霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 勝負3本立てでお送りします


金色に染まった世界で

 

 警備主任のタナカさんはシャルバードのことを大きく侮っていた。この海で生き抜く能力もなく、傭兵崩れをしているただの餓鬼だと。

 

「うにゃあ!! こんな技使っていなかったじゃ有りませんか」

 

 しかし、タナカさんはこの戦いを通してその認識を改めることになる。空中に浮かび上がっている鉄の塊から雨のように重い鉄の雨が降ってくる。それをヌケヌケの実の力を使って避けているタナカさんだったが、それも長くは続かず、段々と当たる量が多くなっていく。

 

「カカカカ、あの牢獄を脱獄してから覚えた技じゃからな! ここじゃあ使う機会なんて無かったがの!!」

 

 埒が開かないと思ったのか、タナカさんは避けることに重きを置くことをやめ、床を抜けることで翻弄しながら、シャルバード本体をピストルで撃っていく。しかし、そんな生半可なピストルではダメージを与えられないというように鉄の壁をいくつも張って、弾を防ぐ。

 

「するるる。テゾーロ様と似た系統の能力ですからね。苦戦するのは当たり前ですね」

 

「カカカカ、あんな金ピカな能力と一緒にするでないぞ!! わしの鉄は人を進化させてきた進行の鉱物じゃ! あんな人を後退させるだけで大した進化ももたらさない金などとは違う!」

 

 シャルバードの持論が述べられた後、手詰まり感のあったタナカさんを助けるように近くの黄金が鞭のように伸びて、シャルバードに襲いかかる。それを避けきれなかったシャルバードは頭にその攻撃を受けて、意識が一瞬飛ぶ。その隙を狙うようにタナカさんによって何発もの銃弾がシャルバードの胴体に撃ち込まれ、シャルバードは倒れさる。

 

「ハァ、テゾーロ様の手をわずらせてしまいましたが、任務は完了ですね。われらに逆らうからこうなるのですよ。さぁ、しっかりとトドメをしましょう」

 

 まだ胴体に命中しただけで死んでいないかもしれない。そんな可能性すらも確実に潰す為にタナカさんは頭をしっかりと狙い、その銃弾を放つ。しかし、銃弾はまたも鉄によって作られた鞭のようなものに防がれてしまう。

 

「わしは死なんよ。どこまでもしぶとく生きてやるつもりじゃからのう!!」

 

 そう言ってシャルバードは胴体に打たれた銃弾の場所を見せる。その肌と服の間には薄く伸ばされた何かがあった。

 

「念のため鉄を引いておいてよかった。これがあったら素早く動けないのが欠点じゃがのう」

 

「な!? そんなバカな」

 

 鉄を伸ばしたプロテクターのようなものを仕込んでいたシャルバードだったが、もう役目は終わったというようにそれを流動的な鉄に変えていき、身軽な状態となる。そして、身軽となった体で未だ動揺しているタナカさんの元へ近づく。

 

鉄製百手(アイアンラッシュ)

 

 鉄で出来たナックラーを装備したまま何度も何度も殴っていく。タナカさんは頑丈なためその程度ではまだ倒れはしないが、シャルバードのラッシュは大ダメージを負わせるには十分なものだった。

 

「うぐゥ、貴様!!」

 

 鬱憤も怒りも溜まったタナカさんは一度離れると、力任せに両手で地面を叩く。それによりヌケヌケの能力が発動し、強大な範囲が穴を抜ける。そこに落ちてしまうばシャルバードはこの勝負の決着をつける前に一方的に負けということになってしまう。それだけは防がなくてはならないシャルバードは落ちる範囲に対して自身の持てる鉄を使い覆い切る。

 

「にゃぁ! 卑怯じゃないか!!」

 

「黄金野郎と一緒のことをしてるだけじゃ! わしだけ卑怯というもんじゃないぞ!!」

 

 その鉄の床を走っていき、タナカさんへとまたも接近していくシャルバード。タナカさんもそんなシャルバードに鬼気迫るものを感じたのか、逃げようとするも鉄の床が動き、逃げ道を塞いでいく。そして、鉄を変化させた巨大なガンドレッドを装備し、構える。

 

鉄の衝撃(アイアンバレット)!!」

 

 まるでユーシスの攻撃をリスペクトするような攻撃。ガンドレッドを装備しているとは言え、中の腕は黒くなっており、その威力は計り知れず、タナカさんの顔面を潰すかの勢いだった。

 

「わしを舐めすぎじゃ。そこでしっーかりと反省しておくんじゃな」

 

 シャルバードの一撃により、意識を刈り取られたタナカさんは壁に叩けられ動かなくなる。それを見届けたシャルバードは他の同盟相手たちが無事なのか確かめる為にテゾーロの元へと向かい始める。

 

 

★ ★ ★

 

 

 近くでサボが戦っている中、カリーナはバカラ相手に苦戦していた。バカラの能力は未だに分からず、全く攻撃が当たらず、自分へのダメージばかりが増えていた。そこに流石の危機感を感じてしまうカリーナを嘲笑うように余裕たっぷりの動きをするバカラ。

 

「あら、もうへばっちゃうの? なんだったら、降参しても良いわよ」

 

「そんなことしないから。あたしだってこの海賊団としてのプライドがあるのよ」

 

 一人でこの海を生きてきていたカリーナだったならば、それを了承した上で騙す選択肢をとるだろう。しかし、今のカリーナは肩に彫ってある自身のタトゥーを触りながらその選択肢を取らないことを選ぶ。何故かその選択をとることを躊躇うほどには愛着が出来てしまったから。

 

「あたしだって選択肢は色々と増やしてきたのよ。勝てないのはダメでしょ?」

 

 バカラの煽りに対するようにカリーナは不適な笑みを浮かべる。そのまま使っていた薙刀を床に置き、胸元からピストルを二つ取り出す。それはマグメルが保管していたコレクションの一部であり、最近は使っていなかったこともあって、今回の任務の為に借りていたものだった。

 

「あたしの新技見せてやるわよ」

 

 積極的に攻撃を仕掛けるという宣言のようにピストルを乱射する。その弾は元々的外れのものもあったが、当たりそうなものも直前でテゾーロの部下に当たったり、突風が吹いたりで外れてしまっていた。それに薄々何かしら違和感を持ったカリーナだったが、それはそれとして攻撃を続ける。

 

「剃!!」

 

 不器用ながらもバカラに接近していくカリーナ。その技は世界政府関連で使われている技術だったが、ヴィレムに教えてもらうことでカリーナは取得していた。しかし、その練度はまだまだで海軍本部の中将からすれば走っているのと変わらなかったが、バカラ程度には通じることが出来ていた。

 

「いつの間に!?」

 

 バカラの懐へと入ったカリーナは両手に持ったピストルを打ちながら、足に装備した仕込み靴で払っていく。その流れは美しいと表現出来るものであって、それでいて武道の心得を持つと分かるようなものだった。しかし、その攻撃もまるで勝利の女神があちらにあるように奇跡的に当たらなかった。

 

「そろそろ……やばそうね」

 

 バカラは冷や汗をかき、部下の近くへと寄っていく。その光景に違和感を覚えたカリーナはその部下たちをまとめて打ち抜き、またもバカラへと接近戦を仕掛けていく。

 

「あなただったら、この船の歌姫もとれたのにね!!」

 

「そんなものに興味なんかないのよ!!」

 

 口では否定しているカリーナだったが、実際には歌姫というか、このような煌びやかな舞台に立つのも夢の一つではあったのだが、懸賞金をかけられてしまった今の立場ではその夢も諦めてしまっていた。

 

「あんな飾りの剣なんかに負ける程度の訓練はしてないのよ」

 

 バカラは片手剣を持っているものの、その剣の振りぶりはお粗末としか言えないもので、いくら仲間内での戦闘力が低いカリーナでも勝てるもので、ピストルをその刀身へと当てて、刀身を割った。

 

「やってくれたわね。でも、いいわ。これで本気は出せるから」

 

 自身の得物を破壊されたにも関わらず、バカラは高笑いを隠さないほどに笑い、何十枚といったコインを投げる。そのコイン自体には何も無く、カリーナもそれを無視して進もうとする。しかし、急に地面が陥没したり、ワインが降ってきたり、ダーツが飛んできたりして、よく分からないダメージをいくらか負う。

 

「運が悪いのね。わたしでも運でも分けてあげたいぐらい」

 

「それはどうも。普段は運がいいんだけど」

 

 それでもカリーナはまたも接近し、ピストルを打とうとする。それもバカラが手を振るうことで、突風がたまたま吹いてきて、滑り落ちてしまう。それによって、攻撃する手段を失ったカリーナに対して短剣を構え、突き刺す。

 

「まだ足りないわね。運が悪かったらあと二発といったところからしら?」

 

「それはあんたもよね?」

 

 そこにカリーナは隠し持っていた三つ目のピストルをバカラの脇腹へと押し当て、何発も打つ。こんなにも至近距離で打たれたことが無いのか、バカラは苦悶の表情を隠し切れない。

 

「なんで……運はまだ」

 

「運じゃ覆されないなら、絶対に避けられないでしょ?」

 

 カリーナはバカラの能力に対して大体検討がついており、その効果範囲がどこなのか確かめる為にこれまでの攻撃を繰り返していた。そして、運が介在する余地がない超至近距離の射撃へと思い至り、実行した。

 

「運も大事だけど、それよりも実力が上回る実力があれば問題ないってこと」

 

「ま、待ちなさい」

 

「運が良かったら、直ぐに回復出来るかもね? ウシシ」

 

 カリーナは血を出しながら倒れているバカラを置いて立ち去って行く。自分にとって大事な自分の役目を果たす為に。

 

 

★ ★ ★

 

 

 ダイスに対するサボ。こちらの勝負は一方的なものになっていた。ダイスも相当な実力者ではあるのだが、相手は革命軍No.2の参謀。相手が悪すぎた。

 

「んおー気持ちいいー!!」

 

「タフだな。だが、これ以上は耐えられない!!」

 

 武装色を纏った攻撃ですらその性質により、大きなダメージを負わないダイスにサボは攻撃の段階をもう一段階上げていく。それをダイスの方も感じ取ったのか、自身の斧を振り回す速度を上げ、それに武装色を纏っていく。

 

「中々やるもんだな。避けるのは難しいか」

 

「俺に勝ってみろよ、俺に勝ってみろよ!!!」

 

 アドレナリンが出過ぎて、興奮状態が続いていくダイス。それに対するサボは冷静にその攻撃に対処しつつ、ユーシスからの電伝虫が鳴るのを待つ。しかし、ダイスの攻撃の激化はサボが片手間に対処出来る範囲内を超えていく。

 

「反撃してこいよ!! 楽しめねぇじゃねぇかよ!」

 

「……そろそろだな」

 

 サボが電伝虫が来る頃だなと思った瞬間、予想通りに電伝虫が鳴る。その音を聞いたサボは鉄パイプを上手く使って斧をダイスの手から弾き飛ばし、手に武装色を纏う。

 

「急いでいるもんでな。悪いな」

 

「竜爪拳 竜の息吹!!」

 

 いつも以上に相手を貫くことに特化した攻撃。それを防ぐことすら出来ず攻撃は直撃して、ダイスの体は吹き飛ばされ、壁へと激突する。そのダイスの表情はやられた直後とは思えないほど幸せそうな笑みだった。

 

「気持ち……良すぎる」

 

『おれだ。成功したんだなユーシス』

 

『ああ、完了だ。これで水道から水が出てくるはずだ。俺もすぐに向かう』

 

 ユーシスの活躍によって、海水を真水になる装置が壊される。いよいよ海水を浴びたことで各々テゾーロへと挑む準備が完了する。




 今回の章も短く終わると思います
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