かなーりショッキングになったので、はじめ推し、恵理推しには辛いです。
それでもいいよって人だけどうぞ!
よろしくお願いします!
オルクス大迷宮
奈落の底(緑の大坑道第93層)
ザァーと水の流れる音がする。
冷たい微風が頬を撫で、冷え切った体が身震いした。頬に当たる硬い感触と下半身の刺すような冷たい感触に「うっ」と呻き声を上げてはじめは目を覚ました。
ボーとする頭、ズキズキと痛む全身に眉根を寄せながら両腕に力を入れて上体を起こす。
「痛っ~、ここは……僕は確か……」
ふらつく頭を片手で押さえながら、記憶を辿りつつ辺りを見回す。
周りは薄暗いが緑光石の発光のおかげで何も見えないほどではない。視線の先には幅五メートル程の川があり、はじめの下半身が浸かっていた。上半身が、突き出た川辺の岩に引っかかって乗り上げたようだ。
「そうだ……確か、橋が壊れて落ちたんだ。……それで……」
確か、橋から落ちたとき、もう一人一緒に落ちたような…
「あ…恵理さん!恵理さんは一体どこに…」
「はじめくん!やっと起きたんだね!良かった~」
どうやら近くにいたみたいだ。
状況を把握するために少し周りを探索していたようだ。
こんな大変な目に遭ってるのに冷静ですごいな。
「恵理さん、良かった近くにいたみたいで…」
「一緒に落ちたのが不幸中の幸いだったね」
はじめが奈落に落ちていながら助かったのは全くの幸運だった。
落下途中の崖の壁に穴があいており、そこから鉄砲水の如く水が噴き出していたのだ。ちょっとした滝である。そのような滝が無数にあり、2人は何度もその滝に吹き飛ばされながら次第に壁際に押しやられ、最終的に壁からせり出ていた横穴からウォータースライダーの如く流されたのである。とてつもない奇跡だ。
もっとも、横穴に吹き飛ばされた時、体を強打し意識を飛ばしていたのでハジメ自身は、その身に起きた奇跡を理解していないが。
「よく思い出せないけど、とにかく、助かったんだな。……はっくしゅん! ざ、寒い」
「あ、服脱いだほうがいいかも!このままだと低体温症になっちゃうよ」
「そうだね、あ…でも…」
「大丈夫、お兄ちゃんので見慣れてるし!( ̄ー ̄)bグッ!」
「あはは、そういうことじゃないんだけど…」
地下水という低温の水にずっと浸かっていた為に、すっかり体が冷えてしまっている。恵理に言われ、ガクガクと震えながら服を脱ぎ、絞っていく。
「そういえば恵理さんは服大丈夫なの?」
「恵理でいーよ!私ははじめ君が起きる前に一通り乾かしちゃったから!ほら!」
「おぉ〜…あれ、でもどうやってそんな早く乾かせたの?」
「これよ」ボッ
待ってましたと言わんばかりに、恵理は魔法で火を起こした。
「魔法ってすこぶる便利だなぁ」
「ここに落ちて一層実感湧くよ~。あ、脱いじゃったら火で乾かすから、そこに置いて!」
「ありがとう」
奈落の奥底で暖を取りながら、なるべく暗くならないような話をして少しの間2人の時間を楽しんだ。
それからというもの、奈落の底に落ちたはじめと恵理は、これからの方針を2人で話し合った。
状況を冷静に分析し、地上に戻るよりも下層へ降りた方が生存の可能性が高く、未知のメリットも得られると考えた。
迷いを振り払って降下を選択した2人は、光で照らしても先が見えないほどの暗黒の中へと消えてゆくのだった。
***
「キュイイイイイイイ!!!!」
束の間、思いもよらぬ危機が襲いかかる。
「な、なに??」
「魔物かな、ここが迷宮内だったのすっかり忘れてた…」
その恵理の疑問にはじめはここか迷宮内であることを再認識し、2人戦闘態勢を取る。
突然、二人の目の前に何かが現れた。現れたのは、異様に発達した後脚を持つウサギのような魔物だった。
その姿は一見可愛らしく見えなくもないが、異様に発達した脚部は恐ろしい破壊力を秘めていた。
まるで弾丸のような速さで接近し、二人を猛烈な蹴りで吹き飛ばした。
はじめと恵理は一瞬で地面に叩きつけられ、全身に激痛が走る。
この威力…
こいつは…
こいつのレベルは、間違いなく65階層のベヒモスを凌駕している。
痛みのレベルが違いすぎる!!!
どうしたら…
一体どうしたら…
痛みと混乱の中で、彼らはこの危険な状況から逃れるための対抗錯誤を練る
しかし、戦闘の準備を整える間もなく、新たな脅威が姿を現した。
「きゅいいいいいい!?ギシャァァァァ!?」
ガリッ!!
ボキッ!!
グシャ!!
…クチャクチャクチャ…
「なん…だよ…。なんだよ、あれ……」
「はじめ君…僕達…どうすれば………」
巨大な影がウサギのような魔物を覆い隠し、次の瞬間にはその魔物を捕食していた。
「あんなの、勝てるわけ…が…」
それは熊のような姿をした巨大な魔物であり、その凶暴さと力強さは、二人にさらなる絶望をもたらした。
「うわあぁあぁ!!!」
「きゃぁぁぁぁ!!!」
パニックに陥る二人の目の前で、熊の魔物は信じられないほどのスピードで動き、はじめの懐に潜り込んで彼の左腕に鋭い牙を食い込ませた。
ブチッ
「…え?」
音がした方を見ると、そこにあるはずのものは既になく、代わりに何かの液体が噴出していた。
それが自分の血であることにすぐには気づかなかった。
「ぐあっ…あ…ああっ!!!!?」
骨が砕ける音とともに、はじめの左腕は一瞬で食いちぎられた。
信じられない痛みに襲われ、はじめは声を出そうとしたが、喉からはかすれた音しか出なかった。
「そんな!はじめ君!!!今助け…きゃあっ!?」
その間に、恵理もまた熊の魔物に捕らえらた。巨大な爪で足を掴まれ、宙ぶらりんになる。
ぶら下がった恵理は、必死に抵抗しようとする。
しかしその巨大な力には抗えない。
スカートがめくれ、パンツが丸見えになっていたが、そんなの気にしている場合じゃない。
恵理の頭にはただ生き残ることだけしか考えられなかった。
混乱の中で、恵理は何とか訓練で習得した光魔法「光刃」を発動させた。
しかし、体勢が悪く狙いは定まらず、光刃は熊の魔物の肩をかすめることはできた。
「グゥルアアア!?」
「よし!このまま押し込めば!!」
だが、このわずかな攻撃は、熊の魔物の怒りを爆発させるには十分だった。
「グゥルアアア!!」
バキバキ
「あああああああああ!!!!!!」
グリュグリュグリユ
バキバキ
「あ………あああ……あぁっ!!」
ブチッ
「〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
激怒した熊の魔物は、恵理の足をさらに強く握り締めると、その力で反対側の膝関節を無理やり逆方向にへし折った。
痛みに悲鳴を上げる間もなく、熊の魔物はそのまま恵理の体を何度もねじり、足を完全にねじ切った。
恵理の足からは血が滴り落ち、痛みに気を失いそうになりなる。
それでも、必死に意識を保とうとするが、視界が徐々に暗くなっていく。
絶望的な状況に追い込まれた2人は、この奈落の底で死を覚悟しながらも、生き残るためのわずかな希望にすがりつこうとしていた。
しかし、その希望さえも、この無慈悲な世界の中で徐々に打ち砕かれていくのだった。
「お兄…ちゃん……助け……t…………」
恵理ちゃん…ごめん…
僕が泣きそうになってしまった…
もうすぐ助けに行くからね!