霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 いよいよ最終対決です


ある日の夢と自由を求めた

 

 一度戦ったことのあるマグメルとジンベエ。その二人は対面するも、直ぐには攻撃に転ずることは無く、お互いにじっくりと観察し、何かを悟るように口を開く。

 

「こんな戦い意味がないとは思わんか?」

 

「……意味なんて無いんだと私も思います。政治的に何かを与える訳でも無い、勝っても大きな財宝がある訳でもない。そして、結局のところは自分たちの心の為にやってるんです。でも、それってワクワクしません?」

 

「……分からことはないな」

 

 何の目的も得られるものも無い。時代のうねりに関わることも無い大きいようで小さな戦い。この戦いにあるのはただ一人一人の意地だけ。そして、自分の意地と誇りを折らないという面についてはマグメルは仲間の中では強かった。

 

「十分に傷は回復しました。全力で出し切りますね」

 

「こい! おまえさんの力を全て受け止めてやる」

 

「ええ、このよく分からない感情を受け止めて下さいよ」

 

 人獣型へと変身し、どっしりと構えているジンベエへと向かっていくマグメル。そして、ぶつかり合った二人は大技を放つことはなく、何度も何度も拳を相手の体にぶつけていく。それはジンベエにとっては今の自分とマグメルの力の差を計る為であり、マグメルにとってはルフィにばかり目を向けているルーファスへの鬱憤の発散の為だった。

 

「ジンベエ強くなってますね。迷いでも無くなりましたか?」

 

「そうだな。あの時からすれば、わしにも迷いは無くなった。ルフィを海賊王にすると決めたからな」

 

「……海賊王ですか。良いですよね。そうやって純粋に思えるのは。少なくとも私はあんな怪物たちを押しのけ、貴方たちのようなライバルに勝つなんて簡単には思えませんよ」

 

 海賊王になる。それは言うのは簡単であり、目指すのも簡単なものだが、叶えるのは一筋縄でいくものではなく不可能に近いものだ。それをビッグマムやカイドウに勝てなかった自分たちを見てマグメルは悟っていた。そんなものは仲間を犠牲に払ってでも掴むものではなく、適度に目指していくものだと。

 

「それでもわしはルフィを海賊王にする。それが今のわしの役目だ!」

 

「だったら……私の役目はルーを生かす役目ですよ!!」

 

「竜爪拳 竜の鉤爪!!」

 

「唐草瓦正拳!!」

 

 マグメルの爪はジンベエの近くまで迫っていたが、ジンベエの正拳突きから出た空気中を伝わる衝撃波に阻まれ、その衝撃を打ち払うとともに一度距離を取る。

 

「やっぱり強いですね。貴方みたいなの好きですよ」

 

「わしはお前さんのことは好きにはなれん。だが、嫌いにもなれんな」

 

 互いに笑う合う二人。お互いにお互いこそが対戦しがいのある最上級の相手だと理解しているからこその笑顔。それは誰であっても真似できない空間と関係性だった。

 

「それは良かったですよ! 前の私と一緒にしたら危険ですから」

 

「人虎破!!」

 

「わしも未来の海賊王の仲間! ここで負ける訳にはいかん!!」

 

「武頼貫!!」

 

 強靭な人獣型の腕から放たれる衝撃波に対して、水を圧縮したような衝撃波がぶつかる。マグメルの衝撃波の範囲は広範囲でジンベエの身体をかするほどのものがいくつもあり、ジンベエのものはマグメルの衝撃波を破るように一点の水が突き抜け、肩を貫く。

 

「はぁ、はぁ、貴方のその刺青いいですよね。カッコいいと思いますよ」

 

「はぁ、はぁ、お前さんのやつも中々。良いモチーフじゃ」

 

 互いに奥義を撃ち合い、連戦なのも含めて疲れ去った二人。どちらの体力が持ち切るかが分からない中、そんなくだらないことを考えることをせずに二人は自分たちの奥義を出す構えを取る。

 

「これで死んでも責任取りませんからね!」

 

「わしも同じじゃ!」

 

「山月拳 超!!」

 

「鬼瓦正拳!!」

 

 互いの拳が文字通りぶつかり合い、周囲の瓦礫を消し去るほどの衝撃を生み出す。互いの拳は拮抗しあい崩れることは無いものだったが、地面が割れ、建物が壊れるほどであり、二人の決着よりも周囲の舞台の方が持つかどうかというほどだったが……決着は着いた。魚人空手、六式、竜爪拳、八衝拳、その全てを併せ組み合わせたマグメルの拳はジンベエの魚人空手を超えたのだ。

 

「……本当に強かったですよ。死ななくて幸運ですね」

 

「さぁ、行きましょう。ルーには死んで欲しくないですから」

 

 

 悪運を招く者マグメル

  VS

 海峡のジンベエ

 

 勝者マグメル

 

 

★ ★ ★

 

 

「ギア2」

 

「霧隠れ 黄霧四塞 国之狭霧神」

 

 シューという音とともに身体から煙を吹き出し、身体全身が赤くなっていくルフィ、それに合わせるように黄金の霧を身体から放出し、まるで自分自身を守るかのように霧で出来た巨人を創りだすルーファス。互いに既に上着が破れ、一生残っている傷を晒しながら正面に立ち会う。

 

「シッシッシ、勝つ!」

 

「僕も負ける気はありません」

 

 スピードで勝るギア2に対して霧の巨人を使うことで範囲をカバーし、渡り合っていくルーファス。互いに多くの形態を経てきたことで、体力も覇気もギリギリであり、短期決戦になることは避けられないようだった。

 

「ゴムゴムの鷹銃乱打!!」

 

「青鷺火堕ち!!」

 

 自然系であるルーファスの身体を捉える為に武装色を纏った攻撃を放つルフィに対して、そのゴムの腕すらも切り落とそうと青く燃えているように見える一撃を振り下ろすルーファス。ルーファスの重く熱い攻撃を防ぎ切ることは出来ず、ルフィは手を焦がしながらも一度引いていく。

 

「あちぃ! どうなってだそれ」

 

「僕にだって分からないです。でも、霧だって熱くなれるんです」

 

 しかし、追い討ちをかけるように振り下ろされる巨人の刀はルフィの拳によって破壊され、互いに痛み分けのような形になる。それに苦い顔をしながらもルーファスは次の技を放ち、ルフィもまたそれに対応するように技を繰り出し相殺する。

 

「いつまで持ちますか?」

 

「いつまでも」

 

 超人系とは思えないほどの体力とその頑丈さに顔を歪ませ、このままでは負けるんじゃないかとルーファスが思ってしまうほどルフィは強かった。だが、これまで戦ってきた多くの敵たちのことが頭の中を駆け巡り、ルーファスは改めて気合いを入れ直すように刀を握り直し、いくつもの技を連続して放っていく。その放たれた覇気を纏った刀と黄金の霧を排除するように連鎖的に技を繋げていくルフィはルーファスの怒涛の攻撃すらも打ち払っていく。

 

「ここまでとは思いませんでした。僕はもっとやれるはずだと思っていたのに。どうしてここまで出来るんですかルフィさん」

 

「オレは海賊王になる男だ。ここで負けるわけにはいかねぇ!」

 

 世界の中でただ一人しかなれないその夢をこんな場面ですら口にし、真っ直ぐにルーファスを見るルフィ。その叶うはずのない夢をはっきりと口にするルフィにルーファスもまたルフィという存在に憧れ、それを打ち破ろうとするように刀を振るう。

 

「ゴムゴムの鷹銃弾!!」

 

鳳凰一刀断ち(ほうおういっとうだち)!!」

 

 ルーファスの全力で放つ燃え盛るような一太刀もルフィの体から血を吐き出させることには成功していたが、ルフィの迫っている攻撃を防ぐことは出来ずに、腹に大きく一撃を喰らってしまう。しかし、ルーファスはそれでも倒れることはせずに刀を納めて構える。

 

「ハァ、ハァ、まだ終わりません! 雷鳥一閃!」

 

 残る体力はわずかな中でルフィのスピードを捉える為に放った一撃は見事にルフィの体に命中し、体が地面に叩きつける。それを感覚で読み取ったルーファスは喜ぶ暇すら無いようにゆっくりと歩いていくが、その背後で地に足が着く音がする。

 

「ゴムゴムの火!拳銃!!」

 

 振り返ったルーファスのお腹に見事にヒットしたその一撃はギリギリだったルーファスの意識を全て刈り取り、その身体は黄金に叩きつけられた。ここに決着は着いた。最後まで立っていたのは麦わらのルフィだったのだ。

 

 

 麦わらのルフィ

  VS

 霧の支配者ルーファス

 

 勝者ルフィ

 

 

★ ★ ★

 

 

 数時間後、数多の戦いが繰り広げられたグラン・テゾーロにあったそれぞれの気配は敵味方問わず一箇所に集まっていた。この戦いにおける死亡者こそ居なかったが、重症者はどちらも問わずほとんどであった。そして、船長の勝ちは麦わらの一味であったが、戦績は半々と言ってもいいぐらいだった。

 

「さて、思う存分に楽しんだので、もう帰っても良いですよ」

 

「んなで済むかよー! こっちとら重傷者ばっかりじゃ!」

 

「いえ、これで手打ちにしましょう。お互いにこれからも進む道はあるから」

 

 互いの海賊団に仲間がいるロビンからの提案と仲介に戦いが終わった後というのに関わらず穏やかな雰囲気で別れることにした二つの海賊団。そのまま何事もなく別れるはずだったが、砲弾の音と大砲がグラン・テゾーロに響く。

 

「目的は違うけれど、邪魔だからやっちまっていもよろしいんでしょう?」

 

「ああ、やれ。虫ケラに変わりない」

 

 まるでバスターコールを行うかのような強大な軍艦と海軍の数、それを二つ海賊団の全員が認識したが、全員に直ぐに交戦出来るほどの力と余力は残って無かった。

 

「行ってくださいルフィさん。元はと言えば、僕が招いた勝負です。後始末ぐらい出来ますよ」

 

「……おい! お前」

 

「良いんです。ルフィさん。僕はいつだって逃すのも逃げるのも得意ですから」

 

「霧隠れ 五里霧中」

 

 ルーファスから放たれていく霧はグラン・テゾーロだけでなく、海軍の軍艦をも巻き込み、周囲の海域を全て包み込んでいった。ルーファスのやろうとしたことにいち早く気づいたマグメルはゆっくりとルーファスの隣に立ち、肩を叩く。

 

「私たちがやりますから、貴方たちは行ってくださいよ。霧の中での戦い方は心得てつもりですから」

 

 そうは言っても易々と引くことは出来ない麦わらの一味だが、覚悟を決めた目をしたルーファスとマグメルを見たルフィはここを任せることにし、仲間を率いてサニー号へと戻って行く。

 

「僕が勝手に勝負を挑んだんだ。彼らの冒険をこれ以上邪魔することは出来ないよ。みんなも──」

 

 ルーファスが自分以外の仲間を逃がそうとする言葉を発する前にマグメルを始めとする仲間たちがそんな事は今更言わせいようにルーファスのことを見つめる。その光景にルーファスは何も発せないようになってしまい、泣きそうにまでもなってしまう。

 

「さぁ、落とし前つけましょう。私たちの戦いに」

 

「ありがとう。マグー、みんな」

 

 出航していくサニー号と霧の中で海軍の軍艦を見据える9人のミスト海賊団の者たち。そこにいる誰もが後悔を抱くことなく、その進むべき道を覚悟していた。

 そして、麦わらの一味が霧の中に見たのは海に沈んでいくグラン・テゾーロだけだった。




 後は後日談とキャラ設定集を投稿してこの小説は完結となります
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