霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。 作:地支 辰巳
他の戦場よりも静かだが、戦いの苛烈さは他と変わらないサンジとユーシスの戦い。互いにそこまで多くは語らなかったが、2人はある程度のシンパシーをお互いに感じ取っていた。しかし、それを戦いに持ち込むほど2人は戦いでの若輩者ではなかった。
「てめぇからはレディを大切にしない匂いを感じるぜ」
「何言ってるかは分からないけどよ、俺は男女平等に戦うぜ」
「粗砕!」
「天空衝撃!!」
サンジからの重い一撃を籠手で受け、そのままその衝撃を衝撃貝で弾き飛ばすユーシス。そんなユーシスがサンジとの戦いの中で感じたのはサンジが異常に硬いということだった。人とは思えないほどの身体の硬さ。どういう原理かは分かっていないが、ユーシスはそれに苦労していた。
「これは効いただろ黒足のサンジ」
「効かねぇよ。愛の力だ!」
「あんた、意味分からないって!」
結局、サンジの力の源というのを知ることが出来ず、愚直に戦っていくユーシスはその強敵具合に多少の笑みを浮かべる。一方、サンジはユーシスとの勝負に割く意識はほどほどにロビンやナミへの心配の方を優先していた。相手の目的がいまいち掴めないからこそ。
「よそ見するほど俺は甘くないぞ」
「排撃!!」
並の人間なら肋骨すら折れるほどの一撃。しかし、サンジの場合は口から少量の血を吐いただけで、ユーシスが思っているほどのダメージは得られなかった。それはユーシスに絶望感を味わせるには充分であり、自分の腕にダメージ覚悟で放った攻撃がこれではやってられないと思うのも無理は無かった。
「はぁ、何なんだよ。こんなんだったらマグメルと代わってもらった方が良かったかもな」
「オレから質問いいか?」
「答える範囲なら答えてやるよ」
一度離れて攻撃の手を緩めたユーシスに対してサンジは自分が思っている疑問を投げかけていく。サンジとて危険な強敵相手にはこんなことはしないだろう。しかし、ユーシスは何の理由もなく、何かしてくるやからでは無いと直感で判断していた。
「なんでお前たちはこんなことをする。オレたちに恨みでもあるのか?」
「恨み? そんなものなんてない。個々に因縁があるやつはいるみたいが、それは主目的じゃない。俺たちはあんたたちと戦いから戦うんだ」
「オレたちを狙ってわざわざ待ち伏せたのか? 何の為に?」
「意味なんてないさ。俺たちの艦長が麦わらのルフィと戦いと言ったんだ。それに着いていくのが仲間だろ? 俺は仲間って言っても信念もやりたいことも違うけどな」
ユーシスの答えを聞いてもサンジは完璧には納得しきれなかったが、それはひとえにサンジを含む麦わらの一味が自分たちがどれだけの立場なのかを理解していないことが大きかった。ユーシスは聞かれたことを答えたからなのか、立ち上がり、またも拳を構える。
「さっ、やろうぜ。俺はどうなろうと問題ないしな」
「とっとと片付けて他のやつのところに行ってやるぜ」
またサンジとユーシスの戦いが始まる。今度は迷いも驕りもないただの男と男の戦いが。
★ ★ ★
「おい、何なんだよこれ」
「フランキー将軍!!」
縄を使って上手く戦っていたルッカだったが、そんな中フランキーは突然巨大なロボットを呼び出し、乗り込む。そんなロボットにルッカは戸惑いはするものの特にそれ以上のリアクションは示さなかった。
「フラン剣!」
「ふざけてんな」
フランキー将軍が剣を取り出した時にまたも攻撃を仕掛けるルッカだったが、ルッカの予想に反してその剣は容易いものではなく、しっかりしたもので、ただの縄ではないルッカの縄すらも切られてしまう。
「フランキー将軍はどうだ?! イカしてるだろ」
「俺はそこまでだな。俺はロマンなんて信じないたちだからな」
「黒縄
明らかに硬たそうな装甲を目にしたってルッカは引くことを知らない。それはバレットという人間の形をしているにも関わらず硬すぎる敵と戦ったからであり、その装甲を打ち破ったという自信が自分の中にあったからだった。
「将軍の盾!!」
構えた盾を投げるという中々にイカした使い方をしたフランキーだったものの、その盾はルッカの縄に当たり、ルッカの縄の軌道を変えてフランキー将軍への直撃を避けていく。
「スーパー危なかったぜ! フランキー将軍に傷はついちまったけどな」
いい加減うっとおしくなってきたのか、ルッカはさっきよりも永く長く縄を伸ばしていく。それに対するフランキーもルッカが大技をしようとしているのに気づき、フランキー将軍の腕を合わせて大技に対抗する。
「漢と漢の張り合い始めようぜ!」
「お前ことは全然分からないけどな、やってやるよ。油断するなよ」
「オレはいつでも本気だぜ」
「将軍砲!!」
「黒縄
フランキーの空気中をも震わすような砲撃。それはルッカの体を吹き飛ばすほどのもので、並の人なら容易く飛ばされてしまうだろう。しかし、ルッカは気合いで何とか地面から離れることなく、耐えていた。そんか中で伸ばされるのはルッカの黒くなりながらも神々しい縄。何重にも引っ張られたそれはついにフランキーに放たれる。
「アオ! フランキー将軍は壊れねぇぞ!」
「知らねぇ! 俺の目の前に立つ者もシオンの前に立つ者も全部俺が壊してやる!!」
フランキー最大の攻撃が終えても倒れないルッカの攻撃がフランキー将軍を貫く。それは内部にもいたフランキーにも刺さったことで、フランキーは荒い息を吐きながら、倒れる。あと数分もあればフランキーは回復するだろうことは戦いの中でルッカは察しており、ご丁寧に動けないように縄でぐるぐる巻きにしていた。
鉄人フランキー
VS
黒縄ルッカ
勝者ルッカ
★ ★ ★
段々と様々な戦場で決着が着いていく中、2人の実力が大きく離れているにも関わらず、アデルとロビンの戦場はまだ決着が着いていなかった。それは果たして相性の問題で決着が着いていないのか、それとも2人が決着を着けたくないのか。
「アデル! もう辞めて。能力を使い過ぎいているわ」
「黙って! もうロビンさんが居た頃の私じゃないよ。そんな簡単に体力なんてなくならないし、能力だってもっと使える」
ロビンが自分を一人前の人と見てくれないことに苛立ったのか、アデルは思いの丈を叫んでいく。それを受けてもなお、ロビンはどうしてもアデルを守る対象としてしか見れていなかった。
「そこまで認めてくれないなら、私だって本気でやりますから。ロビンさんも本気で来ないと死んじゃいますよ」
ロビンとアデルがいる場所の近くには幸か不幸かオエステアルマダ号が置いてある場所であり、アデルはそれに近づくと勢いよく手を触れ、オエステアルマダ号を増やして、投げつける。
「はぁ、はぁ、これでも私が本気じゃないって言える?!」
「多輪咲き!!」
しかし、決死のアデルの戦艦はロビンの作り出した巨大な手に止められて動きを止め、消滅していった。だが、アデルだってロビンの能力を大体を知り尽くしている身。ロビンが不得意であろう間合いに近づき、一本のナイフを増やしてしながら戦っていく。
「ロビンさん! 私って強く……なったよね?」
「ええ。貴方は強くなったわアデル。でも、駄目。私はルフィを海賊王にしたいの」
「……ロビンさんに……そこまで言わせるなんて、あの人は良い人なんですね」
アデルが思い出すのはデッドエンドで過ごしたルフィという人のこと。アデルはあんなアホそうな人がロビンのことを惹きつけたという事実に寂しそうな、それでいてルフィのことを羨望するような表情する。まるでそれは存在しないロビンとの記憶が欲しているようでもあった。
「アデル。貴方のことも愛してる」
「六輪咲き クラッチ」
2人は顔を合わせながら、ロビンの技にアデルはダウンしてしまう。決してロビンが非道だった訳ではない。互いに互いを尊重し合い、その末に決まってしまった決着なだけだった。そこに恨みも辛みもない。その証拠というようにやられてしまったアデルの顔は涙こそ出ているものの、笑顔なことに変わりは無かった。
悪魔の子ロビン
VS
複製者アデル
勝者ロビン
★ ★ ★
他の戦場よりも落ち着いた雰囲気が漂うこの場。ここではカリーナとナミがお互いの得物を使って渡り合っており、派手さは無いものの、熱意とお互いの信念がそこにはあった。
「カリーナ! これが本当にあんたのやりたいことなの? こんな戦い何にも得られないと思うんだけど!」
「得られないでしょうね。でも、この戦いに意味を見出そうとする馬鹿もいる。あたしはその馬鹿みたいな艦長と一緒にいた方が楽しいってこと」
この戦い。どっちが勝ったとしてもそこまで大きな財宝や宝を得られることは無い。しかし、そうだったとしても戦う意思を曲げることはないカリーナにナミはいつの日にか会ったカリーナとは変わったんだということを実感していた。
「昔とは変わったよね。昔のあんたならもっとお宝を得ることに全力になっていたと思うけど」
「あたしだっていつまでも子どもじゃないってこと。あんたこそもっと余裕があったと思うけど?」
互いにリスペクトをしつつ、過去を見て、今の自分たちを見る二人。この戦いにドス黒い感情のやりとりは無かった。ただ互いに清々しいほどの感情で懐かしいんでいるだけだった。
「あたしはルーファスが決めたなら海賊王になる道筋を手伝う覚悟がある。あんたがそれがあるの? ナミ」
「海賊王になるのはルフィ。私たちはそう信じてる」
二人が絶対に譲れないライン。それを語り合ったことで、二人の間には相手を叩き潰す大義名分が出来た。互いにそれを狙っていたわけではないが、それこそがこの二人が戦いに本腰を入れる為には必要なことだった。
「カリーナ。容赦は出来ないから」
「それはこっちのセリフ。やられても文句を言わないでよ」
ナミの持つ武器から出されるのは卵のような物体。そして、そこから出てくる黒い雲のようなものが空中へと鎮座する。それに警戒しつつナミに近づくカリーナの上空が光る。
「サンダーブリード=テンポ!!」
その雷雲から落とされる雷にカリーナは瞬時に剃を使ったことで、直撃は避けられたが、肩に大きな火傷を負ってしまう。しかし、それでも近づくことを緩めずに仕込み靴で蹴る。
「こんなことでやられると思ってる?」
「思ってないから! あんたが自分の目的の為に諦めないってよく分かってる」
「よく分かってるじゃん。流石、同業者」
カリーナが繰り出してくるヌンチャクや薙刀、仕込み靴による攻撃にナミは所々を擦りながらも反撃をしていく。いつもは頭を使って船で役に立っているとは思えないほどに泥臭い二人の戦い。二人ともがこの戦いは誰にも見られたくないと思っていた。
「あんたに恨みはないけど、絶対に倒すから」
「あたしこそ、情けない姿をルーファスに見せられない」
語り合うことは語り終えたのか、互いにこれが最後の攻撃だろうと察しながら、武器を構えあう。静かな空間だった。誰にも見せることのないプライドだけが支配する静かな空間だった。
「ゼウスブリーズ=テンポ!」
「デカっ! でも、隙ばっかり!」
巨大になったゼウスという雷雲が地面に叩きつけられ、その頑丈に作られた黄金が崩れ去るも、カリーナはそれを避けることに成功しており、自分が火傷を負ったのと同じ場所であるナミの肩を薙刀で貫く。
「ブラフ!?」
薙刀に貫かれている肩がより痛くなるのも無視してナミはさっきと同じ状態のゼウスをその棒で引き寄せる。雷の塊であるゼウスを自分の方に寄せたらどうなるか分かっていながらも。
「雷霆!!」
ゼウスから放たれた雷がカリーナとナミを貫き、どちらもが再起不能のダメージを受けて、倒れていく。ここにも勝者と言える者はいなかった。
泥棒猫ナミ
VS
女狐カリーナ
相打ち
後は4人で戦いは後半戦へと向かいます