ジリリリリリリリリリリッ
久しぶりにまともに鳴った目覚まし時計をストップし、目を開ける。カーテンを開くと、眩しい朝の日差しが目に入り、小鳥のさえずりが心地よく聴こえる。今日は素晴らしい朝だ。
無論、目覚めは最悪である。何処かの誰かさんのおかげで、見たくもない過去のトラウマを見せつけられ、見たくもない顔を拝み、なぜ今更出てきたのか問い詰めようと思ったら半ば強引に意識を覚醒させられたからだ。身体は睡眠がとれているようだが、心はストレスMAX10000%である。
しかも喋るだけ喋って引っ込みやがった。
とりあえずベッドから出てシーツを直し、一階に降りる。二人とも既に起きており、父さんはコーヒーを片手に新聞を読み母さんは俺の朝食を用意してくれている。いつもの光景に先程まで荒んでいた心がホッとしたような気がした。
「…おはよう、二人とも。」
「あら、おはよう衝。」
「おはよう。」
いつもの朝の挨拶を終え、用意された朝食をとる。今日は食パンにベーコンと目玉焼きがのったものと、ヨーグルトとチーズ、コーヒーである。ちなみに俺は目玉焼きには塩コショウ派である。異論は認めん。
「…昨日は眠れなかったのか?」
「…え?なんでわかんの?」
「顔色良くないからね。そんなの、お見通しよ?」
やはり、親は偉大だし同時に恐ろしい存在だ。別に隠していた訳ではないが、いつも通り過ごしていたはずなのに、もう見透かされている。
「……まあちょっと悪い夢見てな。」
「悪い夢?」
「
「…………そうか。」
聞き返してきた父さんがそう一言返事する。俺たち家族にとって、あのことは心にベッタリと貼り付いて忘れようたって忘れられない、そんな出来事だ。当事者である俺と父さん。変わり果てた俺と、健在の父さんを泣きながら迎えた母さん。あの時のことは、目を閉じれば情景が思い返される。
「…そろそろ、墓参りに行かなきゃな。あそこに。」
「…おう。」
ここで会話は終わり、服を着替え準備をする。今日は耳郎は早くに来ないらしい。三味線の手入れでもして待っておこう。
「オイッス。」
「おはよう、耳郎。」
チャイムが鳴ったので出ると耳郎がいた。では登校の時間である。お父さん、お母さん、行って参ります。
「行ってらっしゃい。」
「響香ちゃん、衝を頼んだぞ。」
「はい、面倒見るんで。」
なんだその会話。耳郎、謙遜するなり否定するなりしなさいよ。まるで俺が全会一致で耳郎がいないとダメみたいじゃないか。……やっぱダメかも知れない。
「あっ、そうだ衝。」
「ん?」
「俺もちょっと用事があるから、雄英に行くからな。」
「……そうか。」
そんなこんなで喋りながら登校していると、校門に群がる人集りがいた。
「なんだこんな時間に?」
「まってショー、あれって…」
見ればカメラにマイク、メモ帳という持ち物を持った人ばかり。これは……
「うげぇ、マスコミかよ…」
「なんでこんなにいる…てのはやっぱりオールマイトのことか。」
「だろうな。このネタにマスコミが食いつかないわけないわな。」
平和の象徴オールマイト、教師になる。改めて凄まじい字面である。日本のNO.1ヒーローにしておそらく現時点人類最強と言っても過言ではない男。そんな注目度MAXの彼の話を聞きたくて群がるのが……
そう、皆大嫌いマスゴミである!かく言う俺も大嫌い!落語の公演の後は取材NG出してるのに関係なく突っ込んでくる蛮族ども。それが俺にとってのマスコミのイメージである。あ、生徒が取材受けてる。
だがしかし、そんなマスコミに悩まされた俺は、マスコミの扱い方も熟知しているのである!簡単なことである。それは…
「あっ!ちょっと君!いいかな?」
「…あ、えっと……その…」
「オールマイトが教師になったことについて…」
「いや…僕、普通科なので分からないです。」
「…あぁ、そうなのか。ごめんね。」
そう、無関係を演じるのである。奴らはオールマイトの授業を聞きたくて来ている。ならば何も関係のない他人を演じるのだ。話を聞けないのならネタにならないのでいくら聞いても無駄。これなら奴らは早々に俺に興味を失う!ガハハッ!勝ったな(確信)あとは耳郎が…
「ホントに分からないで…痛っ!」
「まあそう言わずに少しでいいから!」
【…婀■ぁ?】
「オールマイトの授業はどうですか!?」
オールマイトが教師になり、教鞭を振るう。その大スクープを探りにきたが、生徒たちの反応は良くない。もっと特別な、世間が求める話題性のあるネタが必要だ。片っ端から声をかけていっているが、今のところ大したネタは確保できていない。先程黒髪の少年に声をかけたが、無関係の普通科の少年だった。そこでその後を追う少女に話かける。
「いや、ウチもとくに…」
いや、記者として10年の俺には分かる。これは、誤魔化そうと前の少年を真似ようとし、嘘をついている。この機会を逃すわけにはいかない。
「いやいや、ちょっとでいいから!」
構わず進もうとするので慌てて腕を掴む。
「ホントに分からないで…痛っ!」
「まあそう言わずに少しでいいから!」
【…婀■ぁ?】
瞬間、身体が凍りつき、身動き一つとれなくなる。なんだ、今の声は?恐る恐る振り向くと、そこには先程の少年の姿があった。しかし、身に纏う雰囲気はまるで別物だった。おとなしそうな、それどころか気弱そうだった少年は、今や万感の殺意を持ってこちらを睨み付けている。
ふと思い出した。数年前、少女四人を殺害した連続殺人鬼の男を取材したことがある。その男の目と、纏う雰囲気はとても恐ろしく、取材中何度も冷や汗をかいた。
だが今感じている恐怖と威圧感はその比ではない。全身から絶えず脂汗が吹き出し、身体が震え歯が激しくかち合う音がする。『蛇に睨まれた蛙』という言葉がこれ以上なく適切な状況だろう。
こちらを覗き込む瞳は、暗く、暗く煙っている。震える自身の姿が朧気に写る。まるで鏡のように。
死ぬ。
比喩ではなく、心からそう感じたその時、
「ショー、ストップ。」
少女の一声でその威圧感は、嘘のように消え去った。まるで最初からなかったかのように。少年の顔は、もうこちらを見ておらず、少女を見つめていた。
「怖がってるでしょ?それくらいにしときな。」
「……でもこいつが…」
「ショー?」
「ういっす(*´・ω・)。」
「…ウチは大丈夫だから、ね?」
「……ならいいか。」
そして足早に去っていく彼ら。はっと我に帰り追いかけようとする。記者魂が叫ぶ、『彼こそがスクープ』だと。オールマイトにも最早興味はない。あの、瞳の少年に膨大な疑問が沸く。学生とは思えぬ、殺意、威圧感、
───なぜ彼のような男がヒーロー科にいるのだ!?
「ま、待って…!」
懇願し、伸ばした腕は
「失礼、生徒への取材は御遠慮いただきたい。」
「あっ、先生おはようございます。」
「おはよう…遅刻にならないよう早く行け。じゃないと除籍だ。」
「おお、怖っ。じゃあ行こうか。」
「うん。」
「……っあ。」
一人の男に阻まれた。
そこでやっと気づいた。自分の行動に。なぜこんなことをしていたのか分からないが……身体の緊張感が急激に失われ、膝から崩れ落ちた。
「…大丈夫ですか?」
同じマスコミであろう女性に声をかけられるが、その声は右から左に流れるばかりであった。
「……君たちには、学級委員長を決めてもらう」
『学校っぽいの来たぁぁぁぁ!!!』
開幕早々うるさいです(キレ気味)。教室についた後マスコミへの文句を話してたら先生到着。戦闘訓練の小言(因みに俺だけ少し長かった。解せぬ。)を少し貰ったあと、その一言でクラスのテンションが最高潮に達した。あまりの上がりように阿鼻叫喚もいいところである。
「………。」
しかし先生の鶴の一声……ならぬ相澤の一睨みでいっきに沈静化する。さすが雄英、生徒への教育(除籍の恐怖)が行き届いている(遠い目)。というか学級委員長決めがそんなに心踊るイベントだっただろうか?もう俺はやりすぎて面倒な仕事の一つに過ぎなかったが……
そこからは各々が手を挙げ自己推薦しまくる実にカオスな状況になる。…え?耳郎もやんの?しかしさすがに騒がしすぎる。そろそろ一声上げるか…。
「静粛にしたまえ!!“多”をけん引する責任重大な仕事だぞ!「やりたい者」がやれるものではないだろう!!周囲からの信頼があってこそ務まる聖務…!民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら…
これは投票で決めるべき議案!!」
そう思った矢先、飯田の声が響き渡る。なるほど、さすが真面目メガネだ。言ってることは正しいことこの上ないが……。
「いやそびえ立ってんじゃねーか!!何故発案した!?」
その天高くそびえ立つ右手のせいで、説得力皆無である。なんでそんなに素直なの?
しかし彼のおかげで話が纏まったのは確かだ。投票というシステムを導入し、完全な民主主義を実行することができる。もう彼でいいんじゃない?(適当)そんなことを考えていると常闇が話しかけてきた。
「波激、おまえはやらないのか?」
「俺はパス。中学で散々やってきたからな。もうやりたくないてのが本音。」
「……おまえが?」
「なんかその反応失礼じゃない?前にも話したがなんなら俺は生徒会長もやってたからな?」
なぜか分からないが彼らの間では俺は問題児に見えているらしい。誠に心外だ。問題児はうちの中学校の一部の
「んで?誰に投票すんの?」
「それはおまえ…皆自分に投票するに決まってるだろ?」
「…あぁ、そりゃそうか。」
「そういうおまえは?」
「やりたいらしいから耳郎……と言いたいところだがこういうのは飯田や八百万辺りにやらせておくのが吉だな。こういうの、中々面倒たからな。」
そして投票は滞りなく行われ、結果は……
「僕3票ーーーー!?」
「くっ、負けてしまったか……!」
「飯田さんと同票……!?」
なんと緑谷が3票を獲得し、委員長に決定。そして2票ずつ獲得した飯田と八百万が同数票で、正々堂々とじゃんけんで決めることとなった。結果は飯田の惨敗。見事八百万が副委員長になった。
「くっ!自分に投票していれば、委員長になれるチャンスが…!しかしこんな考えでは俺に入れてくれた人に申し訳が立たん…!」
自分がやりたがってたのに何をしてるのこの人(困惑)。
「くそっ!なんでデクなんかに…!誰が!」
「ボンバーマン、少なくとも君がするより遥かにましだとも。」
「なんだとヴィラン面ァ!!」
「おめぇにだけは言われだぐねぇっぺよ!」
「落ち着けおまえら…ていうかなんで波激は東北弁なんだ。」
こうして学級委員長決めは終わり、授業に入った。
時間は進み、昼休憩。耳郎、常闇、障子と昼食を食べに食堂に来ている。天下の雄英は、教育は勿論のこと様々な分野で超一流である。当然、食に関しても最高峰だ。なんのヒーローかは知らないがランチラッシュというヒーローが作っている料理が提供されている。はっきり言って、めちゃくちゃ美味である。そしてこんな料理を学生に優しい低価格で食べられるとは、本当に幸せである。自炊もできる身としては、ぜひご教授させていただきたいぐらいに旨い。
「すみません、このクリームパスタを。」
「はいわかったよ!……どうぞ!」
「どうも。」
「でも…」
「……?」
「やっぱり白米に落ち着くよね!」
「……。」
「ね!」
「……じゃ、じゃあライスの中を一つ。」
「おっ!いいね!しっかり食べなよ!」
「……うっす。」
となりのやつが『まじかこいつ』みたいな顔してきてる。実際俺もそう思ってる。なんだこれ。…だが悲しきことに彼の謎の圧に耐えきれなかったのだ……!
「おまたせ。」
「いいよ…ってそれマジ?」
「俺だって不本意だ。」
「……凄いな、盆の上が白一色だ。」
『ゼッテエアワナイダロ…』
「同感だ。」
うるさい。人間口に入れれば何かと食べれるものです。
そして喋りながら食べ進めていると、見覚えのある姿を見かけた。
「あれは…轟か。」
「え?…そうじゃん、わかりやすっ。」
特徴的な頭髪をしているのですぐに分かった。なんだあの髪、モンスターボールみたいな柄しやがって。そんな轟が一人で蕎麦を啜っていた。…なんか和食好きそうだなあいつ。しかしまあ彼には少しばかり興味がある。中々
「…ちょっと行ってくる。」
「え?」
「大丈夫、直ぐに戻ってくる。」
そう言って席を立ち轟の隣の席までいく。
「お隣よろしくて?」
「……好きにしろ。」
轟は俺にチラリと視線を向けた後、また食べるのに意識を集中させた。
「……何の用だ?」
「いやな?戦闘訓練のときに言ったこと、憶えてるか?」
「…『どこを見ているのか』か?」
「おぉ!よく憶えてるじゃないか!なら話は早い。なあ轟……」
目線が此方に向く。その目をしっかり見て、再度問いかける。
「結局おまえは…『どこを見ている』?」
「……どういうことだ?」
「OK、なら説明しよう。おまえはな戦闘訓練のときも、今も、俺のことを見てはいないんだよ。」
「いや、ちゃんと見ているが…」
「……
「…ッッ!?おまえ、知って…!!」
「いいや、俺は知らない。ただ、おまえが向いてる方にその姿があるように【視えた】からな。」
「…本当に知らないのか?」
「あぁ、俺が今知れるのはおまえの《感情》だけ。」
彼の父親がどんな人物なのかは、全く分からない。…だが向けてる感情は分かる。憎悪と、少しの畏怖と、執心。それを向ける相手は、その目に写っている。
「…俺は」
「…別に今話さなくてもいいさ。話したいときに、話してくれ。」
「……。」
「まあ、それだけだ。邪魔したな、ごゆっくり。」
そして俺は、彼に背を向け耳郎達の元へ向かった。
「いやすまんな待たせて。」
「なに話してたの?」
「…まあ戦闘訓練のことだな。あいつにはセンスがあるからな。興味が湧いただけだ。…あいつらは?」
「飲み物買いにいったよ。」
「そうか、あーなんか奢ってくれねぇかなー。」
その瞬間、耳をつんざくようなけたたましい警告音が鳴り響いた。
「ッッ!?」
「なに!?」
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難して下さい』
スピーカーから生徒への避難指示が流れる。
「なんだぁ?」
「ショー!早く避難しないと!」
「あっ!おいバカ!」
耳郎が慌てて立ち上がり移動するが静止する。
「今は人が多い、人混みに巻き込まれたら怪我するぞ。」
「…確かに「どいて!」うわぁっ!?」
「っ!耳郎!」
耳郎が走ってきた生徒にぶつかりバランスを崩すが、なんとか手を掴み転倒を阻止する。
「ちっ!入り口付近に来たせいで人が多いな。」
そして状況を確認しようと振り替えると
「…oh shit.」
人混みの山が流れてきやがった。混乱と恐怖で皆が理性を保てていない。これはまずい。…やむを得ん!
「耳郎、許せ!」
「えっちょっ!?」
壁に押し付けられ、背中が痛い。恨めしげに前を向くと、そこにはショーがいる…どころか視界一面ショーの胸元だ。そのくらい至近距離にいる。ショーは壁に手を当ててこちらを見下ろしている。この体制は俗に言う…
「悪いな耳郎、少しだけ我慢してくれ。」
「───────/////っっ!??」
〝壁ドン〟というやつだ。見上げると眼前に目を見張る端正な顔があり、思わず状況による気恥ずかしさやらなんやらで赤面し、顔を背けてしまう。
「ん?どうした、苦しいか?」
「い、いや別に!さ、サンキュ…」
「いいともこのくらい。」
ショーが何でもないかのように話すので、自分も落ち着きを取り戻す。落ち着けウチ、なぜウチだけ慌てふためかなきゃいけない。
冷静になり、前方を再び見る。そこには辺りを見回し、…そういえば失念していた。普段の振る舞いからは想像つかないが、ショーは学校でも評判の、超がつくほどのイケメンだった。『容姿端麗、眉目秀麗で成績優秀、運動神経抜群で頼りになるパーフェクト生徒会長』。それが中学校のときのショーの評価。毎朝女子生徒から声をかけられ、バレンタインでは二桁は当たり前。三桁いくときもある。なんなら他校からの贈り物もある。体育では一挙一動に黄色い声が上がる。これで男子生徒にも頼られるというのだから、正に完璧な生徒会長だった。
「あっ、あいつぶつかりやがったやつだ。後で殺す。」
────それも、全てショーの表の顔でしかなかったのだが。実際の彼の性格は、打算的で合理主義。計算深く口が悪い。優しい笑顔の奥は冷静で、冷酷。目的のためなら手段を選ばない。利己主義に見えるが…反して超過保護。さっきのマスコミのときも、今も、ウチに何かあるとすぐ物騒な考えをする。なぜこんなギャップがあるのか…
「はあ…ヒーローを志す雄英生なら、もう少し理性ある行動をしてほしいのだが…」
殺すとか言ってた奴のどの口が言うのか。……しかし、見れば見るほど美形である。整った眉、長い睫毛、知性を感じさせる鋭い目付き、綺麗な黒髪、白い肌。女性ですら嫉妬するだろう美貌を、あろうことか本人も自覚し、利用してる質がある。それがまたむかつくのだが。
「…………。」
そんなことを考えていると、ショーと目が合う。思わずドキリとするが、平常心を保とうとする
「……」
「えっ!ちょっちょっと!」
───が、何も言わず真顔で近づいてくるのに動揺してしまう。なぜか近づくほど心拍数が上がり、心臓の鼓動がうるさい。このまま額が当たるほどまで近づき、顔が熱くなって思わず目を閉じるが……
「…なあ耳郎、外見てみろ。」
「………え?」
何もなかった。というか、端からウチのことを見てなかった。そして窓から外を見ると……
「あれ朝の…」
「あぁ、マスコミ共だ。」
大量のマスコミが侵入し、流れ込んでいた。ウチらはこんなことでパニックになっていたのか……。そう思い、少し落胆する。
「記者魂は大したものだが、道理を弁えてほしいな…」
「…うん。」
しかしだ、今はそれより不満がある。なぜウチだけ変にドキドキしなければいけなかったのか。同級生の女子を必要とはいえ壁ドンしてる状況で、平然としているのは気に入らない。別にそこまで女性として視てほしいわけではない…ないのだが、それにしても反応が乏しすぎる。ウチは今も顔が熱いのに。そのとき、
「大丈ー夫!!ただのマスコミです!何もパニックになることはありません、大丈ー夫!ここは雄英!最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」
何処からか、飯田の声が響いた。声の方向を見ると…
壁に張り付き、非常口の人のポーズをとった飯田がいた。
「ぶふぉっ!!」
横でショーが吹き出す。周りの人はその声で落ち着いたのか、並んで移動をし始めている。簡潔に伝え皆を纏めた、素晴らしい手腕だ。
「飯田がwww非常口wヒャッヒャヒャッw」
ショーはツボに入ったのか、ガチ笑いになってきている。
「ほらショー、そろそろ行くよ。」
「はぁ、はぁ、あー笑った。分かった……あっ、そういえば」
「どうしたの?」
「ずいぶんと顔が赤いが、キスでも待ってたか?」
瞬間、ウチは強めにスネにローキックを入れた。
痛ぇ、蹴られたスネが痛えよお……(泣)。そのあと俺たちは常闇と障子と合流し教室に戻っている。マスコミは先生方か対処しているらしい。
「しかし散々だったな。波激たちは大丈夫だったか?」
「…ん。大丈夫。」
「どうした耳郎?少し不機嫌そうに見えるが…」
「いや、大丈夫だから……ショーのおかげで。」
「…まあ役得だったな。少し代償を負ったが。」
「……?」
……しかし、今回の騒動少し引っ掛かる。雄英のセキュリティは、トップクラスだ。ただのマスコミにあんなことができる筈がない。…嫌な予感がする。
(……これが【おまえ】が言ってた
【……………。】
ケッ、黙りかよ。まあ今は次の授業に意識を向けるか。
???
「……本当にこいつらが
「えぇ、死柄木葬。彼らがその協力者です。」
そう話す男たちの前には、ある集団がいた。長身のスーツの男、190を越えていよう巨漢、無邪気な笑顔を浮かべた少女、寡黙な武人、ペストマスクを着けた男。両腕に刃物を携えた女。彼らは共通して、胸にそれぞれ
「初めまして死柄木葬さん。私の名前は《
シルクハットを被ったスーツの男が、そう名乗る。話し方や仕草が妙に胡散臭い。顔に手を着けた男が訝しげに彼を見る。
「…はあ、それで?こいつらは役に立つのか?」
「えぇ、彼らは
まるで陽炎のような男が説明する。彼の無機質な瞳からは感情が読み取れない。
「えぇ…あなた方の先生にも、御贔屓にさせていただきました。」
「…そして、なぜそんな組織が我々《連合》に協力するのかですが……」
「おぉ!そうでした。そういえばあなた方には言ってませんでしたねぇ。」
そして、男は芝居がかった仕草で言う。行動は胡散臭いがその目には確かな信仰が宿っていた。
「我々の目的は2つ。まず1つは組織の再生。そしてもう1つは……」
「我らが神、テスカトリポカ様の復活です。」
悪意は、水面下にて動き始めた。