【リレー小説】ボクカノ 作:リレー小説実行委員会
当リレー小説企画“僕カノ”は、この五巡目をもって“終了”。完結いたします。
皆様におかれましては、次にまわって来るバトンが、“最後の手番”という事になります。
そしてここに、管理人として宣言します。
――――現時点をもって、当企画における全てのルールを、【解除いたします】
世界観の設定、作品テーマ、ジャンル、やり方、文字数の制限、締め切りなど……。
今後はその全てを、『放棄して頂いても結構です』
設定をあえて壊そうが……。
バベルを飛び出し、舞台をアメリカに移そうが……。
既存のキャラクター達を死亡させてしまおうが……。
私は今後、皆様への口出しを、「一切おこなわない事を誓います」
(※もちろん、バトンをお渡しする役目、何かありました時のアドバイス&フォロー、またなにげない雑談などは、これまで通り行います。
管理人として、皆様の友人としての役目はバッチリこなしますので、ご安心ください♪)
もうこのリレー小説に、一切の縛りは御座いません。
もし無理だと思ったら、バトンを拒否して頂く事もOK。貴方は“自由”です。
その上で……申し上げます。
私がこのラスト一巡において、皆様にご提案したい事は、ただひとつ。
「最後、走ってみません?」
バベル編、最終話。 (hasegawa 作)
「……なんかよぉ、とんでもねぇ事になってねぇか?」
床に大の字。「もうどうにでもしてくれ」という声が聞こえてきそうな姿で、ハルキがボソリと呟く。
「薄々、気が付いちゃいたんだがよ?
なんか俺ら、
「「「……」」」
同じく、床に胡坐をかいたり、チョコンと女の子座りをしている仲間達が、ゴクリと固唾を呑む。
そう、彼らも薄々気が付いていた事。……だがなんとな~く、口に出さなかった事であった。
「俺らは本来、パッと行ってパッと帰れりゃあ、それで良かったんだよ。
教授のデータを持ち帰り、あとは適当にバベル内であった出来事なんかを、サイエンサーの奴らに教えてやりゃー、それでお役御免なんだ」
「ヤツ等だって、たかが高校生の俺たちに、
多少の文句は言われるかもしんねぇが……、一応言われた通りバベルに行きはしたし、失踪した教授の居所だって掴んだんだ。
ただの罰として送り込んだ奴らにしちゃー、これ普通に考えりゃ、望外の成果だろ」
「なのに、なんで俺たち“イナンナ”とかいうのと、戦う事になってんだ?
塔の最上階へと登りつめ、エスメラルダの野望を止めろ! ……みたいな方向に?
なんで俺ら、
「「「…………」」」
言いやがった――――誰もが怖くて、口に出来なかった事を。
ウィーアー・ザ・ただの高校生。
ノーパワー、ノーバトル。ノーモアバベルの塔なんです。
でも知らん間に……なんか大事になってるくさい!! すんごい面倒くさい事になってる気がする! 何か重いものを背負わされてるのだ!
「
エスメラルダは出たり入ったりしてる~って、前に教授も言ってたじゃんか。
なら帰れるんだよ普通に。たぶん最上階とか行かんでも」
「あの似非花輪とか、エスメラルダとか、別に教授でも構わねぇよ。
ただ一言、『お家に帰して下さい』って――――そう頼みゃー良いじゃねぇか」
絶句する。ハルキの正論パンチに。
今まで「あっれ~?」とか思いはしても、誰も言わずに済ませてきた事を、彼はここで言ってのけたのだ。
「で……でも、せっかく来たんだし……(冷や汗)」
「いや俺、必要ねぇんなら富士の八合目からだって、ソクサリするぞ?*1
お前はそうじゃねぇのか? ペナントでも買いてぇのか巌?」
「い、いろんな人たちに、おせわになったし(白目)」
「あぁ、なったなぁ。
ホモとか、ホモとか、あとホモにも手助けして貰ったっけなぁ~。
で、そいつに報いる義理はあるか? どうなんだ愛叶?」
「こ、これ冒険だシ? 世界を救わなきゃナラヌシ(震え声)」
「お前なりゆきで来ただけだろ。
風呂入りてぇだの、髪が痛むだの、散々文句たれてたろ。違うかブリトニー?」
次々に論破されていく、バベルの戦士達。
彼らは気が付いたのだ。
このバベルに挑む意義が、自分達には存在しない事に。
「で、でもでもハルキくん! ねがいがかなうって!
ここのてっぺんまで行けば、なんでもすきなおねがいを!」
「――――足るを知れよ馬鹿野郎。
分不相応な願いなど抱かず、みんなで慎ましく生きていこうじゃねーか。なぁオイ♪」
「さっきから正論パンチやめてヨ! ムカつくのよアンタ!!」
「まさかハルキくんに諭されるだなんて……!
こんな前科6犯もある人に……!」*2
たとえ、それっぽいこと(正しい事)を言っていたとしても、それが懲役30年みたいな人物であるのなら、説得力という物が無くなる。
同じ「夢を信じろ」という言葉であっても、イチローに言われるのと、そこらのホームレスに言われるのでは、もう大違いであるのだ。
ハルキの正論パンチにもめげず、三人はワーワーと抗議していく。
ここで引き下がるワケにはいかない。……なんかそれをしてはいけないような気がするのだ!
ただなんとなくではあるが! 流れとか雰囲気的に! 許されない気がする! 帰るのは駄目だ!!
「分かりモウシタ。じゃあもう、多数決しモウス。
ここは法治国家! ミンシュシュギの国デース!
バベル最後まで登りたいヒト~! 手ぇ上げテェ~」
「はいっ(挙手)」
「はい……(挙手)」
「ハーイ!(挙手)
という事で3対1ナリ。可決いたしソウロウ」
「――――お前らぁぁぁあああーーッッ!!!!」
民主主義(数の暴力)により、無事バベルを登ることが決まった。めでたしめでたし。
無理を通せば、道理も引っ込む。彼らは冒険が大好きなのだ。
「登ろうYO! 登ろうYO! ファーーイ!!(Fight)」
「せっかく来たんだからー! さいごまでいこうよーう! おねがーい!」
「僕も頑張るからね……。お願いだよハルキくん……。登ろうよう……」
「――――わーったよクソ共がぁー!! 登りゃー良いんだろ、登りゃー!!」
やけっぱちに怒鳴る。
ハルキは「もう好きにしろ」とばかりに、プイッと後ろを向く。
だが……彼はいつもこうだ。こんな風に仲間達に“おねだり”をされた時、実は彼が断った試しなど、一度もなかった。
愛叶も、巌も、ブリも、もうニッコニコしながら、その背中を見つめている。
なんだかんだあっても、優しい――――そしてぶっきらぼうだけど、いつも守ってくれる。
言ってしまえば、“弾かれ者”。
世間や、クラスや、世界から弾かれた者達の集まり。
でもいま自分達を纏めているのはハルキだ。彼がいつも前に立ってくれるから、自分達はありのまま、自分らしくいられる。
たまに取っ組み合いの喧嘩もするし、時には口論になる事だってあるが、なんだかんだ言っても、皆ハルキの事が好きだった。
リーダーは彼。やはり自分達を引っ張って行くのは、ハルキしかいない。
まぁ先ほどは、民主主義を駆使して、やりこめたものの……ここからは彼の力なくしては、とても自分達に未来など無い。
彼と、そして仲間達と、このバベルを踏破してみたい――――
「よっし分かった! やるからには全力で行くぞ!
こっから先は本腰入れて、いっちょバベルのてっぺん拝みに、行こうじゃねーか!」
三人の前に立ち、グッと拳を握りしめて見せる。
背も低いし、顔立ちだって可愛らしいのに、その身体には得も知れぬ闘志が宿っているように見える。
「俺の能力は、【証明】―Proof―
自分を馬鹿にした奴らや、くだらねぇクソッタレ共に、俺の存在を
ニヤリと、彼が笑う。
楽し気に、そしてちょっとだけ嫌らしい感じの笑みで、挑戦的に、
「今な? 俺の胸の中でリンリンリン……って、鐘が鳴ってんのを感じる。
簡単だ。他ならぬ俺自身が、そう感じてる――――」
ハルキの美しい瞳が、青白い光を放っている。
彼が“出来る”と感じた時、また“成し遂げる”と強く願った時、この輝きを放つのだろう。
「僕の能力は、【暴食】―Gluttony―
なんか食いしん坊みたいだけど、全てを“無”にしてしまえる力だ……。
どんな障害物だろうが、たとえバベルだろうが――――喰ってみせるよ」
「アタシの力は、【献身】―dedication―
お主らを支え、前に進む力を与エル。
だから、アタシがケツを持ってあげるワ――――精一杯やんなサイ」
四人が円陣を組み、〈コツン☆〉と拳を合わせる。
弾かれ者4人が、なりゆきでバベルを踏破、世界を救う――――
そういうのも悪くないって、今はそんな気がしている。
これは実に、痛快な話じゃないか! 愉快な愉快な馬鹿話だ!
「んじゃまあ、こっからは飛ばしていくぞ?
チンタラやってられっか。さっさとエスメラルダぶっ飛ばして、帰って風呂入って寝る」
「同意見ネ。暴れん坊将軍の録画も、きっと貯まってるワ」
「僕は先に、ご飯食べたいかも……。
帰ったら、ココイチの新記録にチャレンジしてみよっかな……?」
「わたしは~、とりあえずハルキくんと
ときはなたれた、サキュバスのほんき、みせてあげるね」
「台無しかよオイ。
まぁ……家に帰ってからな? お手柔らかに頼むぞ」
そして、横にいる魔王ベルゼブブをガン無視しつつ、四人が上り階段へと向かう。
目指すはバベル頂上。まずは51階をクリアすべく、歩き出して行った。
◆ ◆ ◆
―51階―
「あ、100階には、最上階への“直通エレベーター”があるよぉ~う?
だから実質バベルは、
「マジかよ似非花輪!? 何故そんな近代的な物が!?」
「いやぁ~♪ ビックリしたかい? もう半分来たって事だから、みんな頑張ってねぇ~い♪」
「ちょ……! 待てよ花輪! 行くな!
こっから出してくれっ! 俺を家に帰してくれぇーーッ!!」
―52階―
「お前、扉とか天井とか“喰えば”いいんじゃね? 真っすぐ
「うわ、ぜんぜん美味しくないや……。
土とか木とかって、こんな不味いんだねぇ……」
「イワオ=クンが食べれる内は、こうして進んで行きモウス」
「たんさくスピードあっぷ☆」
―53階―
「出来たぞハルキきゅん!
悪魔の網膜をも焼き尽くす、スタングレネードだ!」
「すげぇ! まさかこんなモンが作れるとはな!」
―54階―
「出来たぞハルキきゅん!
周囲の風景に溶け込む事が出来る、ステルス風呂敷だ!」
「すげぇ! まさかこんなモンが作れるとはな!」
―55階―
「出来たぞハルキきゅん!
半径5メートル以内にある物なら、どんな物でも木っ端みじんにする、高性能手榴弾だ!」
「すげぇ! まさかこんなモンが作れるとはな!」
―56階―
「出来たぞハルキきゅん!
瞬時にお湯を沸かす機能を搭載した、原付ヘルメットだ!」
「すげぇ! まさかこんなモンが作れるとはな!」
―57階―
「出来たぞハルキきゅん!
外国のポルノみたいな『オーイエス! オーイエス!』という音声が出る、簡易式トイレだ!」
「すげぇ! まさかこんなモンが作れるとはな!」
―58階―
「通路に水が流れ込んでくるトラップに引っかかったが、意外と大丈夫だったぜ!」
「おふろみたいでサッパリ☆ きもちよかったよ!」
―59階―
「
「すぐ下の階でごぢゃっタ。5分とかからなかったネ~」
―Boss階―
「――――ボス戦かと思って身構えたが、意外となんとかなったぜ!」
「久しぶりに本気出した……。死ぬかと思った……」
―61階―
「“仲間の命を差し出さないと開かない扉”があったが、巌にドアノブを喰わせて何とかしたぜ!」
「やったねハルキくん! だいて!」
―62階―
「壁からトゲが出てくるトラップに引っかかったが、怪我はぜんぶブリトニーが治したぜ!(寿命と引き換えに)」
―63階―
「落とし穴のトラップに引っかかったが、骨折はぜんぶブリトニーが治したぜ!(寿命と引き換えに)」
―64階―
「なんかデカイ岩が転がって来たが、撥ねられた巌の怪我は、ブリトニーが治したぜ!(寿命と引き換えに)」
―65階―
「不用意に壁に触り、毒ガスが噴き出して来たが、ブリトニーが治したぜ!(寿命と引き換えに)」
―66階―
「やたらと悪魔に襲われまくったが、【愛叶が倒す → ブリトニーが治す】のコンボで何とかしたぜ!(寿命と引き換えに)」
―67階―
「素手でも倒せそうなミストラルの雑魚共が来たが、【愛叶が倒す → ブリトニーが治す】のコンボで何とかしたぜ!(寿命と引き換えに)」
―68階―
「もうブリトニーの顔色が、死人みたくなっているが、みんな気付かないフリをしてるぜ!」
―69階―
「アタシ思ったんだケド……。
悪魔だって
「お前、頭いいな!」
―Boss階―
「――――悪魔は倒せんと思っていたが、
―71階―
「やぁ、おいらジャックフロスト! ここに住んでる悪魔なんだ♪」
「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」
「ぎゃあああぁぁーー!」
―72階―
「俺さまはケットシー! ネコの悪魔だニャン☆」
「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」
「ぎゃあああぁぁーー!」
―73階―
「我が名はナーガという。
ほら、下半身が蛇のような形をs
「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」
「ぬわーーーーッッ!」
―74階―
「ボクはケルピー。馬じゃなくて、水の精霊だよ♪
ゲームとかで見たことあるd
「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」
「ヒヒーーーンッ!?!?」
―75階―
「あら? サキュバスがいるじゃないっ!
こんにちは、あたしリリムっていうの♪ お友達になりまs
「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」
「いやぁーーーッ!!」
―76階―
「待て、この先は危険だ。
俺はミストラルのベテラン冒険者だが、たとえ俺でもこのトラップはむz
「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」
「ぬわーーーーッッ!」
―77階―
「――――おいアンタ! 助けてくれっ!
仲間が毒にやられたんだ! 解毒剤を持ってたら譲っ
「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」
「ぐわぁぁぁーーッッ!!」
―78階―
「よぉ、ここはアイテム屋だ。どうぞ見てっt
「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」
「いぎゃーーーッ!!」
―79階―
「この先に、上りの階段があるz
「うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」
「ほげぇぇぇーーーッ!!」
……
…………
……………………
―Boss階―
「私は
「待っていましたハルキ……導かれし運命の子よ。
貴方こそ、この荒廃した世界を救うk
「――――うるせぇ死ねぇー! 証明ナックルッ!!」
「きゃーーーん!!」
―81階―
「何をしておる貴公! 我は30階にいた魔王モロクだ!
さっき
「うる証ぉぉーーッ!!」
「ぐわぁぁぁーーッッ!!!!」
―82階―
「止まれ馬鹿者! 50階の主ベルゼブブである!
慌てて飛んで来てみれば、いったい何をしt
「うる証ぉぉーーッ!!」
「ぎょえええええッ!!!!」
―83階―
「待てハルキ! 我は悪魔
ほら、あのファッション対決d
「うる証ぉぉーーッ!!」
「ぎゃーーーす!!!!」
―84階―
「ゲッ!? あの時の
憶えてるか? 俺は21階でお前に騙されてた、ミストラルの冒険者n
「う証ぉーッ!!」
「んほぉぉぉーーッ!!!!」
―85階―
「瀬川、調査の進捗はどうだ?
私は君達をバベルへ送り込んだ、サイエンサーの幹部d
「う証ぉーッ!!」
「ぶるあああああ?!?!」
―86階―
「見つけたぞ瀬ノ宮ハルカ17才!
儂こそは偉大なるサイエンサーのトップ! 人呼んでロリコン大統領t
「うっっっ証ぉぉぉおおおーーッッ!!」
「き゛ん゛も゛ち゛い゛ーーッ!!!!」
……
…………
……………………
―87階―
「なんか勢いで、果たすべき目的とか、回収すべきフラグとか、全部やっちまったなぁ」
「あっ、iPhoneおちてるよハルキくん? ひーろおっと♪」
「おおマジか! やったぜ愛叶!
―88階―
「いけっ! モロク! てめぇに決めたッ!」
「い、イエスマイロード……」
―89階―
「いけっ! ベルゼブブ! このクソ野郎!」
「イエスマイロード……」
―Boss階―
「いけっ! 悪魔Berith! バブル期みてぇなファッションセンスしやがって!」
「イエスマイロード……」
―91階―
「よーしいけパールヴァティ! 死んでも勝てよテメェ! ウケケケ!」
「イエスマイロード……。よよよ……」
―92階―
「腹減ったから、メシ探してこい。ちゃんとデザートも持ってこいよ?」
「「「「イエスマイロード……」」」」
―93階―
「酒飲みてぇから、どっかで買って来い。
あと酒のアテも買ってこい。
しょーもないモンだったら、やり直しな?」
「「「「い……イエスマイロード……」」」」
―94階―
「もう嫌ですっ! こんな生活……!! 耐えられないッ……!」
「辛抱ぞパールヴァティ……、いつか報われる日も来よう……」
……
…………
……………………
―95階―
「ブリトニーちゃん……! 僕と結婚してくれないかっ……!」
「い、イワオ=クン……☆」
「よし! カップル成立だな!
冒険の中で愛が芽生えたぞ!!」
―96階―
「ねぇいわおくん? ブリトニーさんのどこを、すきになったの?」
「やっぱ……献身的なところかな……?
ちょっと気は強いけど、僕を引っ張って行ってくれると思うし……。
気が付けば、好きになっていたんだ……」
「そらぁ、あんだけ怪我治してもらってたらなぁ~。
お前、ブリトニーと心中すんじゃねぇぞ? ちゃんと二人で生きてけ?」
「……☆」
―97階―
「えれぇタイムリーだったなぁ~、“SEXしねぇと出られない部屋”のトラップ」
「ちょうどよかったよね。
わたし、ほんものの『オーイエス!』っていうの、はじめてきいたよ。
ほんとにゆーんだねアレ」
―98階―
「ヘイダーリン!
アタシの力を受け取ってソウロウ!
「おー、あれがリア充の力ってヤツかー。
張り切ってんなぁブリトニーは~」
―99階―
「――――ブリトニーが
「 このひとでなし! 」
……
…………
……………………
◆ ◆ ◆
「くそっ! まさかあのブリトニーが死ぬなんてッ!! なんて事なんだッ!!」
「ハルキくんっ!」
バベルの塔99階層に、ハルキの悔しそうな声が響く。
「まさか、
骨の欠片も残らねぇような死に方するなんてッ! 信じられねぇよ俺ぁッ……!」
「……ハルキくぅ~ん」
血が滲むほどに拳を握り、床に叩きつける。
チキショウ……チキショウと呟きながら、何度も何度も。
それを見ている愛叶も、もう居たたまれない気持ち。どれだけ彼が仲間を大切に思っていたのかを、ひしひしと感じる。
「塵すら残らなかった!!!!
というか塵はあったんだが、
「なんで、あんなタイミングで、かぜが吹いたんだろうね?
ここバベルのとうなのに。
そっと、彼の肩を抱く。
愛叶は傷ついた彼を慈しむように、そっと抱きしめてやる。
まるで聖母のように、とても優しい
「押さなければ良かったッ!
罠だって分かり切ってる、モロバレのスイッチを、俺が押したばっかりにッ!」
「ハルキくんっ! じぶんをせめないでっ! おねがいだよハルキくんっ!」
「大丈夫かと思った! というか
ブリトニーの野郎リア充しててウゼェから、驚かせてやろうと思っただけなんだッ!」
「だれもわるくないよハルキくんっ! これはふこうなジコだったんだよっ!」
「しかも、
俺がありったけのトラップを、面白がって全部発動させたから! こんな事にッ!」
「たしかにわたしも、えーそんな押すんだぁ~、マジでぇ~、っておもったけどぉ!
ただよこで、ボ~っとみてたけどぉ! ……でも誰もわるくなんかないよっ!」
「そのせいでッ! ブリトニーが死んだッ! 死んじまったんだッ!!
――――刺され! 飛ばされ! 落とされ! 折られ! 潰され!
最後はでっかい地雷みたいなヤツで、跡形も残らねぇくらい粉微塵にされちまったんだッ!! 信じらんねぇよ俺はッ!」
「げんきだしてハルキくん! どんぐりあげるから!」
「……あぁ神よ! クソッタレた神よッ!!
アンタどんだけ残酷なヤツなんだ! WTF!」*3
ハルキは叫ぶ――――この世の不条理に対して。
何故こんなにも、世界は理不尽なんだ。こんなにも残酷なんだろうと。
彼の慟哭が、天空の塔バベルに木霊する。
仲間を失った男による、見ていて心が引き裂かれるような姿と、悲痛な声――――
「くそったれ~っ! これも全部バベルが
こんな塔なんかがあるからッ! 俺の
「そうだよハルキくんっ! ぜんぶバベルがわるいんだよっ!
つれて来たのハルキくんだけど!」
「ブリトニーが死んだのも、
くそったれぇぇぇえええ~~ッッ!!」
「うんっ! まさかホントに死ぬなんて、おもってなかったよね!
あのひとファッション自殺志願者だ~って、おもってたのにね! びっくり☆」
ハルキは“人の死”という物に、耐性が無い。
過去に親戚の葬式くらいは出たことがあったが、これほど身近で親しい者を亡くした経験は無かった。
彼にとって、これが人生で初めて直面する“死”という重さであった。
思えば、これまでの人生は、ずっと部屋で一人っきり過ごして来た。
中学を不登校となり、そこから十年以上も家にひきこもり、近年ようやく定時制高校に入ったばかりだというのに、その矢先の出来事なのだ。
ようやく友が出来、人のぬくもりに触れ、大切だと思える人が出来たのに。まさかこんな事で、それを失うことになろうとは。
今のハルキの心情は、察するにあまりある物と言えよう。余人には想像し難いほどに、深い悲しみの中にいる事だろう。
――――罪を憎んで、人を憎まず。
こんな言葉もある。……だがそれが何の慰めになろうか?
たとえ直接手を下していなくとも。バベルの悪意に塗れた卑劣な罠こそが、根本的かつ絶対的な死因だったとしても、ただ面白がってスイッチを押してみただけ、であったとしても……、確かにそれをやったのは、他ならぬハルキだ。
よしんば、そんなつもりは毛頭無く、コレは“ただなんとなく”やった事であり、まごう事なき不可抗力で、別段批難されるような事もでなく、殺意や計画性や動機が無い以上は、刑罰も刑事責任も微塵も存在しない、極めて些細で
さもありなん。この瀬川ハルキとは、そういう漢であるのだ――――
優しく、責任感が強く、男気があり、太陽のようにあたたかい心を持ち、困っている人がいれば放ってはおけない人情家。“侠”の精神と博愛を合わせ持ち、全ての人間が模範とすべき絵に描いたような好青年で、しかもとてもピュアなハートを持つナイスガイで、みんなの憧れの的で、正に“
さりとて、なればこそ
このハルキのように、かの劉備玄徳も裸足で逃げ出す程の人間的魅力集合体で、超絶的かつ類まれな性格イケメンであるからこそ起る悲劇。
ああなんと惨く、重い十字架なのだろう。然りとて、むべなるかな。是非も無きこと故。
いまの彼の苦しみたるや、いったい如何ばかりか。どれほどの絶望の淵にいる事か。余人には決して推し量れまい。数多の匹夫下郎共には解せぬが必定。
人は神の如く非ず。だがもっとも人間らしい時、神に似る――――
これはとある偉人の言葉だが、こうして正面から悲しみと向かい合い、たとえ心が潰れそうなほどの絶望の中でも、しっかり友の死を受け止めようとしている君は、誰よりも美しい。なんと立派で、やむごとなき姿か。*5
きっと、かのマリー・アントワネット(1755~1793)が愛したブルーダイヤモンドの輝きすらも、いまの彼と比べる時、色あせて見えるに相違ない。
あぁなんと美しき
出来るなら、今すぐそこへ飛んで行って、「君は悪くないんだ」と言ってあげたい。何度でも繰り返し言ってあげたい。その痛みを肩代わりしてやりたい。
その涙を拭ってあげたい。赦してあげたい、君の心を救ってあげたい――――
願わくば、彼の穢れなき魂に、一刻も早く平穏と安らぎが訪れんことを。そしてあたたかなる神の慈悲が惜しみなく降り注がんことを、我々は心より願ってやまない。それが“人の情”という物であるからして。――――
『人を愛しなさい――――愛せる人になりなさい』
いまハルキの脳裏に、むかし母親に言われた言葉が、浮かんで来た。
幼少の頃、両親のあふれんばかりの愛情を受けて、健やかに生きていた頃……、優しかった母が言ってくれた言葉。
彼には数少ない、大切な人……そして心から信じられる人から貰った、人生の指針たる一言である。
だが、「人を愛する」という事は、これほどまでに辛いものなのか――――
これほどの悲しみを背負わなければ、人を愛し切ることは出来ないというのか。
ハルキはこのバベルで、初めて知る。生まれて初めて、そのことを学んだのだ。
捨ててしまいたい。もう全てを投げだし、跪いてしまいたい。
またあの暗い部屋に、一人っきりで居たい。誰とも会わず、愛など持たず、ただ目を瞑っていたかった。
けれど……それは出来ない。決してしてはならないのだ。
だって、もうハルキは知っている。“友情”の素晴らしさを。
愛すべき友を持ち、そして力を合わせて困難を乗り越え、共にバベルを登って来たのだから。
愛を捨てること――――それは彼らを「忘れる」という事だ。
今まで積み上げて来た物、楽しかった思い出、喧嘩した記憶、彼らから受け取った言葉……。
その全てを、捨て去る事なんて出来ない。忘れるなんて出来はしないないのだ。
だってこれは、このあたたかな気持ちは、ハルキにとって生涯の宝とも言うべき、かけがえのない物だから。
――――生きよう。たとえ一人でも。
ハルキはそう心に誓う。
辛くても、寂しくても……張り裂けそうなほど胸が痛んでも。
ハルキは決して逃げる事なく、この孤独を抱きしめながら、人生を歩んでいこうと決める。
そう、友から貰った思い出を胸に。
決してそれを忘れてしまわない為に、生きねばならぬ。
――――たかが知り合いの1人や2人死んだくらい、何だってんだクソが!
――――別に俺ぁ悪くねーし? まぁ気にする事もねーやな! しょーもな!
とても悲しいけど……、今はその位の強い気持ちを持って、我々は新しい明日を生きていこうではないか。
人生……、辛いことなんて、山ほどある。
生きていれば、誰だって辛い想いをする。悲しい出来事だってある。
ロッキーも言ってたじゃないか。「人生はいつもバラ色じゃない。それなりに辛く厳しい事が待っている」と。
ならこれを越えてみせなければ、ロッキーに申し訳が立たないという物だ。
自分はシリーズを通して、そして続編のクリードまでも、全て観ているんだから。ロッキーの大ファンなのだから。
そういえば、昔はよく意味もなく、深夜の公園を走ったものだ。
ロッキーを観た後は、妙に身体が滾る。やたらとテンションが上がってしまい、もう動かずにはいられなくなるのだ。
ハルキは部屋の照明の紐を相手に、「シュッ! シュッ!」とか言いながら、ボクシングの練習をした。
公園の階段を登り切った所で「エイドリアーーン!」と叫んだ。それを通行人に見られて、ちょっと恥ずかしい思いをしたりもした。
ロッキーが好きだ。ロッキーのためなら死んでも良い。ハルキは心からそう思う。彼は誰よりもロッキーを愛する男なのだ。
しかし……では何故彼は、自分でボクシングをやろうとしなかったのだろう?
ロッキーに憧れるのなら、なぜボクサーを志すことをしなかったのだろう?
家の近所に、ちょうどボクシングジムがあった。買い物に行った時、いつも活気にあふれるジムが目に入っていた。
だが、ハルキは決してボクシングをしようなどとは、思わなかった――――
実はちょっとだけ、うっすら「入ろうかな~」とか考えないでも無かったが……、でもボクシングって減量とか走り込みとか大変そうだし、この美しい顔を殴られ、鼻でも折れたら人類種の大きな損失だと思い、ついに彼がジムの門を叩くことは無かった。
その代わりに、まるで「ホントはラーメン食いたいけど、時間無いしうどんでもいっか♪」と妥協する昼時のサラリーマンの如く、なんかお手軽で楽そうな護身術を習うことで、その溜飲を下げたのである――――別になんでも良かったのかもしれない。
だが侮るなかれ。それでハルキのロッキー愛が偽物だなどと、一体どうして言えよう?
全ての作品を鑑賞し、家にブルーレイまで揃えているハルキは、間違いなくロッキーの大ファンだ。ちゃんと映画会社にお金を落としているのだから、きっとあちらから見ても間違いない事だろう。誰に文句を言われる筋合いも無いのだ。
そもそもハルキは、ロッキーのみならず、かなりの映画好きである。
長年のあいだ家にひきこもり、そして時間を持て余していた彼は、もうその溢れんばかりの自由時間を、映画鑑賞のために費やしていた。
おかげで今では、ちょっとした映画博士を名乗れる程。しかも洋画に限らず、邦画や韓流や中国映画、意味もなく唐突に始まるダンスが特徴的なインド映画まで、なんでも御座れである。
ハルキに映画の事を語らせたら、少しばかりうるさい。なので彼の妹分である愛叶は、決して自分から映画の話をふる事をせず、また彼と一緒に映画を観ることをしない。
だってドヤ顔の上から目線でうんちくを語ってくるし、しかもそれが長ったらしくてウザッたいものだから、もう救いようが無い。
自分で映画を撮るどころか、もう何一つ創作活動をした事がないのに、なんでハルキくんは水野〇郎みたく偉そうなんだろうと、いつも彼女は不思議に思っていた。
いくらカッコ良くったって、こんな人と映画を観るなんてまっぴらだ。
愛叶はドラマも漫画も小説も嗜むが、妙に映画という物だけは敬遠しちゃうのは、やはりこの経験が大きいのかもしれない。嫌な思い出ばかりが頭に浮かび、どうしてもTSUTAYAに足が伸びないのだった。
ちなみにだが、ハルキのオススメの映画を観て、面白かった事なんて
なんか弁髪の中国拳法家が主役の、よく分からないラブストーリーとか。ジャケットにでかでかとサメの絵があり、もうまごう事なきサメ映画であるというのに、なぜか作中にはサメが20秒しか出てこない、そんなビバリーヒルズ青春なんたらみたいなラブコメとか。ポップなホラー映画を目指しているのか、ジャケットには可愛いチアガールの女の子達がチェーンソーを握っている絵があり、そしてタイトルも“女子高生チェーンソー”という名前であるのに、なぜか女の子たちが一回もチェーンソーを使って無かったりする、そんなお色気だけが取柄の、怖くもなんともない似非ホラー映画とか。
そんなのばかりである。
――――もしかしてハルキくんは、映画をえらぶセンスがないのかな?
――――――それとも、
愛叶はこの議題を、長年のあいだ脳内で議論しているが(心の中にいるたくさんの“ミニ愛叶たち”と、いつも話し合いをおこなっているのだ)、しかしいつまで経っても答えは出ないのだった。
もしかしたら、センスが無いのと頭がおかしいの、その両方なのかもしれない。
もう映画なんて観ないで、外に出たらいいのに。
学校だけじゃなく、いろんな所に遊びに連れて行って欲しいな~。
そう愛叶は密かに願っているのだが、それはなかなか叶いそうも無い。
きっかけとして、原付とかの免許を取ってみるのはどうだろう?
別にバイクじゃなくても良い、ハルキの年ならば車だって乗れるし、いろいろ選択肢はある。
それが彼を外で遊ばせるきっかけとなるかもしれないし、今度さりげなく勧めてみよう。愛叶は心に決める。
けど……なんかハルキくんって、運転したら性格変わりそうだなぁ~。
ただでさえ性格悪いのに、もうこれ以上悪くなったら、いったいどうなっちゃうんだろう?
愛叶はちょっとだけ想像してみたが、すぐ思考を中断してしまった。
もうトロトロ前を走ってる車に怒鳴り散らしてる所とか、クラクションを連打しながら中指立ててる所しか、想像出来なかった。とりあえずこの案は却下だ。
まぁ電車に乗ってお出かけするのも良いけれど、ハルキも愛叶も、非常に痴漢に合いやすいタイプ。だから出来るだけ電車の利用は控えたい。
これは別に愛叶の為じゃなく、おしりを触ろうとした途端にハルキにボコボコにされる痴漢さんの為だ。避けられるトラブルは避けるべきだし、これ以上ハルキに前科が付くことは望まない。
愛叶はそう「うんうん」しながら結論付け、この思考もいったん打ち切る事とする。
でも、お出かけしたいなぁ。
喫茶店でもどこでも良いから、ハルキくんとデートしたいなぁ……。
いつも家か学校で会うばかりだし、やはりどうしても彼女は、気持ちを抑えられない様子。
ハルキくんの好きなものってなんだろう? たしか二郎ラーメンが好きだったハズだけど……ここって店内はおしゃべり厳禁だしね。デートには無しだと思う。
あとお酒が好きだから、アタリメとか、燻たま*6とか、ビーフジャーキーとか、そんなオッサンみたいな物ばっかり食べてるよね……。
居酒屋デートなんて、まだわたし出来ないし、どうにかハルキくんが好きそうなお店を考えないと。
そう愛叶は、再び脳内の“ミニ愛叶たち”と会議を始め、一人うんうんと思い悩んでいく。
それはとても愛らしい仕草であり、コテンと首を傾げながら自身の豊かな胸の前で腕を組んでいる姿は、まさにアニメやラノベで出てくるヒロインのようである。
この女の子が、彼氏に付き合って二郎ラーメンを汗だくで「はふはふ」している所など、誰も観たいとは思わない事だろう。
きっと彼女に似合うのは、スタバとかサブウェイとかの、おしゃれなお店に違いない。
――――なんか腹へってきたなぁ。また似非花輪の野郎にタカりに行こっかな?
そして奇しくも今、ハルキの方も食べ物のことに、思考を巡らせていた。
ここが家だったら、愛叶に言って何か作らせるんだが……、でもバベルだしなぁ~。食えるモンって何があっかなぁ~。
そうハルキも、胸元で腕を組んで「うーん」と唸る。隣にいる愛叶に負けず劣らず、その姿はとても可憐である。まさかコイツがいつも二郎ラーメンで、ニンニクアブラカラメヤサイマシマシの豚ダブルを注文しているとは、誰も夢にも思わない事だろう。
世の中は不思議な事でいっぱいだ。
――――焼き鳥の缶詰くらい、持ってくりゃー良かったか? あのタレと塩のヤツ。
これはよく百円ショップなどでも見かける、桃〇のロングセラー商品である、やきとりの缶詰のこと。
湯煎などで加熱して食べることを推奨されているが、別に温めなくても充分に食えるという、料理が苦手でものぐさなお父さん達の、強い味方だ。
これはごはんのお供のみならず、お酒のおつまみにもなったりする。大変便利な商品なのだ。
ハルキも店で見かける度に買ってしまうという、長年お世話になっている、大好きな缶詰であった。値段も100円とかだし、大変リーズナボゥ。
ただ、どうすっかな~。とりま何でも良いから食わねぇと、もたねぇぞ。
リュックの中に、なんか入ってたかな? そこら中で色々かっぱらって来たし、食い物的なモンは~っと。
そうハルキは荷物をゴソゴソし始め、隣で愛叶も何気なくその姿を見守る。
何かないかな~、お腹空いたな~、という二人の声が、静かにバベルの99階に響く。
いまハルキのリュックから出て来たのは、皮が付いたまんまのニンジン、まだ泥が付いているジャガイモ、青いビニールテープで縛られたホウレン草が一束。
あとタマネギとか、春キャベツとか、赤いパプリカなんかもあるが……どれも生の食材ばかりだ。
――――おいしくないねぇハルキくん(ボリボリ)
――――あぁ、生のまんまだからなコレ(ガリゴリ)
二人の切ない会話が、だらだら延々と続く。
焼きもせず、茹でもせず、皮すら剥いていないお野菜を、黙々と食べていく。
あぁなんという事だろう。いま自分達がこんなにも惨めな想いをしているのも、全てここバベルのせいに他ならない。
全ての悪、全ての不条理、全ての思い通りにいかない事の理由たる物が、このバベルであった。バベル許すまじ。
――――むかしのKー1ファイターで、だれがいちばんすき?
――――マイク・ベ〇ナルドかなぁ~。あとセフ〇ーとか。
そして彼らは、こことは全然関係ない話をし出す。
これは決して現実逃避などではなく、どのような状況下であろうとも普段通りに振舞う事により、精神を安定させ、緊張状態を緩和し、それによるフィジカル&パフォーマンスUPが望めるという、非常に有効な行為なのである。少しでも生存率を上げる為には、出来ることは何でもしておくべきであろう。
たとえ、ただの“毒にも薬にもならん”雑談に見えるとしても、これは大変高度で理に適った物だという事を、理解しておかなければならない。
ぬるい会話をしながら、生の野菜を齧る。ウサギのように食べる。
無心でいかないと喉を通らない。ここにマヨネーズなんか無いし、ドレッシングなんて大そうな物もっての他だ。こんな物のない時代に生まれた悲劇、クソッタレなみじめさを、生のセロリと一緒に噛みしめる。涙が出てきそうだホント。
とにかくハルキ&愛叶は、ひたすら食事を進めていく。栄養補給なくしては、バベルで生き残ることは出来ないのだ。
食事は元気の源なのだから。農家の皆さんありがとうとばかりに。まぁこれって盗んだ野菜だったりするんだけども、別段いま気にする事でも無いだろう。物事の“本質”に関わるような重要な問題ではない。全ての生命と恵みに「センキュメ~ン!」とか言ってれば、それで良いんだと思う。
そうして二人はお野菜をモリモリ食べながら、KOF94のアメリカチームの話とか、大門って実はチート級に強かったーとか、女性チームはキングだけいりゃーなんとかなる~とか、嘘つけハイデルンはボスキャラだ~とか、ストォームブリンガァァーーとか、KOFにはロック出ないんだよね~とか、マークオブウルブスの主役なのに弱すぎ~とか、初期のテリーのゲイザーって絶対自分の顔面焼けてるよね~とか、どんな汚れキャラにされようとも俺はジョー東を愛してる~とか、リアルバウト餓狼伝説で死んだハズなのに後の作品にもずっと出続ける所にギースの悪を感じる~とか、意外とファイターズヒストリーって面白かったよね~とか、昔セーラームーンの格ゲーあったよね~とか、ミュータントタートルズの格ゲー持ってたわ~とか、幽白の格ゲーは出来が良かった~とか、ザンギエフ使うヤツに悪い人はいない~とか、強いんだからもっとエドモンド本田使ってあげて~とか、バルログ金網ない方が強いよね~とか、ベガの空中Pってなんかエビっぽいよね~とか、パッドで昇竜拳出せるようになるまで1ヶ月かかった~とか、ヴァンパイアはシリーズ通してサスカッチ使ってりゃ間違いない~とか、龍虎の拳は不朽の名作だ~とか、歴代サムスピでどれが一番出来が良かったか~とか、風雲拳という実戦空手道とブーメランを組み合わせた全く新しい格闘技について、熱く語り合ってみたりしたのだった。
「よっし。じゃあ曲りなりにも腹は膨れたし……、そろそろ行くか?」
「そだね~」
おしりをパンパンと手で払い、スカートについた埃を落とす。
そして二人は立ち上がり、いま眼前にあるバベルの実質的な最上階に続く階段を、暫し見つめる。
「――――ブリトニー! 巌! お前らの死は無駄にしねぇぞッ!!
必ず俺が、仇を取ってやるッッ!!!!」
「うん! わたしもがんばるっ!
ぜったいバベルから生きてかえるもん!」
無念にも死んでいった者達――――その想いを背負い、ハルキ達は戦う。
気は強いが、本当は誰よりも優しかったブリトニー。
友達思いで、いつも身体を張ってみんなを守ってくれた巌。
彼らとの思い出が、次々と頭に浮かぶ。
楽しかった日々が、止めどなく瞼に浮かんでくる。
心から愛した友のことを思い、またハルキの目頭が熱くなる。
しかし――――もう振り返っては駄目だ。
泣くのはもう終わり。涙は全て流し尽くしたハズだ。
そんな事をしても、ブリトニーは帰って来ない。巌は決して喜んでくれない。
友の死を悲しむのは、いつだって出来る。
だが今は、散っていった者達の想いを背負い、前に進む事。なによりハルキという大切な友が、ここから生きて帰ってくれる事……。
それこそが、これまで力を合わせて戦い、そして最上階を目前にして死んでしまった彼らにとって、唯一無二の願いであるハズだから。
叶えなければならない。受け止めなければならない。……友の想いを!
敵を討ち、世界を救い、涙を笑顔に変えるのだ!
全ての悪に、断固たる膺懲の拳を!*7 愛の御名において!
「――――やるぞ愛叶! あいつらの分までッ!!
必ずイナンナを倒すッ! エスメラルダの野望を止めてみせるッ!!」
「いこうハルキくんっ! バベルのてっぺんに!」
これまでバベルで出会って来た者達との思い出が、鮮やかに脳裏に蘇る。
教授、似非花輪、21階で騙した冒険者、あと出会って2秒くらいでぶっ飛ばしたヤツら……。
彼らの笑顔が力をくれる。心なしか声援が聞こえてくる。ハルキの心に勇気の火が灯る。
そして彼は、最後にもう一度だけ振り向き、小さな声で、愛した人達へと告げる。
「じゃあなBFF*8――――楽しかったぜ」
いま瀬川ハルキが、前人未踏のバベル100階へ向けて、歩き出した。
◆ ◆ ◆
「何をしとったでごじゃるカ? はよぅ参らぬかタワケ」
「先にフロアを確認しといたよハルキくん……。エレベーターはすぐそこだ……」
「よぉ二人とも。
ちょっと下でダベッててよ? 待たせちまったな」
バベル100階――――そこに辿り着いた途端、ブリと巌が姿を現した。
「こんな御大層な場所なのに、一人も死者が出ないとか、
じゃあバベルって、別に大した事なくね? ……って愛叶が言っててよぉ」
「ちょ! それハルキくんだもんっ!
わたし、おしばいに付きあっただけだよ!?」
「だからな? お前ら二人が
「人の命を、なんとココロエル? ブッダに殴られろキサマ」
「いやでも、結構いい感じの物語が紡げたぜ? 絶対お前らも泣くって!
友の死を乗り越えて~とか、鉄板シチュじゃんか」
「ふーん。ホントに死んでやろっかな僕……。
まぁ自殺は“一日一回”って決めてるし、もうやめとくけど……」
ちなみにあの時、巌は確かに塔から飛び降りたが、なんか壁のでっぱりに引っかかり、バッチリ助かっていたのだ。「い゛き゛た゛ぁ゛い゛!」みたいな形相で、必死にしがみついてたし。
そして爆散したかと思われていたブリトニーも、怪我一つなく元気な姿を見せている。まぁちょっとだけ、例のラバースーツが破けてはいるが。
「それにしても、さっきは南無三かとオモタワ。走馬灯
でもこれが……、アタシを
そう彼女が差し出したのは、かの“お休みイワオくん”(ダッ〇ワイフ)の残骸。
魔王モロクにぼりぼり食べられたアレと一緒で、リアルな作りのアダルトグッズである。
これがブリトニーという乙女の尊い命を救い、身代わりとなって爆散したのだという。
「何かに使えるかも~、と思って持ってきたが、役に立つもんだなぁオイ」
「備えあればウレイナッシン!
ドーモ、皆サン……。ニンジャ・ブリトニー=デス。
特技は、身代わりの術デス」
「ブリトニーさんすごーい! スタントマンみたい☆」
「そう褒めるでナイ。よきにハカラエ?
でも……ありがとネ、お休みイワオ=クン。
ヤスラカニ・ネムレ(1678~1734)」
それにしても、よくダッ〇ワイフが活躍するなぁ。まさかダッ〇ワイフが“伏線”だったとはなぁ。ハルキもビックリである。
まぁちょっとだけ、「この女、ダッ〇ワイフに
「なんなら、あと5、6体くらい、持ってくりゃーよかったな?
ダッ〇ワイフ引きつれて、バベル陥落させようぜ」
「アンタ、ダッ〇ワイフに倒されるラスボスの気持ち、考えた事あんノ?」
「いや俺的には、バベルにダッ〇ワイフあるのが悪い! と思ってるがな。
そら使うだろオイ。こんな面白アイテムよぉ?」
「まじめにバベルのぼってる人達にあやまろ? みんながんばってるんだよ」
「つかもう、ここまで来るとさ?
あのイナンナとかいうのも、
「やめとけハルキくんっ……! 怒られるぞっ……!」
きっと人生で、こんな「ダッチ、ダッチ」言うこと、二度と無いだろうなぁ。
俺たちの
ついに最終決戦も目前となり、これまでの冒険の日々を思い出して、感慨深くならないことも無いけれど……。でもちょいちょい脳裏に“ダッ〇ワイフ”という単語が浮かんで来るので、もう邪魔でしょうがない。
もし自分の孫に、思い出語りをする事になったら、いったいどうしたら良いんだろう。
じいちゃんは昔、仲の良い友達や、ダッ〇ワイフと共に、大冒険をしたんじゃよ――――とでも言えばいいのか。
はたしてそれで、孫は『おじいちゃんすげー!』とか言ってくれるんだろうか? 大きな不安が残る。
「――――そんじゃあ行くぞお前ら! 四人の力を合わせ、バベルを踏破するんだ!」
「いやハルキくん、さっき助けに来なかったよね……?
助ける素振りすら無かったよね……?」
「これはショギョー・ムジョーですカ? うぬを絶対に許サヌ」
帰ったら、ハルキを埋めよう! コイツの墓に唾を吐こう!
そう親愛なる仲間達は、固く心に誓う。
「やるぞッ! これまで支えてくれた人達のために、俺たちは勝つ!!」
「――――
「ハルキくんが、いいコトしてるトコなんか、いっかいも見たことないなぁー」
「ある意味、バベル最強の人間って、ハルキくんみたいな人かもしれない……。
メンタルがオリハルコンだもの……」
とりあえず4人は、スタスタとエレベーターの所に行き、グイッと【△】のボタンを押す。
ゴインゴインという僅かな振動を感じた後、すぐに〈チーン♪〉という間の抜けた音が鳴り、扉が両開きに開いた。
「え、えらく近代的というか、普通のエレベーターだね……」
「あぁ。これ花輪の話じゃ、HIT〇CHIに作らせたらしいからな。
そこらのビルにあるヤツと、なんも変わらねぇよ」
「インスパイア・ザ・ネクスト☆ 流石はHIT〇CHIにごじゃるナ!
このブリトニー・クロサワ、感服
「ねぇみんな! あれうたいながら、のろうよ!
この~木、なんの木、気になる木ぃ~♪」
「「「気になる木ぃ~♪(合唱)」」」
◆ ◆ ◆
「――――さて、お遊びはここまでだ。
お前ら、気合入れていくぞ」
「うん!」
「
「わかった!」
ゴインゴインとエレベーターの中で揺られながら、ハルキ達は気合を入れ直す。
もうすぐ、待ちに待った最終決戦。バベル358階だ――――
「正直、キツイ戦いになんだろう。
下手すりゃ、誰かが死ぬことすら、有り得るかもしんねぇ」
「……」
「だが、やると決めたからにゃー、最後までやり切る。
もし誰かが倒れても……いいな? 一瞬たりとも止まるな。
エスメラルダを倒す」
「……うん、わかったよハルキくん」
「Roger that.(心得申した)」
コクリと頷き合う。強い光の宿った瞳で。
そして、覚悟を決めた表情で。
「最後に言っとく。
あん時は冗談めかして言ったが……マジで楽しかった。
お前らと遊べて、一緒にいられて、俺は幸運だった……のかもしれん」
「いや、そこは言い切ろうよ……?
こんな時でも、ハルキくんらしいなぁ……」
「ここに来ても、意地っ張りは治らぬカ。
まったく度し難き哉。……でもアンタらしいワ」
巌、ブリトニーがクスリと笑う。そして愛おし気に、親友の方を見つめる。
これまで散々ふざけはしても、ちゃんと締める所は締める、勝負所を決して見誤らない、頼れるリーダーの顔を。
「愛叶? お前は
たとえ何があっても、俺が倒れたとしても……“あの力”は使うな」
「……っ」
「お前が駄目になる、イコール俺達の全滅だと思え。
何があっても遂げろ。ギリギリまで耐えて、最後の瞬間に全てをぶち込め。
それの使いどころを、決して間違えるな。
俺の妹分なんだ……出来るな?」
「……うん、ハルキくんがそー言うんなら、そうする。
できるよ? わたしハルキくんのいもうと分だもん。
……いままで、たくさん見てきたから」
348……349……350……。
エレベーター上部の表示が、だんだんバベルの最上階へと近づいていく。
「この扉が開いた瞬間、いく――――
お前らは暫く見てろ。俺がやれるトコまではやっから。
力を、温存しとくんだ」
354……355……356……。
次第にエレベーターの速度が弱まり、もう停止の準備に入っている事を、振動でも感じる。
この扉が開いた時、全てが始まる。そして全てが終わる。
その覚悟を以って、ハルキはギリリと歯を食いしばり、眼前を睨んだ。
「
そんで、俺の
だから……そこで見てろ?」
ホントは、証明するまでもない。
だって愛叶も、巌も、ブリトニーも、ちゃんと知ってるんだから。
ハルキは凄い――――こいつは頼りになるって。
決めるべき時に、しっかり決めるヤツだって。
「んじゃ! ――――瀬ノ宮ハルカ17才☆ いってくらぁ!」
チーンと、到着のベルが鳴る。
それはバベル踏破を知らせる音。……そして、最後の戦いの開始を告げる音だった。
◆ ◆ ◆
(出来るよ、ハルキ=クン。アンタなら出来るワ)
扉が開いた瞬間、ハルキが一人エレベーターから駆け出す。
(
そして、かの教授に作って貰ったアイテム【ステルス風呂敷】を、バサッと頭から被った。
(捻くれ者だけど……真っすぐ。
馬鹿だけど……間違ったりしなかッタ)
ハルキはまるで、赤塚不二夫漫画に出てくるドロボウの如く、抜き足差し足で、フロアの中心へ向かって行く。
(ゼンブ託すワ。アタシ達のゼンブ……。
アンタがフォワードよハルキ。決めてしまいなサイ!)
そして、キョロキョロと周囲を見渡し……、そこに【オレンジ色の水で満たされポット】を見つけた。
(ハルキくん……負けるなハルキくん……!)
完全にステルス状態となっているハルキは、いま誰にも気付かれる事無く、何か得も知れぬ威圧感を感じさせる者が入っているポット、そのすぐ傍まで近づく。
(落ち着いて……大丈夫だよハルキくん……!
君は失敗しない、必ず成功する……!
僕はいつも一緒だった。それを知ってるんだ……!)
そして――――
ハルキが小さく「えいっ!」と声を出し、ポットの
(僕の友達……! 僕の一番の親友……!
頑張れハルキくん! 負けるな……! 負けないでくれっ……!)
すると、次第にポット内にいる“少女っぽい存在”が「うっ……! 苦しい!」とばかりに小さくジタバタし始め……。
やがてそのまま「ガクッ!」と力尽きたように、動かなくなった。
あの魔女が作り出そうとし、彼女の一族が二千年も誕生を待ち望んだいう“新しい神様”。
かの存在は、こうして誰にも姿を見せる事無く、ポットの中で
(ハルキくん! いけるよハルキくん! そのちょうし!)
ポットの中にいた“なんかよく分からん子”、その生命活動の停止を確認したハルキは……、例のステルス風呂敷をしっかり被ったまま、続いてその隣に目をやる。
そこには十字架やら、魔法陣やら、動物の死骸やら、何かしらの聖遺物やらが散乱しているようだった。
ハルキは「あ、たぶんこれが“イナンナ”の召喚儀式に使うための道具なんだな~」と目ざとく気付き、教授に作って貰った【半径5メートル以内にある物なら、どんな物でも木っ端みじんにする、高性能手榴弾】を、スッと懐から取り出した。
(ハルキくんはすごいもん!
ほかのどんな人より、どんなすごい人よりも、ハルキくんはすごいんだよ!
いちばんカッコいいよ!)
そしてハルキは、手早く安全ピンを口で外した手榴弾を、床にある魔法陣の中心へと投げ放つ。
すると3秒もしない内に、凄まじい轟音を立てて
こうして魔女と塔の主が目論んだという、女神イナンナの復活は、
瀬川ハルキという、一人の男の手によって――――コソコソと泥棒みたいに忍び込むという、姑息な手段によって。
(やっちゃえハルキくん! かてるよ! ハルキくんはまけないもんっ!)
手榴弾爆発の轟音により、「えっ、なにごと!?」とビックリしたのが“塔の主”。
その御名は存ぜぬも、きっと伝承に語られるような、太古からの偉大なる悪魔である事は、想像に難くない。
彼は「まさに魔王!」と言わんばかりの、それっぽい椅子に腰かけ、今の今までグースカ眠っていたのだが、あの爆発音を聴いた途端「ビクゥ!」と飛び起きたのだ。
かのエスタークという名の魔王も、大変なお寝坊さんだったというが、この“塔の主”とやらも、それに負けない位の寝坊助であるようだった。
(今ダッ!)
(行けっ……!)
(わたしたちの想いをひとつに!)
すぐさまハルキが動く。
教授が作ったという最終兵器、どんな強大な存在であろうとも永遠に封印することの出来るという、いわば現代版パンドラの箱ともいえる発明品……。
その名も【生かさず殺さず君1号】を構え、いま雄々しく“塔の主”の方へと向けた!
(――――アタシ達ガ!)
(――――やってきた事の全てを……!)
(――――いまここに!)
(((いっけぇぇぇえええーーッッ!!!!)))
まるで掃除機のように……というかまんま掃除機の形をしたマシンにより、“塔の主”が「ほげぇ~!」っと吸い込まれて行く。
ゴゴゴゴゴ! ジュポン! みたいな音が鳴り終わった時……、教授の新発明【生かさず殺さず君1号】は、かの最高位の悪魔を、みごと永久に封印して見せたのだった。
さすがは教授! こんな凄い物を作れるなんて、まごう事なき天才であった! スゴイ!
まぁこの道具を受け取った時、「ためしに」という事で、一番最初に教授を吸い込んでやったので、いまこの中で封印されてたりもするんだけれど。
ぜひ塔の主と一緒に、仲良くやって欲しいものだ。
案ずるなかれ、時間はうなるほどある。なんたってこの道具は【生かさず殺さず君1号】である。
たとえ一週間しか生きられないハズの蝉であろうとも、ずっとこの中で生き長らえさせたまま、永久に閉じ込める機能を搭載しているのだ。
ついでに言うと、この道具は
重ねてになるが、――――
まごう事なき天才! すごい漢だ。
(やった……! なんか神も悪魔もよく分からん存在も、全て倒したぞ……!
似非花輪くんが言ってた通り、僕ほんと何の役にも立たなかったな……!)
(ニセ花輪くんがいうには……、「愛叶ちゃんは思うようにしなさい」ってコトだったけど。きっとこれでよかったんだよね! わたし、おもうようにしたもん!)
(えっと……アタシの『選択を迫られる』って、
アイツいったい何を指して、そう言うてたんでごじゃるカ!?
……なんかもう、全部倒してしもうたっぽいフンイキ!
いったいアタシ、何を選択したら良かったんデスカ!?!?)
三人がエレベータの中で「ぼけ~」っとしている内に、とりあえず倒すべき者は、すべて倒し終わった。
そう祈っていた甲斐があったという物だが。
「こっ……こらーアンタたち! いったい何してるのよぉ~!」
「あ、やべ! エスメラルダだ!」
するとそこに、恐らく買い物から帰って来たんであろうエスメラルダが、ネギだの白菜だのがはみ出したエコバッグをブンブン振り回しながら、こちらに猛然と走って来る。
もうスチーム・ポットみたいにカンカンに怒っており、まるで赤い布に突進する猛牛みたく迫って来た。
「おう! ただいま皆! 閉めろ閉めろ! はやくドア閉めろ!」
「Roger that.(心得申した)」
ハルキがエレベーターに帰還した途端、言われるままにブリトニーがドア横の【▽】ボタンを押す。
ドアがウイーンと閉まり、エスメラルダがダッシュで駆けつけた時には、もうすでに閉まってしまっていた。
「ちょ……! 待ちなさいよアンタたち! 待ちなさいってばぁ!
何してくれてんのよホント!」
慌ててエスメラルダも、エレベーターの【▽】ボタンをカチカチ連打するも、なかなか次のエレベーターはやって来ない。
そもそもここには、一つしかエレベーターが無いのだ。あまり人通りがある場所じゃないので、大きい建物みたく、いくつもエレベーターを作る必要が無かったのだ。
「待ってよっ……! どこ行くのよアンタたち!?
私の一族の2000年、返してよぉぉぉ~~っ!!」
泣き喚きながら、ひたすら【▽】ボタンをカチカチするエスメラルダ。
しかし前述の通り、エレベーターはひとつっきゃないので、ハルキ達をダンジョンの100階……いやこのバベルの入口がある
「ボロボロじゃないこの部屋! 瓦礫だらけじゃないの!
――――せめて掃除くらいして行きなさいよ!
人ん
天空の塔、バベルの最上階――――
そこにエスメラルダという哀れな少女の泣き声だけが、いつまでも木霊していった。
【バベル編】はこれにて終了しました。かなり無理やりですが……。
以降はもう、なんの設定の縛りもありません。
主人公を交代するなり、舞台を南アフリカ共和国に移すなり、なんでもご自由です!
――――ラスト一巡! ここからは好きなように書きましょう♪
(hasegawa)