幸せにありふれた世界を築くために   作:Yunice

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オルクス大迷宮の後編です

香織の気持ち、はじめの気持ちなど、あらゆるキャラの思いが交錯する様子をメインに描きました。


それではどうぞ


オルクス大迷宮(後)

オルクス大迷宮(緑の大坑道)

第20層

 

 

「もうだめ、歩けない〜」

 

「相変わらず鈴は運動音痴だねぇ。でもここまで休憩無しで戦いっぱなしだからそろそろ休憩しないとね。お兄ちゃん!」

 

「そうだね、団長に掛け合ってみるよ。」

 

「うぅぅ…ゆうくんありがとぉ」

 

 

 

一行の行列をかき分けてメルド団長に休憩を打診する。

 

 

 

「おい佑輔!みんなの意見も聞かずに勝手に休もうとするんじゃない!この国の未来がかかってるんだぞ!僕らがこんなところで怠けている場合じゃないのはお前にもわかっていることだろ!」

 

「けどさ、天之河君はみんなのことちゃんと見てる?君以外のみんなが疲れてる顔をしてると思うけど」

 

 

光輝が佑輔に促され周りを見ると、疲れ果てたクラスメイトの姿がそこにあった。

 

 

 

「いや、でも「光輝」.....メルドさん」

 

「光輝が言う通り我々としてはいち早くお前らを1人前にしたてあげて戦場に送らんとならない。だがここで倒れたり死なれたりしたら以ての外だ。いくら異世界の勇者と言えど人の子である以上休憩は適度にとって行かないとならない。ポーションだけでは疲れは完全に癒せない。よって今から休憩30分間の休憩を摂る。持ってきた食べ物でも食べたり、仮眠したいものはすればいい。但し周囲への注意は決して怠らないように」

 

 

「「「「「やったぁぁ!!!」」」」」

 

 

 

 

溢れんばかりの歓喜。みんな余程疲れていたらしい。メルド団長の指示の下、各自休憩をとることにした。

 

 

 

光輝は休憩と言いつつ警戒を怠ることなく周囲を見回し、恵理は何やら佑輔の方をちらちら見ながら鈴と密談をしている。

 

そしてはじめはここぞとばかりに即仮眠。

 

と、それを見て香織と佑輔は苦笑いをしながら持参したご飯やおやつを食べる。

 

 

 

「はじめくんは本当相変わらずだね。」

 

「まああれがはじめだからね、諦めた方がいいよ。それにしてもはじめとの距離昨日に比べてかなり近くない?何があったの?」

 

「うーん、別に何があったとかでは全然ないだけど、昨夜はじめ君の部屋にお邪魔して、ここに来る前の出来事、ここに来てからの出来事を沢山お話したんだ〜。」

「そうなんだ。ここまで色んなことがあったもんね。」

 

「うん。ここに来てから日にちは経つけどいつになっても慣れないよ。そして恐れもある。そんな中はじめ君は恐れることなく勇敢で、ステータスが伸びないなりに人より何倍も努力してる。今まで私は色んなはじめくんを見てきた。楽しそうにお話するはじめ君。他人のために謝れるはじめ君。何かのために一生懸命になれるはじめ君。そして何があっても辛い顔をしないはじめ君。私はそんな彼が好きな反面少し怖いの。やがて彼がどこか遠いところに行っちゃう気がして....けどはじめ君と約束しの。私が守るって。どんなに辛い未来があったとしても絶対にはじめ君と一緒にいるって。だから...だから!!!」

 

「そっか。」

 

「....うん、」

 

 

 

そうか。白崎さんがはじめを好きになったのは偶然じゃない。普通の人が持ち合わせていない魅力と力強さをいくつも持っていたからこれ程までに心をゆれうごかされたんだな。

 

 

「白崎さんははじめが好きなの?」

 

「.....うん。」

 

「そっか。大切な人.......

.....そうだな、ひとつ助言するとしたら、はじめは押しに弱い」

 

「え?」

 

「押して押して押しまくれ。 そしたらあっちが折れて上手くいくかもな!」

 

「うん!ありがとう!」

 

「ただ早いうちに既成事実は作っとけよ?」

 

「き、既成事実って...そんな////」

 

「他の誰かさんに先越されても知らないからな」

 

「全力でやらせていただきます!」

 

 

 

イヤンイヤンしていた香織は僕の一言でビシイと擬音語が聞こえるくらい背筋を伸ばして敬礼をした。

 

今度から白崎さんのことをビシイさんと呼ぶことにしよう。

 

 

 

「それと...」

 

「ん?」

 

「私のことは香織でいいからね!仲良しの証!」

 

 

 

はは、どこかで同じようなことを言われたっけ

 

 

 

「わかったよ、ビシィさん」

 

 

「どこをどう取ったらそんなあだ名になるのかな!?」

 

「嘘だよ、香織」

 

「えへへ!ありがと!」

 

 

 

佑輔ははじめの元へ向かう香織を背を見てからまだ寝ているはじめに目を向ける。

 

 

 

 

「はじめ、お前は独りじゃない。こんなにもお前を好いてくれる仲間がそばにいるんだ。そのことを決して忘れるなよ。

 

.......

 

.......あとすまん。香織を焚き付け過ぎた。自分が言うのもなんだが、頑張れ!色々と」

 

 

 

30分はすぐに過ぎて攻略を再開する

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

第25層

 

 

 

 

第20層での休憩のお陰か、それ以降の戦闘は大分手慣れたもので、今までよりもより効率的に魔物を倒し、攻略速度が一気に上がった。

 

 

 

「おっしやぁぁぁ!また1匹ぃ!俺らを殺しに来るっつーからめっちゃビビってたけどよ、案外いけるもんだわ〜!オルクス大迷宮?世界有数の危険地帯?余裕余裕!だって俺ら最強だし?()()()()()()()()()()()()()ってか?ギャハハハハハハ!!!」

 

「おい檜山やめとけって!俺たちは()()()()だけど1人だけ()()()()なやつがいるんだから!可哀想だろ?」

 

「ブフゥゥゥゥ!!!!あ、そうだったーー!最弱で無能なやついるの忘れてたー。あれ、てかなんて名前だっけ?」

 

「くくく、酷すぎ!!!ギャハハハハハハ」

 

「「「ギャハハハハハハ」」」

 

 

20層を超えたというのもあり、みんなの実力が上がり心の余裕が生まれた。それはつまり気の緩みであり、魔物に対する警戒心も無くなるのも当然であった。

 

特にはじめによくだる絡みをする檜山大輔、中野新治、齋藤良樹、近藤礼一はその最たる例であった。

 

僕や遠藤を押しのけ早速はじめにだる絡みをする。当の本人はアハハと苦笑い。ハッキリと言えないはじめの性格をわかった上でのだる絡み、もはや嫌がらせであるから余計腹が立つ。

 

「ねぇ、嫌がらせも大概してほしいんですが。みんな迷惑してるんですよ。学校にいるときから思ってたけど、そんなにはじめの事が嫌いならちょっかい出さなければいいだけじゃないですか。真面目に生活してる人の邪魔だけはしないでくれませんかねぇ」

 

「あ?無能の味方してお前は()()の味方気取りか?()()()歪んでるテメェにだけは言われたくないっつの!お前普段から女だけじゃ飽き足らず妹とまでイチャイチャしやがって!その挙句お前らが悪いってすぐに人の所為にしやがって。()()()()だけはしっかりしてるのな。ギャハハハハハ」

 

 

 

なんだこいつ。

 

正義の話するんだったら僕じゃなくて天之河君にするべきだろ。

 

 

 

あと何なの急に。ラップバトルでも始めたんか?

 

話の論理展開がめちゃくちゃ。

 

よって5点。

 

「そういう言動が増々クラスメイトの士気を下げてるってことが分からないから陰でチンピラって言われるんだよ。いい加減気づけ。」

 

「んだとゴルァ?!!!」

 

「やめろ2人とも!こんな所で2人で言い争ってること自体が不毛だ。中村、俺が後で檜山に言い聞かせておくから。もうこの辺でやめろ。ここまで来て俺たちの士気を下げるな」

 

なんか論点ズレているような気もするがここは潔く退く。

 

「痴話喧嘩はもう済んだか?ほら、さっさと行くぞ」

 

メルド団長は僕らの争いが終わるのを待っていた。

 

確かにこういうものは僕ら自身で決着を付けないと後々面倒なことになる。こういう時に干渉しないのは良い教師だ。

 

 

 

あ、愛ちゃん先生は別だ。

 

学校にいた頃、生徒たちが言い争いをしていた時に愛ちゃん先生が割って入って止めようとしたことがあった。

言い争っていた2人はプリプリ怒った先生の様子を見てお互いが和み、その結果愛ちゃん先生がかわいいという結論にたどり着いたという。

 

愛ちゃん先生元気かな、今は確かウルの町で農業の指導をしてるとか言ってたっけ。

 

そんな愛ちゃん先生のためにも今は無事に帰ってくることに専念するべきだな。

 

そんなことを考えながらをバチしか当たらないような大剣を振り回しながら25階層の魔物を倒していくのであった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

オルクス大迷宮同25層

 

 

カメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物、

ロックマウントに、光輝が天翔閃をぶっぱなす。

 

 

天井の壁に亀裂を生みながらその破片がパラパラと落ちる。

 

そしてメルド団長に本気のゲンコツをぶつけられる。

 

 

 

 

その直後、メルド団長に、香織がふと思ったことを口にする。

 

 

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

 

 

 そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

 

グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。その輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ3に入るとか。

 

 

 

「素敵……」

 

 

 

そう言って檜山グランツ鉱石目掛けてヒョイヒョイと壁を登っていく。

 

 

 

「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

 

 

 しかし、檜山はメルど団長の警告を無視して、鉱石に触れようとする。

 

 メルド団長は、止めようとすると同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

 

 

「団長! トラップです!」

 

「ッ!?」

 

 

 

 しかし、メルド団長も、騎士団員の警告も一歩遅かった。

 

 檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。

 

 魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。

 

 

 

「撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

 

 

 メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。

 

 

 

 部屋の中に光が満ち、ハジメ達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

 

「ゆうくん!!!」

 

 

突然の事で混乱している恵理が僕に向けて手を差し出す

 

それに答えるように恋人繋ぎのように握り合わせ、そのまま恵理の身体を引き寄せる。彼女の頭を守るように頭を手で支えながら目をきゅっとつぶる。

 

 

光がだんだん強くなり

 

 

 

やがてメルど団長含む勇者一行は25階層から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

オルクス大迷宮

第65階層

 

 

 

 

 

 

目を開けるとそこには1つの石造りの橋が掛かっていた。

 

 

両端には紫色に光る石灯が一定間隔に設置されている。

 

長さは100m程で幅は10m程の巨大なものであった。

 

その橋の下を見ると川など全く無く、何も見えない真っ黒の闇が広がっていた。

 

落ちれば奈落の底。

 

 

 

 

 

状況が読めていないのは他のみんなも同じで、イツメンの香織、雫、鈴、はじめが僕の顔をうかがう。多分遠藤もいるだろうが、視認できないのでここでは省くとして、みんなが僕の指示を待つ。

 

恵理はまだ僕にしがみついている。

 

 

 

 

「少なくともここは僕らの知っている階層では無いことから、さっきのグランツ鉱石は下に向かう転移結晶。それもずっと奥深くの.....」

 

 

「.....あぁ、佑輔の言う通り、ここはずっと奥深くの階層。それもこの俺でも到達したことの無い程の...な。

だからここにはお前たちでは手も足も出ない程強い魔物がうじゃうじゃいる。......撤退だ!今すぐに脱出すればまだ何とか!」

 

 

 

間に合う、と言おうとしたその時、目の前に橋の横幅ギリギリの直径の魔法陣が浮き出て赤く光り出す。

 

 

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 

 

 

 

 

 しかし、撤退は叶わず、階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現する。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が現れる。

 

 

 

 その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがこの奥深くの階層に響きわたった。

 

 

 

――まさか……ベヒモス……なのか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

「団長、何か分かったのですか?」

 

香織が不安げに質問する。

 

「あぁ、ここは俺たちごときがまだたどり着いていい場所じゃない。奥深くなんてレベルじゃない」

 

 

メルド団長は額に汗を滲ませながら続ける。

 

 

 

 

 

 

 

「...ここは人類最高到達点...........第65階層だ」

 

 

 

「そ、そんな...」

 

「グルァァァァァアアアアア!!」

 

「ッ!?」

 

 

 

ベヒモスの咆哮で目が覚めたメルド団長は指示をする

 

「カイル、イヴァン、ベイルで全力の障壁を張る!そして俺とアランでこいつを全力でくいとめる!その隙にお前たちは階段の方へ走れ!私はお前達を死なせるわけにはいかない!!!」

 

 

 

声を大にして言った後、ハイリヒ王国最高戦力が全力の多重障壁を張る。

 

 

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず――〝聖絶〟!!」」」

 

 

 

するとクラスメイト目掛けて突進しようとしたベヒモスは半球を形成した凄絶に体当する形となり、凄まじい衝撃波と共に足元を粉砕される。

 

その衝撃波にぶっ飛ばされそうになった時、光輝はメルド団長の元へ近づく。

 

「待って下さい、メルドさん! 俺達もやります」

 

「バカモノ!こんな時にお前のワガママに構ってられるほど暇じゃねぇんだ!いいからさっさと階段側の退路を開けろ!」

 

 

「でも!」

 

「天之河君!早く撤退しよう!」

 

「南雲!こんな時に何を!早くみんなと一緒に撤退しろ!僕はメルドさんと共に戦うんだ!共に生きて帰るために!」

 

「こんな時に状況に酔いしれないで!あれが見えないの!?みんなパニックになってる!リーダーがいないからだ!一撃で切り抜ける力が必要なんだ!皆の恐怖を吹き飛ばす力が!それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ!前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」

 

 

 

逃げようとするもの、戦おうとするものが交錯し合って混乱状態になるクラスメイトの姿を光輝は見る。

 

「早く!」

 

急かすはじめに対してイライラを募らせる。

 

「.......ああわかった!」

 

「ありがとう! よし、みんなよく聞いて!今から天之河君が天翔閃を使って目の前にいるトラウムソルジャーを吹っ飛ばす!だからその隙を狙って僕たちは一気に階段へ向かう!」

 

やっとの思いで説得に成功したはじめは少し安堵の息を漏らす。

その直後、はじめはクラスメートにキャラに見合わず指示を出す。そして佑輔にアイコンタクトをする

 

 

 

 

「メルド団長!」

 

「おい佑輔お前もか!お前らに構っている場合はないと言っただろ!」

 

「アレを使う許可を。」

 

「っ!?」

 

 

アレとはアークマヌスの杖である。杖に仕込まれている魔剣で相手の魔力を一気に奪うことで反撃力を弱める働きがある。

 

この能力は聖光教会の秘宝を凌駕するほどの傑物。これが教会にバレたらすぐに接収されてしまうだろう。だが今は勇者達の未来が掛かっている。優先順位としては後者の方が明らかなことはメルド団長にも分かりきっていることだろう。

 

 

 

「一刻の猶予もありません。天之河君の天翔閃が一撃で退路を開けることができるとは限りません。だから魔力を低下させて反撃力を弱められればみんなで防御し攻撃を繰り返せば可能性は飛躍的に上がります!」

 

「...よし分かった。光輝の天翔閃で敵が怯んだ隙に横1文字にぶった切れ!」

 

 

「了解!!」

 

 

 

「よし、天之河君!天翔閃を!」

 

 

「おい、お前に指図される筋合いは「早く!!」..........分かった

万翔羽ばたき、天へと至れ――天翔閃!」

 

 

トラウムソルジャーに向けられた魔法は瞬く間にそれらを中心に光輝く火球となり敵を殲滅する。

 

それを見て佑輔は杖から細剣を取り出そうとするも、鞘から出すことなく手を止めてしまう。この剣で敵と戦うのは初めてである故に不安だからだ。自分の力でやりきれるのかと。この剣でみんなの命を救えるのか....と。

 

「ゆーくん」

 

「ん?」

 

「大丈夫。ゆーくんは今まで誰よりも努力してきた。自分の力を、解放者の力を信じて。そして今までのストレスを全力で解放して!!」

 

 

「あぁそうか。そうだよな。お兄ちゃんは誰よりも強い。その事をみんなに証明してやるよ」

 

「うん!!!」

 

 

 

 

 

そういうと佑輔は腰を限界まで落とし左手で杖を持ち腰に当てる。

 

 

そして剣の柄の部分と鞘との間の部分に親指を添え右手を柄の手前に持っていき神経を整え目をつぶり、陣形を乱しているトラウムソルジャーの魔力を操作して水平に整え、脚力、剛力などの全能力を剣に集中させる。。

 

すると緑色にギラギラと光る魔法陣が佑輔を中心に広がり、ただの杖だったそれは赤黒く稲妻を発生させる。それはみるみる大きくなっていき魔法陣から上に突き上げるように赤黒い稲妻が龍の如く昇天する。

 

 

 

「俺の、俺の力は他の誰よりも強い!天職なんか関係ない。非戦闘職でも。例え最弱になり得たとしても。思いの力があれば何にだってなれる。はじめ!」

 

 

「佑輔君!!!!」

 

 

「見ていろ。これが俺の力だ!!!!!!!」

 

 

 

魔物に向けて急加速する。

 

 

瞬く間にトラウムソルジャーの懐へたどり着いたと同時に弧を描くかのように一気に抜刀しその軌跡が広がる。それが魔物の皮膚に接触した瞬間赤黒い稲妻が何体もいたトラウムソルジャーをつ突きぬける。

 

それと同時に紫色に発光するエネルギーのような何かがトラウムソルジャーから抜き取られ、それが勢い良く切りつけた細剣に向けて一気に流れる。

 

 

「今だ!みんな走れ!」

 

 

光輝の号令と同時にクラスメイトは一気に走り出す。

 

 

 

その間香織はみんなを中心に聖絶を展開。鈴と恵理はそれでも生き残ったトラウムソルジャーの攻撃に対する迎撃を展開した。

 

 

 

 

「よしお前ら!よくやった!って!!!?ここで何やってるんだはじめ!?」

 

 

 

全員の待避を確認したメルド団長が安堵の息を漏らそうとしたその時、メルド団長率いる王国最高戦力が対峙していたベヒモスの足元が歪んだ。

 

 

なんとはじめはクラスメイトの避難を横目にベヒモスの足元を錬成で石造りの大橋と一体化させていたのである!

 

 

 

「あまり長く持ちません!その間に大ダメージを一撃与えて撤退してください!その間に僕はこの怪物を奈落へ落とします!」

 

「無茶を言うな!今のお前に何が出来る!」

 

「そうだ南雲!早く撤退するんだ!」

 

 

 

メルド団長の意見に賛同し忠告する光輝

 

「「「「「はじめ君」」」」」

 

イツメン達も同様にはじめの行動に心配をする。

 

しかしはじめは続ける。

 

 

 

「これは、これは僕にしかできないことなんです!それに、佑輔君が言ってくれた!例え最弱になり得たとしても。思いの力があれば何にだってなれるって!!」

 

「はじめ君...」

「はじめ」

 

 

香織と僕はみんなの役に立ちたいという強い心に圧倒される。

 

 

 

「やれるんだな?」

 

「はい!」

 

 

 

「わかった!はじめ!お前の全力を見せてみろ!!」

 

「はい!」

 

 

メルド団長の一声ではじめは本気の錬成を始める。

 

その途端、石橋の床の破片がベヒモスの足下に絡みつき、どでかい図体が沈み込む。

 

 

 

「錬成錬成錬成錬成錬成錬成錬成錬成錬成錬成!」

 

 

 

足元だけでなく橋の両サイドから破片を集め両腕と首元を拘束し、沈み込む速度が上がる。

 

 

「グルァァァァァアアアアア!!?」

 

 

ベヒモスの足元が陥没し、ベヒモスの身動きが取れなくなる。

 

「よし!!」

 

 

「よし、はじめ!これから全員で攻撃魔法の一斉射撃を行う!合図を送るから、その瞬間錬成を止めてこっちに向かって全力で走れ!!!」

 

 

「りょ、了解!!」

 

 

ベヒモスが暴れることで更に身体が沈み込んでいく。

 

「グルァァァァァアアアアア!!!!グルァァァァァアアアアア!!?」

ベヒモスの足元は石橋を支える要石に到達する。

 

奈落に落ちるのも最早時間の問題だろう。

 

 

そこでメルド団長は最後の命令を出す

 

 

 

「よしはじめ!!走れぇぇぇえええーーーー!!!!!!」

 

 

 

「はい!!!」

 

 

はじめが走り出した途端、クラスメイトたちはそれぞれ攻撃魔法を展開する。

 

 

退避場所まで中間地点に差し掛かった時それらが一斉に射出される。

 

 

 

『よし、ここまで来れば何とか!』

 

 

そう思った時、一斉射撃された魔法の一部が屈折し、はじめに目掛けて襲いかかる。

 

 

 

「ど、どうして!?!?」

 

 

 疑問や困惑、驚愕が一瞬で脳内を駆け巡り、ハジメは愕然とする。

 

 

 

 咄嗟に踏ん張り、止まろうと地を滑るハジメの眼前に、その火球は突き刺さった。着弾の衝撃波をモロに浴び、来た道を引き返すように吹き飛ぶ。直撃は避けたし、内臓などへのダメージもないが、三半規管をやられ平衡感覚が狂ってしまった。

 

 

 

はじめは、なけなしの力を振り絞り、必死にその場を飛び退いた。直後、怒りの全てを集束したような激烈な衝撃が橋全体を襲った。ベヒモスの攻撃で橋全体が震動する。着弾点を中心に物凄い勢いで亀裂が走る。メキメキと橋が悲鳴を上げる。

 

 

 

 そして遂に……橋が崩壊を始めた。

 

 

「グウァアアア!?」

 

 

 

非鳴を上げながら崩壊し傾く石畳を爪で必死に引っ掻くベヒモス。しかし、引っ掛けた場所すら崩壊し、ベヒモスの断末魔が木霊させながら、抵抗も虚しく奈落へと消えていった。

 

 

はじめもなんとかしがみつくが次々と崩壊していき、体を支えるのはとうとう右手だけに。

 

 

(ああ、もうだめだ)

 

 

 

手の力も限界を迎え、クラスメイトに裏切られ、全てを諦めかけそうになったその時だった!

 

 

 

 

 

「はじめ君!!!掴まって!!!!」

 

「はじめ!!諦めるな!!!」

 

 

 

 

「........恵理...さん?」

 

 

 

 

なんと、最後の最後に救いの手を差し伸べてくれたのは

佑輔と恵理だった。

 

「僕達の力だけじゃ長くは持たない!だから、早く!!!!」

 

 

 

(ああ、僕にも、僕にも命を投げ出してまでも救おうとしてくれる友達がいたんだな)

 

とても胸が心地よくなった。この人達なら心から信頼出来る。命を預ける。と。

 

 

 

「うん!」

 

 

 

はじめが元気よくそう言うとダランとさせていた左手を佑輔に預け引っ張りあげる。お腹辺りまで引き上げると次は命を預けていた右手を恵理に預ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恵理の足元に亀裂が広がり、一気に崩壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佑輔が恵理の手を掴もうとするも、先程の戦闘で2人の体を支えられるほど体力は最早残っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その努力も虚しく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人の姿は奈落の闇の中へ消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




きつかった.....
今回ではじめを奈落の底に落とそうと思ったあまり、文字数がえげつないことになってしまいました。

8705文字ですwww


こんなに長くなるとは思いませんが、あらゆる視点での情景が濃密にかけたんじゃないかと思います。とりあえず第1部は終了ですね


3日かけて文章作ったので、感想を書いていただけると大変励みになります!


これからもよろしくお願いします!!(*^^*)
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