れた。

これとマフィアのところから盗んだやつを合わせれば、良い値段の船が作れるらしいから、楽しみだな。

 

袋を背負いながら中から鍵を開けて帰ろうとすると、端っこの方に置いてあった刀に目がいって何故か気になった。近寄って見てみると中々良さそうな刀で、鞘を抜いて見ても錆びていなかったから、念のために今の刀が折れた用に持って帰ることにした。

 

無駄にデカイなとは思っていた宝物庫の扉を開けてみると、20人ぐらいのさっき倒した人と同じような装備をしている人達がいたので、バレたんだなと嫌でも実感出来てしまった。マグーならここで笑顔をしていて、もしかしたら舌舐めずりをしているかもしれないけど、僕にはため息しか出せそうになかった。

 

「大人しく投降する気があるか賊?ああ、それと名前も聞いておいてやろう」

 

「投降する気はないです。それに何故名前を聞くのか分からないけど、僕はエルドリッチ・ルーファスです」

 

「フッ、名前を聞くのはお前を差し出したら何ベリーもらえるか、確かめるためだよ」

 

今の言葉には、何かイラっとしてしまった。僕が賞金首では無いことじゃなくて、絶対に自分達が僕に負けることが無いって驕っている態度が嫌だった。

 

「覚悟して下さい。僕だって修行したんだから」

 

「餓鬼が調子に乗るんじゃないぞ」

 

 

★ ★ ★

 

 

ルーが行っちゃってから、大通りで待機していると、何かいきなりカンカンとかドンドンって音が鳴り始めた。周りの家から出てきた人達を見るに、侵入者があった時の音らしい。ルーが見つかっちゃったのは残念ですけど、戦闘をしながらも目的を達成出来るとしたら一石二鳥ですよね。

 

道の真ん中で突っ立ていると、港の方から大勢の足音がしてきた。そちらの方を見た外に出ていた住人なんかは家の中に急いで入っていったところを見ると。これは来ましたかね。強いって言われている八宝水軍が。

 

「おいおい、こんな道の真ん中で何してるんだ。俺たちは今から城にいるらしい侵入者を倒しにいくんだ、どいてくれねぇかやい」

 

一番前にいる厳つい顔で、私とルーと年齢が変わらない人が話しかけてきた。これが今の棟梁のサイですかね?もうちょっと大人っぽいかなと思っていましたけど、そんなことも無かったですね。

 

「うーん大体10人ぐらいですか?ちょっと少なくないですか?」

 

「こんな時間の侵入者一人にわざわざ人数をかける必要なんかない。俺一人だって十分なぐらいだやい」

 

「それじゃあ私が足止めする相手が少なくなって嫌なんですけどね」

 

私はついつい舌舐めずりをしてしまってから、サイの近くにいる奴に向かって発砲した。強いって聞いてた割には狙った場所に当たったので、私自身驚いている。

 

「てめぇ敵だったのか!味方を撃ったのなら、女だからといって手加減しねぇやい」

 

「手加減なんて虫唾が走ります。この南の海で作られた良い銃でちゃんと殺してあげますよ」

 

何人か仕掛けに来たので、それを捌きながら私が二丁拳銃で何発か撃っても、まるで軌道を読んでいるみたいに全然当たらない。流石、花の国から頼りにされている海賊だけあって、強さはそこら辺の奴らと比べ物にならないみたいですね。

相手は薙刀や槍なんかの得物を持っているけど、それを使わずに殴ろうとしてくることがある。八衝拳かなんか知りませんけど、当たると危なそうな気がするんですよね。

 

「ついに弾切れになったんじゃないかやい?」

 

相手の攻撃を避けつつも、不意を付くような弾で避けられる事無く当てていき、人数が半分ぐらいになったところで二丁とも弾を入れる必要が出てきた。でも、全然入れる隙を与えてくれませんね。

 

「はぁ、弾を入れれないのは残念ですけど、それはそれで戦い方はあるんですよね」

 

私は両丁とも銃の反対側を持った。

 

「ああ?何やってるんだやい」

 

「遠距離が出来ないのなら、近距離で戦うしか無いと思いましたから」

 

「イカれてるのか?俺らは八衝拳の使い手、近距離ならお手の物だやい」

 

「女の子はイカれてるぐらいが可愛いんですよ?それにさっき捌いていて分かりましたけど、私でも対応出来ますから」

 

修行で近づかれた時用に近距離戦闘をしておいてよかったですよ。してなかったら多分対応出来ませんでしたね。でも、部下であれなら、棟梁とか言われてるサイがどれだけ強いか心配になっちゃいますね。

 

 

★ ★ ★

 

宝物庫前にいた兵士達を全滅出来て、霧になって城を出てから、僕はマグーが待機している場所に向かっていた。結構近くに来ているはずなのだけど、人っ子一人居ないみたいに静かだ。すでに警戒体制に入っているのに、マグーの銃の音すら聞こえないのは少し不安になりそう。

 

やっと待機場所に到着すると、そこには城の中にいた兵士達とは違う格好をしている人達が倒れていて、厳つい顔をしている若い男とマグーが戦っていた。

よく見ると男の方は腰に13と記されているから、多分八宝水軍13代目棟梁のサイなのかな?じゃあ周りは八宝水軍の人ってことかな。

 

サイとマグーの対決は一進一退だったけど、こちらに気づいたマグーが攻撃を受けた勢いのまま下がって来てくれた。

 

「ルー!目的は達成出来ましたか?」

 

「うん。問題無く達成出来たけど、マグーは大丈夫?」

 

「いやー、結構ヤバいですよね。ガードしても何故かダメージが貫通してきちゃいますし、動きも良いですから。思っていた以上って感じです」

 

僕がマグーに加勢しようと、刀を抜いて構えを取ろうとした時、ゾワっとするような気配を感じた。マグーとサイも感じたようで、その気配の方向を見ると、屋根の上に12と頭に記されているお爺ちゃんがいた。12は先代の棟梁……ということはあれがチンジャオなのかな。

 

「ひやはや、サイ。13代目としての初の任務、苦労しているようじゃな」

 

「ジジイ、こそこそ……見ていやがったのかやい」

 

「ただの賊崩れにこの程度とは修行が足りんようじゃな。ワシが手伝ってやるか」

 

言うだけ言ってチンジャオは屋根から飛んだかと思うと、頭を地面に向けて加速しながら落ちて来た。

 

武頭(ブトウ)

 

「ひやはや、骨のある若人だといいがの」

 

僕がいる場所に頭から降って来て、それが僕への攻撃だと分かったので咄嗟に霧になることも無く、普通に避けた。

 

「マグー!サイの方の相手は任せた。僕はチンジャオの相手をするよ」

 

「了解です。任せましたからね」

 

僕は相手の隙を突こうと、地面に刺さった状態から起き上がったチンジャオの背中に霧になって素早く移動をして、刀を振り下ろした。

 

「まだまだ甘いわぁ!」

 

刀が振り下ろされる前に、僕の体がチンジャオの拳によって突き飛ばされた。

 

「ど、どうして、殴れたんですか?僕の体は霧のはずなのに」

 

何年か振りに殴られて、倒れた体を起こした僕は、自分にダメージがきたことに少しの恐怖心を覚えながらも、疑問を敵に対してつい投げかけてしまっていた。

 

「ひやはや、知らぬか小僧。自然系の体を捉える武装色の覇気のことを」

 

「ぶそうしょくのはき?」

 

「今に名を轟かす海賊は皆、覇気を使っている。鎧を身に纏うイメージで自身を強化する武装色。相手の動きを察知する見聞色。選ばれし王の資格の覇王色。覇気のことも知らずにこの先賞金首として生き残ろうとしていたのか?」

 

初めて知ったことだった。これまで僕は少なからず自分のことを無敵だと思ってしまっていた。驕りだった。だけど、一度ミスったことなら、反省して次に活かせばいい。だって、まだ死んだわけじゃないんだから。

 

「だったら……やってやりますよ。ここから生き残って僕が名を轟かす海賊になれるってことを貴方に証明してみます。首領・チンジャオ!」

 

「ひやホホ、調子に乗るんじゃないぞ未熟者が!貴様なんぞに負けるほど衰えておらんわ」

 

ふぅ。背負っていた荷物を置いて、息を吐き出して集中する。僕が出せる全力を出すんだ。相手は若い頃とは言え5億の懸賞金をかけられた人間だ。油断なんてしない。

 

霧細工(きりざいく) 賤ヶ岳(しずがたけ)

 

僕の新技によって、空中に霧で作られた槍が七本生成された。霧だからと言って鋭さは無いわけでは無く、木ぐらいは貫通するほどはある。それを一気に七本ほどチンジャオに向わせたのだけど、全てお腹に少し刺さったところで消滅してしまった。

 

「その程度か若造が。わしの一撃の方がまだまだ痛いぞ」

 

チンジャオが急接近して来たけど、この速度では避けれない。霧になっても無駄だったら、受け止めるしか無い。

 

「うぐ、ただの殴りでこれですか。ハハ、おかげで刀も折れちゃいましたよ」

 

僕的にこれでも結構焦っている。重い一撃を受け止めた上、刀も折れてしまったから。先半分が折れたこの刀とは今回の戦いでお別れになるのかな。だったらちょうど宝物庫で拾ったあの刀を使おうか。

 

「霧隠れ 五里霧中」

 

念のため霧を展開してから、荷物の場所まで行き刀を取り出す。大丈夫だ。宝物庫の中にあった刀だから、そんな柔な耐久性では無いはずだ。

 

「マグー!そっちの調子は?」

 

マグーとサイが戦っていた方から音がしなくなって、僕もここから脱出する手段が考えついたので、逃げる時のためにマグーに呼びかけてみた。

 

「大丈夫ですよ。ルー。ちょっと立てそうにありませんけど、サイの方はちゃんと意識は無いので、こっちの事は心配しないで下さい」

 

マグーの方は大丈夫みたい。だったら僕がここから頑張って逃げるだけだ。

僕は自分の新しい刀を鞘にしまって、折れてしまった刀を取り出して構えた。

 

「霧隠れ 雲合霧集(うんごうむしゅう)

 

折れた刀の刀身にどんどんと霧が集まっていって、霧で作られた巨大な刀身が出来上がった。僕は霧を生成するごとに多少なりとも体力を使っているので、さっきの槍みたいな攻撃的な物は多く量産することで威力がそれぞれに分かれてしまうけど、一個に集中して強めたこれなら多少なりともダメージを与えられるかもしれないから、今の僕の切り札だ。

 

元々そこまで薄く短く展開していた霧が晴れてきて、僕はチンジャオに元に走り出して、ジャンプしてその巨大になった刀をチンジャオに向かって振り下ろした。

 

鷺落とし(さぎおとし)

 

無錐龍無錐釘(むきりゅうむきりくぎ)

 

こちらの攻撃に気づいたチンジャオの頭が黒くなったかと思うかと、その頭と僕の刀がぶつかった。一瞬拮抗出来た思ったけど、そのまま押し返されてしまった。折れていた刀は完全に使い物にならなくなって、僕は吹っ飛ばされる体を起こして荷物の置いていた場所に戻った。

 

「もうちょっとは拮抗出来るかと、思ったんですけどね」

 

「ひやはや、中々悪くない攻撃だが、まだまだ甘いのう。……さてと、そろそろワシは帰るとするかな」

 

「どうして帰るんですか?貴方なら僕を倒せるのに」

 

「今の棟梁であるサイが敗れた時点で任務は失敗。これ以上おぬしらに付き合うことは無いということじゃよ」

 

悔しいけど、生きれるのだったら今はその言葉に甘える事にしようと思う。僕は荷物を持って、マグーに肩を貸しながら離れようとした。

 

「そうじゃ。無いとは思うが、一応おぬしらの名前を聞いておこうか」

 

この瞬間、僕が今日見た中で一番の殺気がチンジャオから感じられた。名前を聞くことに意味があるかは分からないけど、逃してもらって答えないのは失礼かな。

 

「僕はエルドリッチ・ルーファスです。それで、こっちはマグメルです」

 

チンジャオは軽く頷いたかと思うと、その場に倒れていた八宝水軍の人達を回収し始めた。それを見てから、ゆっくりとしたペースながらも船まで歩いて行った。船の中に入ると、ゆっくりとベッドの上にマグーを乗せた。

 

「すみません。ルーだって疲労が溜まっていたのに」

 

「いや、大丈夫だよ。僕はチンジャオに勝てずにマグーはサイに勝ったんだから」

 

「あの二人では強さに差があったと思いますし。それに私は最後の最後は油断させて、隠していた一発式の銃で打ってから、気絶させたので、結構ズルい手を使ったんですよね」

 

「卑怯な手を使っても勝って生き残ったから、僕は良いと思うけど」

 

そうだ。今回の戦いはチンジャオに負けたり、僕たちは満身創痍だけど、目的である悪魔の実や新しい刀を手に入れられた。それに海賊の高みを知れたり、覇気の力も知れたんだ。充分じゃないのかな。

 

「ありがとうございます。……それで、これからどうしますかルー?」

 

「前に相談していた通り、今あるお金で良い船を作って、それから西の海をブラブラしようと思ってるんだけど、どうかな?」

 

「良いと思いますよ?それでダラダラ仲間探しといきましょうか」

 

「そういえばマグー。悪魔の実はどうするの?もう食べるの?」

 

「不味いんですよね?流石に今はいらないですよ。造船の島に着いたら食べましょうかね」

 

船を島から出港させると、羅針盤と海図を見ながら、目星をつけていた造船の島に向かって進ませ始めた。

 




次回から映画要素が入ってくると思います。

切りのいいところまで行ったら、キャラとか技とかまとめてみようかなと思ってます。
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