霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 これにてこの章は終了となります


黄金卿を破壊せし衝撃

 各々が海水を浴びて、金粉を払ったところで4人の姿は揃う。その姿はそれぞれが苦労してきたと分かるほどに傷だらけだったが、4人とも目は死んでなかった。

 

「いよいよ攻め込むんじゃな!! 楽しみじゃのユーシス」

 

「分かってると思うが、シャルバードはカリーナの護衛だからな」

 

「分かっとる、分かっとるよ。わしに任せんしゃい」

 

 そして、全員が全員と顔を合わせ、頷きあって二手に分かれていく。カリーナとシャルバードは船の制御をする部屋へ、サボとユーシスはこの船の主人の元へ。

 

「ユーシス。緊張してるか?」

 

「……してるよ。俺たちだけで裏世界のバランスを壊しちまうことをするんだからな」

 

「なら良かった。おれも緊張してるからよ」

 

 二人で微笑を浮かべ合う。そこは戦場とは思えないほどに緊張感のないものだったが、それでもやれるのだという気合いが感じられるものでもあった。そして、テゾーロと2人は対面する。

 

「ようこそ。エンターテイメントの舞台へ。君たちの戦いはショーとして面白いものだったよ。だが、ここでは君たちに活躍の舞台は用意されていない」

 

 幹部がやられ、部下も相当数倒されたはずなのにテゾーロは未だにこの勝負をエンターテイメントと謳っていた。その姿は少し不気味でユーシスもサボも警戒をより一層高める。

 

「残念だけどな、おれたちはショーの展開なんか気にしないんだよ」

 

「ああ、人の戦いをショーとして見るのは胸糞悪いからな」

 

 ショーの展開など気にしてたまるかというようにサボもユーシスもさっそくテゾーロに攻撃を仕掛ける。左右から挟み込むようなその連携攻撃にもテゾーロは不適に笑う。

 

「やっぱりそう簡単にはいかねぇよな」

 

「ここは私の舞台。私に有利な舞台にすることは当然のことだろう?」

 

 二人の攻撃はテゾーロが黄金の床から作り上げた壁に塞がれ、その壁は直ぐに流動的な金に変化すると他と変わらない大きさ程度の銃弾へとまたも変化する。

 

黄金銃(ゴオン・バッフェ)

 

 何発もの黄金の銃弾がユーシスとサボを襲う。金という頑丈な素材に加えて、テゾーロの技術から素早いスピードで発射される弾の数々は武装色でガードしてもそれなりのダメージが二人に通る。

 

「はぁーやりやがる。どうするサボ。ここから逆転は」

 

「どっちかが囮をやるのが一番だろ。おれがやるけどな」

 

 ユーシスの了承も得ずに、サボは駆け出す。その走りだした意図を大体読めたユーシスは両手に籠手をはめて、大きく息をし、サボに追従するように駆け出す。

 

「無駄だ、無駄、無駄。お前らの攻撃はつまらんなぁ!!」

 

黄金爆(ゴオン•ボンバ)!!」

 

「今だユーシス!!」

 

「さっそく来やがったか」

 

 黄金を手に纏い、その拳がサボに振るわれようとした瞬間、テゾーロとサボの間にユーシスが入り込み、テゾーロの爆発した攻撃を全て自身で受け切る。テゾーロのこの技は並大抵の威力でなく、ユーシスにはいくつもの傷が出来、息を何度も吸ったり、吐いたりしていた。

 

「おーまさに決死の守りというわけだ! 私の攻撃を自分から受けきる選択をしたことは褒めよう。だが、君たちの策などお見通しだ」

 

 テゾーロが仕掛けてくると直感したユーシスは籠手と自身の能力を使って倒してしまおうとしたが、その直前に全身が何処から伸びてきた黄金に絡め取られる。

 

「クソ! これじゃあ威力も」

 

「君の能力程度は調べがついているんだよ。タメタメの実。中々にエンターテイメンツな能力だ。だが、黄金の前にはそんな衝撃波など大した脅威にならない」

 

 ユーシスが捕えられた段階で、サボは鉄パイプを織り交ぜた攻撃の連撃をテゾーロに仕掛けていく。しかし、あの実力者のサボの連撃にテゾーロは渡り合っていた。

 

「竜爪拳 竜の鉤爪!!」

 

「届かないか!?」

 

 一瞬の隙を狙ったサボ決死の技もサボが掴めたのはテゾーロの腕ではなく、そこに太く巻かれた黄金。このまま隙を晒してしまうと思ったサボは黄金だけを潰すだけ潰して一度距離を取る。

 

「おいおい、もっと白熱した勝負を見せないと観客が満足しないだろ? 皆が熱狂するようなショーがしないとな」

 

 先ほどと変わらず余裕たっぷりのテゾーロはさらにショーを盛り上げるため捕えられているユーシスに向かって黄金の槍を生成し、突き刺そうとする。

 

「サボ!! 俺に……賭けろ!!!」

 

「ああ! お前に賭けるぞユーシス!!!」

 

 今まさに槍に刺されそうになってるユーシスでは無く、テゾーロの方に向かって行くサボ。サボはその選択に後悔はしていないようで、迷いなく攻撃の手をテゾーロに向ける。

 ユーシスは何度も何度も能力を発動させ、黄金をかち割ろうとする。しかし、黄金はビクともせず、変形すらもしない。虚しく響くユーシスの叫びと共にユーシスの身体に槍が刺さる。その瞬間、槍が消滅する。

 

「何が……どうなっている!?」

 

 それに続いていくようにユーシスを捕らえていた金もバラバラになって崩壊していき、ユーシスは息を荒くしながら着地し、テゾーロを睨む。

 

「賭けはおれたちの勝ちだなテゾーロ。これで終わりだ」

 

「竜爪拳 竜の息吹!!」

 

 動揺しているテゾーロに直撃する手加減もないサボの本気の攻撃。それを受けたテゾーロの身体は何処までも飛んでいき、船の中で一際は目立っている場所へと激突する。

 

「やったなユーシス。おまえのお陰だ」

 

「いや、俺だけじゃ無理だった。サボが俺を信じてくれたからこそ、この力が出せたんだ」

 

 ユーシスは自身におけたことを薄々とだが、理解していた。自分の海賊団の艦長と副艦長を会得している力、悪魔の実の覚醒という力を。まだまだ一度使うだけで息も荒くなるようなこの力をユーシスは使いこなすと誓う。

 

「……私の……私の為のショーだぞ。私の許可なく笑うな!!!」

 

 大きな地震とともにテゾーロの声が響く。その声のした方角を二人が見ると、そこには船の高さと同じくらいの大きさで黄金で形作られた巨人がそそり立っていた。

 

「これはいけると思うか?」

 

「いけると思うしかないな。ここにいるみんなも守らなきゃいけないからな」

 

 巨人が急に出てきたことで、逃げ惑う人々。その人らを守るようにまた鉄パイプを握り込み構えるサボ。そんなサボを見て、今は海賊をやっているにせよ、昔は世界中の人を助ける為に活動していたユーシスはその頃を思い出し、腕を構え直す。

 

「おーそこにいたか。お前らは私自身の手で殺してやるからな!」

 

「潰れろ!!!」

 

 黄金の巨人の足がサボとユーシスの真上から降ってくる。早々に受け切るのは無理だと判断した二人は直撃を避ける為に走り出すものの、足を下ろしきった衝撃だけで二人の身体は宙に浮いてしまう。

 

「おい、サボ! あんな巨大なの相手にしたことは?」

 

「無い! だが、黄金だろうと何だろうと核はある!!」

 

 サボの目には映っていた。何処を壊せば黄金が脆いかを。それを実行すべく素早く地上に降りたサボは黄金の巨人の隙をつくように膝の前まで飛んで、指を爪の形へとする。

 

「竜爪拳 竜の息吹!!」

 

 そのサボからの衝撃に耐えられず、膝の辺りで折れていく片足。その事態にテゾーロは素早く片足を直そうとするも、カリーナが船を動かしたおかげで、急激に船が揺られ、直す直前に黄金の巨人の身体が大きく倒れ去る。

 

「制圧したんだなカリーナ、シャルバード。ナイスだ」

 

 その隙を待ってましたというようにユーシスは倒れ去った黄金の巨人の胸あたりに立つと、両手をその黄金の身体につける。

 

「させるか!!」

 

黄金の神の火(ゴオン・フォーコ・ディ・ディオ)

 

 黄金の巨人の目から出たレーザーのようなものでユーシスの身体は焼け焦げ、大きなダメージを負うが、それに構うこともせず両手を離すこともしなかった。

 

「あんたの過去に何があったかは知らないし、それがどんなものでも人は自分のしたことを背負わなきゃならない。だから、これはその代わりだ」

 

二乗衝撃波(リターンバレット)!!」

 

 片手ずつにつけられた衝撃貝と排撃貝の衝撃が黄金の巨人に放たれる。それはさきほどテゾーロからの攻撃を溜めたもので、そこそこの衝撃があり、ほとんどの黄金は壊れたが、黄金の巨人を割り切るには足りなかった。

 

「これで終わりだと思うなよ」

 

 しかし、衝撃が一度終わったにも関わらず、またも黄金が衝撃に襲われる。それは先ほどの衝撃と同じ衝撃で、それが何度も何度も黄金の巨人が割り切れるまで続く。その結果、跡形も無くなった黄金の巨人と倒れ去るテゾーロがそこにはいた。

 

「私を見下ろすなぁ!!」

 

 黄金の巨人が居なくなり、倒れていたテゾーロは最後の攻撃と言わんばかりに黄金で出来た触手を溢れんばかりにユーシスに当ようとする。それに対してユーシスは腕をじっと前に出す。

 

二重衝撃(ダブルバレット)

 

 黄金の触手の攻撃を押しつぶすかのように溜めてきた衝撃を返していく。それはどちらが多くの質量で攻撃出来るかということだったが、途中で黄金の触手に銀色の触手が絡みつき、テゾーロの攻撃を阻害する。そして、ユーシスの衝撃波が何度も当たっていく。

 

「これで欲望だらけの黄金郷は終わりだ」

 

 

★ ★ ★

 

 

 数日後。グラン・テゾーロは非常に静かだった。人の気配もほとんどなく、ボロボロの建物ばかりのここは数日前と同じ場所とは到底思えないほどだった。そんな中で数人の話し声がする。

 

「本当に行くのか?」

 

「ああ。ここで捕えられていた人たちは解放出来たしな。早く行かないとハックやコアラに怒られちまうよ」

 

「シャルバードもそれで良かったの? ユーシスはこっちにいるけど」

 

「ああ! そういうことばかり言うんじゃないぞ! わしだってユーシスと一緒がいいんじゃが、おまえらの海賊は気に食わんし、海賊になるのは嫌じゃ!」

 

「俺とは違う道でもずっとお前のことは仲間だと思ってる。シャルバードを頼んだぞサボ」

 

「心得てるよ」

 

 同盟としての役割を終えた四人はそれぞれがそれぞれの事情から道を進んで行く。シャルバードは個人的な感情と事情から、とりあえずは革命軍に行くことになり、サボは次なる目的地であるドレスローザへと。ユーシスとカリーナはビッグマムの傘下から抜けた他の仲間たちの元へ。

 

「じゃあなユーシス。次会う時も味方でな!」

 

「ああ! 本当にそうであって欲しいよ」

 

 二人以外に人が居なくなったグラン・テゾーロは進んで行く。導かれるように仲間たちの待つ次なる戦場の地へと。




 次回は時系列的にドレスローザになると思います。

 タメタメの実(覚醒)
 他の物体にタメタメの実と同じ能力を付与できる。付与された物体は溜めたものを放出することが出来なく、溜めたものを自身が壊れるまで自分の中でループし続けることになる。
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