多趣味な男がヒーロー目指す話   作:使命

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第一話

ジリリリリリリリリリ!!!!!!

 

夢の世界から無理やり引き戻され、目を覚ます。

 

彼は昨日、数百人の観衆相手にその落語語りを三作に渡って()()()()困憊で帰ってきた…

 

…おっと失礼。つまらぬものを。疲労して帰ってきた後、すぐに風呂に入り、晩御飯を食べ、疲れからか、死んだように眠ったのだった。正直、このまま二度寝としゃれこみたいところだが生憎、今日は平日。学生である彼には学校がある。渋々目を覚まし、自分の部屋から出て、一階に下りていく。

 

「あらおはよう、衝。ご飯できてるわよ。」

 

眠たげな彼を出迎えたのは、彼とよく似たさらりとした黒髪を束ねて台所に立つ女性だった。非常に整った顔立ちは、年齢を重ねた今でも美しさを醸し出している。

 

「あぁ、おはよう母さん。」

 

彼女の名は波激 向子。衝の母親で、元々、触った物を高速で発射させるという個性を生かしヒーローをやっていたが、年齢からの衰えにより十年前に引退していた。

 

 

 

 

 

個性

 

昔、突如人間に発現した特殊能力の呼称でありほとんどは生まれつき備わっており、ほぼ四歳ごろに発現する。今では世界の総人口の八割が持っているとされている。しかし、そんな強力な力を突如人間が持つとどうなるか、

 

そう、その力に溺れ、個性を使い悪事を行う者が現れはじめる。それが今でいうヴィランである。

 

だが、悪・が出てきたのなら、必ず正・義・が現れる。そう、個性を使い悪事を止める者が現れ初めた。

 

それが今でいうヒーローである。そのうちヒーローは職業となり、子供の将来の夢ランキングトップの人気職業である。そんなヒーローであった母親を親にもつ彼がヒーローに憧れない筈もなく、小さい頃から彼の夢はヒーローだったし、今でもその想いは変わっていない。

 

「父さんは?」

 

 

 

「あの人なら朝早くから工場に籠ってるわよ。」

 

 

 

やれやれといった様子で言う母に思わず苦笑する。

 

 

 

「相変わらずだな、父さんは。」

 

 

 

彼の父親の名は波激 激也。現役三味線職人で、よく三味線作りに没頭して、三日間帰ってこない日もあった。彼の三味線作りの技術は世間から高く評価され、また、三味線職人が少なくなってきていることもあって、全国のプロ三味線奏者たちがこぞって彼の元に依頼を頼むほどである。

 

 

 

「せっかくなら工場に行って朝稽古でも付けて貰う?」

 

 

 

笑いながら言う母に、彼は顔を青くさせて

 

 

 

「冗談きついぜ、母さん。学校に行く前に動けなくなっちまう。」

 

 

 

と言った。というのも、撃也には、三味線作りのほかにもう一つ()()と呼ばれているものがあった。

 

 

 

「そうね、あなたはもう()()()()を貰ってるものね。」

 

 

 

と母はフフッと微笑みながら言った後、生・卵・を渡してきた。

 

 

 

「おいおい、()()やれってのかよ。」

 

 

 

「あら、できるでしょう?あの人から合格貰ってるんだから。」

 

 

 

意地悪気な笑みを浮かべて言う母に、彼は一つ溜め息をついた後、持っていた卵をフッと上に投げ、次の瞬間卵めがけて()()()()()()()()()()

 

次の瞬間、卵が()()()()()()()()()()()()()落ちてくる中身は皿に着地し、その卵をかき混ぜながら落ちてくるからを片方の手で受け止める。

 

 

 

「相変わらず凄いわね、その技は。」

 

 

 

「なに言ってんだ、こんなのただの手刀だ。」

 

 

 

中学三年にしてこのレベルの武術を身につけるのには当然理由がある。

 

 

 

「全く。なんで三味線職人がこんなトンデモ武術教えられるんだよ。」

 

 

 

彼の父、撃也は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「でもあなたの個性とは相性抜群じゃない。」

 

 

 

「あぁ、びっくりするほどな。」

 

 

 

母親の発射の個性、そして父親の三味線作りには全く向かなかった衝撃という個性。二つの個性の良いところが掛け合わさることで、強力なハイブリッド個性と彼の拳法は、とても相性がいい。こと対人戦では無類の強さを発揮する。そんなことを喋りながら朝食を食べ終えると、家のインターホンが鳴る。この時間にくる客は決まっている。姿を確認して玄関に向かいドアを開けると、そこには制服を着た()()()()()()()()()()少女が立っていた。

 

 

 

「おはよ、ショー。」

 

 

 

「おっす耳郎。今日も弾いていくか?」

 

 

 

「うん。」

 

 

 

そういって()()()()()()()彼女を迎え入れる。

 

 

 

「あら響香ちゃん、おはよう。いらっしゃい。」

 

 

 

「おはようございます。向子さん。」

 

 

 

「じゃあ俺着替えてくるから先行っといて。」

 

 

 

「わかった。」

 

彼女の名は耳郞 響香。衝と同じ学校の同級生で、趣味の共通から仲良くなり、彼をあだ名で呼ぶほど気の知れた仲である。そんな彼女が衝の家に来る理由は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       ~ side  衝  ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着替えを終えて家の奥にある一際分厚い扉を開けて中に入る。その部屋には和洋さまざまな楽器が置いてあった。その部屋の中心でエレキギターをかき鳴らす少女がいた。

 

 

 

「おう、待った?」

 

 

 

「遅いよ、ショー!早速新しい曲弾きにきたんだから早く用意して!」

 

 

 

「無茶言うなよ、俺が朝弱いの知ってんだろ?」

 

 

 

そう言いながら俺が手に取った楽器は()()()。しかもこれは父さんが俺に作った特注品。最高級の出来であり、さらに俺専用に作られてるため、めっちゃ手に馴染む。俺達は朝、登校前に、こうしてロックと三味線を掛け合わせ、和洋折衷デュエットを楽しんでいる。 

 

 

 

「ねぇショー。ウチこの曲弾いてみたいんだけど。」

 

 

 

「どれどれ、お!これ今流行りのhip hopじゃねえか!」

 

 

 

「これウチらで弾けたらカッコよくない!」

 

 

 

「ナイスアイデアだ耳郞!じゃあ早速弾いてみっか!」

 

 

 

「OK!」

 

 

 

と、こうして曲を弾いていき時間が来たら学校に行く。それが俺達の習慣だった。

 

 

 

「じゃあ、いってきます。」

 

 

 

「お邪魔しました。」

 

 

 

「二人ともいってらっしゃい。」

 

 

 

学校への道中でまた喋りながら歩く。

 

 

 

「~てことがあってさー」

 

 

 

「そういうときは耳郞。逆に考えるのさ、押しちゃってもいいさと。」

 

 

 

「なにそれw」

 

 

 

こうやって緩やかに時は過ぎていく。

 

 




主人公の個性の正体は次の話になるかも
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