霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。 作:地支 辰巳
「獅子鳳凰刃!!」
エレカの広範囲に渡っての斬撃が放たれる。しかし、その攻撃を読んでいたというようにカタクリはその場から飛び上がり、容易にそれを避けていく。
「
そのカタクリの避けた先にはすでにユーシスが張り込んでおり、自身の能力である衝撃波を連鎖するように放っていく。その衝撃波の一撃は避け切れたカタクリだったが、二撃目、三撃目と続いていくごとにギリギリで避け切れることになっていた。
「獅子直王刃!!」
その連鎖衝撃が終わったと同時に後ろから力いっぱいにエレカがカタクリに斬りかかる。それを避けることは無理だと判断したカタクリはその刃を自身の槍で受けきる。それによって生じる力は周囲を大きく揺るがし、稲妻を発生させる。
「シハハハ、流石に連続攻撃をし続けたら覇気を使い続けるのも辛いよな!!」
「なめるなよ。こんな対策新世界の海賊なら何人もやってきた。そして、そいつらは全員いなくなった。この意味が分かるか」
エレカとユーシスはヒットアンドアウェイを何十回と続け、効率よくカタクリの見聞色への集中力を削いでいっていた。けれども、それを続けた結果はカタクリと鍔迫り合いになっただけであり、二人の頑張りにしてはその結果はあまりにも見合わなかった。
「モチ突!!」
カタクリは先程の言葉通りに一人の人を容易く潰せるほどに回転したドリルのような槍がエレカへと放つ。しかし、エレカも回避運動を既に取っていた為、その攻撃は刀で抑えながら、後ろへと下がっていく。
「チッ、どうするよ。これ以上あいつに勝つ方法なんてねぇぞ」
「一つだけ思いつくことがある」
「何だ、言うだけ言ってみろ。実行してやらねぇことはねぇ」
ユーシスから一つの噂話と提案を聞いたエレカはニヤッと笑う。それはここからカタクリに勝てるかもしれない確率が上がるかもしれないという心の底からの嬉しさからだった。それを教えたユーシスは自分の体がこの戦いの最後まで持つかどうかという不安な顔をしながらも戦い抜く事を決意する。
「やってやろうじゃねぇかよ!!」
「ほどほどにしとけよエレカ!!」
二人とも覇王色の覇気でこれまでの人生一番の出力をカタクリへとぶつける。ユーシスですら、噂レベルでしか聞いた事の無いもの。それは覇王色の力によって見聞色の力を封じ込めれるというもの。それが可能だとしても相手は四皇の大幹部であるカタクリ。二人の覇気を合わしても可能になることかどうかは分からない。しかし、それでもやらなければならない。
「無茶なことをするもんじゃないぞ」
呼応するように覇気が上がっていくエレカとユーシス。それを見て、カタクリも覇気を上げていく。その結果、この辺り一帯の空気は重くなり、ピリピリとしたものが広がっていく。
「オイ! とっとと決めるぞ。もたねぇからよ!」
「分かってる。あと何本骨が折れるか分からないからな」
「焼餅!!!」
手負いの相手ほど危険ということを分かっているのか、カタクリは二人を仕留められるほどの技を素早く出す。だが、エレカもユーシスも見聞色を使える身。カタクリの大技をエレカが刀一本を投げて、それで威力を無くし、カタクリ自身の間へと迫っていく。
「一刀
「
エレカとユーシスの高めあった覇王色の覇気が合わさり、カタクリの覇気をも上回るほどになり、そのいつもの何倍以上になった攻撃をカタクリに向かって放つ。ユーシスの言う見聞色を消し去るまでにはいかなかったが、一瞬、カタクリの未来予知が乱され見えなくなる。
「ハッ、切れたな! やっとよ!!」
「ああ。衝撃もいったみたいだな」
エレカの一刀がカタクリの体を切り裂き、これまでの戦いではほとんど出なかった血がその場所から出る。ユーシスの衝撃波も背後からカタクリの体を襲い、その体に内部からダメージを与える。
「お前らのことを侮ってたみたいだな。敵と見做し直すとするか」
カタクリの目つきがまたも変わっていき、カタクリの周囲の地面や木々がモチのように伸びたり、固まりまったりしていく。それは悪魔の実の覚醒と呼ばれる段階であり、エレカとユーシスの背中に冷や汗が流れる。
「生きて帰れると思わないことだな」
実質的なビッグマム海賊団の二番手。その本気の実力がミスト海賊団でも上位と実力を誇る二人に襲い掛かろうとしていた。
★ ★ ★
倒れ去るルーファス。次の攻撃の準備をしているビッグマム。短い戦いだったものの二人の強さは未だに差が大きく、結果は既にこの場に表されている通りだった。
「おれはてめぇが生まれる前から海賊やってんだ。負けるはずがねぇよな!」
「確かに、それはそうです。でも、僕はまだ攻撃を受けれますよ。もう一発来て下さいよ」
こんなにもボロボロにやられてもルーファスはまるで生まれたばかりかというぐらいの遅さで立ち上がっていく。その立ち上がる力はもう無いに等しいと言えるルーファスだったが、刀はいまだビッグマムに剣先を向けて構える。
「てめぇがここで死んだらあいつも殺さなきゃいけなくだろうが」
「シオンですか? 確かにシオンは僕が死んだら、貴方を殺そうとするでしょうね。でも、僕は死なない。自分が死ぬラインは分かっています」
普段から笑顔の少なかったルーファスにしては珍しくマグメルのするような生意気な笑顔をビッグマムへと見せつける。そのルーファスの心意気と覚悟を見届けたビッグマムは試すように新しくナポレオンを大きく構える。
「いいぜ。おれの攻撃を受けて生き残ってみろ!!」
ルーファスは既にビッグマムと戦って勝てるという見込みを捨てていた。ここまでやられて勝てると思ってるほどルーファスは現実が見えていない訳では無い。そして、ついに事前に仲間たちと話し合ったことを決意する。
「やってみせます。僕はこれでも王下七武海ですから」
またもルーファスは黄金色の霧を出していく。その霧はさっきのように巨人のようなものと滞留するようなものに別れていく。しかし、それはいつもよりも薄く安定しないものだった。
「威国!!!」
「
ビッグマムがナポレオンという剣を力いっぱい振るっただけにも関わらず、その勢い、威力は四皇レベルという疑いを持つことが出来ないほどのもので、この攻撃を受けるならば、王下七武海と言えども死が見えるものだった。
「僕は絶対に死なない!」
ルーファスが声を荒げ、黄金色の霧が爪のような形に変わり、巨人がそれを装備する。それに加えて、ルーファスも刀を突き出し、ビッグマムの攻撃を防ぐ体制を取る。
「やれるだけやってみな!!」
ビッグマムの技とルーファスがぶつかり合う。その衝撃たるや、周囲の木々を飛ばしていき、地面が崩れていくほどのもので、この島にいる全員がこの戦いに意識を持っていかれ、手を止めていた。
「あぁ、あぁが、こんな……にも……」
あまりの威力に相殺していっているにも関わらず、ルーファスの身体の骨は軋みながら、折れていく音を上げ、ルーファスの肉や臓器は圧迫されるような窮屈で悲鳴を上げるような音を上げていく。そんなにも身を張っているにも関わらず、その威力や衝撃は左右に分散することしか出来ず、自身の真後ろ全般を守るので精一杯だった。
その真後ろに自分たちの船があり、仲間たちが居るからだった。ビッグマムとルーファスが戦っている場所から大きく離れ、ルーファスが防いでいる今ですら自分たちの船は大きく揺され、飛ばされそうになっていた。
「終わりだね」
しかし、体力の限界を迎え、ルーファスの身体は倒れ込んでいき、残りの衝撃全てをその身に受け、飛ばされていく。
★ ★ ★
ミスト海賊団が攻め入った場所、そして現在も船が攻防を続けている場所。そんな場所へルーファスが飛ばされてきた。身体は傷だらけで、ところどころは削れているようにも見える。その姿は見るからに死にかけという言葉が似合っていた。
「ハ~ハハママママ。どうだい、生きてるかい」
「……なんとか……」
もう声すらもほとんど出せないルーファスだったが、そんな様子を見に、ビッグマムが余裕たっぷりで息を少しだけ切らして来た。そのビッグマムの様子には敵味方問わず、動けずにいた。
「……シ、シオン……みんな……生きてますか」
「はい、もちろんです兄様。全員生きてます。だ、だから兄様も死なないで」
合流した船から自分を呼ぶ小さな声を聞き取って、シオンは涙目になりながらもルーファスに近寄っていく。息も絶え絶えのルーファスの願いを聞き入れ、シオンは見聞色を使って全員の無事を確認するが、当のルーファスが一番生命力が無かった。
「ビッグ……マムさん。いや……シャーロット……リンリンさん。僕たちを、僕たちを傘下に……入れて下さい」
その言葉を聞き、シオンは目を見開き驚いた表情をするが、他の船員達は分かっていたのか、まるで願うかのように天を仰ぐ。そのうち、ルーファスの意識は無くなっていく。
「あ、兄様!! い、いや!!! ヴィ、ヴィレム!!」
「死んで無い事は分かるだろ、待っとけ」
その叫びに応えるようにヴィレムは言葉の割に足早にルーファスの元へ向かう。ここにいる誰もがルーファスのことを心配し、その命の無事を何よりも願う。
「おいおい、頼む割に礼儀がなってねぇなぁ。筋は通さねぇと」
「ルーの言葉は私が引き継ぎます。どうですか? 私たちを傘下にした方が立て直しが早いと思いますけど」
ジンベエと共にゆっくり歩いてくるマグメル。その様子はルーファスの様子を全く心配しているようでは無く、生きて会えることを確信しているようだった。
「おれを脅してるのか。ここでてめぇらを潰してもいいんだぞ?」
「いえ、事実を申してるだけです。私たちの強さは分かってますよね?」
言葉とは裏腹にマグメルはしっかりと頭を下げ、ビッグマムに対するお願いをする。事前にビッグマムに負けた上で仲間たちが一人も死んでいないのならば、傘下に入ることは全員で決めたこと。マグメルは必死さは出さないものの全力で頭を下げることは躊躇わなかった。
「私のことはいくら使っても構いませんから」
そのマグメルの様子とボロボロになったルーファス、側にいるシオンを見ながら顎を触って考え込む。そして、考えが纏ったようで、邪悪さの残る笑みを浮かべる。
「てめぇらの提案受けてやるよ。だが、上二人の寿命を20年ずつだ」
「ええ。望むところです」
数日後、世界中にミスト海賊団がビッグマム海賊団の傘下へ降り、王下七武海を辞めたことが報道された。その新聞にはビッグマム海賊団の戦力を8割強削った海賊団として紹介されており、その真実と遜色無い報道に懸賞金は大幅に更新されることとなった。
次話は後日談的なやつです。その次の章はちょっと考え中