霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。 作:地支 辰巳
国中にいたおもちゃが人間の身体に戻っていく。その現象はコロシアムも例外ではなく、観客の中に居たおもちゃたちも戻っていく。それによって混乱するこの国の現状を目の当たりにするルッカとシオンは動き出す。
「兄さん。チャンスです。ここで狙いましょうか」
「そうだな。狙うならここしかないか」
コロシアム近くの混乱を加速させるように巨鳥に姿を変えたシオン。そのシオンの背中に乗ったルッカは能力である縄を伸ばし、闘魚に守られている優勝商品が入っている箱を回収しにかかる。
「獲れたぞ。引っ張るからな」
「あいつか。ドフィからの命令なのか?」
くくりつけた縄を使って箱を引っ張り上げようとしたルッカだったが、その目の前ににコロシアムの会場を破壊した兜を被っていたサボが飛び出してくる。急に現れたサボにルッカは反撃しようとするも、既に両手は塞がっていた。
「悪いな。その悪魔の実だけは渡せないんだ」
「竜爪拳 竜の鉤爪!!」
抵抗も出来ないまま、その攻撃をもろに受けたルッカはシオンの背中の上から落ちていく。肝心の優勝商品はその衝撃で空中に投げ出され、サボが回収していく。
「よくも兄さんを! 覚悟してください」
ルッカのその様子を見たシオンは人獣型へと変身すると、空中で箱を抱えたままのサボに小刀で襲いかかる。サボはその刀を鉄パイプで受け止めると、クルリと空中で一回転し、蹴りを入れることでシオンを空中から落とす。
「ハハ、ユーシスに怒られるだろうな」
そのまま空中で箱の中に入っていたメラメラの実を口にすると、地面に降り立ち、レベッカとバルトロメオを抱えて、片手をグッと構える。その方角にはバージェスやディアマンテ、ルッカやシオンがいる方角だった。
「もらうぞ、エース」
「火拳!!!」
おもちゃが人に戻り、会場が壊され、火で覆われたコロシアム内は大惨事となり、混乱に次ぐ混乱の舞台になっていた。その中でも火拳をもろに受けたシオンとルッカは何とかその場所から脱出することに成功していた。
「なんなんだよあれ。死ぬ手前だったぞ」
「そうですね。ですが、脱出出来てなによりです。コロシアムも崩壊して、地下のよく分からない空洞に落ちるところでした」
コロシアムの地下にはドンキホーテファミリーが隠していた裏港などがあった場所なのだが、そんなことを全く知りもしない2人は未知の場所に落ちなくて良かったと安堵し、混乱に包まれている街中を歩きながら、電伝虫でマグメルへと連絡を取る。
★ ★ ★
マグメルの姿はピーカとゾロと一緒に居た王宮の途中では無く、人獣型で空中にあった。その表情はニヤニヤしているようで、この混乱が巻き起こり、どうなるか予想出来ないこの状況を楽しんでいるようだった。
「さて、面白くなってきましたね。どう立ち回るかが難しいところですが」
『はい、こちらマグメルですよ。大変そうですね貴方も?』
『お前らも消してやってもいいんだぞ? フフフ、暇だろ? 指令を与えてやる』
マグメルに連絡してきたのはドフラミンゴであり、声を聞くだけでイラついてのは明白だったが、マグメルはいつも通りに対応する。マグメルにとってはこの時点でドフラミンゴに味方するメリットはほとんど無くなったのだが、ルーファスの顔を立てる為にこの場所に居たと言っても過言では無かった。
『分かってますよ。麦わらの一味とそっちに味方する人を倒せばいいんですよね? 私たちに任せて下さいよ』
『ああ。期待してるぞ』
改めてドフラミンゴは信用ならないと思いながらも混乱で国としての体を無くしていくドレスローザの街並みを眺めていく。そこにマグメルにシオンとルッカから連絡が入る。
『マグメルさん。今、どちらですか?』
『俺たちはどう動けばいい? あまりにも混乱し過ぎて状況が分からない』
『シオンの能力で王宮まで来て下さい。下の方は戦場になる可能性が高いですから。そこからはドンキホーテファミリーと一緒に反乱者たちを返り討ちにします。まっ、ほどほどで大丈夫ですよ』
『分かりました。そうさせてもらいます』
通信が終わり、何処かで休憩でもしようと思ったマグメルは王宮から出てきた糸のようなものでこの島がまるごと包まれていくのを見る。それはただの糸と侮れるものでは無く、出ようとしたものを切るものだった。それと同時にピーカによって変わっていくドレスローザの地形。
「ッ! 私に対してもそんなことをしますか」
街中でドフラミンゴの糸に操られた人々が暴れ回る。それと同じようにマグメルにも糸が付いたのだが、覇気で糸を引きちぎる。それが故意にせよ、偶々にせよ、気分の良いものでは無かった。
「……偶々ってことにしておきますよ。この画面に映されている人たちを倒せばいいんですよね?」
鳥かごに囲まれた全員に向けられたドフラミンゴの映像つきの放送。そこではドフラミンゴが掲げた奴らを倒せば、出られることに加えて賞金もあげるというものだった。懸賞金がつけられたのは麦わらの一味の周辺とドフラミンゴ以前のこの国の王の関係者、その数12名。
★ ★ ★
混乱が加速し、混沌としていく鳥かごの中で、まるで猛獣でも通ったのかといった様子で直線上にコロシアムに参加していた参加者たちが切られていた。その直前上の先には海軍大将の藤虎と革命軍参謀サボの対決がされようとしていた。
「俺も混ぜてくれなきゃ困るんだよ!!」
自分に科せられた鎖も引きちぎり、コロシアムの参加者を斬りつけながらこの場所に来たのはエレカだった。彼女は過敏に強者の匂いを嗅ぎ分けてここまで辿り着いており、今この島で起きている出来事には分かっていてスルーしていた。
「やっぱり……狂犬か」
「どの立場の方かは存じ上げませんが、市民のみなさまに危険を及ぼす方には容赦は致しませんので」
サボの火と藤虎の重力のぶつかり合いに気圧される周りの人々だったが、エレカは違った。彼女はその圧を受けても怯むことはしなかった。むしろ、煌々とした表情で刀を構える。
「獅子双武刃!!」
藤虎とサボに向かって一つずつ飛ぶ斬撃が向かうも、2人ともそれを難なくと打ち消し、次の攻撃に移ろうとするが、藤虎の足元には既にエレカの刀が迫っていた。
「てめぇの方が恨みはあるからよ。潰させてもらうぜ!」
初見殺しの重力攻撃とは言え、その攻撃をくらって屈辱的に負けたエレカはその恨みを晴らすべく藤虎へと襲いかかるが、その刀は藤虎の仕込み刀に防がれる。
「あっしにはそれだけの恨みだとは思えませんが」
「チッ、その見えてねぇ目で何が見えてんだかな」
藤虎の直感通り、エレカは藤虎に先ほどの恨みだけをぶつけている訳では無かった。藤虎の能力はエレカの父親のシキのフワフワの実と類似しており、それを攻撃を受けた時から察していたエレカは自分で引導を渡しきれかった複雑な思いを藤虎にぶつけていた。端的に言えば、シキに似てる能力者がいたので、憂さ晴らしに倒してしまおうと思ったのである。
「隕石が……切れちまいましたね」
「ハッ、欠片でも切り刻んでやるよ!!」
藤虎がまたも落とした隕石は鳥かごによってその形を変えて、エレカの方に落ちてきたが、エレカは嬉々としながら、刀を逆手持ちに変えて迎え撃つ。
「
数多の斬撃が空中に向かって繰り出される。その斬撃は一つ一つが隕石を削られるほどのもので、それが千、万も揃えば、隕石が細かく無くなるとのは道理だった。
「俺にだって隕石ぐらい切れんだよ。さぁ、もっとかかってこいよ」
「……ちょいと本気を出さしていただきますか」
★ ★ ★
エレカが藤虎にご執心なことで手が空いたサボはその隙にルフィに手を貸そうと合流しようと動き出そうとするが、その正面に上空から彼女が降りてくる。
「私のこと、忘れてませんよね? あの時の続きといきましょうよ」
数年ぶりに再開したマグメルとサボ。前回の戦いはお互いに消費が激し過ぎて、決着は正式につかなかった。それを明確に覚えていたマグメルはこのピーカが暴れたり、ルフィたちが王宮に向かう中でサボの前に現れていた。
「覚えてるよ。あんたには随分と世話になったからな」
「なら良かったです。だ・れ・が強者かはここでは貴方ですから。本気でやらせてもらいますよ」
人獣型に変身したマグメルはサボの出す火にある程度の敬意を示しながら、愛おしそうに見る。その火もマグメルが戦ったエースの使っていた火であり、サボとエースの関係性を知らないまでも、自分が戦った強者の能力を新たに持ち強くなったサボを嬉しく思っていた。
「前のようにはいかないぞ」
「火拳!!!」
マグメルに一直線に襲いかかってくる火の拳。マグメルは決して避けるようなことはせずに背中に生えている翼をはためかせ、風の渦を自分の前に作り出す。
「一度見た技の対策は大体出来ますから、気をつけて下さい」
マグメルの自信たっぷりな態度に相違なしというように火拳は風の渦に防がれ、空中で消えていく。サボも途中から既にその結果が分かっていたのか、マグメルに近づき、黒く変色した鉄パイプを振るう。
「お互い強くなって嬉しいですよ。私も仲間の手前恥ずかしい姿は見せれませんから」
「おれもだ。弟の前で恥ずかしい姿は見せれないからな」
風が吹き荒れ、火が燃え盛る。もはや災害とも言える対決の中でお互いはお互いのレベルが何段階も上がっていることに気付き、段々と周りを気にすることなく、ギアを上げていく。
「嵐脚
「鏡火炎!!」
ほとんど至近距離で放たれた素早い斬撃の衝撃波もサボは火炎を目の前に展開し、その衝撃波を飲み込みながらマグメルの体を焼いていく。しかし、生半可な火ではその身体は焼き尽くせないのか、マグメルは次の攻撃の構えをとる。
「魚人空手 六千枚瓦正拳!!」
その強力な正拳をサボは鉄パイプを盾にして受けるが、受け切ることは出来ず、大きく距離が引き離される。そのような結果になってもサボの方も笑みを崩すようなことはなかった。
「流石だな。エースの力をもらったのにここまで喰らいつくなんて」
「貴方も流石ですね。良い技ばかり叩き込んだ自信はありましたが」
周りの状況が刻一刻と変わっていっている中、2人もそろそろ決着をつけなければならないという思いが強くなっていき、いつも以上に構えに力が入っていった。
「王手飛車!!!」
「竜爪拳 竜の息吹!!!」
ルフィたちは原作と変わりなくドフラミンゴに近づいていっています