個性把握テストが終わり、戻っていく生徒を見届けた後自分も戻ろうとしたとき、いつのまにか彼がいた。
「相澤君の嘘つき!」
誰もが知るNO.1ヒーロー、オールマイト。今年から雄英高校に教師として勤めることになり、教師としての立場上は自分は先輩という位置になる。そんな彼がここにいるのは
「実はさ!心配でクラスからこっそり見てたのさ!」
…………やっぱりか。
「あのとき君は緑谷少年に除籍を告げていたね。あそこに微塵も嘘はなかったはずだ。君はあのとき、彼を見込み0と思ったんだろう?見込み0だと思ったら迷わず切り捨てる!そんな男が前言撤回!!それってさ!」
オールマイトの人差し指が俺を指す。
「
「…………
「うっ!?」
「…今回は0ではなかった。それだけです。もしこれから
「相変わらずドライだな!?君は!?」
「…ですが今はそれ以上に気になるやつがいます。」
「…………
「はい。《英雄の育て屋》とも言われた波激撃也氏の息子にして唯一の
「いやぁ!私も彼にはビシバシ鍛えられたよ!!まさかあの人から皆伝をもらえる奴がいたのかと思ったけど、あの様子を見るに嘘でもなさそうだ!」
HAHAHA!!と笑う彼を尻目に書類に目を落とす。
「なにより……二年前の【アステカの悪夢】と言われた大規模抗争の起きた地域の民間人の中で撃也氏と共に
「……あの事件か…。」
二年前、メキシコ南部の街で起きた麻薬密売組織とその敵対組織、さらに加わった国連部隊の衝突で、その地域一帯の組織の連中、国連部隊、民間人、観光客含め一万人以上が死亡した国際的大規模事件。
「現地では組織の連中がこぞって信仰していた、かつてのメキシコの文明【アステカ王国】の宗教の行事になじられて
「……花ですか……。」
「相澤君?」
「…ただの行事の名前でしょうが、少なくとも俺にはあそこに
拳を握りしめ、怒りと後悔が混じった声で言う。あのとき、連中に
国連からの要請が日本政府に届き、現地への支援として送られた自衛隊とヒーロー。その中に、自分も入っていた。理由としては、個性を持った残党がいた場合の対処。現場に着いたときには、街は見るも無惨な状況だった。運ばれる男か女かもわからない焼け焦げた人間。頭を吹き飛ばされ死んでいる親子。その手は死して尚繋がれ、離されていなかった。
(……なんて場所だ…。)
倒壊した民家、爆破された施設。流れた血で血溜まりができていて、ところ構わず死体の匂いとまもなく死ぬであろう人々の呻き声で満ちている。そこは【地獄】そのものだった。
(生存者の希望は薄いな…。)
そう思っていたとき、
「
「なにっ!?」
この地獄に生き残りがいた。その事実に驚愕する。
「すぐに向かうぞ!回復系の個性を持ってるヒーローは直ちに迎え!!」
「「「はいっ!!」」」
急いで現場に向かう。死なせてなるものかと間に合わせてみせると走る。そして、
「あちらですっ!」
現場に着いた頃には
「ここに、ッ!!」
血まみれで倒れ伏した五人の武装した男達と、
「………………~aaaa■■■■。」
不気味に呻き、泣きながら顔を歪ませるように《
「おい、君なにがあった。」
同行してきたヒーローが訪ねる。
「■■…あ?なんだあんたら?」
「俺達はヒーローだ。」
「…ヒーロー……ヒーローねぇ…‥。」
「あぁ、こんな状況で悪いが他の生存者がいないか情報を……」
「んなもんいるわけねぇだろ。この
「な、なんだ君は!」
少年の物言いに激昂するヒーロー。少年一人の発言にここまで感情的なるとは、全く、合理的じゃない。
「家族は?知り合いはどこだ。」
「……たぶん父さんは生きてるだろうなぁ………」
「ところでなぜそんなに血まみれなんだ?」
少年の体に纏わりつく大量の血。明らかに自分の血だけではない。その黒い髪すらも赤黒く染める血がついてるなど、異常すぎる。
「……あぁ?んなの
「……
「イレイザー!?なんてことい」
「…………鐚ァ■?」
少年の目がこちらを向く、瞬間猛烈な殺気が襲いかかる。
「ッ!」
「ヒッ、……!」
皆が息を飲み、顔を青ざめ、中にはへたれこみ、腰を抜かす者もいるほどの気迫。
(なんだこの殺気は!?年端の行かぬ少年のだせる物では到底ない!!一体こいつは
「殺したか、だと……?…ふざけるのも大概にしろよゴミ共。あのイカれた狂信者共に話が通じるとでも?ショットガンと、
「き、君は……」
「全部てめぇらのせいだろうが!!」
「ッ!!」
「てめぇらが来たからなんだ?誰か救えるのか?向かいのおばさんは生き返るか?近所の親子は?仲の良い夫婦は?
一番近くにいた俺が胸ぐらを掴まれる。どかそうとするが予想以上の力で引き剥がせない。
「あのクソ共から生き残るため、俺は全てをした!おまえらが来てたら、俺は
「ッぐっ、!」
「おまえらにはなにもできない。なにも、取り戻せない。おまえらは……」
何も救えはしない。
そのとき覗き込まれた目と目が合う。────なんだこの目は。暗く、暗く、延々と煙を吐き続けている。──なのに、その目は朧気に
「わかったらとっとと消えろ。俺は……《あいつ》を、せめて遺体だけでも、探しださなきゃならない。」
邪魔だ。と言い残し、去っていく少年。そんな彼を来ていたヒーローの誰も止めることができなかった。そしてその姿を見ていた俺も、止めることができなかった。
(これが…《ヒーロー》の姿か?笑わせる。)
拳を握りしめ、何もできない自分を心底恨む。
(──少年一人の心も救えずに、なにがヒーローか。)
その後、少年は家族と合流し無事帰国を果たしたらしい。そして、後にその家族が波激氏だったことを知ることになる。……だがあの事は、俺の記憶に縛りついて、決して忘れることができない事だった。
「……あんなあいつが、
もう二度と、彼にあんな顔はさせない
「……うん!君ならできるよ!きっと!!だって……」
「君は彼の
「…その理論は意味がわかりません。」
「えぇっ!?」
彼の周りにもあんな顔をさせないように。