【リレー小説】ボクカノ   作:リレー小説実行委員会

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ミストラル  (ヒアデス 作)

 

 

「はあっ! せいっ! でりゃああ!」

「ぐっ……こ、この下等生物が……うっ」

 

 ハルキから打撃や蹴りをくりだされ、魔女エスメラルダは腕で顔をかばいながらも一方的に攻撃を受け続けている。ハルキの攻撃は一撃一撃が重く、レジ袋を持つのがやっとの華奢な軟弱者とは思えない。

 それを可能にする力を引き出すのがハルキの能力であり、前世から引き継いだ業を具現化した異能だった。

 

 

 

 ハルキの能力は自分の意思を他者に理解させること。

 それによって身体能力や知力を上げたり、自分の見た目までも変えることができる。

 それが人と思われないほど醜い容姿を持って生まれ、見世物のように檻の中の自分を眺める観衆に向かって、私は人間だ! と叫んだその日の夜に自ら命を絶った前世からの業がなせる能力(異能)だった。

 

 

 

 エスメラルダを圧倒するハルキの力の源泉はただ一つ。

 

愛叶(妹分)を泣かせるようなブスになんか負けるか!)

 

 その想いがハルキの屈強な腕力と脚力の源だった。

 だが

 

「私に触るな! 下等種が!」

 

 エスメラルダがそう叫んだ瞬間、彼女の前に赤い光の壁が現れ、その衝撃でハルキは弾き飛ばされて尻餅をつき、攻勢は止まる。

 ハルキは立ち上がりながら「クソっ!」と悪態を吐き、そんなハルキを見て魔女は笑う。

 その笑みは前世で自分を見下していた者たちが浮かべていたものとまったく同じ、下等生物を見下す者のそれだった。

 

 

 

 エスメラルダにとって、男のみならず自分以外の存在はすべて下等な生き物だった。

 ただ身体能力が女よりやや高いというだけで女を見下し、そのくせ女を抱いて性欲を満たす事のためにその無為な人生を費やす男はもちろん、そんな男と共存して生きている多くの女もエスメラルダにとって侮蔑の対象だった。一族が代々研究してきた悪魔召喚術を金儲けと世界統一に利用しようとしている自身の父も例外ではない。

 エスメラルダにとって自身と対等、あるいはそれ以上に位置するのはこの塔の最上階にいるある人物と、その者がこれから行おうとしている実験によって生まれるものだけだった。

 

 

 

「結界か、そんなものの後ろに隠れやがって――出て来い、このブスがっ!」

 

 ハルキは叫びながら結界を殴りつける。しかし結界はヒビ一つはいらない。さすがのハルキも本来()()()()()使()()結界を破れるなどとは心の底から思ってはいないからだ。

 自分が不可能だと思ったことと心の底から思っていないことはできない。自分の正当性を理解させることこそが魂に刻まれたハルキの願望なのだから。

 

 

 

 手のいたるところから血が流れてもハルキは光の壁を殴り続ける。そんな想い人を見かねて愛叶は叫んだ。

 

「やめてハルキ君! このままじゃハルキ君のてが――」

「うっせえ! あのブスはもっと顔が膨れ上がるくらいこの手でボコボコにしないと気が済まねえ! お前はそこでじっと見てろ!」

 

 そんな二人を見てエスメラルダはフフッと声を上げて笑う。

 

「心配してくれる彼女に対して冷たい彼氏ね。ねえ、悪いことは言わないからそんな下等種は捨てて私のところに来なさい。私のもとに来てくれるならあなたが想像できる限りのどんな贅沢もかなえてあげるわ。

 たまにちょっと私の相手もしてもらうけど、痛みも慣れれば極上の快感に変わるわよ♡……あなたになら世界が生まれ変わる瞬間を見せてあげてもいいわ」

 

 世界が生まれ変わる、その言葉を聞いてハルキは拳を止めて眉をひそめる。それにも気付かず――。

 

「わけわかんないこと言わないで! だれがあんたなんかの所に――」

「ハルキ君!」

「アイカ=チャン!」

 

 愛叶の口から最後の一言を出ようとしたところで、巌とブリトニーが駆け上がってくる。それにむっとしながらも愛叶、そしてハルキは彼らがいる後ろの方を振り向いた。

 

「あら、また下等種が一匹とかわいい女の子が出てきたわね。下等種の方はすぐに殺すとしてあの子も虐めてあげようかしら♡」

 

 結界の向こうにいる魔女は駆けつけてきた新手に臆した様子も見せず、笑みを深め舌なめずりまでする。まるで獲物を見つけた蛇のように。それを見てブリトニーは思わず足を止めた。

 

「何コイツ? 教授よりはるかに危険な感じがスル……」

「結界を使う女……まさかこいつミストラルの人間なのかい? それもかなりの力の持ち主……」

 

 ハルキたちのそばまで来たところで巌も足を止めて言った。その言葉にエスメラルダはあらっ? と眉を持ち上げる。

 

「やっと気づいてくれる人間が出てきてくれたわね。それが下等種(おとこ)というのが気に食わないけどこれで自己紹介もできるし、まあいいわ。

 私はエスメラルダ。ミストラルの副首領にして、二千年にもわたって神々と呼ばれた悪魔を崇拝し、それに近づかんと魔術を極めてきた一族の末裔よ。この姿を見ることができただけでも光栄に思いなさい劣等種ども、私の御眼鏡に適ったかわいい子たちもね」

 

 ミストラルの副首領を名乗る魔女を前に、ハルキたちは顔をこわばらせる。

 

「教授が言ってたミストラルの副首領……あいつが」

「女の子がすきなレズでサディスト……言われて見るとたしかに」

 

 ハルキと愛叶はエスメラルダを見ながら口々にそう口にする。

 ブルトニーも魔女の話を聞いて思い出したように言った。

 

「そう言えば、グランマから聞いたことがあるヨ。グランマの故郷、スイスにはずっと昔から神を崇める宗教とは別に神を含めたあらゆる霊的存在を悪魔として崇め、彼らに近づこうとする宗教団体がいたって……その宗教団体がミストラルの源流だって噂もあったケド……」

 

 ブリトニーが言っていた話は紛れもない真実だった。

 

 ミストラルは元々ある一族が興した『神々を含めたあらゆる悪魔』を信仰する宗教団体で、キリスト教やイスラム教から敵視され滅ぼされたとされながら、形を変えて存続し魔術組織として発展したものだ。ちなみにその資金集めのために興したのが数代前の首領が起業し、エスメラルダの父が経営している巨大企業である。

 

 ブリトニーの話を聞いてエスメラルダは呆れたように肩を揺らした。

 

「あらあら、そんな噂がまだ残ってたなんて。悪魔を信仰していた私たちの先祖の事なんてみんな忘れたものだと思ったけれど、人の記憶というのも馬鹿にできないわね

 ……気が変ったわ、あなたたちはもう少し生かしておいてあげましょう。そろそろ向こうの進捗も気になってきたし私はここで失礼するわ。あなたたちは頑張ってもっと上まで登ってきなさい……ただし」

 

 そこまで言ってエスメラルダはぼそぼそと何かを唱える。それは日本人であるハルキたちはおろかアメリカ人とのハーフでもあるブリトニーにも聞き取れない言語、ラテン語だった。

 その瞬間、エスメラルダの周囲に三つの魔法陣が浮かびそこから赤い光に包まれた何かが現れる。

 

「この子たちを前に、生き延びることができたらの話だけど」

 

 そこまで言うとエスメラルダは背後にある色違いの床を踏んだ。その瞬間、エスメラルドの体は白い光に包まれる。その輝きが0と1の羅列で構成された魔法とは全く異なる科学的な光だった。

 

「ワープ装置――くそ、待てこのブス!」

 

 消えゆくエスメラルダに追いすがろうとハルキは向かって行く。

 しかし魔法陣から現れた三体のうちの一体に阻まれてハルキはその動きを止める。

 

 エスメラルダが召喚したもの、それは美女型の悪魔たちだった。

 

 

 

 






 ヒアデスさま、執筆お疲れ様でした♪

 下等種と書いて“おとこ”と読む!(笑) エスメラルダさま素敵ぃぃ~~☆☆☆
 いつか……いつか私もエスメラルダ様を書きたい! 書いてみたぁーいッ!
 とても魅力的なキャラに仕上がっていると思う! ヒアデスさまGJです♪

 今回のお話で、魔術組織“ミストラル”の設定が深まりました。
 そして恐らく、次回は「実質的に初となる対悪魔戦」となる事でしょう!
 盛り上がって来たぜ僕カノ! 今はコメディなんて知るかとばかりに!(笑)

 ではではっ! 三番手お見事でした♪ ヒアデスさまウルトラGJ☆
(管理人)


 ◆ ◆ ◆


以上が今回の話になります。戦闘シーン終わらせられなくてごめんなさい。お通しラー油様以降の作者様の筆力ならこの続きを書くことができると信じて任せます。あっさり倒しちゃってくれても構いません。まあ、不死身の悪魔を相手に逃げ切る以外にどんな手でしのぐのか私もまだわからないんですけどね。
(ヒアデス)

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