霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 ドレスローザの終わりとつなぎの話です。

 少し短いです


革命が起こった国の明日

 

 消えそうで生きている命。それは今の状態のヴィレムのことを言うのだろう。定期的に血を吐きながらゆっくりとゆっくりと歩いているその姿はまさにそんな姿だった。

 

「ほんと……やってくれるぜ、全く。せっかくの武器もおしゃかだぜ」

 

 そんなヴィレムの前に現れるは副艦長のマグメル。彼女も彼女で連戦続きということで疲れているであろうのに、見た限りはそんな雰囲気を感じさせないことをヴィレムは医者の目で理解していた。しかし、あえて口に出すことも無いと、そのことには何も言わなかった。

 

「大変そうですね。この籠も直に閉まりそうなんで、早く移動しましょう」

 

 段々とヴィレムの歩くスピードに追いついてくる鳥かごを見て、このまま放っておくことは危険だと判断し、人獣型へと変身してヴィレムを背負うマグメル。そのまま高さをキープして見えた景色はヴィレムが最後に見た景色と様変わりしていた。

 

「おいおい、そこらかしらがボロボロじゃないか。どういう状況になってるんだ?」

 

「どういうと言われても困りますね。麦わらのルフィの軍が優勢で、ドンキホーテファミリーで残るはドフラミンゴ1人だけってだけですよ」

 

 ほとんどの幹部が再起不能になる中、先ほどまで、トレーボルが応戦していたのだが、大きな爆発とともに破れ去っていた。そして、残るはドフラミンゴという状況にも関わらず、何もしようとしないマグメルにヴィレムは疑問に思う。

 

「漁夫の利はしないのか? 今ならどっちも倒せるかもしれないぜ?」

 

「私たちは呼ばれただけで、この島の命運を邪魔するつもりはありませんよ。それにもう満身創痍ってやつですから」

 

「そりゃそうだ」

 

「貴方は誰と戦っていたんですか? 周りに敵は居ませんでしたけど」

 

「まっ、少し手強い犬をな」

 

「……詮索は面倒なのでしませんから」

 

 ヴィレムが武器を犠牲にしつつカウンターをして納めた勝負はマグメルの気配を察知したゲルニカの逃亡により結末を迎えていた。ヴィレムからしてみれば、九死に一生を得た形だが、自分で掴んだその一生に満足していた。

 

「他のやつらはどうしてるんだ? 無事ではいるんだろ?」

 

「一応無事だと思いますよ。見聞色で何とか場所を探っていますから」

 

 マグメルが不得意の見聞色で大体の場所を探りつつその場所へと向かって行く。その途中で普段とフォルムの違うルフィとドフラミンゴが大勝負を繰り広げていたが、それを無視して市街地からエレカを探し出す。

 

「やっといましたね。気分はどうですかエレカ」

 

「……最悪だぜ。シハハハ、やっぱりてめぇらの船に乗って良かったぜ。こんな生きた心地が出来るんだからな!」

 

 大の字で倒れていても強気な言葉を吐き続けるエレカは全身の骨がほとんど折れてボロボロになっており、動こうにも動くことが出来ていない状態だった。しかし、笑顔だけは絶やしていなかった。

 

「それは良かったですよ。それで藤虎はどこ行ったんですか?」

 

「知るかよ。打ち合ってから目が覚めたらもういなかったぜ。どうせ、その辺で人助けでもしてるんじゃねぇのか?」

 

 エレカと藤虎の決着の時、エレカは藤虎に軽視出来ないほどの傷跡を負わせたが、それより何倍も強い重力がエレカの全身を襲っていた。その重力は普通の人が受ければ、圧死するほどの危険なものだったが、エレカは生き残った。そのありえないほどの事実がエレカを高揚させていた。

 

「もう行こうぜ。こんな島でやることなんてもう残っちゃいねぇよ」

 

「自分の用がすんだらそれですか、まぁいいですけど。怪我人は怪我人らしくして欲しいもんですよ」

 

 やれやれと言った表情をしながらも、マグメルはエレカを抱える。2人の人を抱えているにも関わらず、弱音一つ吐かないのはそのマグメルの立場と能力がなせる技だろう。

 

「そろそろ決着がつきそうですね」

 

 ドフラミンゴは吹っ飛ばしたルフィを探していたが、そのルフィを守るように多くの人たちがドフラミンゴに勇敢に立ち向かっていく。それを横目にマグメルはシオンとルッカの位置を探し、同じ場所に固まっていた2人の場所に向かう。

 

「遅かったな。シオンがこんなに怪我してんのよ」

 

「それは申し訳ないと思ってます。でも、こっちも色々とあったので」

 

「私たちの実力不足です。気になさらないで下さい」

 

「……早く行こう。こんな島もう居たくない」

 

 自分が嫌いだったドンキホーテファミリーとやりあっただけでなく、シオンまで大怪我をすることになった。こんな場所にいつまでも居たくないとうルッカの心理は当然であり、マグメルもその意思を尊重していた。

 

「それはまぁ同意ですね。でも、ドフラミンゴが倒れないことにはそれは無理なんで、待つしかありませんね。最悪、私がドフラミンゴを倒すしかありませんけど」

 

 シオンやエレカ、ヴィレムの怪我も放置し過ぎて良いものでも無く、かといってここでドフラミンゴを倒しに行くのもマグメルの流儀に反する。悩んだ末、マグメルはここでルフィが勝つことに賭けることにする。もし、ルフィが負けた場合は自分がドフラミンゴを倒すことを決めて。

 

「シハハハ、その必要も無さそうだけどな」

 

「ああ。ドフラミンゴが落ちていく」

 

 そんな折、町中をその力で糸に変えていたドフラミンゴが麦わらのルフィに破れた。その世間からすれば、奇跡といった勝利の印象の中、マグメルはその体を獣型へと変身させて、4人の体を何とか抱え込み、消えていく鳥かごを超えて、自分たちの船へと辿り着く。

 

「ハァ、ハァ、ハァ。案外疲れますね。まさか、この島でここまでのことが起こるなんて思いもしませんでしたよ」

 

「お疲れ様? 通信が取れなくて心配してたよ」

 

「黙って全員を運んで下さいベレット。あんまり放っておくと、死んでしまうので」

 

 未だにここ船の見習いと言えるプリンス・ベレット。彼もとい彼女は4人の体を医務室へと運んで行く。それを見届けたマグメルは疲れがどっときたように甲板に寝転び、深く深呼吸をする。

 

「ただ匿ってもらいにいっただけなのにえらい疲れましたよ。こんなことなら、行かない方がマシでしたかね。いや……そこまででもないですか」

 

 目を瞑りながらマグメルは誰にも聞こえないであろう小声で口にする。その心、マグメルは誰も死んで無くて本当に良かったといったらしくないことを思いながら、眠っていくのだった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 その後のドレスローザはドフラミンゴからリク王家が統治していた頃に戻った。藤虎が王下七武海のやったことに対してリク王に土下座をしたり、麦わらのルフィが大きく戦力を増やしたことなどもあった。しかし、ドレスローザ関連のニュースでミスト海賊団たちのことが広まることはなく、そこにいた人々にしか分からない事実以上にはならなかった。

 

 

★ ★ ★

 

 

「ウォロロロ!! 逃げるのは今のうちだぞ!!」

 

 時間と場所は少しだけ変わり、同盟を組み終わったルーファスの前に最強の生物が現れる。その名は四皇百獣のカイドウ。そのカイドウを前にルーファスは冷や汗と武者震いかもしれない震えをしながら、刀を構え直す。

 

「こんなにも死ぬかも思ったのは久しぶりです」

 

 この戦いはこの場にいる者たちにとっては生と死の感覚を隣に感じながらしのぎを削って命を取り合うことになる本気の戦い。ここにドレスローザと違って、世間の注目は浴びることはない戦いが始まった。

 





 次回はカイドウ戦です。
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