「許可していただき、ありがとうございました」
「快諾!君の新たな道を応援しよう、担当希望の子は決めてきたかね?」
「はい、駿川さんの方に伝えてあります」
日本トレーニングセンター学園の理事長室で、理事長の秋川やよいと来客が向かい合ってソファにい腰掛けている。来客の頭には天に向いてつんと立つ鹿毛の耳、腰のあたりに同色の尾が生えている。
「受容!では面談室で顔合わせをするといい」
「はい」
一礼して、彼女は理事長室をあとにし、面談室へと歩いていく。
ちょうどその頃、駿川たづなに連れられて一人のウマ娘が少し緊張の面持ちで歩いていた。自身のトレーナーになる人物と、初めての顔合わせをする。ついにデビューに向けての日々が始まるのだと思うと、期待と不安が入り交じる複雑な気分だった。
「お連れしましたよ」
「はい」
たづなが先に面談室に入って中の人物二位声をかけている。そして、しばらくするとたづなが出てきて「どうぞ」と促され、中に入った。
「初めまして、デュオスクトゥム……さん?」
「あ、はい」
中にいる人物は立ち上がり、柔和な笑みを浮かべて頭を下げる。デュオスクトゥムと呼ばれたウマ娘は、はっとしたように頷く。
「ご存知かもしれませんけど、ご紹介しますね。今回トレーナーとして赴任なさったイナセビャクヨウさんです」
「あの……?」
「あはは、はい「あの」です」
少し笑ってそういう、イナセビャクヨウと呼ばれた彼女はデュオスクトゥムと向き合う。
「……私が担当だと、不安だったりします?……ウマ娘より、人間のほうがトレーナーには向いていると言われてますし……」
「……!そんな事ありません!」
頭を振るデュオスクトゥムにイナセビャクヨウはまた笑う。たづなはそのまま二人を面談室に残してその場をあとにした。二人はそのままファに腰を下ろして向かい合う。
「とりあえず今日は顔合わせ、トレーニングの方針を決めるのは明日あなたの走りを見てから……というつもりですけど、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です!」
「よかった、それじゃあ……」
イナセビャクヨウはそっと手を差し出す。
「これから、よろしく」
「はい!」
二人はしかと握手を交わす。メイクデビューに向けた二人の二人三脚が始まった。
……これは、二人のウマ娘の物語だ。走り始めたばかりの若いウマ娘であるデュオスクトゥムと、かつて栄誉を手にしながらも不可抗力によりターフを去らざるをえなかった、引退したウマ娘であるイナセビャクヨウ。
一人の始まりと、一人の再生の、お話だ。