【リレー小説】ボクカノ   作:リレー小説実行委員会

7 / 21
二巡目
生きるコト。 (hasegawa 作)


 

 

「いやいやハルキくん?

 こーんなだんじょんで、オアシスなんかあるわけ…………ってほんとだっ!?!?」

 

「ちょっと二人とも……。

 いくら何でも、そんな非常識な事が…………ってホントだッ……!?!?」

 

「待たれよミナノシュウ。

 そろそろ幻覚でも見え始めたんじゃ…………ってホンマジャ!?!?」

 

「ヒュー♪ 嫌いじゃないぜ俺、そういうの!

 全員ぶん殴るぞ……?」

 

 イエーイ☆ みたいに拳をコツンと合わせる三人を、ハルキは殺意の籠った目で見つめる。お気楽なものである。

 

「おい、真面目にどういう事だよ? めちゃめちゃ木ぃ生えてんじゃねぇか。

 ハワイみてぇなヤツが」

 

「砂もあるし、草も……。ついでに言えば、太陽が照ってるね……」

 

「日差しがきついワ。お肌が焼けてしまうワ。解せヌ」

 

「あ……でも、お水があるのはすごくいいことだよ。もう水筒も、すっからかんだし」

 

 まだぼんやりとではあるが、いま目の前には泉らしき物が見える。

 常夏の国にありそうな木々と、青々とした草に囲まれた泉。まさに砂漠を旅する者達が蜃気楼で見るような光景が、リアルにそこにあるのだ。

 

 一瞬「こういうトラップ? フェイクの映像?」かと思った。

 例えば散々ダンジョンを彷徨い、疲弊して思考能力が鈍った者達にオアシスの映像を見せ、まんまと近寄って来た所を「いただきます」とばかりにKILLような。

 でもいくら4人が目を凝らしても、目の前にあるそれが偽物だとは思えない。太陽の日差しのみならず、何だったら涼し気な風まで吹いているのを肌に感じるのだ。

 これはもう、疑り深いハルキをしても「あるんだからしょうがねぇ」って感じだ。バベルの仕組みなんざ知るか。

 

「あ、なんか人がいるヨ(・・・・・)? 水辺のトコにごじゃるマス」

 

「あんだとぉ?!」

 

 即座にザザッと身を隠し、気配を消す。

 むりやり三人の頭を押し込んだので、「ぐえっ!?」という声がいっぱい聞こえた。ついでにブーブーと批難の声も。

 

「悪魔……ではないね。そんな感じはしないよ……」

 

「あぁ。そもそもビーチパラソル(・・・・・・・)の下で、トロピカルドリンク(・・・・・・・・・)を飲む、グラサンかけた悪魔(・・・・・・・・・)なんざいるワケがねぇ」

 

「めっちゃ寛いでるワネ。憎らしいほどバカンスしとるワ」

 

 いま遠くに見えるのは、まさにグアムで身体を焼く芸能人みたいな人影。

 キラリとグラサンが光を反射しており、庶民としては凄く「イラッ☆」とくる感じの姿。

 

「わたし、こーゆー人みたことあるっ。

 ちびまる子ちゃんにでてくる、花輪くんだよっ」

 

「つーかアレ花輪くんじゃね? 髪型までそっくりなんだが。コスプレか?」

 

「ここバベルの20階なんだけど……。えらく気合の入ったレイヤーさんだね……」

 

「花輪=クンのレイヤーっているノン? 初めて見たわアタシ。アッパレィ!」

 

 妙に関心してしまう。この状況も忘れて――――

 世の中いろんな人が居るもんだ~と、変人共は自分を棚に上げた。

 

「あっ、ちょっと待ってろお前ら。ここで隠れてろよ?」

 

 ハルキが瞬く間に〈シュバババッ!〉と早着替え。熟練の技を持って身支度を整える。化粧も一瞬で完了。

 

 

「――――こんにちは~☆ 瀬ノ宮ハルカ、17歳でぇーす♡♡♡」

 

「オーゥ。やりやがったあのヤロウ。死んだらイイノニ(ボソッ)」

 

 

 ハルキは満面の笑みで、ダダダーっと向こうへ駆けて行く。

 物陰に潜みながら見守る三人は、「どよーん」と額に影を落としている。先ほど花輪くんの話が出たが、まさに“さくら〇もこ”の絵柄だった。

 

「えっとぉ~♡ わたしここに迷い込んじゃってぇ~♡ すんごく困ってるんですぅ~♡」

 

「それは大変だったねぇベイビー♪ ボクが助けになるよぉ~う?」

 

「あれ花輪くんじゃない? ほんとにこすぷれ?(ボソッ)」

 

 クネクネ腰を揺らすハルキと、もうまんま花輪くんにしか見えない人。

 重ねてになるが、ここはバベルである。しかも20階だ。

 

「とりあえず~う、トロピカルドリンクでもどうだぁ~い?

 冷たくてぇ美味しいよぉ~う?」

 

「ありがとうございまっすぅ~♡ ハルカ感激でっすぅ~♡」

 

「なんか喋り方似てない……? どっちも気持ち悪いんだけど……(ボソッ)」

 

 三人が「どよーん」と見守る中、花輪くん(仮)がジュースを手渡そうとする。

 その瞬間――――ハルキが閃光のように動いた。

 

「どっせぇぇぇえええーーーいッ!!!!」

 

「 ふぬごっ?!?!?! 」バッシャーン!

 

 水に叩き落した(・・・・・・・)

 ハルキが放ったヤクザキックにより、花輪くん(仮)がドボンと泉に落ちる!

 

「――――オイ出て来いお前らッ!! 盗るもん盗ってズラかるぞッ!!!!」

 

「サイテーだわアンタッ!!?? でも背に腹は代えられナッシン!」 

 

 とりあえず3人が「わー!」っと物陰から飛び出し、ビーチパラソルのある場所へ駆け出していく。

 

「こんにゃろ! こんにゃろ! くたばりやがれ成金野郎ッ! 水底に沈めッ!」ゲシゲシ!

 

「ゴボゴボゴッ!? ゴボボボボッッ?! 死ぬ死ぬ死ぬッッ!!!!」バシャシャシャ!

 

「5日ぶりのメシにごじゃるマス! メシにごじゃるマス!」ガガガガ!

 

「あっ、これおいしいよハルキくんっ! たべたことないフルーツ☆」パクパクパク!

 

「栄養っ……! 栄養っ……! 栄養はえいようッ……!!」モゴゴゴゴ…!

 

 ――――地獄だ。

 いまバベルの20階に、まごう事無き地獄が展開している。

 

「おい愛叶! 棒持ってこいッ! (つつ)けこんなモン! 突き倒してやれッ!」

 

「たっ、助けベッ!? ……助けベイベッ!? お願ッ……!!」

 

「あっ! ハルキ=クン! そいつのグラサンだけ取ッテ! アタシ使うカラ!」

 

「棒もってきたよー♪ えいえい! えいえい! しねー☆」

 

「生きてて良かったッ……! 本当に生きてて良かったッ……!

 美味しいですお母さんッ……!!」

 

 果物を食べ、飲み物を飲み、置いてあった生ハムだのクラッカーだのを貪る。

 ダンジョンの弱肉強食の(ことわり)というのが、よく分かる光景だ。

 

「クソがぁーッ! こいつ中々しぶてぇよッ!?

 おいブリトニー! 刀を貸せッ! あのパトリオットとかいうの!!」

 

「嫌ヨ! 錆びるじゃナイ!

 お手入れ大変ナノ! ウンコでも投げときなさいヨ!」

 

「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!

 うちには2ひきの犬と、ちいさいハムスターがいるんです! しんでくださいっ!」

 

「力が漲ってくるよっ……! 食べるってことは、生きるって事なんだねっ……!

 今なら僕、元気に死ねそうな気がするっ……!!」

 

 やがてドタバタしている内、散々ボカスカ殴られた花輪くん(仮)が、ゴボゴボいいながらターミネーターⅡみたいに沈んでいく。アイルビーバックの「b」の手をして。

 

 

「――――よっしゃあ! 逃げんぞお前らぁーッ!

 持つもん持ってズラかれぇーッ! 人が来る前にぃぃぃいいいーーッッ!!」

 

「ざまぁみろセレブ!!

 こんなトコでバカンスしてるから、そんな目に合うのヨ! オボエタカッ!!」

 

「ばーかばーか! まるちゃんのファンにあやまれーっ!

 よくみたら、けっこうオッサンだったもん!! あやまればかーっ!」

 

「また会いましょうっ……! このご恩は一生忘れませんっ……!

 でもお腹が空いたらまた来ますっ……!」

 

 

 

 

 ハルキたちは「わー!」と叫びつつ、急いで21階への階段を登った。

 

(つづく)

 

 

 

 

 




 すいません。出来たらでいいので、また花輪くん(仮)を出したげて下さい……。
 あまりにもかわいそうで……w

(hasegawa)


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。