ルパン三世 Little Little Phantom Thief   作:火影みみみ

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怪盗NUE ここに参上

 『今夜、貴方のお宝をいただきに参上します 怪盗NUE』

 

 今朝、このような手紙が英国のとある貴族の元へ届けられた。

 太太と肥えたその貴族は最初は何かの悪戯かと考えたが、万が一のこともあると考え、彼が常日頃から雇っている兵隊の警備を強化した。

 普通ならば警察への通報もするべきなのだろうが、彼にはそうできない理由があった。

 何しろ彼自身が犯罪者であるのだ。

 無論表沙汰にはなっていないが、それでも火のない所に何とやら、彼の黒い噂は既にその地域中に広がっている。

 やれ住民から宝や金を巻き上げているだの、やれマフィアとの繋がりがあるだの、挙げ句の果てには屋敷の金庫には彼のコレクション全てのみならず悪事の証拠が眠っているなどという噂も存在する。

 

 ……まあ、これら全てが事実な訳だが。

 

 彼が気に入った物は合法非合法問わずに全て手に入れてきた。それこそ殺人も厭わなかった。

 マフィアは彼と相互契約を結び手を取り合っているし、何かあった時のために彼が収集したお宝と共にマフィアの弱みやどうしても処分できなかった悪事の証拠なども厳重に大型金庫に保管されている。

 警察を呼ぶということはこれらを発見される恐れがあるということ。移動しようにも今夜中ともなれば時間がない。そもそもどのお宝を狙っているのかすら分からない。

 故に彼には部外者に協力を申し出る選択肢などありはしなかった。

 だが、ここで一つ彼にとって予想外の出来事が起きる。

 

「ご覧ください。こちらが謎の怪盗NUEが予告したクライトン子爵の館です。一体誰がこの予告状を出したのか!?それともただのいたずらなのか? その答えは今夜明かされることでしょう!」

 

 屋敷の門に詰め掛ける報道陣やパパラッチ。そのまま騒がれると警備にも支障が出かねない。

 無論、彼が呼んだわけではない。怪盗の仕業である。

 怪盗NUEは子爵だけではなくその近隣に存在する全ての報道会社に予告状を送りつけたのだ。ご丁寧に住所付きで。

 怪盗NUEとは彼らも知らない名前だったが、黒い噂の絶えない子爵家に届いた予告状、このスクープに飛びつかない記者はいなかった。

 彼らとしては盗まれようがいまいがどうでもいい。最悪子爵にインタビューをしてお茶を濁してしまっても視聴率が取れればそれでいいのだ。

 

 そうして、騒がしいまま問題の夜が訪れる。

 サーチライトを張り巡らせ、番犬を解き放ち、門や塀伝いに兵士を配備させ、これでもかと言うほど鉄壁の警備態勢を築き上げた。

 ことここに至り彼、クライトン子爵の脳内に悪戯という考えは無くなっていた。

 報道陣にまで予告状を出し、自分から何かを奪うつもりの人間がいる。

 ただの悪戯ならば報道陣にまで予告状を出すとは考えられない。これは()()なのだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、それが今回呼ばれた報道陣の役割だ。

 

「ふざけるなよコソ泥風情が!」

 

 力任せに机を叩く。やや手が赤く腫れているがそんなことはもう気にもならない。

 コソ泥が自分を目立たせるための踏み台にしようとしている。その事実が彼を苛立たせているのだ。

 そうして時が経ち、午前0時を示す鐘が周囲に鳴り響く。

 あの予告状は悪戯だったのかと思い始めた者と、今夜という区切りを夜明けまでと捉えて未だに怪盗の姿を捕らえようとカメラを構える者の数がちょうど半数ずつになり出した頃、それは辺りに降り始めた。

 

『全てのお宝は確かに頂戴しました 怪盗NUE』

 

 そう書かれたカードが突如上空から降り始めた。

 何か何かと空を見れば、そこには報道関係のヘリがあるばかり。

 

 いや、違う。

 

 ヘリの底に何かが貼り付けられている。それは小さな箱であった。

 その箱から数百枚にものぼるカードがばら撒かれているのだ。

 

「そんなバカな!?」

 

 急ぎ子爵は大型金庫へ向かう。

 鍵を入れダイヤルを回し、直径が1メートルを超える大きなハンドルを回し、金庫を開ける。

 その金庫は古くからこの子爵家に受け継がれた物であり、時代を経るごとに改造され拡張され、もはや宝物庫と呼べる広さになっていた。

 重い扉を開け、中に入った子爵は安堵した。

 

「なんだ。ちっとも盗まれていないじゃないか」

 

 そこにあったのは今朝確認した時と変わらないお宝の数々、彼が集めた欲望の権化。

 

「やはり悪戯であったか… …ん?」

 

 その一つを手に取って、何か違和感を覚えた。

 

「これはこんなに綺麗だったか? それに些か軽いような」

 

 まさかと思いそれを地面に叩きつける。

 本物ならば傷一つつかないはずのそれは、あっけなく砕ける。

 

「これは、偽物だ!? これも、これも偽物だと!?」

 

 その他の物も手に取るが、その全てが偽物へとすり替わっている。

 書類にも目を通すが、それもすり替えられて意味をなさない出鱈目な文章しか記載されていない。

 

「馬鹿な!?監視班は何をしていた!?」

 

 彼は備え付けられた監視カメラに向けて怒鳴りつける。

 すぐに彼の元へ知らせが届くが、倉庫内には何の異常もなかったという報告のみ。

 いや、それは正しくはないだろう。

 正確には、()()()()()()()()()()()()()()()という報告だ。

 子爵が破壊したはずの偽物もそのまま以前の形を保ったまま映っていて、そもそも入り込んだはずの子爵が映っていなかった。

 

「まさか、監視カメラに細工されていた……」

 

 兵士が監視カメラに近づいてみると、レンズに丸く切り取った写真が貼り付けてある。

 それには金庫内の風景が映し出されており、これでは誰が入ろうと異変を察することはできない。

 これなら確かに偽物とすり替えるのも容易だろう。

 だがここにあったお宝全てを運び出すには相当な労力が必要なはずだ。一体どうやって、と子爵は当たりを見回す。

 

「……ん?」

 

 地面のタイルが一部ずれている。

 正方形が敷き詰められたタイルのはずだったが、その一部が大体円形に10度ほど傾いている。

 

「まさか! おい、ここを調べろ!!」

 

 兵士に命じて、そのタイルを剥がさせる。

 掘削機を用いてそこをこじ開けてみると、そこには大きな穴が空いていた。

 

「馬鹿な、一体何時からこんなものが!? なぜ気がつかなかった。重機で掘削しようものなら気づかないはずがない!」

 

 ともかく、兵士にそこへ突入させ、コソ泥の追跡を開始させる。

 兵士と共に歩くこと少し、穴は海へと通じる洞窟へと繋がっていた。

 

「随分とのんびりなのね。悪徳子爵さん」

 

 中型ほどのクルーザーに積み込まれた山ほどのお宝、その上に腰かける一つの人影があった。

 猿の髑髏のような仮面で顔を隠し、全身を黒い布で覆い隠す謎の人影、怪盗NUEである。

 

「そこまでだ悪党! さあ、盗んだ財宝を返してもらおうか」

 

 アサルトライフルを構えた兵士がジリジリと近づいてくる。

 なぜ、怪盗がこの場にとどまっていたのか、なぜ待っていたような発言をしたのかなど既に頭にない。あるのは自身の汚点やお宝を回収すること、ただそれだけであった。

 

「ふふふ、なーんにも気づいてないんだ」

 

「な、何だと!?」

 

 くすくすと怪盗は笑う。

 

「上を見てごらんなさい」

 

 怪盗がそう言って洞窟の天井を指さす。

 つられてみると、そこに設置されたあるものにその場にいた全員が目を見開いた。

 

「だ、ダイナマイトだと!?」

 

 そう、ダイナマイトである。しかも導火線に火がつき、もう残りわずかと言った具合だ。

 それが爆発すればどうなるか、考えるまでもなかった。

 

「3」

 

 気づいた兵士が我先にと逃げ始める。

 

「2」

 

 遅れて子爵も来た道を必死で引き返す。

 

「1、0」

 

 導火線が尽きる。そして大きな爆発が起きた。

 ダイナマイトは洞窟の天井を破壊し、岩盤が崩れ始める。

 大きな岩が洞窟内へと落下し始め、それらが怪盗と子爵の間を妨げる。

 

「ばいばーい」

 

 誰に聞かせるわけでもなく、怪盗NUEは手を振ってクルーザーを発進させる。

 子爵たちは逃げるのに必死でそれに気づくことなく、冷静になった時には岩盤が完全に崩れ落ち、追跡は不可能となっていた。

 こうしてお宝を全て盗まれた子爵は英国一の有名人となったわけだが、それだけではなかった。

 実はばら撒かれたカードには仕掛けが施してあり、メッセージが書かれた面を剥がすとその下に子爵の悪事がこれでもかというほど記載されていて、さらにはその悪事の証拠が後日警察へと届けられることが記されていた。

 後日、その通りに英国警察の本部に郵送で届けられ、子爵は逮捕されることとなる。

 この事件を以て、怪盗NUEの名前は英国中に轟くこととなった。

 悪を裁く正義の怪盗、怪盗NUE。

 その正体を、まだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怪盗NUEねぇ……。中々に気取った真似してくれるじゃねーか」

 

 報道陣の中にまぎれていた赤いジャケットの男が呟く。

 

「不二子ちゃんにプレゼントできそうな宝石があるって噂を聞きつけて下見に来てみれば、まさかその日にぜーんぶ盗まれちまうったーなー。俺様もついてねえや」

 

 手に持ったカードを仕舞い、その場を後にする。

 

「何処の誰だが知らねーが、今度会った時その面拝ませてもらうぜ、怪盗NUEさんよ」

 

 知らぬ間に世紀の大泥棒、ルパン三世に目をつけられていたとは、怪盗NUE本人も思うまい。

 かくして物語は幕を開ける。

 これより始まるは彼女の物語。

 運命の神の悪戯か、彼女の生前愛した物語の世界へと生れ落ちた怪盗NUE、本名『加藤千代女』がどのような波乱を巻き起こすのか、それとも無様に散りゆくのか。

 それはまた、次の機会にお話することになるでしょう。




「キャラファイル」

・加藤千代女 
 転生者 ルパンは結構見てた 描写はないが白髪赤眼の日本人、純日本人(ここ重要)
 持ち武器は拳銃と脇差 二丁拳銃を好む よく改造する
 ここがルパンの世界なのは理解していて、彼に憧れて今回の犯行に至った。
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