『ワタシが投影された!!』
『ん、なぜワタシが映像に映っているかって?』
『HAHAHA! 実は次年度から雄英高校で教師を務めることになってね、その事前通達も兼ねてワタシがこの役割を担うことになってるんだ』
『さて、気になっているであろう試験の結果だが――』
『――おめでとう、合格だ! 筆記試験も実技試験もいい成績だった』
『特に実技試験、あの巨大ロボットを倒した受験生は君も含めて二人だけ!』
『あの0ポイントロボットを倒しても敵ポイントに加点はされないが、その代わり救助ポイントが加点されるのさ!』
『そう、ワタシたち雄英が見ていたのは敵を倒す力だけではない』
『たとえ人生をかけた試験の最中でも、他人を助ける選択をできるヒーローとして大事な心構え』
『君の場合、巨大ロボットを放置することで出たであろう被害を未然に防いだということで加点されているぜ!』
『さて、長くはなってしまったが……来いよ、ペンドラゴン少女! ここが君のヒーローアカデミアだ!』
☆
「うわぁ、さすが雄英。校舎がすっごく広い……確か、異形型の個性に配慮してこのサイズになってるってパンフに書いてたよね」
あの入学試験から時は流れ、今は桜が満開になる季節。
雄英高校の入学式の日を迎えたわたしことアルトリア・ペンドラゴンは、改めて雄英高校の凄さに圧倒されながら廊下を歩いていた。
目的地は、自分のクラスである1-A組教室。
そこから、わたしのヒーローアカデミアがついに始まるのだ。
「色々楽しみで、色々気になることもあるけど……やっぱり、今一番気になるのはあの人だよね」
もちろん、担任は誰だろうとか、オールマイトの授業ってどんなのだろうとか、たくさん考えてしまうことがある。
それでも、やはりその人物のことは存在を知ってから毎日どんな人だろうかと考えていた。
「オールマイトが合格発表のときに言っていた、あの巨大ロボットを倒した人! 一体どんな個性を持ってるんだろう!
オールマイトみたいな超パワーかな? それとも単に機械に強い個性だったのかな? でも、実はわたしと同じ聖剣作成だったりして!」
そうだとしたら、あの謎の夢の声のことを共有できるかもしれない。
もしかしたら、雄英高校に入学することで夢の言葉の内容も変わるのかなと思っていたのだが、結局変わらなかったし。
本当に、いつになったらあれの意味がわかるのだろうか。
同じような個性を持つ人なら、同じ夢を見ていないかと思ったのだが。
「……なんて考えたけど訂正。やっぱり件の巨大ロボットの人はB組に居そうだし、しばらくは会えなさそう」
あれほど楽しみにしていたが、普通に考えればA組とB組でそれぞれ1人ずつ組み分けるのが妥当なような気がする。
入学時のクラス分けは、だいたい入学試験の平均点が同じくらいになるよう行われる。
だから、巨大ロボットを倒した生徒も平等に分けられるのではないだろうか。
「まぁ、大体そうだよね……って、いつの間にか教室ついちゃった」
扉にデカデカと1−Aと書かれた教室には、何やら緊張しているのかあたふたしている緑色の髪の男の子がいる。
きっと、彼も同じクラスの生徒なのだろう。
とりあえず、扉の前に立たれては中に入れないし、どいてもらうついでに話しかけようとして、
「――いや、ちょっと待って。なんで入学初日にここまで謝る必要があるの!?」
「む、君もA組の生徒か。実は、実技試験の時に俺は彼に失礼な発言をしてしまってな。
彼は試験中に救助ポイントに気づく判断力と、0ポイントの敵に立ち向かう勇気と実力を持つ人間だったのに、あろうことか俺は彼を侮辱してしまった。
そのことを、今こうして謝罪していたんだ。混乱を招いてしまってどうもすまなかった」
「あ、うん。入学試験のときのことを謝ってたんだ……礼儀正しい人なんですね」
まさか、雄英高校に入って初めて見るクラスの様子が、背の高い男の人が緑色の髪の男の子に体を90度に曲げて謝っているという謎の光景だとは思ってもみなかった。
しかも、随分前の入学試験のときのことについて謝っていたらしい。
……多分、わたしならもうきっと会うことはないと思って忘れてしまう。
それでも覚え続けていたということは、背の高い彼がよっぽど真面目だったか、それとも緑髪の彼が間違いなくヒーロー科に合格すると信じられるほど優秀だったか――、
「――待って、0ポイントの敵を倒したって言った?」
「? ああ。彼は動けなくなってしまった女の子に気づくやいなや、信じられないほどの跳躍力を見せて、そのまま――」
「あ、そのモサモサ頭! 地味目の! プレゼント・マイクが言ってた通り受かったんだ! そりゃそうだ! パンチ凄かったもん!」
説明中だった彼の言葉を遮る形で、廊下に新しい顔ぶれの女の子――おそらく彼女もクラスメイトなのだろう――がやってきた。
どうやら緑色の髪と知り合い、会話の内容的に彼女も同じ試験会場で実技試験を受けていたのか、拳を大きく上下に降って、彼の活躍を褒め称えていた。
一方の緑色の髪の彼はというと、急に褒められて恥ずかしくなったのか、赤くなった顔を両手で覆うように隠しながら、何とか彼女の言葉に答えている。
つまり、これまでの状況から判断すると、
「もしかして、君がもう1人の巨大ロボット討伐者!?」
「え、もう1人ってことは……君もあれを倒したの!?」
どうやら、わたしの予想は外れていたらしい。
オールマイトが口にしていたその人が誰だか明らかになったところで、改めて彼のことを観察する。
まず目立つのはボサボサの緑色の髪。
背はそこまで高くなく、体格も男子高校生にしてはしっかりしているくらい。
そして、私のことを意外そうに見ている表情からは、何となくだが彼がどちらかというと善良な人物であることが伝わってくる。
……やっぱりとても強そうとは思えないが、2人も証言している人がいるのだから嘘ではないのだろう。
そこまで頭の中でまとめたところで、まだ自己紹介をしていなかった事に気づき慌てて手を差し出す。
「始めまして、わたしはアルトリア・ペンドラゴンって言います。同じ巨大ロボット討伐者同士よろしくお願いしますね!」
「み、緑谷出久です! え、えっと……ペンドラゴン、さん?」
「アルトリアって呼んでください。名字で呼ばれるのはその、少し堅苦しい感じがして苦手なので」
「じゃ、じゃあアルトリアさん! こちらこそよろしくお願いします!」
どうやら、緑谷君という男子生徒は異性と接するのが苦手らしい。
さっきの女の子のときもそうだったが、今こうしてわたしと話しているときも、緊張と恥ずかしさが入り混じったような表情をしている。
――と、一通りの挨拶を終えて、今度は緑谷君のことを褒めていた2人にも自己紹介をしようとしたその時だった。
「……友達ごっこしたいなら他所へ行け、ここは……ヒーロー科だぞ」
廊下からまた新しい声がして振り返り、誰もいないことに首を傾げると、床の方から突然ファスナーが開く音がして、声の主は立ち上がった。
緑谷君とは別の意味でボサボサの黒い髪に無精ひげ、首の辺に巻いている包帯のようなものが印象に残る男性は、教室にいた生徒を一瞥すると、
「はい、君たちが静かになるのに8秒もかかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」
……まるで、避難訓練のときの校長先生のようなことを言い出した。
しかし、そんな冗談を決して言えない空気をその男性は作り出している。
その理由をとっさに言葉にすることは出来なかったが、代わりに答えを男性が口にする。
「担任の相澤消太だ、よろしくね……早速だが、これ着てグラウンドに出ろ」
雄英高校の教師、そして自分たちの担任。
この学校の先生方は皆プロヒーローであり、プロヒーローであるのなら当然掻い潜ってきたであろう死線を乗り越えた経験こそが、きっとあの先生の圧を作り出していた。
しかも、あの人は天下の雄英高校ヒーロー科の担任を任されるだけの実績があるに違いない。
どうやら他の生徒が、今日は入学式やガイダンスがあるはずだと発言したみたいだが、ヒーロー志望にそんな暇はないと切り捨てて、先生は問答無用でわたしたちを連れて行く。
「――やっぱり、雄英って凄いんだ」
ヒーロー志望に暇はない。
その発言から考えるに、今から行われるのはきっと私たちのヒーローとしての素養を確かめる、或いは鍛えるカリキュラムだ。
「せっかく、
更衣室で体操服に着替えるてグラウンドに出ると、先程の教師が静かな表情でこちらを迎え入れる。
――個性把握テスト。
雄英高校1−A組を試す、第1の試練と共に。