霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。 作:地支 辰巳
熾烈を極め、嵐のような戦いを長い間繰り広げていたユーシスとサンジ。二人にとってこの戦いにかける意味は他の仲間たちと比べてもそこまで大きいものではない。しかし、ここを乗り換え、数多の試練を乗り越えた先にある自分の夢と理想の為、二人は拳と蹴りを放つ。
「お前、仲間の中で懸賞金はどれくらいだよ」
「ん? 四番目だ。それが何かあるのか?」
「俺もな、俺もな。四番目なんだよ!!」
元々はゾロと変わらない懸賞金で三番目だったサンジだが、その懸賞金もワノ国での決戦を経て、ジンベエに懸賞金を抜かされていた。その怒りをぶつけるかのようにユーシスに素早い蹴りを繰り出していく。しかし、ユーシスとてそんな逆恨みのようなものを馬鹿正直に受ける訳にはいかないので、さばきながらも衝撃を返していき、痛み分けと言えるぐらいにしていく。
「温度レアストライク!!」
「カウンターバレット!!」
炎を纏った攻撃に対してちょうど核を突き、攻撃以上の衝撃波を出してサンジの攻撃をかき消す。そして、その衝撃によって攻撃してきたはずのサンジにダメージがくる。しかし、サンジの炎によってユーシスの手も燃え広がっていく。
「悪魔の実も食べてないんだろ? あんたは一体なんなんだ」
「俺はプリンス。レディの味方のプリンスだ」
「俺も一応プリンスだからな、そこら辺では親近感を感じるぜ」
自分のプリンスという過去になにかしらの決着が着いているからなのか、真っ直ぐに目線を合わせながら自分はプリンスだと名乗るサンジ。それに対して真っ直ぐに見返せずにボソッとプリンスだと名乗るユーシス。自分の家族との問題。それに決着をつけたのか、つけていないのか。それは人生においては大きな問題、しかし、この戦いに関しては些細すぎる問題だった。
「……俺の能力はまだ覚醒してないからな」
「
船の表面にに手を置き、覚醒能力を吹き込んでいくユーシス。その瞬間、グラン・テゾーロそのものが揺れ動き、まるでポップコーンが弾けるように船の表面が暴発していく。他の人をも巻き込みしうるかもしれないその攻撃にサンジはガッとユーシスを睨む。
「この攻撃、俺らもだけど、お前の仲間も巻き込むじゃねぇのか」
「巻き込むかもな。でも、それで死ぬようなやつは俺らの海賊団にはいないさ。それに対策ぐらい打ってあるからな」
「お前を倒せばこの揺れは止まるんだろうな?」
「止まる。俺を倒せばこの揺れもあんたの敵も居なくなる。さぁ、こい。黒足のサンジ」
この場において悪役になりきるように覚悟を決めるユーシス。ユーシスにとって受け継ぐべき正義の形はエンドルフのような容赦もしない正義の形。それに近づく為にユーシスはこの場において極端でも勝てるような形を探っていた結果がこれだった。
「魔神風脚」
「俺の高温の脚に耐えられるのか」
ユーシスの中での覚悟、そのユーシスの理想をある程度を察してながらもサンジは全力を出して倒すことを決める。そこにはユーシスの漢気をある程度尊重しながらもナミやロビンに危険が及ぶかもしれないという一筋の思いだけが彼の炎を燃やしていた。
「受けて……立ってやるよ!」
まるでエンドルフが凍った時のような美しい藍色をした炎に向かっていくユーシス。徒手空拳と何度もぶつかる脚技にダメージは互角と思われたが、それをお互いに分かっているからこそ、ユーシスはここぞという時に能力を発動する。
「永遠衝撃」
何度も何度も内部からはしる衝撃にサンジは立っていられなくなり、片脚をつくも、完全には倒れるようなことはせず、深い息を吐きながらギリギリでタバコを咥える。
「俺は逆境でこそ燃えるたちだ。気をつけろよ」
「体内で衝撃が回って、周りの舞台も壊れてきている。そんなタバコを吸ってる余裕があるのか?」
「あるさ。カッコ悪い姿は見せらんねぇからな」
「牛肉バースト」
その言葉を体現するかのようにサンジは急加速で接近すると首から順に蹴りを叩き込んでいく。その蹴りは外骨格や炎を合わせている為か、ユーシスの身体に深く刺さっていき、いくら衝撃を溜め込んでいるといってもダメージを軽減することは出来ない。そして、ユーシスは勝負に出る。
「
衝撃貝と排撃貝、そして全身から能力によって放出される衝撃、その全てをサンジに対して向けるが、それらを受け、あらゆるところにダメージを受けながらサンジは攻撃を緩めるようなことはせずに攻撃を続ける。
「……くだけ……やがれ!」
「俺は……俺の…理想に」
そして、サンジの灼熱に満ちた蹴り技により、ユーシスは壁に叩きつけられ、地面の揺れもサンジ内部の衝撃も止まっていく。この瞬間、サンジの勝利が確信されたが、そのサンジも最後にユーシスが放った攻撃や内部で起きていた衝撃から倒れ、この場に理想を体現した人はおれど、勝者はいなかった。
黒足のサンジ
VS
革命の申し子ユーシス
相打ち
★ ★ ★
「テメェはさっきのやつよりも強いのか?」
「ハッ、嫌なこと聞くじゃねぇか。ぼちぼちってとこだよ!」
早々に鳴り響く刀と刀が擦れる音。どちらの刀もが世界的に名の知れた名刀であり、その刀と刀が奏でる音は最上級なものであるが、通常の剣士たちが奏で合うものよりもそれらはひどく暗く、ドス黒いものだった。
「いいじゃねぇか! てめぇのその野望も欲望をもっと俺にぶつけて見ろよ!!」
「……うるせぇ野郎だ」
真っ直ぐに自分ではなく、その先を見ているようなゾロの心の内にエレカは自分の親父であるシキの顔を思い出し、煽るように刀を振るっていく。エレカの脳裏にいつも浮かぶシキはエレカを通してロジャーを超えることを夢見ていた。そんな自分そのものを見てくれないような相手にエレカは異常なほどに敏感だった。
「千八十煩悩鳳!」
「獅子・千切谷!」
「チッ、流石に消しけきねぇか」
ゾロの飛ばした飛ぶ斬撃にエレカも合わせるように飛ぶ斬撃を繰り出すもゾロの斬撃を完全に消し去ることは敵わず、いくつかの斬撃に襲わるが、それらは刀で軽く弾いてしまう。
「あーそうだ、忘れてたぜ。てめぇに聞きてぇことがあんだよ」
「鳥は何故飛ぶと思う?」
これまで自分が認めたいと思った剣士に問いかけてきたエレカの問答。これまでの問答を経た上で様々なことを考えたエレカの問答。それに対するゾロは対して興味はなさそうだった。
「俺は鳥じゃねぇからな。そんなもん鳥に聞きやがれ」
「ハッ、そんなこと答えるやつこれまでいなかったぜ。確かにな、その答え98点だ」
「じゃあ、てめぇの答えはなんなんだ」
「俺の答えか? 俺はな鳥は鳥に生まれた以上は飛ばなきゃいけないってことだよ!!」
ルーファスを始めたとした仲間たちや藤虎やカタクリなどと触れ合った末にエレカが理解したのは人はその生まれで自分が何なのかを知り、生まれによって自分の人生で何かをしなければならないということだった。エレカにとってそれは金獅子のシキの元で生まれ、そこで鳥のように自由になるということが自分の人生でするべきことだと理解していた。
「聞いてもよく分からねぇな」
「ハッ、単純に考えてるだけで生きられるんだったら、俺だってそうするさ。だがな、俺は戦うことか深く考えこまなきゃ生きている実感が出来なかったんだよ。こうなるのは当然だろ?」
刀の打ち合いを続けていく内に自分の内心を吐露していくエレカ。こんなにも人に何かを吐露するなんてエレカにしてみれば久々の経験だった。だが、それも考えみれば不思議な話ではない。戦っている時こそ自分が生きていると証明出来るエレカからすれば、今しか生きていないと言えるのだから。
「白金獅子終焉斬!!」
「三刀琉 奥義 六道の辻!」
生きていると世界に証明出来ているエレカの覇王色を纏った大技にゾロも相応の技で受けきるが、その六回の斬撃すらエレカのその技を相殺するにはいかず、ゾロの身体に大きな傷を負わせた。
「グハッ……ハァ……ハァ」
「シハハハ、ようやく人間らしいところも見せたじゃねぇかロロノアゾロ。マグメルからのダメージもあるし、そろそろダウンじゃねぇか?」
「……てめぇも人のことは言えねぇな」
「ハッ……黙っとけ」
見えるほどの傷が出来たゾロを煽ったエレカだが、ゾロからはエレカが体力と覇気を今出した一撃で大きく消費したことを見抜かれていた。そんなギリギリの状況だとお互いに分かっているからこそ、笑みを浮かべ合い、残り少ない戦いを楽しもうとする。
「死んでも文句は言うなよ。手加減は出来ねぇぞ」
「最初からしてなかったろ。だが、ハッ、いいぜ。もう死んでも文句は言えないほど生きたからな。てめぇも神に祈っておけよ」
そして、エレカが改めて見たゾロとその表情はまるで鬼神の阿修羅ように気迫と闘志が際立っており、姿は三面六臂の幻覚が見えるほどだった。
「シハハハ、いいじゃねぇか。俺が殺すに相応しい悪しき神だぜ」
「鬼気 九刀流 阿修羅 抜剣 亡者戯!!」
覇王色を纏ったその力はエレカの目を輝かせるほどのもので、エレカがルーファスに感じたこの男ならば着いていっても良いだろうと思わせるほどのもので、出会い方が違えば、向かう方向は同じだったとの幻覚を見るほどだった。
「
エレカの脳裏に浮かぶのは自身の獅子としてルーツである父親と自分の腕にある羽のルーツである母親の二人。そんな二人が脳裏に掠るその一撃がゾロと拮抗したのは一瞬で、すぐに勝敗は決した。
「チッ……てめぇみたいのが父親だったら……良かったのにな」
「てめぇみたいのが娘なんてごめんだ」
「……ハッ、振られるのなんて……初めてだぜ」
決してエレカが劣っていたという訳ではない。だからといって、ゾロが劣っていたという訳でもない。この結果になったのは運命の機運。それしか言えなかった。
海賊狩りのゾロ
VS
獅子帝エレカ
勝者ロロノア・ゾロ
★ ★ ★
多くの戦いが終盤となり、そろそろ決着が着こうとするこのグラン・テゾーロに何十隻もの軍艦が近づいていた。それはバスターコールをも引き起こすのかと勘違いされるものであり、中にはそれ相応の人間が乗っていた。
「どうやら、エッグヘッドまでに海賊たちが争っているようで揺れるかもしれないのでお気をつけを」
「早く終わらせろ。そんな虫ケラども」
エッグヘッドに向かうこの軍艦。この軍艦に乗っている海軍大将黄猿と五老星の一人ジェイガエル・サターン星の二人を始めた多くの海兵たちはもう直ぐに行き先の途中にあるグラン・テゾーロに辿り着こうとしていた。
次回はいよいよ艦長と副艦長の決着です