いい意味で過去に囚われる人と
悪い意味で過去に囚われる人の
対比を是非楽しんでもらいたいです!
それではどぞ!
子孫の呪縛
七大迷宮中枢管制塔
ピピッ…ピピッ…
ブンッ
魂魄座標測位システムより
緑の大坑道第93階層にトータスには存在しない人型生命体2体の魂魄を確認。尚行動を起こす様子はなく、攻略の意志の是非はみられず。
昇華魔法の行使を開始
……
……
……ブンッ…
二人の能力、トータス基準点レベル3及びレベル10を確認。
この先の行動を鑑み攻略の是非および精神的強度を審査します。
???「遂に…遂に時ぞ来るか…」
***
毎日見るその夢は
誰かが訳のわからない格言じみたセリフを自分に語りかけるだけ。
今日も同じ夢なのだと思っていると、なにやら映像が出てきた。
とある城の上空に広がる半径1kmを超えるほどの魔法陣とその上には発動者と見受けられる巨大な蛇眼。直視できないほどの膨大なエネルギーで放つ殲滅の魔法に対して下から上へ昇る光の龍が城下を守る。
ハルツィナ樹海で繰り広げる戦争と次々に生み出されるクレーター
生み出された光の龍も、息を吐くかのように生み出されたクレーターもおそらく7人の解放者によるもの。
これが本当に世界の果てに敗走した反逆者なのか?その実力は神の使徒と持て囃された勇者一行とは文字通り桁が違う。それも5桁は超える程に…
そんな事を考えているうちに、
走馬灯のように世界の果てに存在する七大迷宮の映像が駆け抜ける。
そして語りかけるいつもの声。
『試練の目的に相対するこの世界の神の思惑。
なぜ数千年もの間民に気づかれずに朽ちてゆく事となったのか。
そしてなぜその場所に創ったのか。
常に疑問を持て
解を探せ
魔法とは何か。
魔力とは何か
世界の謎、世の理を解き明かす事こそ愚神を打倒する最適解なり。
常に疑問を持て。そして紙と筆を持ちそれらを証明してみせよ。
それらが全てを救う解なり。
学者を継ぎし者よ
覚醒めよ
汝の妹を救うべく
***
「………くん」
「……すけくん」
なんだ…?誰かの声が聞こえ…
「佑輔君!」
「…鈴、と雫さん?一体どしたの?あと遠藤も」
「き、気づいてもらえた…だと?おい何があった!?」
「遠藤君は黙ってて。佑輔君、あなたと香織は3日間も寝込んでたのよ?心配させて」
「香…織…?」
ふと横を見ると香織が少し苦しんだ表情をしながら隣で寝ていた。
「僕に一体何…が、そうだ、オルクス迷宮に行って、65階層の化け物を倒し…そうだ恵理…。恵理とはじめはどこだ?」
その質問に鈴が答える
「佑君、あのね…恵理とはじめ君は…その、、、」
「全く、せっかく起きたんだから恵理も呼んでくれよ。あいつのことだから訓練でもしてるんだろうに」
「「え…?」」
「訓練場にいるんだよね、ちょっと様子見てくるわ」
「佑輔君、やめて!香織にも言ったけど恵理とはじめ君は」
「…ろ」
「二人はもう…」
「やめろ」
「あの奈落に」
「やめろおおおおお!!!!!!!」
「っ!?」
「うおっ!?」
「ヒッ…」
突然の発狂に雫、遠藤、鈴は何かを目覚めさせてしまったかのような恐怖を覚えた
「嘘だ、でたらめだ!そこまでして俺を虐めたいのか!?そんなことして誰が楽しいんだ!鈴、雫、遠藤!てめぇら俺をそそのかして何企んでる!嘘つきは断じて許さない!嘘つきは許さない!嘘つきは!嘘つき……許さない…許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!!!」
ガッ!
「ぐっ!?」
「「龍太郎」君!」
たまたま医療室を訪ねた龍太郎は佑輔のおかしな挙動を目にし腹に重い一撃を食らわすと佑輔は気を失った。
恵理を亡くした佑輔の皆に対する恨みは想像よりも重く、誰かが止めてくれなければ取り返しのつかないことになることは皆がわかっていることだった。ただそれをする勇気が彼らにはなく、たまたま来てくれた龍太郎にはただただ感謝をした。
「で、どうする?」
やることをやったと少し満足になると、龍太郎は次に何をすればいいのか皆に聞く。
そこへ今日の訓練を終わらせた光輝がやって来た。
「雫か、二人の調子はどうだい?」
「二人共目覚めはしたわ。ただあの二人を亡くした動揺が大きくてまた寝てしまったわ」
「中村は恵理の兄だし、二人は特に仲が良かったからな。香織も優しいからクラスメートの死というのには耐え難いものがあるんだろうな。その気持ちはよく分かるし、二人だけじゃなくて皆も同じ思いなんだ。」
「えぇ、そうね。他の子には少し精神的な疲れを癒やすために少し休ませる必要が」
「だからこの辛さを皆で乗り越えて、二人の死を無駄にせず魔神族と戦わないと」
「「「「え…?」」」」
衝撃だった。幸せの時には共に笑い、悲しい時は共に涙を流す。
「親友を亡くして辛いのは僕らだけじゃなくてこの世界の人達も同じだ。だから魔神族によって人々が蹂躙されるのを見過ごすわけにはいけないんだ!そうだろ?」
「光輝、身近な人が、大切なクラスメートが亡くなったのよ?何でそんな勢い良く啖呵を切れるわけ?私達はメルド団長のような兵士でもないしこの世界の住人でもない!」
「だが雫!イシュタルさんも言ってたじゃないか!救えるのはもう僕たち神の使徒だけだって。だからその気持ちに答えるのは俺たちの義務だと思う。確かに南雲や恵理のことは残念だった。だからこそ命の大切さを本当の意味で理解できるんじゃないか?」
「光輝にはできて当たり前かもしれないけど私達にはできないのよ。友達が死んだら悲しい。それも身近であればあるほど辛くなる。皆が皆光輝みたいな強靭な精神を持っているとは思わないでちょうだい!」
「雫…」
「そうだぜ光輝!俺も光輝や雫が死んだら悲しい。なあこれは普通のことだろ?たしかに人によってはその悲しさを力に変えることもできる奴はいるけどよ、それでも立ち直れず立ち止まっちまう奴だっているんだ。そいつ等のためにも一回立ち止まって後ろを見たっていいんじゃないんか?」
「龍太郎…二人がそう言うなら…」
そう自分の中で整理がつかないまま親友の意見によりようやく折れたのだった。
そうして雫達は光輝、龍太郎を加えた5人は例のグ◯フィンドールの談話室に場所を移し、これからのことを話すことにした。
光輝が意見を飲んだことを踏まえて遠藤が話を切り出す
「天之河君も納得したことだし、次はどうする?」
「鈴もそこ気になる!南雲君たちの件でショックを受ける子もいるから、迷宮での実践訓練は積極的な人だけでいいと思う!にんい…?ってやつ?」
「それについては鈴に賛成ね。士気が下がっている中戦争に参加しても死ぬだけだもの。南雲君は戦えないながらも、様々な文献を読み漁り、ここの世界の勉強を惜しまなかったわ。まず私達はこの世界の勉強を1からやり直すべきね。」
「でもそれは南雲が大事な訓練をサボる言い訳に決まって」
「勝手に決めつけないで!南雲君はどれだけ努力しても自分の能力が全く上がらなかったのを本当に悔しがってた。だから、自分にできることはないか探してようやくたどり着いたのが図書館だったってだけ。それに、佑輔君も、これについては賛同してたわ。彼いわく、賢人は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ。らしいわよ?」
「??鈴馬鹿だから良くわかんない」
「要するに、優秀な人は本を読むことで過去の人物の経験を学び、馬鹿は自分の経験からしか学ぶことができないってことよ。」
「ほえ〜。どうやって戦うかとかそういう感じの本ってあるかな〜」
「どの世界にも兵法といった戦略に必要な概念を記録した文献があるものよ。それだけじゃなくて、地理や歴史を知ることで環境に合った戦い方っていうものがあるの。それを学ばずただがむしゃらに力を振るっても、防戦一方になってただ敗れるだけよ。」
「力が強いってだけじゃ駄目っつーわけか。面白くなってきやがった!」
「それは雫が考えたことなのか?流石雫だな」
「いいえ光輝、これも佑輔君が言っていたことよ」
「なっ!?またあいつが!」
「光輝。彼は学校の勉強はほとんど勉強しないし学力は人並みだからあなたは見向きもしていなかったでしょうけど、科学や薬学、経済学を独学で大学レベルまで押し上げてる天才なの。本当だったら学年順位で一番になって皆から慕われる存在になったっていいはずなのに、何故かそれをしない。なぜだかわかる?」
「…今するべきことから逃げてるだけじゃないのか?」
「彼にはね、夢があるの。それは彼自身のルーツを知りたいってことにも繋がってくるけど、彼のご先祖には幕末志士がいるみたいで、その人は蘭学*1をいくつも学び、あの勝海舟と共に当時の最先端を学び、研究していたらしいの。そんな人がご先祖にいたら中学で学ぶ一般常識よりも最先端の学問を学びたくなるっていうのは自然でしょ?確かに今の勉強も大切よ?そのせいで彼は理解に時間がかかって苦労してたみたいだけど。とにかく、彼は確かな目標があって勉強しているの。でもそれを勉強するのに忙しくて学校の勉強を疎かにしてしまってるってだけ。これって本来の勉強のあり方だとは思わない?」
「そうか。最先端の学問に常に触れていたからこそ勉強の必要性を誰よりも理解していたのか。」
「おいおい、あいつってそんな化け物だったのかよ…」
「( ゚д゚)ハッ!!?ゆう君ってば実はよ◯実の綾□路君だった!?」
「鈴の言ってることは良くわからないけど、彼は本当は誰よりもすごい人なんだから!」
「そしてこのドヤ顔である」
「はいそこの鈴、うるさい」
「フヒヒ、サーセン」
鈴はこんなときでもおっさんスタイルを忘れない。
すると龍太郎がふと何か気づいたようで。
「てかよぉ、なんか今の雫、なんでそんなにウキウキしてるんだ?」
「龍太郎くん!それ鈴も思ってた。あれ?もしかして雫…ゆう君のことが…?」
「なわけあるか」
「どうだか!鈴には恋愛センサーがビンビンしてるのだよ雫君!」
「ごほん!とにかく、その佑輔君と香織がいないから、彼らの意識が戻るまで、午前中は図書館にこもって勉強。午後は訓練ってことでいいわね?わかった?」
「うん!了解」
「分かった〜」
「おうよ!」
これからの予定について指示を出した雫に対して3人が返事をするも、一人だけ返事をできなかった。
「……南雲……中村!!」
頬に当たる暖炉の温かさが段々と消えていくのを光輝は気づかない。