霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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正面突破で攻めていく戦

 

 カリーナ、ユーシス、シャルバード、サボという奇妙な同盟の面子は各々の目的を告げながら、作戦を詰めていた。この人数でどれだけのことが出来るのかをしっかりと考えながら。

 

「おれはここに囚われてる人々を解放したい。だけど、時間は無い」

 

「そうなんだ。あたしたちはこの国の壊滅? もしくはテゾーロを倒すこと」

 

「わしは特にないぞ? ここが無くなったら働く先が無くなるから、そこだけじゃな」

 

 四人を総合して得られた答えはテゾーロを倒すことだった。それはもっとも口にするのが簡単な目標でもっとも実現させるのが難しい目標だった。分かっているからこそ、全員の顔は少し重かった。

 

「テゾーロを倒すだけだろ? やるだろ」

 

「正義の為だしな。やるしかないな」

 

「それやらなきゃ帰れないだろうしね」

 

「えぇーわしもやらなきゃいけないのか? テゾーロって怖いから苦手なんじゃが」

 

 他の人たちと比べても頭の回転が早い面々がいる四人が詰めて考えついた作戦は中々に完成度が高いと言えるものだったが、最終的にはテゾーロ他幹部たちと戦うことは避けられないもので、そこの勝敗は勝てる見込みで計算するしかなかった。

 

「テゾーロはおれとユーシスで大丈夫だろ? お互い実力は分かってるからな」

 

「ああ、構わない。新世界の怪物と言われる奴とやれるのは流石に緊張するけどな」

 

「じゃあ、強いのは二人に任せたから。あたしは弱い人とやるから」

 

 自分の実力を分かり、分相応な相手とやることを進言するカリーナ。それに全員が同意を示し、作戦会議は終わった。まだテゾーロの元で働いているシャルバードは計画実行の日にまた集合することを決め、一度戻り、不法侵入をしていたサボはそのままユーシスたちが泊まっているホテルの部屋で休むことでその日を終えた。

 

 

★ ★ ★

 

 

 その日の夜。別室に移動してしまったカリーナによってユーシスとサボは2人で同じ部屋に居た。約10年ぶりにこんな風に同じ部屋で寝ることになった2人。積もる話もお互いにあるのか、無言とも賑やかともどちらとも言えない空気感が漂っていた。

 

「サボ。これが終わったらどこに行くんだ?」

 

「ドレスローザだ。そこでジョーカーが輸出しているものを防ぐ」

 

 ドレスローザ。その国にユーシスはピクリと反応を示す。ユーシスは既にルーファス辺りから連絡を受けており、そこで合流することが決定していたからだった。その偶然に対しての反応だったが、サボは気づいていないようで、ここ最近の革命軍の活動について話していく。

 

「最近の海は荒れている。革命の嵐があるって部分は良い部分だけど、千両道化やジョーカーのせいで無意味に大きくなっていることも多い。ユーシス、やっぱり手を貸してくれるのは無理なのか?」

 

「俺はもう表立って革命軍の活動は出来ない。そんなことをする資格が無いからな。俺は今、何をしているんだろうな」

 

 革命軍のような活動もせずに、今のユーシスは燻っているという言葉が正しかった。本人曰く、昔のような信念も心も失っているような気がして。今回の任務もユーシス自身が何かを見つけたくて立候補していた。そのユーシスの様子を大体察してきたサボも助けになればと少し語り出す。

 

「おれだって、昔は海賊になりたかったさ。それで海に出たこともある。でも、今は革命軍の参謀をやってる。エンドルフさんの跡を継いでな。結局は人生は成り行きじゃないかと思う。自分の中に変わらないものがあれば、成り行きの中でも生きていられる」

 

 成り行き。その言葉で済ませられるには多くのことが起こりすぎていたが、サボの言葉はユーシスの心に確かに残っていた。自身がこの海賊に居るのも言ってしまえば成り行き。だが、それでも、ユーシスはエンドルフの意志を継いで生きていた。漠然とした意志で、実現出来ているかも分からない意志。しかし、その意志を失わない限り、ユーシスはユーシスとしてこの人生を生きていける。そうユーシスはそう気づいた。

 

「そうだな。サボ、お前の言う通りだ。俺はまだ死んで無い」

 

「なら良かった。お前に死なれたくは無いからさ」

 

 ユーシスの重い言葉にもサボは軽快に返していく。しかし、その軽快さの中には長年の友としてユーシスのことを本気で心配していたからこそ出てくる優しさが多く含まれていた。

 

 

★ ★ ★

 

 

 決行の日。4人は揃って大通りを一歩一歩噛み締めながら進んで行く。その姿はまるでスパイのような黒い格好であり、素顔に合わせてカリーナとユーシスの2人は刺青も見えるように出していた。その4人の進行を止めるように現れるのはグラン・テゾーロの警備主任タナカさん。

 

「するるるる。豪華な面子ですね。ですが、我々のお客様を困らせる皆様にはご退場お願いしますよ!」

 

 タナカさんが床に触れ、能力によって穴のようなものが大きく開かれる。しかし、それが来ることが分かっていたかのようにユーシス以外に何処からともなく現れた鉄の紐が巻きつき、穴に落ちるのを防ぐ。

 

「ユーシス。頼んだから!!」

 

「任せとけ! カリーナ」

 

 その穴に落ちていったユーシスも不本意ながら落ちていった訳では無く、使命に燃えているようなやる気に満ち溢れながら落ちていっていた。その姿に疑問を抱くタナカさんだったが、その思考を断ち切るように鉄の槍のようなものが足元に刺さる。

 

「テゾーロ様に拾ってもらった恩を忘れましたか? 恩知らずにもほどありますね」

 

「ただの傭兵なわしだが、信念だけはあるからな。それを忘れるんじゃないぞ!!」

 

「傭兵風情が偉そうに」

 

 このグラン・テゾーロの至る所に散らばっていた鉄たちがシャルバードの近くへと集まってくる。安定しない暮らしになってしまったからこそ、高めた自身の戦闘能力。シャルバードはインペルダウンに入った前とは実力が圧倒的に違った。

 

 

★ ★ ★

 

 

 地下へと落ちたユーシス、タナカさんと相対するシャルバードを置いて、グラン・テゾーロの中心部へと走って行くカリーナとサボ。2人が向かうのはテゾーロの元ただ一つ。その途中にはもちろん、2人の邪魔をしてくる人間がいる。

 

「おめぇらの運命は半か丁か。さぁ選びやがれ!!」

 

「貴方たち2人がここから先に進めると思ってるの? 笑わせないで!」

 

 テゾーロの側近であるダイスとバカラ。2人とも今回の襲撃を一種のエンターテイメントと見ているようで、大した脅威を感じておらず、自分たちが勝つことを疑わず、不敵に笑っていた。その2人に対してカリーナは露骨に不快感を露わにしたが、サボは尚も笑みを崩すようなことはしなかった。

 

「油断していると足元を掬われるぞ。俺たちの狙いはテゾーロだからな」

 

「お前こそ、あまり油断してると足元掬われるぞ!!」

 

 自分を舐めた態度を取ってきたサボに一撃を入れる為、ダイスはその巨体からは想像も出来ないスピードで間近に迫り、斧を力一杯振る。しかし、その動きさえ分かっていたのか、サボは冷静に黒くなった鉄パイプでその斧を受け止める。

 

「そっちは任せていいかカリーナ」

 

「当たり前でしょ。そんなむさ苦しいおっさんは相手できないし」

 

「あら、私なら勝てるとか思ってるの? 貴方は能力を持っていないでしょ?」

 

 明らかな体格な違いから戦いを拒否するカリーナに前に居るのはバカラ。彼女は裏の世界を牛耳れるほどの力があるテゾーロの情報網を使って4人のことを調べており、圧倒的なアドバンテージを築いていた。それに比べてカリーナはバカラが能力を持っていることしか聞いていない。勝負が始まる前に既に大きな差がついていた。

 

「さぁ、勝負といきましょう」

 

「上等。あたしが負けてたら任務をした意味がない」

 

 ここにプライドをかけた二つの戦いの幕が開けた。カリーナとサボは勝たなければテゾーロの元には辿り着かない戦い。勝つしかない戦いだった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 穴に落ち、落ち続けるユーシス。彼は狙い通りにタナカさんが来て、自分を落とす能力を発動してくれたことに嬉しさを隠すことが出来ず、落ちている途中にも関わらず笑顔を見せる。そして、彼はぼふという音共に柔らかい地面に落ちる。

 

「ここは……何も無いな」

 

 辺りを見渡すユーシスの目に映るのはインペルダウンのLevel3と変わらない風景。有り体に言えば、目の前の景色は地獄とさして変わりは無かった。優美さの権化のような上の世界と金があるものの虚無とも言えるようなこの下の世界。ユーシスは元の気持ちよりもぶっ壊したくなった。

 

「おい、若造。お前、あの若造か!?」

 

 さっそく自身の任務を果たそうとするユーシスの元に近寄ってくる薄汚れながらも良い服を着ているおっさん。そんなよく分からないおっさんに声をかけられ、初めは誰か分からなかったユーシスだったが、段々とその顔に見覚えを見出していく。

 

「あ、ああー! あんたマックスさんか。急に居なくなったから何処にいったかと思ったら、こんな場所に」

 

 一時期一緒にいたレイズ・マックス。彼はユーシスを始めとする革命軍の若い世代に人生の熱と人生は博打なんだということを教えてくれた人間だった。彼とここに落ちている人たちが居ることでサボの大体の事情を察したユーシスはより一層気合いを入れる。

 

「マックスさん。ここにいる人たちを固めておいて下さい。ちょっと危ないんで」

 

「そうか、そういうことか。お前の狙いは大体分かったぞ。よし、俺が出来る限りなら協力してやる」

 

「助かります。俺はもう革命軍じゃありませんけど、革命軍が考えていることぐらい今でも理解出来ているつもりだから」

 

 シャルバードからこの船にある海水を真水に変える装置を聞いていたユーシスはマックスからその場所を聞き、そこへと進んで行く。そこは薄暗く、危険なコウモリが解き放たれていた。

 

「本当に行くのか? この先は成功するか分からない博打だぞ?」

 

「俺を信じて下さいよ。俺は今はこんな立場ですけど、人生の博打にはギリギリで勝ってきているつもりですから」

 

 ユーシスの顔には何の憂いも無かった。そんなただ自分たちの勝利だけを真っ直ぐに信じているユーシスを見て、何か感じるものがあったのか、マックスの目が大きく開かれていく。

 

「行ってこい!! 俺はお前に賭けてやるからよ!!」

 

「行ってきます」

 

 自分の役目を果たす為、目的の場所へと向かって行くユーシス。彼がしなければならなければことは一つ。このクソみたいな支配者の空間を破壊するための足掛かりを作ることだった。




 次回からいよいよ対戦していきます
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