繋がれざる者「アンチェイン」   作:織田三郎ノッブ

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どちらの作品にも監獄があったから書いた。


監獄の住人

「サシでやるならカイドウだろう」口々に人は言う。

陸海空…生きとし生ける全てのもの達の中で…「最強の生物」と呼ばれる海賊…!!!

 

しかし、昔を知る老人たちは「否」とそう答える。少なくとも、陸においてカイドウは最強の生物ではないと。陸での最強の生物は他にいると。

 

その男の名は、「ビスケット・オリバ」と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界一の海底大監獄「インペルダウン」ー

 

その遥か海底にて……

 

「ニューゲートのやつと戦うことにもなるかもしれねぇ。顔を合わせたくないのなら、行かなくてもいい。ドリーとブロギーを連れていく。しかし…、会うのはこれが最後になるかもしれないぞ」

 

話しているのは男だった。無言で聞いているのは黒い甲冑を着た人物。男は会話の中で四皇の一角である白ひげがこの戦争で死ぬかもしれないと暗に告げる。

 

「……」

 

「時間はまだある。ゆっくり考えな…」

 

言葉を返さないのは気質故か、心情故か、どちらにしろ話しかけられているその人物からは葛藤を感じられた。

 

 

不意に電伝虫が鳴った。男は話を切り上げ、受話器をとる。

 

 

「はぁ?”火拳のエース”が入獄ゥ?それは本当か?ドミノ」

 

「はい。何でも、黒ひげと名乗る海賊により討ち取られたとのことで」

 

「ほう、なら丁度いい。顔を見にでも行くか。お前はどうする?」

 

男は電伝虫をガチャンと切ると、葉巻に火を灯し立ち上がった。先ほどまで彼と会話をしていた人物もそれに続く。大型リフトの前には看守が2人立っていた。

 

 

「ミスター、お出かけですか?」

 

「あぁ、少しな」

 

男は2人にそう返すと、甲冑の人物と一緒にリフトに乗った。

 

 

 

 

 

 

凪の帯(カームベルト)

大監獄インペルダウン正面入口ー

 

「それでは、これよりポートガス・D・エースの身柄はインペルダウンが処刑まで全責任をもって預からせていただく」

 

「はい。確かにポートガス・D・エースの身柄は引き渡しました」

 

ポートガス・D・エースは監獄で獄卒獣に嬲られるまでもなく、ボロボロだった。引き渡しに来た海兵と相対するのは、最強の囚人が収監されている大監獄インペルダウンの署長マゼラン。世界一の大監獄の最強の囚人達を黙らせる地獄の支配者である。

 

「それでは死刑囚ポートガス・D・エース。今よりお前は入獄するが、まず入獄する際、囚人はインペルダウンでの最初の洗礼を受けることになる」

 

「洗礼?」

 

「ああっ、そうだ」

 

エースはマゼランの発言に問いを投げるが、マゼランはそれに頷いたきり、それ以上の問いを許すこともなく、エースを網の向こうへと進ませる。その先には大きな釜が煮えたぎっていた。

 

 

インペルダウンでは囚人が入獄する際、看守らに”洗礼”と呼称される殺菌消毒を受ける運びとなっている。その実態は衣服を全て脱いでの、百度の「地獄のぬるま湯」への入浴である。当然、常人には辛い試練となるのだが、名だたる海賊は顔色ひとつ変えることはない。それは今回入獄する"火拳のエース"も例外ではなかった。懸賞金5億5000万ベリー。四皇の一角、白ひげ海賊団の2番隊隊長である。彼は百度の湯が張られる鉄釜に突き落とされても、動じることもなくその洗礼を受けている。

 

「やはり、"火拳のエース"。白ひげ海賊団2番隊隊長の名は伊達ではない。実に素晴らしい入獄でした」

 

副看守長のドミノは黒髪の囚人を眺めながら、呟いた。

 

「元七武海のクロコダイル氏も実に見事な入獄でしたが.....おやっ?」

 

彼女が何かに気づき振り向くと、人が2人こちらにやって来た。1人は、とてつもない筋肉を身に纏う黒い肌の男。もう1人は、2本の刀を腰にさす、黒色の鎧を着て黒い兜をかぶった人物。

 

「ミスター。着きましたか。それに、ノブナガさんも」

 

「さっきぶりだなァ。ドミノちゃん」

 

黒い肌の男はその言葉に応じ手を振り、黒い甲冑を着た人物はただ頷く。

 

「こいつがニューゲートんところのガキか」

 

「ええ、これで白ひげ海賊団との戦争は決定的になりました」

 

四皇『白ひげ』エドワード・ニューゲートは自らの海賊団や傘下の海賊団の船員を家族と呼ぶほどに、仲間思いな海賊として世界に周知されている。そうでありながら、公開処刑をする予定ということは、政府は白ひげとの全面戦争を望んでいるのだろう。下手しなくても世界が荒れる。

 

「そういやァ、"火拳のエース"はレベル6に収監か」

 

「ええ、流石にそうなります。それより下は監獄ではありませんので」

 

現状、レベル6に収監されている囚人には懸賞金に大きな幅が存在し、5000万ベリーから果ては5億ベリーを越す海賊までもいる。しかし、海底に存在するインペルダウンは構造上これ以上階を増やすことはできない。故に、レベル6はこのように囚人の中でも懸賞金に大きな差ができてしまったのだ。.....と言っても、レベル5の囚人とは一線を画すほど危険なのは確かなのだが。しかし、それでもそのような囚人が束になっても敵わない人物が1人このインペルダウンにいる。それが、副看守長ドミノと会話をするこの男である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レベル6ー エース収監エリア

 

オリバはエースが収監されてから獄の前で立ち止まった。

 

「なんだ?」

 

エースは牢の前にいる人の気配に気づき、顔を上げる。

 

「初めましてだな。ポートガス・D・エースくん。いや、こう呼ぶか。ゴール・D・エース」

 

オリバは牢の前で腰を下ろして、エースにそう言葉をかけた。

 

「!?!」

 

エースの顔が驚愕に染まる。どこでそれを知ったのか、そう言わんばかりの顔だ。

 

「なんでそれを!……ッそれより、てめぇは誰だ!」

 

「私か?」

 

男の口がニィと、笑みに変わった。その全身から畏れを感じさせる圧を発している。元海賊でありながら、海底監獄インペルダウンをその手に錠すらつけることもなく、自由に移動をする。一般には知られていないレベル6の更にその下!レベル7。そう呼ばれるであろう(フロア)にて収監ではなく、生活している男。世界政府ですら彼を縛ることはできない。バスターコールでさえ彼を捕縛することも、打倒することも叶わなかった。個が世界を相手どる。まさしく力が辿り着くべき、究極の頂。

 

「オリバだ」

 

男は自らの名をそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オリバァ!?!」

 

その名前は自分が親父と慕う船長から聞いていた。「あいつは、俺よりやばい」酒を飲みながらそう語っていた。新入りの誰もが「そんなッ....、まさか」と信じていない感じだった。もちろん、俺もそんなの信じちゃいなかったがマルコとか隊長たちの目がマジだったから本当のことなんだとわかった。あいつは古株だから、会ったことがあったんだろう。カイドウ、ビックマムと同時にやり合ったとか普通信じられないけどな。

エースは考えるのを一旦切りやめ、目線を目の前の男に移す。それにしても凄まじい巨漢だ。身体そのものが筋肉でできているようだ。腕がまるで巨木の丸太のようだ。この男がオリバ。元海賊でありながら、王下七武海とは違う形で世界政府の下についた政府の狗。元海賊ながら、インペルダウン内を海楼石の手錠を付けることなく行動していることから、世界政府のオリバに対する評価が伺える。

 

「おお、知ってくれているとは光栄だ」

 

「よく言うぜ。アンタの名前を知らないやつが四皇の海賊なんかやってけるかってんだ」

 

(まぁ、俺も親父に教わるまでは知らなかったんだけどな)

 

実際、四皇の船に乗っている者でオリバのことを知らない者はいない。その理由は簡単だ。四皇同士でいざこざがあった場合、オリバはその間に割って入るようにしてどちらにも喧嘩を売るからだ。そのようなこと、この世界で他に誰ができようか。と言っても、シャンクスと白ひげは争うことはないので、必ずと言っていいほど争っている片側はカイドウかビックマムである。

 

「それにしても、ロジャーの倅と聞いていたんだが、そんなに似ていないな。強さも。在り方も」

 

オリバはエースの目を見据えて、そう言った。

 

「俺の前でアイツの話なんかするんじゃねぇ!俺の親父は……白ひげだ!!!」

 

エースはオリバに向けて怒鳴る。

 

「ほう?」

 

道理だ。世間が海賊王を恨んでいる。そんな世界で育って、いくら実の父親とは言え世界的犯罪者であるロジャーのことを受け入れられる筈がない。奴は、息子に父親らしい物は何も残していかなかったのだから。ポードガスと名乗っていたのはそれが理由だろう。と言っても、ゴールの名字を名乗るのは相当な狂人か相当なバカだ。そう名乗るだけで世界政府に目をつけられる。

 

「それで?ニューゲートのやつは、君がロジャーの倅だと知っているのかね?」

 

そうオリバはエースに問いかける。

 

「知ってる」

 

エースはそう一言、言葉を発した。

 

「そうか………」

 

沈黙が場を支配する。白ひげ海賊団とロジャー海賊団は争っていた。白ひげが良くても、船員の内の何人かはエースがロジャーの子だと知ると反発するだろう。

 

「それでも、やつは来るだろうな」

 

エースの顔が苦痛に歪んでいる。彼もそう思っているのだろう。普通に考えて、海軍の本部たるマリンフォードに攻め込むなど自殺行為である。もしかしたら、マリンフォードへの輸送中に強奪するかも知れないが、やつの気性的にそれはない。間違いなく、マリンフォードで戦いが起きる。双方共にどのくらいの被害が出るか.....想像がつかない。海軍側も白ひげ海賊団側も、目を覆いたくなるような数の死人や負傷者が出ることだろう。それに、懸念すべきこともある。四皇などと呼ばれているカイドウの餓鬼のことだ。あんの馬鹿野郎なら、白ひげと海軍との戦争に乱入する可能性も十分ある。

 

「やつはマジモンの狂人だ。家族を持つだと。そんな物海賊が求める物じゃない。しかし、それがニューゲートが長年追い求めてきた宝だった。変な話だ。そんな男が世界最強とはな」

 

「ッ!…てめぇが、親父の何を知っている!!!」

 

エースがその言葉に噛み付いた。自らの船の船長を侮辱されたと、そう思ったのだろう。

 

だが、オリバはその反応を受けて、淡々と言葉を返した。

「知っているさ。同じ船に乗っていたこともあった。同じ人物の下についていたんだ。君よりよっぽど知っている。やつの甘さも、強さも」

 

エースはオリバが語った内容に、言葉を返すことができなかった。その顔は、困惑と動揺に彩られていた。オリバが、政府の狗が親父と、白ひげと同じ船に乗っていて、しかも、誰かの下についていた?そんなこと、聞いたことも無い。まさか、親父も世界政府の下についていた?嫌、それは無い筈だ。

 

「安心しな。五老星のジジイどもの下にいた訳じゃない。とある男を......嫌、怪物を船長と仰いでいただけさ」

 

エースは話が理解できない。理解が追いつかない。そんな男が、四皇の一角たる白ひげや海賊共を恐怖させるオリバの上に立っていた人物がいただと?

 

用事があるのだろうか。オリバは話を切りやめるように、立ち上がりリフトへと歩き出した。

 

「そんな人物がいたら!俺たちが知らない訳がないだろう!聞いたことも無い!!」

 

最もだろう。そんな男が存在したら、世間に知れ渡っている筈だ。そんな人物など、まさしく怪物だ。

 

「消されたのさ。存在を。死んだ島もろとも、地図の上から抹消されてな」

 

「なッ………!?」

 

「これ以上話すことはない。じゃあな」

 

先程のオリバの言葉がエースを悶々とさせている。白ひげやオリバの上に立っていた、存在が抹消された人物とは誰か。世界政府が島もろとも、抹消するような人物はどのようなことをしでかしたのだろうか。その疑問を解消できる男はもういなく、(フロア)には静けさだけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖地マリージョア

 

 

「……またあの小僧か……!!次から次へと…!!あの一族の血はどうなっとるんだ……!!!」

 

そう愚痴をこぼすのは海軍元帥センゴク。”麦わらの一味”。特にモンキー・D・ルフィにより与えられた胃へのダメージは推して然るべきである。

 

「情報では”麦わらの一味”に加え、海賊ユースタス・キッドと仲間数名。さらにトラファルガー・ローとその仲間数名。賞金首は13名まで確認―内5名は"億超え"のルーキーです」

 

報告に来た将校が情報を読み上げていく。

 

「主犯格は当然『天竜人』に危害を加えたモンキー・D・ルフィと見られています。"人間屋(ヒューマンショップ)".....あいや"職業安定所"の衛兵達とも連絡が断たれ、全員やられてしまってるのではと.....」

 

人間屋などと呼ぶのは、正義を語る海軍としても体裁が悪いので、一応、職業安定所と呼称しているがそんなことをしても何も意味が変わらないのは彼らが一番わかっている。

 

「ーとにかく天竜人3名を人質にとった前代未聞の凶悪事件と判断しております」

 

「ー何か要求はあるのか?」 

 

「いえ今の所は……!!」

 

天竜人を人質にとったのは、金品を欲してのことかと思い将校に聞くが、要求は特に無いようだった。ならなぜ、危害を加えたのか。状況が詳しく分からないので、予想をするにも限界がある。

 

「ー何がどうであれ世界貴族に手を出されて我々が動かん訳にはいかんでしょう。センゴクさん......」

 

いつの間にか来ていた大将"黄猿"がセンゴクにそう語る。実際のところ海軍には大将を出撃させる選択しかない。海軍は世界政府の機関なのだから。

 

「黄猿……」

 

「わっしが出ましょう。すぐ戻ります。ご安心なすって」

 

「黄猿。一応、アンチェインも出すぞ」

 

センゴクは歩み去る黄猿の背中に声をかける。黄猿はその言葉に一瞬、歩みを止めると後ろに手を振ることで応じ、また歩き出した。

 

 

 

「センゴク元帥!アンチェインは流石に………」

 

「あそこには"冥王"レイリーもいる。万が一、邪魔されては叶わん」

 

過剰戦力ではという思いが顔に出ている将校に向けて、センゴクはそう言い放った。

 

「さて、どうなることやら……」

 

彼は憂鬱そうに外を眺める。捕まるにしろ、捕まらないにしろ結局は面倒ごとには変わりないのだから。

 




懸賞金36億8460万ベリー。バスターコールも耐えきって、満足したので世界政府の下についた。もちろん、世界政府はバスターコールすら凌ぐ怪物なんぞ敵にしたままなんて嫌なので受け入れた。悪魔の実は次回。
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