霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 今回で決着です


途方もない強さを手にする者

 

 ルーファスとマグメルの回復の為、時間稼ぎとしての役目を買って出たルッカ、シオン、アデル、ヴィレム、カリーナの5人はまさに時間稼ぎのお手本のような戦い方をしていた。それぞれが別方向から攻撃を仕掛け、攻撃されそうになった人以外が注意を引くように攻撃を重なる。これにより、誰も致命的な攻撃を受けずに時間を得れていた。

 

「これじゃあ、2人に良い状況に残せない!!」

 

「それは大丈夫じゃない?」

 

「ああ。まだあいつらがいるからな」

 

 カリーナとヴィレムの目線の先にはまだ体が治りきっていないエレカとユーシスがおり、その2人の目からはまだまだ闘志は切れておらず、回復次第戦う気合いに溢れていた。しかし、エレカとユーシスを待つ余裕も無く、バレットの攻撃と渡り合っていく5人。

 

「エレカとユーシスを待ってられるか!!」

 

「黒縄 畜生道(ちくしょうどう)!!」

 

「私も合わせます」

 

人鳥空斬(ペンギンくうざん)!!」

 

 2人の攻撃はバレットの武装色を纏っていない装甲の部位は破壊出来ても纏っている部分には傷一つつけられず、絶望感を覚えるだけのシオンとルッカだったが、そんな暇すら無いようにまたも巨大な腕が襲いかかる。身動きが取れなくなっている2人にはそれを防ぐことが出来なかったが、2人を守るようにヴィレムがサーベル一本で防ぎ切る。

 

「そんなもので防ぎ切れると思っているのか?」

 

「いんや、思ってないさ。こいつらがやられるより、俺がやられた方が後々の為ってわけさ」

 

「そうは思わないがな!」

 

 自分の攻撃を止めるほどの強者であるヴィレムがそれよりも弱いであろう2人を庇う理由が分からないまま、バレットはその腕により力を込めていき、ヴィレムの体を大きく舞わした。

 

「これじゃあ、時間稼ぎにもならないって」

 

「私がやるから問題なし!!」

 

 ヴィレムが消えた穴を埋めようとアデルは近くに建てられていた黄金をふんだんに使ったホテルを増やして、ぶつけていく。しかし、今更そんなものでダメージを与えられず、バレットの気を晒す程度にしかならなかった。

 

「鬱陶しいやつらだ。そろそろ邪魔だ!」

 

 暴れればこの船ごと潰れてしまいそうなバレットとその装甲は大きく動き、周りに固まっていたカリーナやアデルの体を大きく遠ざけるほどにその体を飛ばす。

 

「こんな巨体! おれがぶっ潰してやる!!」

 

「ええ、兄さん。挽回のチャンスです」

 

 既にバレットの頭の上には人獣型になったシオンとその背中に乗ったルッカが移動しており、自身らの覇気を高めていた。そんな2人を侮っていたバレットは鈍重に腕を振るうが、既にルッカは大きな縄の塊を作り、シオンは刀を自身の前で構えていた。

 

「悪惡縄 臨廻(のぞみ)!!」

 

黒鴇削り(くろときけずり)!!」

 

 縄か何重にも巻かれて、大きな大きな球体のようになった縄の塊を作るルッカとまるでドリルのように回転しながら自身の嘴と刀2本によってバレットの装甲に突っ込んでいくシオン。シオンの決死の覚悟によって一つの穴が空いていくバレットの装甲を基点とするようにルッカの縄の塊が落とされる。

 

「壊れろ!!」

 

 ルッカは自身の腕が折れていくのも気にせずにバレットの装甲を壊し、バレットの装甲は大きな音を立てて弾けていった。

 

「まさか、お前に壊されるとはな」

 

「はぁ、はぁ、これでどうだ」

 

 バレット本体にはダメージは無かったので、不動な態度で立っているバレットとは違い、ルッカもシオンも骨が何本も折れて満身創痍であり、もう身動きも取れなかった。そんな2人に多少の敬意を払うようにバレットは一撃で仕留めようと腕に武装色を纏うも、崩壊した装甲の山を破壊するような音が響く。

 

「シハハハ! 俺を殺してからにしろよ、なぁ!」

 

「ああ、俺も先に殺してからにしてくれよ」

 

 現れるのはNo.3とNo.4の実力を持っているエレカとユーシスの2人。仲間の中でもトップクラスの実力を持っている2人にバレットも目を細めるも、それを知ってか知らずか、2人ともが早速突っ込んでいく。

 

「てめぇはさっきからつまんねぇ戦いばっかりしながって。もっとやってみろよ!!」

 

「俺らは手加減無しでやれるほど甘くないぞ」

 

「そうだろうな」

 

 刀の連続切りと徒手空拳の乱撃にバレットは眉一つ変えずに対応していくが、その接近した間合いで繰り広げられる戦いのスピードは加速の一途を辿っていく。

 

獅子白虎刃(ししびゃっこじん)!!」

 

内部衝撃(インターンバレット)!」

 

 詰めきるような突撃と覚醒した衝撃が何度も響いても、バレットの余裕そうな笑みは途切れることも知らず、適切な反撃をしていく。エレカもユーシスもこれまでの戦いから無理をすることは出来なく、次に繋がる為にも早急かつ大きなダメージを与えていく必要に駆られていった。

 

「しゃあねぇな!! やってやろうじゃねぇか」

 

「無理だけはするなよ。やられるなら2人同時の方がダメージはマジだ」

 

「黙っとけ。てめぇが死のうが俺には関係ねぇんだよ。大人しくてめぇの役割に徹してろ」

 

 見聞色の未来予知を使い、バレットとの一対一の戦いに持ち込むエレカ。未来予知無しでの一対一はエレカとしても辛いものはあるが、未来予知さえあれば、エレカはバレットと渡り合えていた。

 

「シハハハ、てめぇの攻撃なんて読めてんだよ! 当てて見やがれ!」

 

 その内にユーシスはバレットへと致命的な一撃を与えてる為に隙を伺っていく。適材適所を形にしたような即興にしてはよく出来た役割分担だった。

 

「お前も最強になろうとしないのか」

 

「そんなもんは目指そうとするもんじゃねぇよ!」

 

 バレットもエレカもお互いにお互いが同じような存在であることは理解していた。しかし、そんなことは2人が戦いを辞めない理由にはならない。いや、戦いこそが2人の本懐。それ以上に2人が求めるものは無かった。

 

獅子黄竜刃(ししこうりゅうじん)!!」

 

 あのバレットですら、一瞬気圧されるほどのものが込められた攻撃がエレカから繰り出される。その太刀筋はまるでこの世のものとは思えないもので、これまで傷つくことを知らなかったバレットの皮膚から血が流れ出る。

 

「おれを充分に楽しませてくれたことには感謝してやる」

 

 しかし、その技の後の隙を狙うような強烈な打撃がエレカの鳩尾に炸裂する。エレカは口から水だけでは無く、血も吐きながら吹き飛ばされ、何処かの建物に当たったところで、エレカの意識は途絶える。

 

「お前こそ隙だらけだ」

 

永遠衝撃(インフィニティバレット)!!」

 

 その隙を待っていたようにユーシスが懐に入り込み、覚醒した衝撃をバレットの中に打ち込むが、バレットの方もユーシスが来るであろうことは分かっており、カウンターのようにエレカの放ったのと同じ打撃を繰り出す。

 

「大した奴らだ。ここまで手こずるなんてな」

 

 ユーシスの覚醒した能力によって、いくらバレットでも永久には身体が持たない衝撃波が何度も何度も体の内側で放たれる。しかし、バレットは強大な覇気をその身なら放出することでユーシスの能力を消し飛ばした。

 

「さぁ、最終ラウンドです。私たちの力もその体で受けて下さいよ」

 

「僕らの総力戦。ここで決着を着けます」

 

 7人が作ってくれた勝機をその身にする為にルーファスとマグメルが並び立つ。けっして、簡単に勝てる相手では無い。そんなことは百も承知な2人は本気でいくように覇気を全開で出していく。

 

「一度で屠ってやろう」

 

最強の一撃(デー・ステェクステ・ストライク)!!」

 

 全身が武装色の硬化で身を纏ったバレットから繰り出されるのは最強のパンチの連続。それはルーファスやマグメルの予想以上のもので、ルーファスや自分に繰り出されるそれを受けたマグメルはルーファスの耐久力では耐え切れないと直感し、途中からルーファスを庇うように攻撃を受ける。

 

「これで倒れていれば楽だったのにな」

 

「……私はルーと支え合いながら生きてるんです。ここでは2人とも死ねませんから」

 

 膝をつき、意識が朦朧としているルーファスを庇うように立ち上がったマグメルは人獣型になりながらもその腕をいつもの何倍に膨れ上がらせ、その腕から放つは衝撃波。

 

人虎破(じんこは)!!」

 

 ユーシスのものと似て非なるが、威力は引けを取らない衝撃波がバレットに放たれるが、バレットはその身を武装色で纏い切っており、重傷を避け、そのお返しというようにバレットの拳がマグメルに放たれる。しかし、バレットの拳を包みこむように周囲が銀色の霧に満たされていく。それは金の霧よりも何倍もきめ細かく美しい、まさしく白金のようなものだった。

 

「霧隠れ 黄霧四塞 多紀理毘売命(たぎりひめのみこと)

 

 マグメルの前に出たルーファスの姿は霧の支配者と形容する他ないほどに美しかった。白金の霧が体に鎧のように纏われ、大人になり、カッコよさが際立っていた顔も今は昔のような可愛さや可憐さが出されていた。

 

「お前がどれだけの力をつけようと俺には勝てない」

 

「勝つとか負けるとかじゃないんです。僕が勝利するんです」

 

 自信過剰なルーファスの言葉もバレットのパンチをどうやったか分からないまま避けたことで真実味を増していく。霧が流れるような動きでバレットを翻弄していくルーファスの刀は霧が纏われている影響か、バレットの体をすり抜けるように刀を通していく。

 

「足りねえ。まだまだ足りねえなぁ!」

 

 この島一帯に影響を及ぼすほどの強大な覇王色を解放するバレットだったが、それを受けてもルーファスは顔色一つすら変えずにゆっくりとした動作のまま刀を構えていく。

 

「終わりだ!」

 

「終わるのはあなたです」

 

八咫烏の導き(やたがらすのみちびき)

 

 覇王色も武装色も込められたバレットのパンチに合わせるようにルーファスは丁寧な所作でありながらも力の込められた一撃を抜刀する。それはバレットの体に大きな傷を負わせ、再起不能にさせる。しかし、その能力の代償は重く、ルーファスは一時的に立てなくなり、そのままうつ伏せで倒れてしまった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 数週間後のグラン・テゾーロとオエステアルマダ号はワノ国周辺の海域にあった。闇から麦わらの一味がワノ国にいるという情報を得たからであり、中で何が起こっているのかも大体は把握していた。

 しかし、麦わらの一味と戦うのにそんなことは関係ない。ルーファスは自分の高みを知る為に戦うのみ。世界の情勢なんて無粋に他ならなかった。




 次回からはいよいよ麦わら一味との対決である最終章です

 ルーファスのあれがルーファスの最終形態です
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