霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 ここだけは書きたかった。


愛憎漂う出会いと別れ

 

 ドフラミンゴからの依頼に応える為、出航したルーファスたちと別れ、パンクハザードへと向かうマグメル。獣型へと変身しているそのスピードはドフラミンゴの想定にないものでドンドンとパンクハザードへと迫って行く。

 

「絶対に面倒な任務ですよ、これ」

 

 マグメルが聞かされた任務はシーザー・クラウン及びドンキホーテファミリーの回収。人の回収という通常時では決して言い渡されることの無いその任務。その危険な匂いと簡単には帰れないという予感をマグメルは確かに感じ取っていた。

 

「……見るからに危険ですね」

 

 煙のような何かが充満しているパンクハザード。それは見るからに近寄ってはいけないものであり、マグメルとしても迂闊に近寄るのは避けたかった。そんな時に後ろからプロペラのような音共に何かが迫ってきた。

 

「あ〜れ〜マグメルでやんすね〜」

 

「ここには私たちが若様から呼ばれたんだけど」

 

「私だって来たくて来た訳じゃありませんよ。ただのお使いです」

 

 ドフラミンゴから依頼を受けて、新しく来たバッファローとベビー5。二人が来ることを聞いていなかったマグメルだったが、自分が完全にはドフラミンゴに信用されてないと理解すると、ガスを消す為にバッファローに指示をする。

 

「人使い〜〜が〜〜荒いでやんす」

 

 バッファローから風が巻き起こり、港に蔓延っていたガスが消えていく。それを確認し、三人で乗り入れようとした所、バッファローとベビー5はよく分からない鉄の巨人を見つけ、マグメルは見覚えのある気配を感じた取る。

 

「ここ……ドンキホーテファミリーの誰が派遣されたんですか?」

 

「誰だったすかね〜〜」

 

「早く答えて下さいよ。私が急かす前に」

 

「ヴェルゴ……さん。モネ」

 

 その答えを聞いたマグメルは獣型特有のスピードを使い、地上に降り、そのまま壁を破っていきながら、施設内へと入っていく。その無茶苦茶な加速具合はマグメルの体を傷つけるものだったが、それを構わないとするほどの危機感がマグメルにはあった。

 

「私にお別れも言わないんですか?」

 

「若様に連絡したところ。今、貴方とは話したくない」

 

「そのボタンを押して死ぬんですか? それが2……モネの最後ですか」

 

 この施設の自爆ボタンを押そうとして、通話中のドフラミンゴとの別れを終えたモネ。そんな様子のモネを見るマグメルは悔しそうに涙を堪えていた。

 

「ええ。だから、最後は若様の声で死にたかった」

 

「……私も昔は一人でに死にたかったです。貴方たちにもお別れを言わずに。でも、今は死ぬなら二人にもお別れを言いたい」

 

 ただ最後ぐらい自分たちにも思いをかけて欲しかった。それだけを伝えにここまでの来たのかと。そんな我儘で無駄に頭が良い妹を愛しむようにモネはマグメルとシュガーのことを思いつつ、心臓に大きな衝撃を受けて死んでいく。

 

「最後にお別れぐらい言えて嬉しかったです。あの子にも伝えておきますよ」

 

 不謹慎かもしれないが、マグメルは確かに心の奥底で今日という日のことをいつまでも良い思い出として覚えておくだろう。

 

「……気を遣って黙っているつもりですか? モネは死にましたよ。心臓に大きな衝撃を受けて」

 

『……そうか。俺もそっちに行く。シーザーとベビー5、バッファロー以外は皆殺しにしろ。敵は討ってやる』

 

「その前に片付けておきますよ」

 

 自分がドフラミンゴに使われることに嫌な顔をしつつも、マグメルは来た道を戻って行く。モネに死ねと実質的に言ったドフラミンゴに対する不満を溜めながらも。

 

 

★ ★ ★

 

 

 悲しみを振り切り、来た道を戻って外に出たマグメルが見た光景は想像していたものと全く違っていた。ボロボロになったベビー5にバッファロー。そして、海楼石の錠に捕えられたシーザー。

 

「これを私一人でやるんですか?」

 

「手を貸してよあんた! 若様の命令で来たんでしょ?!」

 

 倒れきり、もう体力も残っていないベビー5の叫びによって、麦わらのルフィやトラファルガー・ロー、スモーカーの連合軍にマグメルの存在がバレる。何故この場所にいるか疑問を抱きながら、マグメルは海岸側に移動する。

 

「虎屋! なんでお前がここにいる!!」

 

「ドフラミンゴとの取引ですよ。貴方たちを潰せと言われましたよ!!」

 

 マグメルは渋々と言った具合でピストルを連射していく。それは何故かいる子供たちには当たる軌道では無く、全ての弾が海軍や麦わらの一味などに向かっていく。

 

「トラ男!! あいつは敵なのか?!」

 

「あいつは不味い。四皇幹部と変わらない強さだぞ」

 

 ローの警告に麦わらの一味の面々が多種多様の反応をする中、マグメルと面識があり、親しくしていたロビンは悲痛な顔をしながら、能力を行使する。

 

「やめて、マグメル。貴方にメリットがある取引なの?」

 

「ロビンさん、私たちが生き残るには仕方ない取引なんですよ。だから、能力を解除してください。私はロビンさんだけには手を出したく無いです」

 

 マグメルの言葉にロビンの能力が少し緩んでしまう。そして、その隙を付くようにマグメルはハナハナの能力を振り払い、ルフィの懐に入っていく。

 

「一番強いですよね。麦わらのルフィが」

 

 マグメルの黒くなった拳はルフィのお腹に素早く振るわれるが、ルフィはその拳にも対応し、武装色を纏った拳でガードする。しかし、それでも身体を大きく吹き飛ばされる。

 

「てめぇ、ビッグマムの傘下だったよな!?」

 

「そこから抜ける為にドフラミンゴに協力してもらったんです。私たちが自由でいて、生き残る為には」

 

「流石、9億の首だな。生き残る為の悪知恵はいつだって働きやがる」

 

 ルフィを殴った後はスモーカーとの攻防に移るマグメル。スモーカーの能力はルーファスの能力と類似しており、マグメルは容易にスモーカーの十手を避けていく。

 

「ROOM!!」

 

「いくら私でもこれは無理ですよ」

 

 スモーカーとの攻防に割って入ってくるロー。ヴェルゴという強敵と戦った後とは言え、マグメルに対する警戒から油断するようなことは一切せず、ほとんど全力でかかっていく。

 

「危ないですね。本当に何でも切れるんみたいですねその刀。でも、当たらなきゃ無意味ですよ」

 

 ローの刀にもその軌道上にも入らないようにするマグメル。そこにまたも来るルフィ。スモーカー、ロー、ルフィの三人を相手にすることになったマグメルだったが、ビッグマムの傘下となっていた頃には味わえなかった新鮮味のあるこの戦いに笑顔を隠せていなかった。

 

「いやー主要な敵がいるだけで11人ですか……やるしか無いですね」

 

「李徴」

 

 マグメルの身体は四つ足の虎の化け物へと変わっていく。その姿はこの島で何度もケンタウロスを見た面々からしてみれば、紛い物のそれらよりも美しく、禍々しく映った。

 

「悪魔の実の……覚醒か!?」

 

「おいおい、ヤベぇーんじゃねぇのか、これ!!」

 

 クラッカーとの対決に見せた時よりも何倍の大きさになり、意識が取られるような事態にもなっていない。マグメルは以前よりも圧倒的に強さが増していた。

 

「死にたく無かったら、逃げた方が良いですよ。あの科学者を置いて」

 

「出来ねぇ相談だな!!」

 

「カウンターショック」

 

「こんにゃろーー」

 

「ゴムゴムの火拳銃!!」

 

 良くも悪くも大きくなったマグメルに与えられる電撃中心のダメージと炎を中心としたダメージ。しかし、そんな大ダメージとも言えるダメージを受けてもなお、マグメルは笑い、風を周りから集める。

 

「超えてきた修羅場が違うんですよ」

 

李陵風(りりょうふう)!!」

 

 一瞬にして、台風のような風が吹き荒れ、全員が元居た位置から飛ばされてバラバラになる。そして、風がなくなると、中央に立つマグメル。この場の空気感はマグメルに向いていた。

 

「全員で来て下さいよ。全員疲れてるのがあれですけど」

 

 ルフィを含めた全員の顔つきが本気でマグメルとやるという顔に変わっていく中、誰かの電伝虫が鳴る。

 

『はい、どうしたんですか? え? ……分かりました』

 

 鳴っていたのはマグメルの電伝虫だった。その電話に出るため人間型へと変身したマグメルは通信をしている内に顔色が悪くなっていき、真顔へと変わっていく。

 

「気が変わりました。ちょっと外れます。ドフラミンゴには申し訳ないですけど、それどころでは無いので」

 

 マグメルが獣型へと変身し、誰の静止も言葉も聞くこと無く、去って行く。ここに居たマグメルはまるで厄災のようであり、各々が各々なりの考えを思い起こしながら、飛び去って行くマグメルを見上げていた。

 

 

★ ★ ★

 

 

 電伝虫からの連絡を受け、駆け抜けるように海の上を飛んでいくマグメル。その途中、彼女はある男とペンギンを目撃し、その直後に周辺が凍っていく。

 

「何ですか? 私、急いでいるんですけど」

 

「おいおい、釣れねぇこと言うなよ姉ーちゃん」

 

 その男、元海軍大将青雉のクザン。彼はだらっとした態度ながらもその瞳はマグメルに対して何かを疑っているような視線を向けていた。

 

「パンクハザードから来たよな?」

 

「だから、何ですか? 黒ひげ海賊団の方に構っている暇は無いんですけど」

 

 海軍を脱退した後のクザンの肩書きは黒ひげ海賊団10番船船長。あの四皇になった黒ひげ海賊団の幹部。能力者狩りをしていると言われるその海賊団にマグメルは先ほどよりも大きな脅威を感じていた。

 

「オレの友達がいるんだよ。やったのか?」

 

「友達って誰のことですか? もしかしたら、やっているかもしれませんが」

 

 船にいるヴィレムからの連絡により、急いで船に戻っていたマグメルの前に現われた世間も認める強者のクザン。能力者狩りのことを考えれば、彼と戦うことは得策では無く、船の一大事とも言える事態も発生している。マグメルが彼と戦う必要性は一切無かった。

 

「お前らの交友関係を考えれば、黒なんだが、まぁいいや。行って良いぞ」

 

「そうさせてもらいますよ。貴方と戦うには覚悟を決めなくちゃいけませんから」

 

 マグメルはまた船に向かって進み続ける。ヴィレムから受けた所用で船から離れたルーファスとアデルとの連絡が付かないという情報の真相を聞くために。




 原作のドレスローザ編よりも後の麦わらの一味みたいに別行動が多くなります。
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