感想や、誤字報告も全て目を通しています。
本当に、ありがとうございます。
そして、今回からUSJ編となります。
ちょっと飛ばし気味かもしれませんが、どうかお楽しみください。
力の使い方
――大いなる力には、大いなる責任が伴う。
アメリカンコミックのヒーローのセリフとして有名なこの格言こそ、今日ののUSJ――嘘の災害や事故ルームで授業を担当するはずだった、スペースヒーロー13号先生の伝えたいことだった。
『皆さんご存じとは思いますが、僕の"個性"はブラックホール。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます』
『簡単に人を殺せる力です。みんなの中にも、そういう"個性"がいるでしょう』
きっと、その場にいたクラスメイトの何名かは、わたしの方を見ていたと思う。
剣は、敵を殺すために作られてきた武器だ。
その敵は、時に獣であり、時に同じ人でもあった。
『けれど、君たちの力は、人を傷つけるためにあるのではない。助けるためにあるのだと、心得て帰ってくださいな』
ブラックホールという個性を、誰かを傷つけるためではなく、災害や事故から誰かを助けるために使う13号先生だからこそ、この言葉には確かな重みがあった。
先生から学びたいと思わせる、強い光があった。
だからこそ、これから行われるはずだった授業に、みんな心弾ませていたはずなのに!!
「お前ら動くな、あれはヴィランだ!」
相澤先生の、切羽の詰まった声に、どうしようもない現実を突きつけられる。
遠くに見える中央の広場に出現した黒いモヤから、次々と怪しげな風貌をした人たちが現れていく。
それだけじゃない。
(ヴィランたちが出てきた黒いモヤ、人型になった! それに、そいつの隣にいる全身手だらけの男と、特に生気の感じられない黒い怪人風のヴィランに、何か凄く嫌な予感がする!!)
もしかすると、この騒動の主犯格なのだろうか。
でも、そんなことがどうでも良くなるくらいの何かを、そのヴィランから感じてしまう。
その何かに恐れていると、隣で状況の把握に務めていたらしい轟君が、ぽつりと呟いた。
「現れたのは、ここだけか学校全体か……なんにせよ侵入者用センサーが反応しねぇなら、向こうにそういうこと出来る奴がいるってことだな」
轟君の独り言に、わたしはハッと気づかされる。
この状況は、相手が狙って作り上げたものだということに。
「USJは校舎と離れた隔離空間で、しかもピンポイントで授業が行われるタイミングを狙ってきた……だからこれは、何らかの目的があった上で行われたってこと……?」
「……だろうな。アイツらはバカだがアホじゃねぇらしい」
みんなの間に、張り詰めた空気が流れだす。
到底信じられないけれど、雄英高校へのヴィランの侵入が、決して質の悪い冗談じゃないことを受け入れるしかなくなったから。
ヴィランの襲撃に動けないでいるわたしたちに、相澤先生が鬼気迫る声で指示を出す。
「13号、避難開始! 学校に連絡試せ! センサーの対策も頭にある敵だ、電波系の個性が妨害している可能性もある……上鳴、お前も個性で連絡試せ!」
「先生は!? 1人で戦うんですか!? あの数じゃ、いくら個性を消すっていっても!!」
いつの間にか、ゴーグルをかけて戦闘態勢に入っていた先生を、個性に詳しい緑谷君が止めようとしていた。
相澤先生の個性は"抹消"。
目で見た相手の個性の発動を止める力は、戦闘のほぼ全てに個性が用いられる現代において強力だが、わたしから見ても、今の状況に対応できるとは思えなかった。
「イレイザーヘッドの戦闘スタイルは、敵の個性を消してからの捕縛だ。正面戦闘は……!」
「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号、任せたぞ!」
先生はそう言い残すと、中央へと繋がる階段からヴィランのいる広場へと飛び降りていってしまう。
一見、どう考えても相澤先生が不利なこの状況。
しかし、そのまま戦闘に入った先生は、緑谷君の懸念とは裏腹に、人数の差をものともせずに、次々とヴィランを撃破していった。
「凄い……! ゴーグルで目線が見えないから、誰の個性を消されているのかが分からなくなって、相手の連携が乱れてる! 多対一こそ、先生の得意分野だったんだ!」
「分析してる場合じゃない! 早く避難を!!」
胸中の不安を、先生の戦闘を見て分析して解消した緑谷君に、飯田君が呼びかける。
しかし、その呼びかけは一足遅かった。
「――させませんよ」
「!? 気を付けて!! そのヴィラン、他の敵よりも嫌な予感がする!!」
さっきまで、広場の中央にいたはずの黒いモヤのヴィランが、突如として出口に向かおうとするわたしたちの前に立ちふさがる。
ここに現れるまで、空中を飛んできたり、地上を加速して一気に近づいてきた予兆は感じられなかった。
それに、他のヴィランがこの黒いモヤの中から現れたことを踏まえれば、この摩訶不思議な現象の正体は――!!
「ワープ系の個性!!」
「おや、さすがは優秀なヒーローの卵……なら、速やかに目的を達成するとしましょう」
直後、黒いモヤが爆発的に膨張し、ひとかたまりになって行動していたA組の皆に覆いかぶさる。
『『我々は
どこからともなく、敵の声が木霊するように聞こえてくる。
全方位から囲まれ、成す術の無くなったわたしたちは、せめて防御態勢を取るくらいしか出来なくて。
『『邪魔な
気が付けば、わたしは空中から、見たことのない場所へと落下していた。
「嘘!? ここどこ!?」
「雄英の生徒だ!! やっちまえ!!」
声のした方に目線を向けると、広場と同じ程の数のヴィランたちの内、銃のような遠距離への攻撃手段を持つ人たちが、落ちてくるわたしを狙っているのが見える。
とっさに、自分を守るべく聖剣を周囲に展開しようとした、その瞬間。
「……凍れ」
空気が軋み、肌を刺すような冷気と共に、地面ごと、周囲のヴィラン全員が凍り付く。
この光景を、わたしは身をもって知っていた。
「轟君!!」
「……無事か? ペンドラゴン」
聖剣を作り出すのを止めて、
先日の戦闘訓練で、何度も苦しめられた氷壁が思い出して、少し苦い表情をしていた気がする。
「轟君はさすがだなぁ……全員のヴィランを、一瞬で無力化しちゃった」
「……ここは恐らくUSJの土砂エリアだ。俺が凍らせる前は、地面が土まみれだった」
「……? あ、そっか。わたし、ここどこって言ってたもんね!」
USJには、様々な状況における人命救助の方法を学ぶため、いくつかの区画が用意されている。
状況を鑑みるに、あのワープの個性で、クラスメイトのみんなは、それぞれ別の区画に転移させられたのだろうか?
後、轟君が難しい顔をしていたのが少し気になったが、今は現状の把握と整理の方が大事だ。
「敵はオールマイトを殺すことが目的だって言ってた。そのために、わたしたちを分断して、そこで殺す算段でいた」
「……初見じゃ精鋭を揃えて数で圧倒するのかと思ったが、こいつらはどう見ても、個性を持て余した輩以上には見受けらんねぇ。ちょっと実力があれば、この程度の氷なんてすぐに対処されてる」
「それは同感! でも、さっきのワープのヴィランと、後は――」
「――馬鹿にすんじゃねぇ!! 雄英生だからって調子に乗りやがって!!」
わたしたちのやり取りに、1人のヴィランが吠えかかってきた。
その表情は怒りに染まっていたが、全身が凍っているせいで何をすることも出来ない。
わずかに残った目と口で、必死に睨みつけながら、ただただ叫ぶだけで精一杯だった。
「今に見てろ! あいつの力なら、オールマイトだって殺せるんだ! その時にはおれたちは、もう平和の象徴なんかに怯えることなんてなくなるんだよ!!」
「あいつ、というのは、あの黒い怪人男のことですか?」
わたしの指摘に、ヴィランは一瞬だけ驚きの表情を見せる。
最初に見た時の雰囲気から、手の男が指揮官で、怪人男が武力担当と予想しての推察だった。
果たして、わたしの予想は当たっていたのか、ヴィランは大胆不敵に笑い出す。
「そうさ! 見たのはたった一度だけだが、あのパワーは人間とは思えねえ! あれならきっと、邪魔な平和の象徴も殺せるんだ!! ハハ、ハハハ、ハハハハハハハ!!」
「聞く手間が省けたな。なら、俺が次に取るべき行動は」
もしも、彼の言うことが本当ならば。
最悪の展開を想像してしまった瞬間、わたしの体は動き始めて、ある聖剣がその姿を現していた。
「お願い! スピュメイダー!」
わたしの聖剣が1つ、剣馬スピュメイダー。
その鞍にまたがり、向かうべき場所へと一目散に駆け出す。
「!? ペンドラゴン!?」
「轟君! わたしは相澤先生の所に向かうから、他のみんなを助けてあげて!!」
「おい!! 待て!!」
轟君には申し訳ないが、今は1秒でも惜しい。
再び
現状、起こりうる可能性が高い最悪のシナリオ。
「相澤先生が、何も知らされずに怪人男と戦闘に入ってしまうこと!」
中央の広場でたった1人、大量のヴィランと戦闘しているはずの先生。
その中に紛れ込んだ、1人だけ圧倒的に格上の、オールマイトとさえ戦えてしまうヴィランと、そのまま戦闘になってしまったら。
ここまで用意周到に準備しているヴィランたちが、本当にそんな力を用意してきているのなら。
せめて、この情報を伝えることが出来たなら、いきなりの正面衝突は避けられるはずだ。
スピュメイダーで移動する少しの時間で、わたしは祈り続ける。
ワープさせられたのが、広場からかなり離れた位置だったのか、すぐに辿り着けないのがもどかしい。
やがて、ようやくエリアの出入り口を抜けたわたしは、危険を知らせるために力の限り叫んだ。
「相澤先生!! 黒い怪人のヴィランに気をつけ、て……」
「本命はおれじゃない――あぁ? おい黒霧、どうなってんだよ……?」
手の男がこちらを見てきた気がするが、そんなことはどうでも良かった。
私の視界に映ったのは、先生と怪人のヴィラン。
そして、怪人のヴィランが相澤先生を地面に叩きつける、決定的な瞬間だった。
信じられない光景に頭が真っ白になって、だけど、先生を助けるため、すぐさま次の行動へと移す。
「――解放、聖剣マルミアドワーズ!!」
コスチュームが光に包まれ、現れたのはマルミアドワーズと荘厳な衣装。
怪人へと狙いを定めた聖剣たちが、空中でその切っ先を向ける。
「先生を放せ!!」
先生を巻き込まないように、それと、ヴィランの命を奪わないようにするため、狙った場所は肩や背中の上半身。
計15本にものぼる聖剣の弾丸が一斉に突き刺さる。
まともに受けてしまえば、余りの威力に吹き飛ばされてしまう。
それだけの威力を、聖剣の1本1本が秘めている、はずなのに。
「――嘘、なんで……?」
「こいつの個性はショック吸収。オールマイトの攻撃も効かない特別仕様だからだよ」
吹き飛ばされるどころか、元の位置から全く動かない姿に、これは悪夢ではないかと疑いたくなってしまう。
そればかりか、悪夢はここで終わらない。
「後、超再生もだ。剣を使うなら刺すんじゃなくて切り刻まねえと有効打になんねえよ……まぁ、それでもこうやってすぐに復活するんだけどな」
メキメキと嫌な音がして、傷口が塞がれると同時に、聖剣がバキリと折れて地面に落ちる。
わたしはここでようやく、「対オールマイト」の言葉の意味を初めて実感した。
あまりにも、遅すぎる理解だった。
本当ならば、間に合わなかったと分かった時点で、速やかにプロヒーローの救援を呼びに行くべきだったのに。
その遅さを運命があざ笑うかのように、手の男が楽しそうに語りだす。
拍手喝采、まるで一つのショーを楽しむかのように。
「そうだ、良いこと思いついた。平和の象徴を殺す前に、まずはその卵を潰してやろう……。
さあ、そのガキを殺せ……脳無!!」
USJへのバス移動も書けばよかったかなと、少し後悔中。
とはいえ、この書き出しで始めてしまったので、2日連続で投稿するために、このまま投稿することにしました。
体育祭編は、もうちょっと丁寧に書くかもしれないです。