霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。 作:地支 辰巳
同じ頃に初めたルッカとフランキーが決着を着いてもマグメルとゾロの戦いは終わることを知らず、それどころか熱量はどんどんと増していっていた。
「いやー本当に楽しいですね。この戦いは」
「どんだけ体力知らずなんだよてめぇは!」
「閻王三刀流 煉獄鬼斬り!」
「油断も隙もあったもんじゃありませんね!!」
「魚人空手 八千枚瓦回し蹴り!!」
ゾロの禍々しいオーラを纏った攻撃を防ぐため、素早く人獣型へと変身したマグメルはその巨体を活かした技でゾロの刃を防ごうとする。しかし、そう簡単に弾き返せるものな訳なく、キリキリという音と共にお互いの体は少々離される。互いに笑みを浮かべることを忘れることはせず、この強敵との闘いを楽しむ。
「やっぱ強えな。倒しがいがあるぜ」
「まるで悪役みたいですね。いや、悪役ですね。海賊と海軍の両方を刈っている時点で」
「違いねぇな」
「李徴」
禍々しいまるで魔王のような覇気と気配を見せるゾロに対抗する為、マグメルは自身の最高形態である四つ脚で黒い羽衣を纏っているかのような形態へと変身する。動物系の中でもトップクラスの実力を誇るマグメルの覚醒。この覚醒形態の前にはどんな動物系の形態も霞むほどだった。
「私のこの形態を貴方に見せるのは二度目ですかね。でも、前と同じにしてはいせませんよ。私は日々成長してるんですから」
「竜も恐竜も刈ってんだ。今更、虎なんて軽いもんだ」
「そう言うなら、とっとと倒して見て下さいよ!」
「大辰撼!」
お互いに煽り合いながらもゾロの煽りを受けたマグメルは大きく辺りの風を揺らし、まるで嵐が来たかのような風の強さが二人の間を吹かせる。それをものともせずにゾロは一本を構え、気迫を溢れ出させながら、マグメルに突っ込む。
「そんなものにビビりませんよ! 私を舐めないで下さい」
「字渦!!」
目の前まで迫っていたゾロの刀を風の渦を押し固めたようなものによって止め切る。その風の塊はゾロの刀を左右に揺らしながらある程度受け止め、発散し、周囲に斬撃のような風を吹かせる。
「改良型です。どうですか? 中々良いカウンターだと思いません?」
マグメルの破裂した風の刃を喰らい、身体の至る所に切り傷が出来るゾロ。そんなゾロは息を吐きながら、鉢巻を頭に巻き、大技を繰り出すかのような構えを取る。それを理解したマグメルもまた大技を繰り出す構えを取る。
「虎虎婆 彪狩り!!」
「
ゾロの全開の覇気が込められた一撃を防ぎ、致命的な一撃を与えるべくマグメルの掌から放たれたのはまるで巨大な槍がそのまま放たれたような空気砲。それはゾロの体にいくつもの致命的な切り傷を負わしていき、攻撃が止むまでゾロの状態は確認出来ないほどだった。
「いくら頑丈なやつでもこれで生き残れますかね」
「死から現れるのは悪魔か死神か。俺はお前を刈るもの」
「閻王三刀龍 一百三情飛龍侍極!!」
あの攻撃を喰らった上で上空からマグメルを見据えるゾロは何処かしらからも血が流れてきており、地獄から舞い上がってきたきたと見間違うほどだった。
「そんな! 攻撃に!!」
ゾロの閻魔大王が放つが如き一撃はマグメルの身体に一生消えないような傷を負わせ、その体をただの人型へと戻させるが、その命を奪うことも戦意を失わせることだけは出来なかった。
「はぁ、はぁ、私だけじゃないですね。そっちもボロボロですね」
「テメェの方がへばってるだら。こんな傷は無いも同然」
お互いに傷だらけになっていたが、まだまだ戦闘不能に遠いだろうことは互いにわかり合っていた。だからこそ、また改めて血だらけの腕は二人とも構えるが、間に金髪のあいつが割って入る。
「おいおい、俺にやらしてくれよマグメルよ! こんな剣士がいるんだったら、俺しか戦うに相応しい相手はいねぇだろうがよ!」
「何言ってるんですか。貴方の相手はジンベエだったはずですよね?」
「ああ、まだ倒してねぇよ。そこらへんで待たせてる。選手交代だ」
急に乱入してきたジンベエと戦っていたはずのエレカ。そんなエレカからの申し出。いや、要求といった方が正しいだろう。それに二人は拒否しようとするも多少の傷を負っているエレカは拒否しようとするのならば、無理矢理にでも乱入するという気概に満ちていた。
「……分かりましたよ。そこまであなたが言うんだったら、譲ってあげますよ。一つ借りとして」
「はっ! やっぱ分かってるじゃねぇか! 流石、俺のところの艦長代理だ。任せとけ、勝ってやるからよ」
「まっ、せいぜい頑張って下さいね。応援ぐらいはしてあげますから」
エレカへとゾロの相手を譲ったマグメルはジンベエがいるであろう方角へと進んで行く。その道のりでマグメルの傷は動物系の十八番である回復力から傷口が塞がっていた。
「さぁ、やろうぜ。どっちが最強の剣士かをよ?!」
「刀を持ってる奴なら手加減する理由はねぇな」
先ほどのマグメルとの対決に負けず劣らずの気迫がゾロから溢れ出る。それを感じて、エレカも自分を楽しませてくれそうな強敵との対決に笑みを深くする。
★ ★ ★
「アハハハ、おまえも白いなー!」
「性格まで変わり過ぎですよ」
白くなり、まるで神のような神々しさを放つルフィと同じく白銀の神々しさを纏うルーファスの状態はどちらも似通っていたが、その内面といったものは真逆と言っていいものだった。
「ゴムゴムの白い鞭!!」
「霧細工
ルフィが勢いをつけて放つのは遠心力も加わった上のゴムゴムの鞭。それを受けてしまえば、ルーファスも尋常ではないダメージを負うことは明白だった。だからこそ、ルーファスも意思を持つかのような霧でその攻撃を受け止める。
「いてて、この白いやつすげぇ硬え! アハハ」
「本当にペースが崩されますよね」
笑い笑い楽しそうに戦うルフィに対して覚醒し、いつもよりも冷静で冷徹になったルーファスは苛立ちを隠すことが出来ないまま、自分の攻撃へと速やかに移っていく。
「霧分身
目の前さえ見えなくなる深い霧が二人を包みこんでいく。そして、その霧に紛れるようにいくつものルーファスの形をした霧が同時にルフィのことを襲っていく。一つ二つが時間差で来るならまだしも、ルーファスの形をした霧は四方八方から際限なく襲ってきていた。
「おぉ!! 危ねぇー。当たったら切れるだろ!」
「ゴムゴムの白い銃乱打!!」
霧を晴らすような勢いで放たれるルフィの拳。それらはルフィの目論見通り、ルーファスの形をした霧を全て消し去り、辺りを包み込んでいた濃い霧を全て晴らして見せた。
「ハァ、ハァ、これ結構疲れんですけど、やられたら仕方ないですよね。でも、僕の全力はまだ出してませんよ」
「そうか! アハハ、オレもだ!!」
「ゴムゴムの白星銃!!!」
ルフィがふざけているのかというぐらいに回りながら放とうとしている攻撃。その攻撃の危険性をルーファスは見聞色でいち早く察知すると、大きい息を吸って、吐く。その動作には自分の中にある悪魔の実の意思といったそういったものを確認するような意味を持っているようだった。そして、ルーファスは今の自分に出せる全力の技を放つ。
「
まるで風が吹いたかの如く自然にそして、素早く刀へと纏われていく霧。その纏われた霧はこれまでの霧と違い、透き通って薄いものだったが、触れてしまえば本人も気付かない間に切れてしまうようなそんなプレッシャーに溢れていた。
「これでやられて下さい!」
「オレは死なねぇ!!」
ビリビリと武装色同士がぶつかり合い、辺りの建物や地面を抉りながら拮抗していく。そして、白い白い光に包み込まれ、二人の勝負は一瞬見えなくなったが、新たに見えたのはお互いの体から白い部分が無くなっている二人だった。
「げ、元気が……ねぇー」
「僕もここまで消耗して勝負がつかないのは初めてです」
覚醒した能力を使いすぎた代償か相手が一歩も動けていないにも関わらず、動くことが出来ない二人。それはある意味で回復次第、第二ラウンドに突入するだろうことを示していた。
「良い……ですよ。食べて下さい。いっぱいありますから」
「ほ、ほんとか? おまえ、良いやつだな」
自分たちの長の対決を心配で見学していた一部の水夫からもらった食事を食べながら、その半分をルフィへと渡す。ルフィはその行為に目を輝かせ、元気が無いはずなのにどんどんと食事を口へと運んでいく。ルーファスはどんな手段を使ってもルフィに勝ちたいわけでは無い。ただ、正面切って戦って勝ちたいだけだった。ガツガツと食事がする音だけが数分続いた後に、ようやく立ち上がる二人。
「うし! やるぞ!!」
「第二ラウンドです。始めましょう」
「ギア4 バウンドマン」
「霧隠れ 黄霧四塞 天之狭霧神」
覇気を全身へと纏い、玉のように巨大化するルフィと黄金色の霧を周囲に鎮座させるルーファス。先ほどの戦いは神々しく、触れられないような戦いだった。だが、今から始まる戦いはまたそれとも違う。熱気に溢れた殴り合いが今にも起こりそうな、そんな戦いだった。
「ゴムゴムの猿王銃!!」
「
ルフィから出されるのはゴムによって圧縮されたパンチ。早さだけで言えば、先ほどの形態よりも早いパンチ。それを翼のように変化させた霧で受け止めるルーファス。決して軽くはない攻撃を受け止めたことで、後退りしていったが、何とか受け止め切れて、カウンターのように大きな翼をルフィにかすらせる。
「痛え。何だこの霧」
「僕の作り出した霧ですから、刃物のように鋭くすることも、雲のように包み込むことも可能です」
「面白い能力だけど、負けねぇ!!」
ルフィの圧縮されたパンチが何十発もルーファスに応酬されるが、ルーファスはそれを鎮座された霧でほとんど防いでいき、逆に鋭利に尖らせた霧を弾丸のようにルフィに打ち出していく。それらの撃ち合いは数分間も続いていき、互いに体にいくつも傷跡が出来ていた。
「ハァ、ハァ、次で終わらせます」
「オレもだ!」
「ゴムゴムの大猿王銃!!」
「
先ほどのルフィのパンチよりも比べものにならないほどの大きさになったパンチがルーファスを襲うが、ルーファスもドリルのように刀の先に形成された霧で突撃していく。どっちも拮抗していたが、攻撃の中心部分がズレたことで互いの体に攻撃が刺さり、すれ違っていく。
「何か気持ち悪りいぞ。この攻撃」
「その攻撃は内部に響くやつですから。でも、ルフィさんの攻撃も痛いです。覇気が凄くて」
「シシシ、そうだろ」
互いに笑ってはいるが、先ほどの傷も相まってその形態は解除されていく。自分の出せる全力の形態とそれに准じる形態を経ても尚、二人は勝負をやめるような真似はしない。それはひとえにこの勝負が楽しいからであり、どちらが強いかというものを示したいという欲求にかられたからであった。戦いはまだ続いていく。
さぁ残り話数も少なくなってきました