「ここは・・・・・・・」
気がつくと、目の前に山のように積み上げられた本があった。
「ここは本屋さん・・・・・・・?」
何故自分がここにいるのか分からない。加代は辺りを見渡しながら歩き出す。
「!?」
するとある一冊の本に目を奪われる。
【ニッポン、昭和の重大事件種】
加代は本を開くとページをめくる始める。そしてしばらくすると
【北海道小学生連続誘拐殺人事件、昭和最後のシリアルキラー、白鳥潤死刑囚】
「!?」
加代はさらにページをめくると
「!?」
雛月加代(10)
そこには18年前の自分がいた。
「・・・・・・・・・・夢?」
いつの間に寝ていた。 腕時計の針は、午後の七時を示していた。 ぽつーんと静まり返ったアジトの中。眠気で開ききらない目を擦りながら、辺りをなんとなく見渡す。18年前、みんなと集まり、楽しく騒いでいたこの場所。賢也、広美、カズ、修、彩、そして悟。一緒に話せた友達、 苦楽を共有した仲間。
「・・・・・・・・・・・・・。」
だが彼らはもういない。私、一人を残していなくなってしまった。楽しかった日々を思い浮かべながら、ゆっくりと立ち上がる。
「・・・・あ。」
視線を軽く落とすと、一冊の漫画が開いたまま床に置きっ放しになっている。
『ワンダーガイ』
ヒーローものの、少年漫画。 悲哀を背負いながら、戦えるのが自分一人であったとしても、戦い続ける正義の味方。 彼は、みんなの想いがあるから頑張れると、一人ではないんだとそう言った。
「・・・・・ふふ、読んで見ると意外と面白いべ。」
時々挟まるユーモアに、軽く笑みが溢れる。 何度も読むのは、単に悟のことを知りたかっただけではなく、この漫画が色眼鏡なしに面白いことに所以した。
「何事も踏み込んでみること。それを教えてくれたのも、悟だべ。」
悟は何もなかったあたしに、いろんな物を与えてくれた。 感性なんて、よくよく考えてみれば育って行く上での見聞きから作られるものなのだから、少年漫画だって少女が好める可能性は幾らでもある。
「・・・・・本当に感謝してる。今があるのは悟のおかげ。幸せだよ」
『加代!!』
「悟・・・・・・」
彼は私にとってヒーローだった。 一生懸命で、真面目で、だけどたまに無鉄砲で。 私のずっと前を歩き続けて、私の手をずっと引き続けてくれた。 自分の事を顧みず、いつだって誰かの為に戦っていた。 周りと決して差はない筈の、小学生の小さな身体で、しかしその全てを背負って。 私を、絶望の底から救い上げてくれたんだ。