『それじゃあ結果発表……それと除籍は嘘な、お前らを本気にさせる合理的虚偽ってやつだ』
第1位 八百万 百
第2位 アルトリア・ペンドラゴン
第3位 轟 焦凍
☆
「創造の万能性には勝てなかった……! 調子に乗ったのがすっごく恥ずかしい……!」
「ぼ、僕は2位でも凄いと思うよ! うん!」
「万力って何でOK出たの!? 腕力って何!?」
波乱の入学初日を終えた翌日。
わたしは、昨日の結果を振り返ってこれでもかと言わんばかりに身悶えていた。
何というか、今まで本当に個性を使う機会に恵まれていなかったことが、あんな状態になることにつながってしまうとは思ってもみなかった。
せめてもの救いは、そのことを他のクラスメイト全員の前で口にしてはいなかったことだろう。
もしもそんなことをしていれば、昨日のテストが終わった後にいじられ続けること間違いなしだった。
「それにしても、除籍処分にならなくてよかったね! デクくんが最下位になっちゃった時はどうしようって思っちゃったもん!」
「俺は自分がまだまだだと実感させられたよ……嘘で生徒を鼓舞する。さすが雄英だな!」
「相澤先生、本気で除籍にする雰囲気出してたもんね」
さて、そんな落ち込み気味のわたしは現在、とあるクラスメイト3人と一緒に登校をしている。
緑谷君に麗日さんに飯田君。
偶然同じ電車に乗っているのを見かけてこうして一緒になっているわたしたちだが、実は昨日のも一緒に帰っていたのだ。
この繋がりができたのは、昨日のテストが終わった後。
緑谷君がテストで怪我を負って保健室に行っていたので、その様子を見に行ったら他の2人とも出くわしたのだ。
あの日のテストで知ったのだが、緑谷君の個性は超パワーを出せるかわりに、一度使っただけで重傷を負ってしまうデメリットがあるらしい。
序盤で個性を使わなかったのはそれが理由で、本人も力のコントロールがこれからの課題だと雑談がてら話していたのを覚えている。
実際、指だけに個性を使ったボール投げ以降の種目では、痛みのせいなのか実力が発揮できていないように見えたのは勘違いではなかったのだろう。
つまり、もしもあの時相澤先生が、個性を使って腕全体に力を込めようとしていた緑谷君を止めてなかったら、もっと酷いことになっていたということだ。
そう考えると、怖く見えたけど相澤先生は生徒思いの優しい先生なのかもしれない。
とても怖いけれども。
広くて慣れない校舎内を間違えないように進み、バリアフリーの大きな教室の扉を開けて、
「お! 怪我してた奴と真面目で速い奴に、無限女子と変身女子!」
「いや、ちゃんと名前を覚えなよ! ごめんね、来ていきなりこんな呼び方聞かせちゃって。
確か緑谷と飯田、麗日さんにペンドラゴンさんだよね?」
「……えっと、これは?」
なぜか、いきなりよく分からない呼び方で呼ばれた。
改めて教室内を見渡してみると、既に登校していた人たちのほとんどが一箇所に集まっていて、何やら楽しそうに話をしている。
そして、わたしたちに声をかけてきたのは、黄色髪のちょっとチャラそうな男子生徒。
予想外の出来事に驚いていると、今度はさっき男子生徒を注意した耳が特徴的な女の子が、わたしたちの気持ちを察してか説明をしてくれる。
「ほら、昨日はテストだけでまだ自己紹介とか全然してないじゃん? だから早めに登校してたメンツでこうして集まって、お互いに自己紹介してたんだ。
それがさっき終わったから、今度はさっきまで来てなかったあんたらの話になって、そのタイミングで来たからびっくりしちゃったってわけ。
あ、ウチは耳郎響香。よろしくね」
「なぁ、俺も自己紹介していいか!? 俺の名前は切島鋭児郎! よろしくな!」
「抜け駆けなんてずるい! あたし芦戸三奈!」
「俺、瀬呂範太! セロハンテープ出せるやつって覚えてくれ!」
「僕は青山優雅、君たちキラキラしてたけど、僕はもっとキラキラしてたと思わない?」
「……障子目蔵だ。よろしく」
「って俺まだ自己紹介してねえじゃん! 上鳴電気――」
「ところでさ、今日の放課後に人数集めてファミレス行くんだけどよかったら4人も来ない?」
「――いや、最後まで自己紹介させろよ!」
「え、えっと……皆さん、これからの1年間どうぞよろしくお願いします……?」
どうしよう、事の経緯を教えてもらって疑問を解決しようと思ったら、一気に自己紹介が始まって混沌が生まれた。
みんな矢継ぎ早に言ってくるから返事をしようにも、そのタイミングが全くない。
ひとまず、こっちも自己紹介で返したほうがいいだろうか。
――と、そう思っていたときだった。
「……アルトリア・ペンドラゴンと言ったな? いくつか聞きたいことがある」
その人は、カラスの様な頭の男子生徒だった。
確か、昨日のテストでは黒い影のようなものを操る個性を使ってかなり優秀な記録を出していた気がする。
「すまない、自己紹介がまだだった。俺の名前は常闇踏陰。改めて、質問をしてもよいだろうか?」
「わたし、ですか? 答えられる範囲でなら大丈夫ですけども……」
「お前の個性。どうやら剣を出現させる個性のようだが、俺の記憶が正しければ最初に使った剣の名はマルミアドワーズと言ったな?」
「はい。その通りですけど、それがどうかしましたか?」
男子生徒、常闇君はかなり真剣な表情でわたしの目をまっすぐと見つめている。
その気迫に圧倒されて、わたしは答えを口にするのにどうしても慎重にならざるを得なくなっていた。
「持久走で使っていた剣の馬の名はスピュメイダ―。この2つの名にはある共通の人物が関係している」
「あー、もしかしてアーサー王のこと?」
「!? そうか、やはりそうだったのか!」
どうして常闇君が納得しつつも驚愕した表情を浮かべているのかはわからないが、彼が指摘したことは間違っていない。
わたしの個性、聖剣作成で作り出せる7振りの聖剣の名前は全てアーサー王に関係する名前を冠している。
それと、わたしの名前であるアルトリアはアーサー王にあやかって名付けられたものらしい。
「……エクスカリバーは?」
「?」
「世界で最も有名な聖剣。かのアーサー王と共にあり続けたエクスカリバーも、お前の個性に含まれているのか?」
「えっと、一応エクスカリバーって名前をつけた剣はあるけど……」
「――フッ、なるほどな。どうやら俺は盟友に恵まれたらしい」
……誰か、誰でもいいからどうか教えてほしい。
どうして、常闇君はこんなにも満足気にうなずいているのだろうか。
まるで、長年探していたお宝がついに見つかったかのような、それほどのレベルで満足している表情を今の彼は浮かべているのだ。
満足しすぎていて、周りにいるクラスメイトも若干心配し始めている。
しかし、そんなみんなの視線に気づいていないのか、今度はハッと何か大事なことに気がついたかのように両目を大きく開けて、
「ペンドラゴン卿。どうかもう一度自己紹介をやり直させてほしい」
「名字は苦手なのでアルトリアって呼んでほしい――え、卿? ペンドラゴン卿って何?」
「汝に相応しい呼び方と思ってな。それと、汝に己の名を告げるのならコイツも呼ばねばなるまい……来い、
「アイヨ!」
現れたのはおそらく彼の個性である、全身が紫色で黄色の輝く瞳を持った鳥の形をした存在。
そして自我を持っているらしく、近づいてじっとこちらを観察していた黒影を下がらせると、常闇くんはその手を差し出して、
「俺の名前は常闇踏陰、この黒影と共にヒーローを志す者だ。アーサー王の遺志を継ぐ者よ、汝とは良き盟友になれるだろう」
「よ、よろしくお願いします……? でも、アーサー王云々は恥ずかしいので止めてほしいなって――」
「朝礼の時間だ、お前ら席につけ」
「時間切れか……ではペンドラゴン卿、また時が満ちた時に語り合うとしよう」
「その呼び方も恥ずかしいので止めてください!」
相澤先生の声で、さっきまで集まっていたクラスメイト全員が一瞬で席に戻り、こうして雄英高校での2日目が始まる。
ちなみに余談だが。
この日の放課後のファミレスで個性のことを根掘り葉掘り聞かれ、常闇君のアーサー王に関する知識から、わたしの聖剣が全てアーサー王が持っていた剣と同じ能力を持っていることが知られ、A組の皆からアーサー王の末裔ではないかと本気で思われたのは別の話である。
――そして、わたしのことを少し遠くから睨んでいた人物がいたのも、また別の話であった。
少し補足。
☆スピュメイダ―及びマルミアドワーズについて
アーサー王伝説において、スピュメイダ―はアーサー王の馬とされています。
しかし、アルトリア・キャスターはなぜか聖剣の1つとして使用。
Fate世界でスピュメイダ―が馬なのか剣なのかはわかりませんが、この小説では剣を素材にして出来た馬ということにしました。
某黒の剣士が有名な作品に出てくる、ソードゴーレムの馬バージョンみたいなイメージです。
ちゃんと鞍がついているので乗れます。
そしてマルミアドワーズ。
アルトリア・キャスターの第3段階が主武器としているこの聖剣は、公式で神話礼装と記載されています。
神話礼装とは、凄く簡単に言えばめっちゃ強くなれる特殊な礼装です。
しかし、マルミアドワーズが既出の神話礼装と全く同じものなのかは現状不明。
そこで、本作品では装備時に身体能力などを飛躍的に上昇させる聖剣にしました。
ただ、サーヴァントには及びません。
後、服装がアルトリア・キャスター第3段階のものになります。
以上、前回の前書きで書いた独自設定やオリジナル設定などの一部でした。
こういった設定は、もしも公式で言及されたら変更できる範囲で修正していきたいと思います。
それと、もしも自分が記憶違いをしていれば指摘してくださると幸いです。
次回からはヒーロー基礎学編。
繰り返しになりますが、みなさんが面白いと思っていただける作品になるよう、プルスウルトラの気持ちで頑張りたいと思っています。
ヒーロー基礎学といえば、A組生徒同士の初めての熱いバトル!
ウチのアルトリアも、とある生徒と熱い戦いを繰り広げる予定です!
どうか、本作をこれからもどうか応援よろしくお願いします!