霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 やっとこさ第二ラウンドです。


獅子せず暴れたる

 

 自身の戦いの場から歩いて行き、島の中央部へと来ていたエレカはビッグマム海賊団No.2のカタクリと相対していた。どちらも相手のことを強者と認識しているからか、目を離さず堂々した面持ちを崩さなかった。

 

「てめぇ、強いんだろ? 俺と戦えよ」

 

「お前の実力は分かってる。そこをどけ」

 

 ここを通せばルーファスの元へこの強敵を送ることなる。他の仲間に危害を加えることになるかもしれない。そんな思いでエレカはこの場に立った訳では無い。ただ未知の強敵との戦いが為にこの場に立っていた。

 

「シハハハ、殺し切れるかわかんねぇよな!!」

 

 エレカは死ぬかもしれないという危機感を背に感じながらも突っ込む。しかし、その相手であるカタクリは一歩も動く事なくその刃を三叉槍の土竜で受ける。

 

「お前じゃ相手にならんと言ってるんだ。どけ」

 

 威圧感、覇気共に1億程度の賞金首ならば倒れ得るレベル。しかし、そんな新世界でもトップクラスのものを受けてもなお、エレカは負けるどころかカタクリに張り合うように覇王色を吐き出す。

 

「てめぇ個人なんて俺は見てねぇ。俺は上しか見てねぇんだよ!!」

 

 覇王色の覇気がぶつかり合い、エレカの覇気が少し押され気味になるが、それを補うように幾多もの剣技を振う。しかし、その攻撃も届く範囲、くる場所が分かっていたようにカタクリは必要最低限の動きだけで避ける。

 

「当たらねぇ、当たらねぇ、シハハハハ。まさか、ここまでなんてな」

 

「逃げてもいいんだぞ? お前が逃げても誰も文句は言わない」

 

「舐めてんじゃねぇぞ!!」

 

 そんな状況になってもエレカは剣技を衰えさせるようなことはしなかった。果敢に攻め込み、何度も何度も同じ太刀筋をし、急に新しい太刀筋をしたとしても全く当たることは無かった。

 

「そろそろ反撃するか」

 

 いくつもの攻撃を避けたカタクリはいよいよといった様子で動き出す。それを警戒してか、エレカも刀構えを防御よりにする。しかし、その防御構えを突破出来る最低限の強さの土竜の攻撃がエレカへと放たれる。

 

「あーあ、てめぇに勝てなきゃ赤髪のシャンクスに勝てねぇんだけどな」

 

「無理だな。覇気は荒くお粗末、刀も技術を力で押さえ込んでいる。お前では赤髪には勝てない」

 

 エレカにとって図星とも言えるようなことを断言して、赤髪に勝てないとも言い切るカタクリ。それを受けてエレカは自分でも薄々分かっていることでもあったのか、睨みだけで言い返しはしなかった。

 

「獅子形成刃!!」

 

「モチ刃弾」

 

 エレカの放った飛ぶ斬撃に対してカタクリはこの戦いで初めて能力を使う。そのモチは飛ぶ斬撃を容易に霧散させるが、その内に迫ってきていたエレカは乱撃する意味でまたも切り掛かっていく。

 

「見聞色は研ぎ澄ますと、未来が見える。お前の攻撃が俺に当たることは無い」

 

 カタクリの言葉はエレカに何かしらの考えを宿らせたようで攻撃の手が一瞬止まる。そして、その隙を見逃すようなカタクリでは無かった。

 

「角モチ」

 

 武装色硬化された殴りがエレカの頭部に直撃する。これまでの戦いでもこのような直撃的なダメージはほとんど受けたことが無かったのか、エレカの意識は数秒消える。

 

「……俺はな、強くなって強くなって生まれてきた意味って言うのを証明したいんだよ。そのためにお前なんかに負けてちゃ意味はねぇんだよ!!」

 

 頭から血を流し、その血が口に入っているのも気にしていないというにエレカは自分の未来の形に近づく為カタクリを睨みつける。そして、その勢いと共にまた斬りかかろうとも体が動かない。

 

「体力の限界だ。お前のせいで何百人がやられたか」

 

「シハハハハ、そらそうだ」

 

 エレカがペロスペローを倒した後からここに来るまでの道のり。その道のりに負傷していないビッグマム海賊団の兵は居なく、ホーミーズも動けるものは居なかった。その連戦続き、エレカの自覚有無に関わらず、身体が持つはず無かった。

 

「殺せよ。殺せるものなら殺してみろよ」

 

 エレカの威嚇とも言える言葉にもカタクリは淡々と流し、その槍をエレカの体へと突きつける。しかし、急にカタクリはその場から一度離れる。その直後、カタクリのいた場所は爆発のようなものに包まれる。

 

「大丈夫か。こんな感じだけど、助けに来たぞ」

 

 その爆発のようなものを起こした張本人であるユーシス。彼の体はエレカと変わらない程度にボロボロであり、助けに来たようには見え無かった。

 

「いらねぇよとは言えなぁな、こんなザマだと。いいぜ、手え貸せ。どうせ、こっちはボロボロだ。ちゃんとした勝負にはならねぇからよ」

 

「やれるだけやってやるさ」

 

 残り少ない体力でもまともな勝負にする為に二人は協力してカタクリに挑む。当のカタクリはそれでも焦る様子は見られず、目を離すことはしない。そして、三人の覇王色がぶつかり合う。

 

 

★ ★ ★

 

 

「兄さん。兄様は……」

 

「心配するな。ルーファスはそう簡単に死なない」

 

 船へと向かってシオンに乗り、空を飛んでいるルッカ。シオンの速度は速く、時間がかかることは無かった。しかし、二人はまだ中央で戦っている仲間達に意識を割いていた。

 

「私が生きたところで、兄様が死んでしまったら意味が無い」

 

「そんなこと、思ってても言うな。俺だってルーファスには死んで欲しくない」

 

 自身の見聞色によってビッグマムとルーファスの力の差をはっきりと理解しているシオンの本気の心配。それを分かってもなお、ルッカはシオンを行かせる訳にはいかなかった。シオンを守ることが自身の役目であり、他の人たちから託されているものだからだ。

 

「私は迷惑しかかけてない」

 

「シオン。お前が生きていたから今の俺があるんだ。俺にはお前が必要だ。だから、自分の運命を呪うな。何があっても守ってやる」

 

 自分の責任を重く感じ、最悪の未来を恐れるシオン。そんなシオンを自分なりの言葉で慰めるルッカ。その関係は側から見るのならば、決して兄弟にも恋人にも何の形にも表せないだろう。だが、二人の関係はそれで良かった。どんな状況になろうと、どんな運命になろうと、この場所だけは特別なもので守ることは当然なのだから。

 

 

★ ★ ★

 

 

「どうだい。そろそろ死ぬんじゃないか」

 

「死にそうです。でも……死にたく無い。僕はまだ諦めたくない」

 

 あらゆる攻撃を駆使してもビッグマムにダメージを与えられているように見えずに、ルーファスへのダメージが着々と増えていく中、ルーファスは最後の全力というように刀をその場に突き刺し、集中していく。

 

「何を始めるつもりだい」

 

「霧隠れ 黄霧四塞 国之狭霧神 天之狭霧神」

 

 ルーファスの背後に出現する黄金の霧で作られた巨人。ルーファスの周りに鎮座するように出てくる霧の塊。総じて、ルーファスは黄金色に包まれた。

 

「これなら勝てるかもしれない僕の全力です」

 

「おれはお前の全力にやられるほどやわじゃないさ!」

 

 舐められたように感じたビッグマムは自身の特別なホーミーズであるナポレオン、ゼウス、プロテウスを装備する。その姿は鬼人のようであり、体力も気力も少ないルーファスの息を速くするには充分過ぎるものだった。

 

迦楼羅円陣波(かるらえんじんは)!」

 

「ハァ……意識がもう」

 

 巨人の霧が上部から襲いかかるにし、辺りの霧が側面から襲いかかる。一見脱出不可能なものだが、ビッグマムは余裕の笑みを隠すようなことをしなかった。

 

「食べれもしない霧なんて邪魔なだけさ!」

 

「刃母の火!!」

 

 霧を晴らすように振り下ろされたビッグマムのナポレオンだったが、霧は一度霧散しただけで、直ぐに再生するように直り、攻撃がビッグマムに当たる。

 

「言いましたよね。僕は諦める訳にはいかないと」

 

 ビッグマムのまだまだ有り余る気力、覇気と霧を使い過ぎ体力が残り少なくなるルーファス。決着の時はもう近かった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 他の場所では既に決着が着いていっている中、マグメルとジンベエの戦いは未だに続いていた。マグメルは人獣型へと変身し、ジンベエの攻撃を受け切りながらも致命傷とならない程度の攻防を続けていた。

 

「いやーほんと為になりますね。あなたとの戦いは」

 

「お前さんは何の為にわしと戦っとるんじゃ」

 

「何の為? うーん、あなたの技を盗む為ですね。ルーや他の仲間にはそれぞれの戦いがあります。私に出来るのはそれを邪魔せず私のレベルアップをするだけです」

 

 ジンベエはその海賊をするには有り余る善性を持ってして、マグメルと戦うことに戸惑いながら戦っていた。しかし、そのジンベエの迷いを見抜いているようにマグメルは的確に攻撃をしていく。

 

「技を盗む。わしからそう簡単に盗めると思わんでくれ」

 

「誰にも言ったこと無かったんですけど、私は見たことを忘れません。動きだろうが、文字だろうが、数字だろうが、何でも忘れません。何でもです」

 

 そう語るマグメルの顔は少し悲壮感に満ちていた。何でも覚えてしまうということがいつもいつも得するとは限らない。人の死をいつまでも覚えてしまうということ、嫌な思い出を止め続けるということ。例え、あげれたらとしてもこの力を人に押し付けるようなことはマグメルは出来なかった。

 

「それは中々珍妙な能力だな」

 

「ええ、珍妙かつ難解な能力。私でも持って生まれことを恨んだことも少なくないですよ? まぁ精々利用させてもらいますけど」

 

 そのルーキーと言える人が格上のものに挑んでいくような光景。そのような光景をジンベエはつい最近見たばかりだった。無謀にも兄貴を助けようと海軍本部に挑んだあるルーキーを。今のミスト海賊団を見ているとジンベエはどうしてもそのことを思い出してしまった。

 

「こんなところで油売っておいていいんか? わしなんかの相手よりビッグマムを倒す方が先じゃろ」

 

 危なかしくて後先構わずに兄貴を助けに行く麦わらのルフィ。そんな姿を見てせいでどうしてもマグメルがルーファスを助けに行かないことに疑問しか抱かなかった。やはり、海賊なんてものはこんな情のない連中ばかりなのかと。

 

「ルーはしっかり約束してくれました。絶対に死なないって。私語りになりますけど、私はもう自分の海に出た目標は達成し終えたんです。だから、今はルーのことを支えることだけです。しっかりと死んだら殺すとも言っておきましたから」

 

 しおらしくも誇るようにルーファスを語るマグメル。既に連れ添った年月は10年を超えようともしており、ビッグマムの元へ送ったのはただルーファスのことを信じただけに過ぎなかった。

 

「だから、憂いもせずにかかってきて下さいよ。あの二人の決着がついた時がこの戦いが終わる時でもありますから」

 

「鮫瓦正拳!!」

 

「竜爪拳 竜の鉤爪!!」

 

 技と技の応酬はまだまだ続いていく。敵と敵として、戦い合っているマグメルとジンベエの二人だが、思っていることは対して変わらずこの戦が無事に終わってくれることを願っていた。ルーファスがあの手を使っても構わないとマグメルが思うほどには。





 いよいよ次で一応この章の最後の話です。
 色々あって次の話は明日投稿です。
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