「うん、いいペースだね」
メイクデビューまであと数週間と迫った頃。イナセビャクヨウはデュオスクトゥムの走り込みのタイムを見ながら、うんうんと何度か頷きつつそう言う。デビューに向けてのタイムとしては上々だろう。そう思いながら、デュオスクトゥムにタオルと補水用のボトルを手渡す。
「時間も時間だし今日はここまで、言っておいた通り明日は休養日ね、自主トレは構わないけど疲れが残らないようにストレッチとか、学習に当てるように……いいかな?」
「はい、今日もお疲れ様でした、トレーナー」
「うん……って、ちょっと門限ギリギリだね!送るよ、軽く走っていこう」
「はい!」
二人はそのまま、並んで走り出す。と言っても寮まではそこまで遠くない、デュオスクトゥムも今日は一度部屋に戻って荷物を置いてからトレーナーと落ち合ったので、忘れ物も特にはない。
「よし、ギリギリセーフ……かな?」
「そうですね」
「うん、じゃあまた明後日。でも何かあればトレーナー室に来ていいからね」
「はい、おやすみなさいトレーナー」
「うん、おやすみなさい。しっかり食べてしっかり休んでね」
そう言ってイナセビャクヨウは軽く手を振り、寮を後にする。デュオスクトゥムはその背中を見送ってから、まずは自室へと戻った。
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本番まであと五日と迫った日。二人は坂路でのトレーニングを行っていた。
「スクの脚質は逃げ、上り坂で体力を使って失速する可能性がある……今のうちに軽くでも慣れておきましょう」
「はい!」
「あまり力まないようにね、逆に体力を使うから……ウマなりで、自分のペースを守って走ってみましょう」
その言葉を聞きながら、デュオスクトゥムは坂路に向けて走り出す。呼吸を整え、平地を走っている時と同じように意識して坂を駆け上がる。坂の下で待つイナセビャクヨウの前を駆け抜けると同時に、イナセビャクヨウは手にしていたストップウォッチを止める。
「うん……前に坂路で走った時よりいいね」
タイムを確認すると、戻ってきたデュオスクトゥムにもウォッチを見せる。
「レースでも同じくらい出来たら上出来よ、でも周りに他の子達が居ると難しいこともあると思うわ」
「はい」
「でも今日の感覚を忘れないで!これならメイクデビューはきっちり走れると思うから」
「わかりました」
「じゃ、今から三十分休憩。休憩の後はダートで走り込み、大丈夫かな?」
「もちろん!」
「よし、じゃあ頑張ろう」
二人は笑って頷き合う。デビューまであと少し……。