霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 この章は乱戦ばかりなので場面展開が多いです


国が崩壊していくその足音

 

 自由行動となった直後、シオンとルッカはコロシアムに来ていた。2人にしてみればトラブルが起こるなら人が居るところと思い、上空から様子を見ていたのだが、コロシアム内では絶賛決勝戦が行われているところだった。

 

「あの男は……」

 

「見覚えがあるのかシオン?」

 

「ええ。黒ひげ海賊団のジーザス・バージェスだと思われます。一度戦っているのを見たことがあります」

 

 シオンがバージェスを見たのは2年前のインペルダウンで、アデルが戦っているのを見ていた。バージェスは前回よりも何倍もパワーアップしており、コロシアムを破壊するほどの決闘をしていた。

 

「そうなのか……他の奴は見たことあるのか? 俺は無いな」

 

「いえ……手配書ならばバルトロメオはありますが」

 

 未知数の敵たちがあのバージェスと戦っている。その事実にシオンとルッカは自分たちが彼らを渡り合えるのかを観察しながらしっかりと吟味していく。どんな事態になっても負けはしないように。

 

「やれないことはないな」

 

「そうですね。私も勝てなくはありませんが、全力でやらなければなりませんね」

 

 その後も観察と見物を続ける2人だったが、その空間を壊すように電伝虫の音が鳴る。一瞬、警戒した2人だったが、仲間内だけで使っている電伝虫だと分かると、決闘から目を外し、特に緊張もせずに出る。

 

『今、大丈夫ですか2人とも?』

 

『はい、大丈夫です。何かありましたか?』

 

『おもちゃの家に襲撃があったことと王宮に侵襲者が出たっことを伝えただけですよ。おもちゃの家にはヴィレムが向かっていますし、王宮の方は私が対処出来るので。2人は適当な場所で待機をお願いしますね』

 

『ああ。エレカはどうなんだ?』

 

『まっ2人は気にしなくて大丈夫ですよ』

 

『分かりました。私たちはコロシアムを見学しているので』

 

『私は誰と戦うか止めはしないので、そのつもりで』

 

 2人して電伝虫にくっつくように返事をしていたが、切れてしまうとマグメルのいう事態を把握するために周りの様子を見る。全体的な街の景色は前とそこまで変わりは無かったが、確かに数箇所で煙が上がっている場所があった。

 

「どうしましょうか、兄さん」

 

「いや、待機で良い。混乱が大きくなればここも混乱するかもしれないからな」

 

「その時に商品を強奪すると……流石です兄さん」

 

「ああ」

 

 商品がドフラミンゴの用意したメラメラの実だと分かっている2人だったが、混乱に乗じれば奪えると思っているのか奪う気を満々に持ちながら、決闘の続きを見る。

 

「死闘だな。このままいけば、コロシアムが崩壊する瞬間か、もしくは」

 

「ええ。これを楽しんでいる聴衆というのもどうかと思いますが」

 

 それぞれが血で血を流し合いながら戦う決闘は外部的な要因がなくとも、そろそろ決着の着く頃だったが、国中に衝撃を与えるそれはその時起こった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 自由行動になり、特に目的もなく街へと降りたヴィレムはこの島でしか食べられないであろう料理を食べながら、この場所での自身の立ち回りを考える。ドフラミンゴへの全体的な協力か、わざと両勢力が拮抗するようにするか。

 

『今、空いてますよねヴィレム』

 

『おいおい、何で決定事項なんだよ。空いてるけどな』

 

『おもちゃの家という場所が襲撃されたらしいので向かって下さいね』

 

『俺だけがそこに派遣されることなんて、ないよな?』

 

『そうですね。セニョール・ピンクとマッハバイスが既に派遣されてるらしいですけど、そんなもの関係あります?』

 

『いんや、これがアンタの指令かドフラミンゴからの指令か聞きたかっただけだ』

 

 ヴィレムからすれば何者かもしれない襲撃者とタイマンを張るのは避けたかった。自分の実力と均衡を取れている相手である確証もなく、麦わらやロー関係の確証も無かったから。

 

『私の命令ですよ。ドフラミンゴは情報をくれるだけで、こっちに具体的な命令はまだ飛ばしていませんから』

 

『了解だ。ちょっくら行ってくるさ』

 

 店を出たヴィレムが件のおもちゃの家に着くまでさして時間は関わらなかった。そこには事前に聞いていたセニョール・ピンクやマッハバイスの他に麦わらの一味のフランキーに加えて、大量の海兵と中将のバスティーユが居た。そして、フランキーへの海軍からの一斉の攻撃に対し、ヴィレムはバスティーユの懐に入り、サーベルの方を振るう。

 

「おまえ、ヴィレムだな! 赤犬さんの部下だった」

 

「まっ少しの期間だったけどな。あんたこそバスティーユ中将か。中将の中じゃあそれなりって聞くぜ」

 

 急な乱入者にバスティーユもフランキーもセニョール・ピンクとマッハバイスもそれぞれが別の理由で驚きを隠せていなかった。しかし、フランキーはいち早く大体の状況を察したのか海兵たちに背を向け、ドンキホーテファミリーの2人に相対する。

 

「なんだか分からねぇがよ、味方ってことでいいんだよな?」

 

「半分正解で半分不正解だフランキーさんよ。俺は命令通りに行動しているだけだからよ」

 

 セニョール・ピンクとマッハバイスはヴィレムに対して何かしらの弁解の言葉を聞きたがっていたが、2人がそのようなアプローチをヴィレムに対してかけると味方とも言い切れない海軍にドンキホーテファミリーとミスト海賊団が繋がっていると察せられてしまう。それだけは不味かった。

 

「お前ら気をつけるだら。こいつは元赤犬さんの部下で海軍を辞めた野郎だ。油断してると足元を掬われるぞ!!」

 

「俺はただの雑兵だからよ、そんなこと気にすんなって」

 

 ヴィレムとしてもこの場所に来て状況を見た時から海軍と戦う以外の選択肢を持っていなかった。ドンキホーテファミリーには表立って手を出すことは危険な行為であり、フランキーを相手取るのも両勢力の拮抗を狙っているヴィレムとしては出来ないことであった。それ故、消去法として海軍と戦っていた。生半可な力では対抗することは難しいが。

 

「元准将の実力じゃねぇだろよ!」

 

「いろんなところを点々としているもんでな。それの影響だろ」

 

 ヴィレムもバスティーユも本気を出し切らず打ち合って、フランキーがセニョール・ピンクとマッハバイスと戦っている中、騒ぎが広がっていくようなそれが起こっていく。

 

 

★ ★ ★

 

 

「さて、連絡は済みましたし、侵入者の様子でも見に行きますか」

 

 電伝虫をし終わったマグメルは先ほど連絡していた王宮への侵入者の件で動き出す。けっして侵入者を倒しに行くわけではない。ただ、侵入者を見に行くだけと思っているが、本音では少し戦ってみても良いとも思っていた。

 

「ドフラミンゴがいる方に近づいてくるだろうので、この辺ですかね」

 

 外から獣型へと変身し、ドフラミンゴの位置から計算した場所に突っ込むと、そこは大きく地面が揺れており、もう一つ下の階層でピーカが暴れていることは明確だった。

 

「うーん、侵入者が何人か知らないんですよね。まぁヒントが無いよりはマシなのでそこにいきますか」

 

 見聞色でも探っていたマグメルだったが、いかんせん修行不足による効果範囲の小ささによって役に立たず、自力で探す他に選択肢はなく、その上でピーカの暴れっぷりは良いヒントになっていた。

 そして、マグメルがピーカが暴れていたその場に向かうと、そこでは麦わらの一味のロロノア・ゾロと当のピーカが戦闘を行っていた。それにニヤニヤとしながら近づくていくマグメル。

 

「いやー大変そうですねピーカ。私が手伝ってあげましょうか?」

 

「おい、誰だお前!?」

 

「一応多少は会ってるんですけど、まぁいいです。私はミスト海賊団のマグメルです。どうぞ、よろしく」

 

 何度か見かけたことはあってもあまり人のことを覚えることはしないゾロに対してマグメルは直観像記憶の持ち主。重要なの場面での人の顔を忘れるようなことはしなかった。

 

「ミスト海賊団か……今は敵なことはちげぇねぇよな」

 

 殺気立たせ手拭いを頭に巻くゾロは三刀流の刀を改めて構え直し、刃先をマグメルへと向ける。マグメルはそれに対しワクワクしたような笑みを隠そうともせず、目でピーカのことを睨み、手を出さないように促す。

 

「さて、海賊狩りは私に勝てますかね」

 

「煉獄鬼斬り!!」

 

「あらら、やっぱり弾は弾かれますか」

 

 向かってくるゾロに対して撃った数発の弾丸はゾロの刀の前には空気と変わらず、何の効果も示さなかった。それを素早く悟ったマグメルは止めるべく手に武装色を纏っていく。

 

「鮫肌掌底!!」

 

 ゾロの三刀を武装色を纏った片手止めたでマグメルだったが、その押し合いはどちらも譲らず、どちらかが油断すれば弾き飛ばされるものだった。それを両者ともに分かっていたのか、お互いに一度引きあう。

 

「お前、相当の実力者らしいな」

 

「私はこれでも副艦長ですよ? あなたぐらいに負けていたら副艦長の名が泣きます」

 

「こっちもルフィが海賊王になるまでは少なくとも負けられねぇんだよ」

 

「千!八十煩悩鳳!!」

 

 ゾロの周りの壁すらも壊すほどの斬撃がマグメルに迫る。その強力そうな飛ぶ斬撃を見て、マグメルはルーファスよりもゾロの方が剣術だけで言えば上だと察して受ける訳にはいかないと脚を一度伸ばす。

 

「嵐脚 虎走(こそう)!!」

 

 あまり慣れていないまま繰り出されるマグメルの嵐脚。それはゾロの飛ぶ斬撃を一部は飛散させたものの大部分は消滅させれず、マグメルに直撃する。それによって体から血が吹き出したが、マグメルはその血を少し舐めた。

 

「いやーここまでの血なんて一年振りですかね。俄然燃えますね」

 

 ゾロでも一瞬追い切れないスピードになったマグメルは懐に入り、お得意の徒手空拳で渡り合っていく。ゾロの最高級に切れ味の良い刀と武装色を纏った腕で殴り合っていくマグメルは的確にしっかりとダメージを与えていく。

 

「魚人空手 五千枚瓦回し蹴り!!」

 

 並大抵の威力ではない回し蹴りがその身体に直撃してもゾロは素早く体勢を立て直して、一刀だけを鞘に納めて瞬間的に集中していく。

 

「一刀流 居合死・獅子歌歌!!」

 

「ッ!! 鉄塊!!」

 

 その捉え切れないスピードに咄嗟に鉄塊をしたマグメルだったが、ゾロのこの技は鉄塊程度で防ぎ切れるものではなく、またも血を吹き出していく。

 

「私の人型にここまで渡り合ってくるとは流石、最悪の世代の1人ではあります。まぁ私に勝てるとは言えませんけどね」

 

「極虎狩り!!!」

 

「虎って……やっぱりパンクハザードのこと覚えてませんか?」

 

「鮫瓦正拳!!」

 

 居合いから畳み掛けるようにゾロが空中から三刀の刀を振り下ろす。それを冷静的に対処するマグメルはここ一番の技をカウンター的に返す。技と技がぶつかり合い、少しの拮抗の末、ゾロが壁に吹き飛ばされるがその復帰はマグメルの想定の何倍も早かった。

 

「まだ、やれそうですけど……どうしましょうか」

 

 マグメルがまだやるかどうかを迷っていると外が少し騒がしくなり、ピーカが何があったかを示すように大きく周りの壁が動き始める。それはこの国の崩壊を示す騒ぎだった。




 ゾロの剣術はミホーク直々のものなので独学のルーファスが剣術で勝てる確率は相当低いです
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