お久しぶりです……本当にお久しぶりです(2ヶ月以上)。
あ、前回行ったアンケートですが、たくさんの投票を本当にありがとうございました。
これからも本作は0時投稿で続けさせていただきます。
――時は遡り、屋上での戦闘が始まって数分の時が経った頃。
「轟とアルトリア、アイツら本当に高校生なのか……?」
2人が戦い始めたのを見届けてからビル内に突入していた障子は、その時に見た光景の規格外さに驚きを隠せないでいた。
確かに、アルトリアがあの巨大ロボットを倒す実力者であることも知っているし、轟が本当に優秀でないと選ばれない推薦入学者であろうことも知っている。
それでも、自身の想像の更に上を行くあの様な戦いを繰り広げることまでは、さすがに予想外だったのだ。
しかも、個性を通じて聞こえてくる音の感覚的に、2人の戦闘は時間が経てば経つほど激しさを増している。
果たして、もしも障子がどちらかと戦うことになれば勝ち目はあるのだろうか?
そんな思いを抱きながら、障子はついに目的の場所の一歩手前にまでたどり着いた。
「……この階段を上がれば核兵器のある4階だな」
建物の中に入ってすぐに、個性で増やした耳を使って拾った足音などから導き出した場所。
おそらく、尾白と葉隠は屋上から比較的近い位置にあるこの階の、中央に近い場所で核兵器を守っている。
途中で奇襲されても察知できるように、6本の複製腕を全て耳に変化させて慎重に登っていく。
結論から言うと、登り切る前に尾白や葉隠が襲いかかって来るといったことはなかった。
しかし、屋上における2人の戦いとは全く異なる方向で予想外な光景が現れ、障子はその足を止めてしまう。
「――いや、なんだこの光景は」
これまで通ってきたフロアと決定的に違うのは、そこに大量の剣があること。
視界に収まる床や壁の全てに、おそらくアルトリアが置いていったものと考えられる聖剣が、不規則に何十本と突き刺さっている光景は、異様以外の何物でもない。
一応、通路はある程度の広さがあるため、壁から突き出ている剣が移動の邪魔になる様なことにはなっていないが……、
「……アルトリアが、意味もなくこれ程の数の聖剣をここに置いていくか……?」
これは以前のファミレスでの交流会で彼女自身が話していたことなのだが、彼女の個性にもエネルギー的要因による限界があるらしい。
そして今、アルトリアはここから少し上の屋上で轟と恐ろしい規模の戦闘を繰り広げていた。
きっと最初からそう仕向ける予定だったとは思うのだが、だとすればなるべく力をセーブしたいと考えるのが普通だろう。
けれど、事実として聖剣はこのフロアに設置されている。
つまり、それには何かしらの意味や役割があるに違いないと考えられるのだが……。
「……敵を自動的に感知して迎撃する力を持った剣を、尾白と葉隠のために用意したとかか?」
試しに、ゆっくりと聖剣に近づいてみるが、推測とは裏腹に近づくどころか、剣に触れたり振るってみたりしても何も起こらない。
ここまでして何もないのなら、これらは何か特別な力があるわけではないただの剣であると考えられるが、それではますます謎が深まるばかりであった。
できることなら、これらの剣の謎を解決してから核の回収に向かいたいが、残念ながらそうすることはまず出来ない。
その理由は、この試験に課せられた制限時間。
人数差の都合で18分と少し伸びてはいるものの、とてもじゃないが謎解きに時間をかけられる余裕はない。
そのような判断を下し、もしかすると見逃しているかもしれない罠の類に注意を払いつつ、
目指す場所は、この階の中央。
通路を進み、角を曲がり、それでも剣が襲いかかってくる様なこともなくたどり着き、
「――やっぱり、こっちに来るのは障子君だよね」
「……居るのはお前だけか、尾白? 葉隠はどうした?」
「さぁ? 障子君はどう思う?」
「言う気はないと、そういうことか?」
「…………」
通路と同じように剣が何本も刺さった室内の奥に、目的の核兵器と、その手前で尾白が立ちふさがっていた。
個性で増やしていた耳を使って索敵を試みるが、葉隠の音は聞こえない。
やはり隠密行動向きの個性持ちだから隠れるのが上手いのか、あるいはこの部屋からはもう離れたのか。
恐らく前者だろうなと考えつつも状況の観察と分析をして――そして、自らの不利を悟った。
1つ目の理由は、尾白の戦闘能力が普通に高いと思われるということ。
個性はおそらくあの尻尾だけで、それ以外に何か特殊な能力を隠しているとは感じない。
一見強力には見えないかもしれないが、だからこそ気をつけなければならない。
尻尾という個性で、全国に何千人といる他の受験者を追い抜いて雄英高校に受かってきた。
それはつまり、尾白は搦手などが一切ない、純粋な戦闘能力で雄英の試験を突破できるほどの実力があるということだ。
先日の個性把握テストでもそこそこ優秀な成績を残していたのも、記憶に新しい。
そして、2つ目がこの核兵器が置かれているエリアの環境だ。
いや、正確にはこの場所にいても聞こえてくる音が有利不利を生む原因となっている。
というのも、
(……轟にアルトリア、お前ら限界というものを知らないのか? 正直、さっきからお前たちの戦う音が大きくなっていくせいで、
障子の個性は複製腕、6本ある腕それぞれに体の一部を複製できるというものだが、その中でも耳は一階で壁に耳を当てれば上の階にいる人の足音を聞き分けられるほどの性能がある。
しかし、今回はその性能の高さ故に、拾いたくない屋上からの音を拾ってしまっている。
耳を複製しているのは2つだけだが、それにもかかわらず、この階が屋上から近いということもあって状況は最悪だった。
――もしも、この2つだけしか懸念材料が無いのなら問題は何もなかった。
どれだけ屋上からの音が大きくても、複製腕を別の物に変えてしまえば騒音の問題は片がつく。
しかし、ここで第3の理由として上がってくるのが透明の個性を持つ葉隠だ。
不可視故に、いつ攻撃を仕掛けてくるかがわからない葉隠は、非常に大きな脅威として障子の行動を制限する。
唯一、自身の耳を使えば、葉隠が行動する前に出す音によって索敵できるだろうが、屋上での2人の戦闘によってその想定が大幅に崩れていた。
とはいえ、いくら屋上からの音というノイズがあれど、決してそれ以外の音が全く聞き取れないわけではない。
ただ、求められた勝利条件の難度が高すぎるのだ。
『かなり音量のある別の音が絶え間なく聞こえてくる中、いつ聞こえるかもわからない葉隠の音を聞き逃さないように集中しつつ、実力者に違いない尾白に勝って核兵器を回収する』
これを成し遂げなければ、障子に勝利がもたらされることはない。
ここまで考えられた上での作戦なのかは分からないが、少なくとも障子は完全に相手の手のひらの上で転がされていた。
(……でも、行くしか無い。たとえ相手がどんな罠を仕掛けていたとしても、ここで核兵器を回収するのが俺がやらなくてはならないことだ)
もしも、屋上での戦いが轟の勝ちで終われば、その瞬間にこちらの勝ちは確定する。
恐らくだが、尾白と葉隠に轟をどうにかする手段はない。
だからこそ、轟が一瞬で全てを凍らせて終わらせるだろう。
しかし、もしもアルトリアが勝ってしまえばどうなるか。
尾白と葉隠が轟をどうにも出来ないように、こちらもアルトリアをどうすることも出来ない。
或いは、轟とアルトリアが相打ちになるか、決着がつかない状態になっても、ここで俺が動かなければ時間切れになってこちらの負けだ。
「……来るんだな」
「……あぁ」
表情、構え、そういった変化から覚悟を決めたのを悟ったのか、お互いに戦闘態勢に入り、痺れるような緊張感が2人を襲う。
尾白が構えをとり、障子は攻撃の手数を増やすために
尾白との戦闘に集中しながら、葉隠の索敵に集中しなければならない。
障子の行動を妨げていたこの状況から開放されるためにとった選択肢は、この2つの内の片方の対応を割り切る――つまり葉隠よりも尾白を優先することだった。
確かに、いつ襲ってくるかもしれない葉隠は十分すぎるほどの脅威だ。
しかし、これもアルトリアと同じように交流会で彼女自身が言っていたことなのだが、彼女の透明化は彼女自身のみ適用される。
それ故、服や戦ったり捕まえたりするための装備なども透明になるわけではないことを考慮すれば、その脅威度は想定よりも低い可能性がある。
複製腕の個性の副産物である大柄な体、そもそもの男女の違いによる身体能力の差、それを補うための武装が出来ないこと。
実は彼女が個性に関して嘘をついていたなら話は別だが、さすがにその可能性は低いだろう。
だから、葉隠に妨害される可能性よりも、全力を出せずに尾白に純粋な力で負ける可能性を潰す選択を取る。
障子は勝利のためにその選択を取り――故に、勝負はこの刻をもって決着となった。
「――必殺! 聖剣フルスイング!」
「――っ!?」
瞬間、障子の背中に重く硬い一撃が叩き込まれ、衝撃によって体を支える力が抜けて意識が落ちたことに、ほんの僅かな空白の後で意識を取り戻した直後に気づく。
突然の事態に思考が追いつかず、けれど直感的にまずいことを悟り体勢を立て直そうとして――、
――しかし、ここで生まれた好機を、この状況を作り出すために動ていた2人は見逃さない。
「これでもくらえ!」
最初から障子の背後を狙っていた聖剣が見えていた尾白が、無防備な障子に、頭上から自身の尻尾による強烈な一撃を叩き込む。
二度も威力のある一撃をもろに喰らったことでどうすることも出来ず、何も出来ないまま地面に倒れ込む。
そして、尾白がそのまま障子の上に乗って関節を極め、ついには動くことさえ封じられた。
「やった! 作戦成功だね尾白君!」
「まだだよ葉隠さん、気を抜いたら障子君が拘束を破って反撃してくる可能性があるから」
「うーん、あっそうだ! 障子君の上にアルトリアちゃんの剣をたくさん置いておいたら良いんじゃない? あの剣ってすっごく重いから正直一回振り下ろすだけでもきつかったんだよねー」
「えげつないこと言うね葉隠さん……でも、確実に動きを止めるためにもそうしよっか」
「オッケー! じゃあ今すぐ剣を持ってくるね!」
アルトリアの剣――この階についたときから異様なほど設置されていたそれと、葉隠が一度振り下ろしたという情報。
尾白と戦いになるかと思った直後、背中に強い一撃が加わった記憶が唐突に一つの線で繋がり、障子は自らが負けた理由に気付かされた。
「……木を隠すなら森の中、この階に大量の剣が置いてあったのは葉隠の武器にするためか……!」
「そういうこと」
曰く、障子もそう判断したように、葉隠単体では直接的な戦闘力が低いため、障子どころか轟すら止められない。
だからアルトリアは彼女の聖剣を葉隠に持たせることを提案したのだが、それだけではある重要な問題が出てくる。
それは、彼女の個性が衣服などの触れているものを透明化できるわけではないということ。
だから、ただ剣を持っただけでは彼女がどこにいるかがすぐに分かってしまい、奇襲すら出来なくなってしまう。
そこでアルトリアは、彼女の聖剣をこの階のいたる所――建物全ては彼女の魔力と時間が足りなかった――に聖剣を設置した。
その状況下で想定されていた葉隠の動きはこうだ。
まず、葉隠は何も持たない状態で戦闘開始予定地点である核兵器の置かれた部屋で待機。
そこに障子がやってきても、その時点では彼女の居場所を把握するための情報が無いため、障子には推測はできてもどこにいるのかは確実に把握することはできない。
剣を手にするのは、奇襲に出るその瞬間。
尾白と障子の戦闘が苛烈を極め、障子に葉隠のことを意識している余裕がないと判断した時。
あるいは、複製腕が耳ではなく他のものを複製し、音を聞く能力が限界まで下がった時を狙って行われることになっていた。
4階の至るところにある剣の内、引き抜いてすぐに撃ち放てる一本を手に取って、剣の平らな部分を叩きつけて一撃で決める。
そうすることで、武器を手にすることで隠れている場所がバレてしまうことを防ぎながら、葉隠に武器を持たせて戦力として数えられるようにするという作戦だったのだ。
「ただ、剣を抜く音とか足音に気づかれると不味いから、俺が障子君が葉隠さんのことを考慮できないほど追い詰める必要があったんだけどね」
「……なるほど」
尾白は、この後障子がすきを見て拘束から抜けだし、再び戦いになる可能性を考えて全てを語ったわけではない。
しかし、一部だけとはいえ答え合わせが終わる頃には葉隠の作業も進み、障子の足の上にかなりの数の聖剣が乗せられ、とても簡単には抜け出せそうにはなくなっていた。
もはや自身に逆転の目が残されていないと突きつけられた障子は、残された勝ち筋である轟の勝利を祈る。
ただ――、
「――ヒーロチーム両名の確保により戦闘終了! 敵チームウィィィィィィンンン! この後講評に移るから、みんな地下に戻ってきてくれ!」
教師であるオールマイトの宣言で、この5人による戦いはアルトリアたちの勝利で終わったことを知るのであった。
前回の更新から2ヶ月以上経ってしまいましたが、この作品はこれからも続けさせていただきます!
続けさせて、いただくんですが……、
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=272604&uid=305756
こちらの活動報告に、これからの更新予定について書かせていただいています。
今後このように活動報告を活用していこうと考えているので、気が向いたら覗いてみてください。