霧となった少年は最悪の世代に数えられるようです。   作:地支 辰巳

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 これにて本編最終話です!! 長い間ありがとうございました!!


霧と虎の話

 

「アデル。この船に乗るやつも随分と減ったな?」

 

「別に良いんじゃない? ここが家であることは変わらないし」

 

 様々な改造を加え、初めてルーファスが手にした時からは随分と様変わりしたはずだったオエステアルマダ号の今の姿はルーファスが手にした時よりもボロボロになっており、前まであったはずの迫力は少なくなっていた。

 

「誰が居なくても問題はありません。私たちは私たちのある場所を守るだけですから」

 

「そりゃそうだ。まっ指揮する奴が居ないなら、俺が指揮するから心配するなよ」

 

「なんで、ヴィレムに指揮を任せなきゃいけないの? 普通一席の私に決まってるじゃん」

 

 アデルに正体を察せられかけているにも関わらず、ヴィレムは太々しくも指揮に関して立候補してくる。それを今船に乗っているアデル、シオンにルッカの全員が否定するが、分かっていたかのようにヴィレムは受け流す。

 

「大事のは守る力をつけることだけだ。俺はまだまだ弱い」

 

「兄さんの言う通りです。私たちも強くなることが必要です」

 

 あの四皇のクルーに勝ったとしてもルッカとシオンには力をつけることへの余念が無い。そこまでして、力を求める二人をアデルは純粋にカッコ良さを感じ、ヴィレムはほどほどにした方が良いのだと密かに思うのだった。

 

 

★ ★ ★

 

 

 新世界を漂う何のへんてつもない小舟。その小舟には3.4日程度の食料と何もすることが無いエレカが寝転んでいた。ゆらりゆらりと揺られていく船の上、エレカは急に何を思ったのか、立ち上がる。

 

「ハッ! ようやくかよ。やっぱ誰か連れてくるべきだったぜクソがよ」

 

 強大な覇気を感じたエレカはその求めていた強い覇気を見つけたという興奮から立ち上がり、急に動き出そうとするも船の上であることで思い出し、空を飛べる奴を連れてくるべきだった悪態をつく。

 

「だが、これを逃すのも嫌なもんだぜ。しゃーねぇな。あの変な紙もあるし、何とかなんだろ」

 

 しかし、逃すにはあまりにも惜しすぎる大き過ぎる覇気に対して、好奇心とここまで来た意味などを抑えることの出来ないエレカは楽しみを抑え切ることの出来ない子どもようにわくわくした笑みを浮かべながら海に飛び込む。そして、この方法は悪魔の実を口にしていないかつ、食料が無くてもある程度生きられるエレカだからこそ取れる方法であった。

 

「待っていやがれよ強い奴!!」

 

 エレカは刀を背負い、ビブルカードを持ちながらも泳ぐという原始的な方法で目的の地へと向かって行く。その場所は最近赤髪のシャンクスが交戦したと言われるエルバフだった。

 

 

★ ★ ★

 

 

「お前まで着いてくる必要は無かっただろ? 船の方が安全だからな」

 

「うーん、そういうのはいいんだよね。スリルとお宝がこっちの方がありそうだから」

 

 ユーシスとカリーナが地に足をつけたのは世界政府に順従だった支配層に革命した国の地。そこでユーシスは困っているような多くの人に食べ物を分け与えたり、既に革命が終わったにも関わらずまだ戦いを続けようとしている者たちを征伐していた。そんなユーシスを片手にカリーナは争いの元になるような高価すぎるお宝やそのまま腐っていってしまいそうな貴重品などを回収していた。

 

「それ、火事場泥棒だろ?」

 

「使って終わずに忘れされるぐらいなら、あたしが集めた方が本望ですから」

 

「一理はあるな」

 

 瓦礫の山がそこら中に転がり、その道とは言えない道を進みながらユーシスとカリーナはお互いの価値観を改めて確かめあっていく。それが必要かどうかはともかく、お互いにとってはそれを確かめることで、この壊れてしまった道とは言えない道を平常心で動いていくことに一躍買っていた。

 

「そんなにスリルって大事なのか? 俺はスリルよりも信念の方が大事だと思うんだが」

 

「……普通の人にとってはそうですよね。でも、あたしにとってはスリルっていう信念なんです。スリルのある生き方こそが信念なんです。どうですか?」

 

「そうだな。俺の視野が狭かった。大事なのは考えがあるかどうかだよな」

 

 ユーシスのように誰かの為に使われることもある信念とは違って、カリーナの信念は自分の為、自分の人生の指針の為の信念。それはある意味では信念の形としては正しいもののように写り、ユーシスはそんな信念を持つカリーナが新たに眩しく見えた。

 

「よし、次の島に行ってから船に戻るか」

 

「待たせすぎたら怒られるのにその信念も変わってますね」

 

 凸凹というほどでもない二人は進んでいく。その先に革命の下火と眠っているお宝がある限り。

 

 

★ ★ ★

 

 

「ここは落ち着くね。誰も居なくてゆっくり出来そう」

 

「はぁーそんなこと言って住まないで下さいね? ルーにとっての家はあの船なんですから」

 

 多くの戦いと人物と渡り合ってきたルーファスとマグメルは憑き物が剥がれたように穏やかな顔のままで人は一人も居ないが多くの猛獣たちが蔓延る島に来ていた。何をするものでなく、ただ歩き回るだけ。しかし、それでも二人にとっては意味があることだった。

 

「それは分かってるよ。僕にとっての家はあそこで、今の僕にとっての家族はみんなだから」

 

「分かってたら良いんです。私にとっても今の家族はみんなだけですから」

 

「そういえば、こんな風に雑談する機会なんて久々ですね」

 

「そうですね。色々と忙しかったですから」

 

 ルーファスとマグメルの中で出会った時から今のこの場までの記憶が巡る。多くの仲間に出会った。多くの敵に出会った。多くの戦いを経験した。そして、多くの記憶が出来た。この世界ならば、特筆した珍しさもない多くの記憶の事柄たち。しかし、そうであったとしてもルーファスとマグメルは忘れないだろう。この唯一無二の人生を。

 

「もう少しだけここにいましょうか。まだ時間はあります」

 

「うん、そうだね。もう少しここにいたって誰も文句は言わないよ。船に戻るのはその後で良い」

 

「ルー。これからも貴方の隣は私だけですから」

 

「……僕がこれからどんな生きがいを見つけたとしてもそれだけは変わらない。僕の隣はマグーだけだよ」

 

 まるで世界を吹き荒れる風のように目まぐるしく進んでいた二人の人生はこれからも続いていく。しかし、その進みは速度を緩やかにし、一歩一歩を着実に進んで行くことになるだろう。




 後は軽い設定集を投稿して終了です。

 個人的にはこのラストですごく満足しています!!
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