多趣味な男がヒーロー目指す話   作:使命

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第二十一話 体育祭ってめっちゃやる気あるか全くないかのどっちか

 

 

「────てなわけで俺は奴らに狙われ、ああしてUSJに襲来してきたってことだ」

 

 

 翌日、ミイラのまま出勤してきた相澤先生にお願いして時間を貰い、皆の前で全てを語った。

 

 俺が修行に行ったメキシコでのあの町の人との出会い。それらを奪った奴ら。そして人を殺した俺。

 

 俺を神と呼びその身を捧げ、この手で殺した。友を救えなかった。目の前で友が死んだ。死んだ。死んだ。死んだ。

 

 凄惨で、残酷で、残虐で、突然なあの戦場のことを全て。

 

 

「……つまりはまあ……おまえらが仲間と思っていたクラスメイトに1人、人殺しが混じってたわけだ」

 

 隠しててすまん。と言って頭を下げる。語ってるときから皆の顔を見るのが怖い。見れば分かってしまう。俺への拒絶も、蔑みも、恐怖も。相変わらずこの眼は忌まわしい。

 

 でもまあ否定されるのも当然だ。彼らは、あくまでも手段として目指す俺とは違い本気でヒーローを目指している。仲間に敵がいたなんて許されない。

 

 

「だけど俺はここに居たい。事の発端は俺のせいだ。責任とって離れるのが筋かもしれない……! けど、けど」

 

 

 ──俺を受け入れて欲しい。

 

 頭を下げた状態のまま頼む。彼らの言葉を伏して待つ。時間にして10秒ほどだろうが、あまりにも長く永く感じた沈黙の後飯田が口を開いた。

 

 

「──まずはありがとう。辛いことをよく話してくれた」

 

「……礼なんていらない。おまえらは俺のせいで」

 

「君のせいなんかじゃない。君こそ渦中に巻き込まれ、被害を受ける当人だろうに」

 

 

 あぁ、おまえは本当に優しいのか。俺のことを知って尚、飯田の言葉には労りと義憤が篭っている。

 

 

「さて、君のことだが……学級委員長として皆を代表して言おう。──俺たちは君を心から歓迎する!」

 

「……いいのか?」

 

「当然だ! そしてこうも言おう。君は俺たちに()()()()()()()()()()()()()()を、友を守る機会をくれたんだと!」

 

 

 ──ん? いやいやいやちょっと待て。何だその常軌を逸したポジティブシンキング。俺のせいで死ぬかもしれないんだぞ? 日本の敵なんて目じゃないほど惨たらしく死ぬかもしれない。それで尚そんなことを言えるのか? 思わず顔を上げると笑顔の飯田と目が合った。

 

 

「……納得出来てないなら、1つ君には罰を受けてもらおう」

 

「何でも言え」

 

 

 ふと教室を見てみれば、ニヤニヤとしてほくそ笑む耳郎が見えた。何だ何だその目は! 不安になってくるわ! いったいどんなキツイ罰が……

 

 

「ここでは『自分を偽らないこと』。それが君への罰だ」

 

「──は?」

 

「そのままの意味だ。俺たち1-Aの前では、ありのままの君でいて欲しい。そう耳郎君から言ってくれとね」

 

 

 今度は耳郎と目が合った。すると彼女は悪戯成功とばかりにケラケラと小さく手を振ってくる。というか、皆笑顔だ。轟は相変わらず無表情、爆豪は顰めっ面だが。

 

 

「おい煽りカス。テメェまさか俺との決着から逃げようってわけじゃねえよな……!」

 

「決着っておまえ俺に負け」

 

「勝つんだよこれから! 俺が勝つまで雄英から離れようとしてみろ! ぶっ殺すぞ!!」

 

 

 ビシリと綺麗なサムズダウンをしてくる。こっちはそれどころじゃないってのに相変わらずだ。──なるほど

 

 

「おまえら、マジの馬鹿だわ。中学のときのあいつらに負けず劣らずな」

 

 

 皆馬鹿だ。これ以上ない、ヒーロー馬鹿だ。避けられるのが怖かった? 阿呆か? 俺を受け入れようとした彼らを避けようとしてたのは俺じゃないか。

 

 1つ息を吸って口を開く。もう目を背けない。俺は、俺を信じた皆を信じる。もう俺は1人じゃないと信じる。

 

 

「……俺は波激衝」

 

「知ってるよ!」

 

 芦戸が。

 

「……趣味は読書に映画鑑賞、銃器弄りにファッション、音楽に語り、人間観察」

 

「知ってるぞ」

 

 常闇が。

 

「実は世を忍ぶ今話題の天才落語家……!」

 

「自分で言うなよ! 最近知ったぜ!」

 

 切島が。

 

「悪戯好きで……! 皮肉好きで手段も選ばないし、性格は最悪だ」

 

「ケロ、知ってるわよ」

 

 蛙吹が。

 

「で、でも本当は寂しがり屋だし、皆がいないと、居なくなるのが……怖くて……! また、1人にっ、なるのが怖くて……!」

 

「──知ってる」

 

 耳郎が。皆が、受け入れてくれると信じて。

 

 

「こんなっ、俺だけど……皆、これからも、よろしく頼む……!」

 

『勿論!』

 

 

 公衆の面前にも係わらずなんとも情けないことに涙と嗚咽が止まらない。かつての耳郎との出会いを思い出し、勇気を出して踏み出した1歩は今ここで報われた。俺はこの時初めて、真の意味で孤独から解放されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雄英体育祭が迫っている」

 

『クソ学校ぽいの来たあぁぁぁ!!』

 

 

 五月蠅いぜ☆毎度毎度騒ぎすぎだよこいつら。こちとら怪我人やぞ、骨に響くわ。しかしトラウマを人に話すというのは随分負担になるようだ。些か気分が良くない。まぁ今回に限っては昂るのも十分理解出来るとも。それだけこのイベントは俺たちヒーロー科にとって重要だからな。

 

 雄英体育祭

 

 嘗て盛んだったスポーツの一大イベント、オリンピックが個性の使用が禁じられたことで廃れた後台頭してくる程の一高校の行事の枠を超えた超大イベントだ。そこで注目されるべき点は、これは雄英のヒーローの卵たち……つまりはヒーロー科所属の生徒の自己アピールの最大のチャンスなのだ。

 

 当然好成績を残せば残すほど高名なヒーロー事務所にスカウトされやすくなり、未来への大きな躍進の布石となるのだ。

 

 

「まあ全員テレビに映ることになるだろうが……くれぐれも行動には気を付けろよ、波激」

 

「いやなんで俺なんすか?」

 

 

 誠に心外である。俺が今までいったい何をそんな言われるようなことを……うん、まぁ、してきたか(諦め)

 

 

「はい!」

 

「……返事はいいんだがな。お前らも時間は有限、気張れよ」

 

 

 そう短く激励の言葉を俺たちにかけて、相澤先生は退室した。

 

 

「なんだかんだテンション上がるなオイ! 活躍して目立ちゃプロへのどでけぇ一歩を踏み出せる!」

 

 

 未だにクラスは興奮冷めやらぬ、といった感じだ。まあかく言う俺も結構テンションは上がっている。他のクラスの奴らとは面識がないからな。もしやまだ見ぬ強者がいるかも……って俺そんなバトルジャンキーだっけか。

 

 

「皆、体育祭頑張ろうね……!」

 

「顔がアレだよ麗日さん!!」

 

 

 なんか緑谷と麗日が話してる。というか麗日、全然麗らかじゃないぞその顔は。

 

 

「そういうアンタは落ち着いてるじゃん」

 

「そうだな。やはり大舞台には慣れてるのか? 何処ぞの落語家さんは」

 

「やめろ恥ずい。……まあ慣れてるのは認めるさ。それより悩ましいのがな」

 

 

 何時ものメンバー、耳郎、常闇、障子、俺で集まってる中で思わずため息をついてしまう。というかおまえら俺が三日月亭妖狐だと知ってからイジリすぎだぞ。

 

 

「何が?」

 

「いや、ここだけの話な。体育祭の開会式の選手宣誓を担当することになってな」

 

「──あぁ、そうか! 確か選手宣誓は入試1位の生徒が担当するんだったな。でも何故悩んでるんだ? おまえはこういうの得意そうだが……」

 

「いや、そうでもないんだよ障子」

 

 

 そうなのだ。実は俺はただ物語を『語る』だけなら誰にも負けない自信があるが、こう場を盛り上げるとかは苦手なんだよな。

 

 

「……意外だな。凡そ何かを言葉で表すことにおいておまえが苦手とすることがあるとは」

 

「そんなもんだよ。……まあ人の意思やら思考やらを誘導するとかは出来るんだが……」

 

「あぁ、アンタよく色んな人誑かしてたもんね」

 

 

 言い方だよ。それじゃ俺ただの詐欺師みたいじゃん。まあ事実っちゃ事実だから言い返せないが。

 

 

「……衝、それでいいんじゃないか?」

 

「ん?」

 

「要は場のやる気が上がるように思考を誘導すればいい。観客も、選手も引っ括めてな」

 

「……なるほど、そうだな」

 

 

 確かに。無理に俺のやり方で語ろうと意識するからいけないんだ。俄然やれる気がしてきた。

 

 

「サンキュー障子。なんか出来そうだわ」

 

「あぁ。それよりそろそろ授業だ」

 

 

 そんな流れで、一先ずは先の体育祭より目の前の授業へと意識を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

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