霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。 作:地支 辰巳
乱戦に次ぐ乱戦の舞台へ
ルーファスから連絡を受けて無事を確認し、カリーナから任務完了の報告を受けたマグメル含める一行はドレスローザに着く直前となっていた。しかし、ドレスローザの様子は少し変で雰囲気が悪かった。
「いやーこれのせいで来いって言ってたんですかね?」
「だろうな。嵌められてなきゃいいが」
「これが原因なんだろ?」
ルッカが持ってきた新聞には堂々とドンキホーテ・ドフラミンゴが七武海を脱退したと書いてあり、それを確認したものの真偽のほどは定かではなく、マグメル一行は真相がよく分からないままドレスローザまで来ていた。
「いつの間にドフラミンゴとも連絡が尽きませんし、慎重にいった方がいいですよね」
「それにこの新聞も疑問です。そんな簡単に誤報だと言えるものなんでしょうか」
シオンが取り出したのはついさっき世界中に届けられた新聞でドフラミンゴの七武海脱退が誤報だと知らせるものだった。マグメルたちは七武海の誤報などそう簡単に起こるはずが無いということを身を持って知っているが故にこの動きの奇妙さは際立って見えていた。
「胡散臭いにもほどありますね。さて、全員で向かうか、個々でいくか、どうしましょうか」
「シハハハハ、そんなもん決まってるじゃねぇか!! 騒がしい場所に行くんだよ!!」
吐き捨てるように言葉を残しつつ、エレカは今し方、隕石と思われるものが落ちていった方角へと船から飛び降り、単身で向かって行く。それを止めようとヴィレムも船を飛び降りようとするもマグメルに止められる。
「行かせましょう。エレカは気が立っていて、止めても無駄なんで。私たちはとりあえず王宮へ向かいましょう。最低限の義理は果たしに来たと示す為に」
エレカは一人で隕石が落ちた方角へと進んで行き、他は船を止めて、陸から王宮へと向かって行く。この騒がしいドレスローザで何が起こっているか把握する為に。
★ ★ ★
「さて、どういうことか説明してもらいましょうか。この現状を」
前に居た時よりもザワザワしていた街を抜けて、たどり着いた王宮でマグメルはこの城に残っていたピーカに問い詰めるように質問を投げかける。そのような態度に対してもピーカは落ち着いたように対応する。
「麦わらとローがこの島に来ている。これは全部その対策だ。お前たちは保険として呼んできたんだ」
「へーそうですか、私たちを保険呼ばわりですか。まぁ別にいいですけど。なら、指示があるまではこっちでやらしてもらいますよ」
「おい、待て。お前らはここに居てもらう。もし、あっち側に寝返られたら厄介だからな」
ピーカからの返答に少し気分を害されたマグメルは適当に街で時間を潰そうとしたのだが、そこに待ったをかけるようにグラディウスがピストルをマグメルに向ける。
「私たちはそんなことしませんよ。ドフラミンゴへの義理でここに居るんですから」
「信用出来ないな。お前らは七武海裏切り、四皇を裏切り、ここに居る。信用なんてあるわけが無い。なんだったら、シュガーを使ってもいい」
グラディウスがシュガーの名前を出した途端、マグメルによってグラディウスの顔を掠めるように銃弾が飛んでくる。何も言わずピストルだけを向けてくるマグメルは恐ろしく圧があった。
「私たちは指示があるまでは適当にやらせてもらいますから。こんな事態になっているのは私だけは責任ではありませんから」
マグメルはふらふらと歩いて何処かに行く。そんな後ろ姿を見てピーカ、グラディウスともに扱いずらいという感想を抱いていた。
★ ★ ★
ドレスローザから続く島グリーンビット。グリーンビットには先ほど海軍大将藤虎によって隕石が落とされ、通常ではあり得ない被害が出ていた。その落ちた隕石を目の当たりにしたエレカは闘牛を斬りながら海を渡り、グリーンビットに着いていた。
「シハハハ、おい、どっちか俺と勝負しろよ! 最近動けてなくて暇なんだよ!!」
ドレスローザとグリーンビットを繋ぐ橋の上で戦う直前となっていたトラファルガー・ローとドフラミンゴの間に割って入るエレカ。そのエレカの登場にロー、ドフラミンゴともにいい顔はせずにエレカの動向を見る。
「チッ、面倒なのが来やがった」
「フフフフ、部下の管理ぐらいちゃんとしやがれ」
ローはパンクハザードでのマグメルの強襲からミスト海賊団とドフラミンゴの繋がりを察して、エレカを最大限に警戒する。ドフラミンゴはほぼ味方と言えるミスト海賊団の中でも唯一話の通じないエレカが来たことで、味方か敵かと判断する必要に追われていた。総じてどちらもがエレカを厄介に思っていた。
「あーあー楽しくやりやがってよ。確か……俺の味方はドフラミンゴだよな。だが、まぁただ呼ばれただけだし、そんなもん関係ねぇよな!!」
そんなエレカの答えはどちらも敵に回すことだった。懸賞金7億7000万のエレカにとってローもドフラミンゴも単独で戦うには物足りないと判断し、どちらにも狂った刀を向けていく。
「獅子雷鳴刃!!」
「ROOM!!」
「部下の教育ぐらいしてやがれ!!」
飛び上がったエレカから振り下ろされる斬撃にローはROOM内で刀を払い、ドフラミンゴは鋼鉄ほどの強度を持つ系で対抗する。技は拮抗し合い、誰もダメージを負うことは無かったが、直ぐにエレカがローの懐まで飛び込む。
「思ったよりも楽しめそうじゃねぇかよ! 俺の相手に相応しいぜてめぇらよ!!」
エレカの剣戟に危険性を察知したローは自分とドフラミンゴの位置を能力で変えることで、エレカの相手をドフラミンゴに押し付ける。それが分かってもなお、エレカはドフラミンゴに刀を振う。
「
「
「二方向からの同時攻撃ってか? 無駄なんだよ」
「
真反対からきた二つの攻撃に対してもエレカは二つの刀を使い、それを消し去る。この場においてエレカは圧倒的な武の力を誇っていた。この場におけるパワーバランスを崩すほどに。
「そっちにばかり集中するなよロー」
「超過鞭系!!」
エレカに気が回りすぎたローの隙を狙い撃つようにドフラミンゴがローを攻撃し、ガードし切れ無かったその体はドレスローザ方面へと吹っ飛ばされる。それをエレカに構うことなく追いかけるドフラミンゴ。
「チッ、まだまだ全力出してないんだけどな!!」
その自分を無視する行為に無性に腹が立ったのかエレカもドフラミンゴを追いかけていく。ドレスローザにエレカが着いた頃にはローがドフラミンゴによってやられかけており、周りには盲目の海兵や多くの海兵などが居た。
「鬱陶しいな、おい!」
「この数ヶ月我慢ばかりだったんだよ!!!」
流石に味方と換算して呼んだ奴からのしつこい攻撃にしびれが切れたのか、ドフラミンゴはエレカに覇王色の覇気を向ける。それに対してエレカも同程度の覇王色を当てて相殺する。
「うっ、あいつはミスト海賊団のエレカですバスティーユさん」
「見たら分かる! なんで四皇の元傘下がこんな場所に」
「一般のみなさんが怖がってるので、やめていただきやす」
しかし、それを中断するようにエレカは海軍大将藤虎によって重力をかけられ、どんどんと地面へとめり込んでいく。覇気で対抗しようとしてもそれに伴って藤虎が重力を強くしていくので、エレカの脱出は困難になっていく。
「く、クソがよ。まだやり切れてないのによ!」
短時間に急激な重力を浴びたことでエレカの意識は飛んでしまう。そして、ローはドフラミンゴによって連れ去られ、その場の騒ぎは収まることとなった。数分後、現れた三つ目の巨鳥によってその身体は回収される。
★ ★ ★
「いや、まさか貴方がそこにいると思わなかったので、不可抗力ってやつです。エレカを殺せば満足ですか?」
「フフフフ、おいおい、やらない冗談を言うもんじゃねぇぞ。ちゃんと教育しろって言いたいだけだ」
「なら、良かったですよ。エレカを殺すのは私たちとしても難しいので」
王宮へ戻ってきたドフラミンゴからある程度の事情を聞くマグメル。彼女からしてみれば、まさかそんな事態になっているとは思わなく、聞いた時は柄にもなく唖然としていた。
「申し訳ないとは思っています。わざわざ受け入れてもらったのに。でも、捨て駒としては困るのでこちらで多少の判断はさせてもらうつもりですよ?」
「ああ、期待してるよ」
ドフラミンゴのあの仕打ちに対してにしては紳士的な対応に感謝をしつつマグメルはその部屋から出ていき、自分たちに当てがわれた部屋へと行く。その部屋の中にはシオン、ルッカ、ヴィレム。鎖に縛られたエレカの全員がおり、全員があまり楽しげでは無さそうな表情をしていた。
「うーん、やっぱり鎖じゃ心許無いですかね、悪魔の実でも食べさせて、海楼石にしますか」
「良いアイデアだなそれ。良いんじゃないか? エレカもパワーアップが出来て両方にメリットがあるってやつだろ」
「ふざけたこと抜かしててんじゃねぇぞこら。悪魔の実なんてな、人を軟弱にして、能力頼りにする代もんだ。そんな食うなんて俺はしたくねぇよ」
親が能力者だろうと、いくら能力者に負けようと食う気が無いのか。エレカは頑なに断固拒否する。それにマグメルは分かっていたのか笑いながら、用意された食事を口にする。
「冗談ですよ、冗談。食べる時は自己責任ですから、勝手にしてってことです。さて、私たちの方針といきましょうか」
マグメルからここに呼び出された意味や現在の状況を大ぴらに聞かされ、熟考するエレカを除くそれぞれ。それを考える中でシオンは苦悶を浮かべる表情をする。
「どうしたシオン。頭が痛いのか?」
「ええ。この島に覇気が強い人が多いからか、頭がズキズキします。見聞色が強過ぎるのも考えものですね」
「少なくとも麦わらや死の外科医、海軍大将までいるんだ。そうなるのも当然だろ。何も考えないようにしなきゃ問題ない」
ヴィレムのアドバイスを受けて、ベッドに横になるシオン。彼女のことを何よりも心配しているルッカは出来るだけシオンの負担にならない方法を考えていく。
「それじゃあ、ルッカはどう思います?」
「シオンの負担にはしたくない。相手を全員とっとと倒せば直ぐに終わるだろ」
「まぁ、ありですね。私たちの戦力なら出来ないことは無いですよね」
「だったら、俺の意見はどうだ? 副艦長さんよ」
シオンの為に他全員で敵対者を全て殲滅する案を提出するルッカ。シオンを除いたとしても懸賞金で言えば四皇幹部にも負けることはないマグメルとエレカがいれば不可能ではないアイデア。悪くは無いものだった。
「マグメルとエレカはここで待機で他3人で適当にやるのはどうだ? ドフラミンゴの計らいでここにいるんだ。こっちだけでやってしまってドフラミンゴ側に損が無かったら追い出される可能性もあるだろ? それの対策だ」
「シオンへの負担はどうするんだ?」
「……私なら大丈夫です兄様。少し痛んでしまっただけですから。戦えはしますよ」
ベッドで横になりながら、自分は大丈夫と口にするシオン。そんなシオンにルッカは駆け寄り、さっきよりもシオンに近い位置で会議を聞く。
「うーんそうですね。どうせ、エレカは聞かなくても答えは分かってますけど……ヴィレムの意見を採用することにしましょうか。ルーの事情が詳しくは分かっていないのもあるので、戦力は私たちも残しておく必要がありますからね」
「……分かった。だが、シオンのサポートは俺がする」
「分かりました。私は出来る限り戦闘をせずにしますね」
マグメルのまとめた意見にほぼ全員が賛成したところで堅苦しいこの場の空気は一気に抜ける。その後は自由行動になったのだが、ほとんどの時間を縛られながら無言で過ごし、何かを考えていたエレカをマグメルはよく見ていた。
どのくらいの長さになるかは未定
パワーバランスは考えていきたい