17話 : 皐月の桜は卯月に開く
目の前にあるのは酒である。
そして彩の良い肴である。
古今東西で祝いの席の定番といえば凡そこれだろうが、居酒屋の座敷に座る彼ら4人の前に並んだそれらは中々に豪勢なものだった。
有名な銘柄の酒がどどんとテーブルに並び、いくつもの皿に盛られた料理から漂う香りはどれも只事ではない酒との相性を予感させる。
前述の通りこれは祝いの席である。
とあるウマ娘の劇的な勝利と同僚たちの躍進を祝う、実にめでたい酒の席である。
「・・・・・・えー、それでは僭越ながら自分が音頭を取らせて頂きます」
酒と料理が出揃ったタイミングで、4人の内の1人がこほん、と1つ咳払いをしてから慇懃な口調で切り出した。
他の3人の注目が集まったのを確認してから彼はグラスを3人の前に掲げ、用意していた祝辞を述べる。
「我が担当ウマ娘シンザンのスプリング
それに応える者は誰もいない。乾杯の声が返ってくることも、グラスとグラスがぶつかる音も何もない。
ただ他の客から聞こえて来る笑い声や喧騒が彼らを虚しく包んでいた。
3人はジトッとした半目の視線で空回りしている彼を睨みつつ、口を揃えて同じ内容の文句を垂れる。
「「「お前(貴方)の皺寄せを食らってるんだが(だけど)?」」」
「正直すまんかったと思っている」
同僚の友人たちに率直に頭を下げるトレーナー。
誰にとっても良い報せによる集まりであるはずのささやかな宴会は、びっくりするほどの居心地の悪さから始まった。
トレーナーによるチームの発足。
それは複数のウマ娘を担当してもトレーニングの質を落とさないだろうと見込まれた者にのみ許可が降りる、謂わば『敏腕』という学園理事長からのお墨付きだ。
チームを立ち上げれば未所属の有望株に対して顔が売れる・大掛かりな施設を優先的に予約できるようになる・給金が相応に増えるなど公私共に恩恵が増えるし、自分の経歴にも箔がつく。
もちろん仕事の量も大きく増えるが、それらを理由に『トレーナー』という職に就く者として自分のチームを発足させることを夢見る者も多い。
じゃあ何で彼らが渋い顔をしているのかというと、そのチームの発足が自分の意思ではなく、このトレーナーの行動の結末が被弾した結果である為だ。
賭けに勝利してシンザンとの二人三脚の続行を勝ち取った彼だが、秋川さつきの思惑はそこでは止まらなかった。
彼女はあの日の翌日にはここにいる3人・・・・・・古賀や桐生院らを呼び出して、
そもそもにおいてトレセン学園は慢性的なトレーナー不足。『彼に断られた以上、君たちにやってもらわないと行き場のない生徒たちが溢れてしまう』という理事長の言い分は理解できる。
できるのだがシンザンのトレーナーが突っぱねたお鉢を受け取るという立ち位置は気に食わないし、何より担当ウマ娘がこれから本格的にクラシック戦線に挑もうという時期に普段のペースが乱れかねない状況になるのは望ましくない。
それを理由に断ろうとした瞬間に、秋川さつきが
『そうそう、彼は断りはすれど出来ないとは言わなかったよ』
などと煽ったものだからさあ大変、ライバル視している者と比較され意地でも断れなくなった彼らは無事に各々の新チームを発足する運びとなった。
人選の基準は『チームを組むに値する実力』かつ『彼に対抗意識を持つ』者。
秋川さつきはシンザンのトレーナーという逃した本命を利用して、他の優秀な候補者達を思う通りに動かしたのである。
「そりゃ必要なのは分かってたからいつかはと思ってはいたけどな。お前が駄目だったから俺達みたいな流れが気に食わん」
「というかシンザンとの契約は続行されたのだから貴方もチームを組めばよかったでしょう。いつまでマンツーマン指導を続ける気なのよ」
「ついでに自分の担当の成績まで祝辞に突っ込みやがったのも腹立ちますね」
「祝いの席でここまで責められる事あるか???」
「とはいえ、だ。ウメノチカラが負けたのは業腹だが、あの女王の鼻を明かすとはやるじゃないか」
皮肉そうに頰肉を曲げて笑いトレーナーを称賛した古賀は、そこから打って変わって難しい顔で唸りつつ髭の残る顎を撫でる。
「今回の件で改めて感じたが、やはり彼女の采配は人情に欠ける。トップとして有能には違いないが、俺は好かんな」
「素質と実力に見合った相手を。理事長の方針に間違いは無いんでしょうけど、
「日聖さんが助け舟を出してくれただけだよ。後はシンザンが勝っただけ。俺は何もしていない」
「何もしてねェ奴が勝たせられる程甘いレースじゃねェでしょうに。相変わらず嫌味な位に謙虚ですね」
胡散臭そうな物言いをしたのは古賀でも桐生院でもない、髪を茶に染めたピアスの男だった。そしてこの4人の中では1番若い。
頬杖をついて面白くなさそうな顔をしている彼の顔を覗き見ながら、古賀は面白そうに相好を崩す。
「
「組まされただけですよ。そりゃ認められるのは嫌じゃないし、やるからにはしっかりやりますけど。やっぱこういうのは自分の意思で立ち上げたいです」
「先輩先輩って後ろを着いて来てたお前がなあ」
「古賀さん!!!」
「ともあれ、よ」
意地の悪い先輩に揶揄われている後輩を助けるように桐生院は話を切り替えた。
「やるべき事は増えるけれど、まずは今年の選抜レースに目を光らせましょう。より身近に親しい競争相手が出来ればウマ娘たちの闘争心も上がるわ。変わった環境を活かせるかは私達次第よ」
「そうだな。環境を活かすと言えば、皆はどんな方針でチームを作るんだ? 元々の担当ウマ娘もいるし、今やってる方針に合わせると思うけど」
「・・・・・・そうね。《リギル》は統率を主眼に置いたチームにするわ。カネケヤキにもそれが合っているでしょう。状態の把握も故障の予防も、それがあってこそ行えるものだから」
「モットーは自由に走ること! それが俺のチーム《スピカ》だ。好きな走りがあってこそ『それで勝ちたい』って気持ちが生まれるってもんだろ?」
「そうですね・・・・・・《カノープス》もまァ、のびのびやれるチームに出来たらと思いますよ。うちのニセイはハードトレーニングが好きですけど、そういう奴もそうじゃない奴も、自分の目標が掴めるように」
チームの結成は確かに上司の命令だっただろう。
しかし彼らは既にこれからの展望を描いている。
夢に燃えるウマ娘を支えて同じ時間を駆け抜ける事が、彼らが単純に好きなのだ。
彼らはチームという環境を利用して、さらにウマ娘たちを強く育て上げるだろう。
乾杯の音頭の後だというのに目の前の酒と料理に手を付けず鍛錬の自由と規律の是非を論じ始めた同僚たちを見て、トレーナーはそう確信した。
─────この2年間、気を抜けないな。
内心でそのプレッシャーを楽しく感じているのを自覚しつつ、トレーナーは改めて咳払いをした。
料理も酒も出された内に味わうべきだろう。
議論を交わすのは良い事だが今は祝い楽しむべき席であることを思い出させるべく、トレーナーは改めてグラスを掲げた。
「えー、それでは改めて全チームの躍進と・・・・・・それら全てを薙ぎ払う予定のシンザンに乾杯!!」
「「この野郎!!!」」
◆
無敗のままでスプリングステークスを勝利。
自身の強さを遺憾無く見せつけ学園に凱旋したシンザンは大きな注目を集めた。
元よりものぐさという悪評を持ちながら連勝を保っていたためクラスメイトから特異な目を向けられてはいたが、今回の勝利で一気に『本物』であるという評価が広まったのだ。
そして「まああたしだからね」とバチバチに調子こいたコメントで学園紙の一面を飾った彼女は、来月の皐月賞に向けて1番の注目株になったのである。
「だからさ、調子こいてる訳じゃないんだよ。ただ『空は青いよね』とか『夏は暑いよね』とか、そういったレベルの話をあたしはしてるんだよ。そういう当たり前の話を」
「なあ、へし折っていいかその鼻っ柱を。今ここで。物理的に」
「落ち着いて下さい」
昼休み、食堂。
味噌汁を啜りながらそうのたまったシンザンに握った箸を折りかけているウメノチカラをバリモスニセイが押し留めた。
とはいえ自分を負かした相手がそれを目の前で「当たり前」などと言えば競技者として頭に血が昇るのは当然だろう。額に青筋を浮かべていたウメノチカラは、未だ冷めやらぬ悔しさを外に逃すように息を長く吐き出した。
「・・・・・・分かっている。あの段階での私はシンザンに及ばなかった、それが現実だ。その台詞も差し支えない位の強さがあった事は認めざるを得ん」
「自分は観ている立場でしたが、あの走りは圧巻でしたね。全員が歯を食い縛る中でただ1人悠々としていました。あのフィジカルは自信の裏打ちには充分でしょう」
「ふふふ。では私は強力なライバルを回避できてラッキーなのかもしれませんね?」
そう言ってのほほんと微笑んだのはカネケヤキだ。
自分と当たるのを回避できるという意味が分からず首を傾げていたシンザンだが、その言葉の根拠となる自分と彼女の違いにそこで思い当たる。
「あ、そっか。ケヤキはティアラ路線だったね」
「ええ。この中では1人だけ違う道ですね。リセイちゃんも王道路線ですから」
「王道路線は『強さ』、ティアラ路線は『華やかさ』というイメージがありますね。自分は強さの証明としてこの路線に進みましたが、ケヤキさんはどうしてティアラ路線に・・・・・・ああいや、ティアラ路線を軽視している訳ではなく!」
「大丈夫です、誰もそう捉えてはいませんよ。そうですね、一言で言えば・・・・・・『憧れ』、でしょうか」
「憧れ?」
「はい。私の祖母はフランスでレースを走っていたウマ娘なんです。祖母とは幼い頃に話した記憶があるだけですが───何でも、
「「がっ、凱旋門賞を!?!?」」
ウメノチカラとバリモスニセイが思わず叫んで身を乗り出した。
凱旋門賞─────世界のレースの中でも最高峰とされるレースの中の1つ。レースを走るウマ娘達の憧れ。それを獲った者がごく近い者の身内にいるのだ、仰天するに決まっている。
そんな彼女らの反応に親しみを感じるのか、カネケヤキはうんうんと頷きながら話を続けた。
「物心ついた時にふと調べてみたら他にも大きなレースをいくつも勝ってた本当に凄いウマ娘だったみたいで、私も凄く驚いたんです。
元々レースの世界を夢見ていたのですが、その夢が明確に目標に変わったのはその時でした」
目を閉じて胸に手を当てる。
いま口にしている事は、その奥に秘めている大切なものである事を自らに確認させるかのように。
「祖母が走っていたフランス、凱旋門の聳えるパリは『花の都』と呼ばれます。だから私は『華やかである』と言われるティアラ路線を選びました。
そこで大きな結果を残せば、海を越えて祖母に届くかもしれないから。
─────あなたに憧れた孫娘が、こんなにも立派になりました。と」
「・・・・・・学園の食堂でこんな空気になるかね」
「「シンザン(さん)ッ!!!」」
「流石に揺らいではくれませんねえ」
全員が押し黙る中でぼそりと呟いたシンザンにカネケヤキ以外の全員が噛み付いた。当のカネケヤキは頬に手を当てて優雅な所作で微笑んでいる。
空気が読めなかったのか意図的に読まなかったのか、カネケヤキの側に傾きかけた空気をリセットしたシンザンは、さっきまでとは打って変わって真剣な眼差しをカネケヤキに向ける。
「確かにどれだけ大切な理由かは伝わったけど、あたしを回避できてラッキーなんて笑ってはいられないよ。ウメもニセイもここにいる全員、どう転ぼうが
「ええ、言われるまでもありません。そして言うまでもなく─────私はここにいる誰よりも
火花が散った。
シンザンとカネケヤキだけではない、ウメノチカラとバリモスニセイの眼光も4人の座る中間地点で衝突している。
俄に殺気立つ食堂の一角、異変を察知してトーンダウンしていく周囲の雑談にこれ以上は昼食時に相応しくないと感じてか、今度はカネケヤキが場の空気を変えた。
「そういえば。そろそろですね、『勝負服』」
「ああ、確かに。あちらの会社とデザイン案のやり取りはしたが、やはり現物として仕上がってるのを早く見てみたいな」
「そう考えると少し浮き足立ってしまいますね。自分も早くそれを纏ってレースを走りたいものです」
「本当に楽しみだね、あたし舞台衣装好きじゃないから・・・・・・あ、そうだ。そろそろと言えばさ。今日のトレーニング前に皆ちょっと顔貸してよ」
「? あ、そうか。完成したんだな」
少し考えた後で察しがついたウメノチカラに、シンザンはぐっと親指を立てた。
トレーナーが自分専用の蹄鉄を自作している。
その話はシンザンが幾度となく話題に出していたためウメノチカラ達も知っていた。
トレーナーが担当ウマ娘の蹄鉄を作るという聞いたこともない事例に大層驚いた彼女らは完成したら是非見せてほしいとシンザンに頼み、彼女もこれを快諾。
シンザンにとってはおよそ2ヶ月という長期を費やして作られた、トレーナーからの丹精込めた贈り物ということになる。
とはいえ、受け取るところから見せられるとは流石に思っていなかった。
「何故受け取る場所が駐車場なんだ?」
「さあ? トレーナーさんがここで待てって」
この後のトレーニングに備え運動着に着替えた4人は、シンザンのトレーナーが指定した駐車場で待機していた。
蹄鉄を受け取るにしては妙な場所の指定だが、シンザンが何かを疑問に思っている様子はない。
それどころかぴこぴこと耳は揺れ、尾は左右に振られている。
全て無意識だろう。
心の動きを素直に表に出しているシンザンのそれらを見て、3人は生暖かい眼差しで彼女を眺めていた。
「(すごく自慢したかったんでしょうねえ)」
「(だな)」
「(ですね)」
「おーい。待たせたな」
そしてトレーナーは現れた。
なぜかクレーンの着いた軽トラに乗っている彼はそのまま駐車場の空きスペースに駐車、降りてきて何故かそこにいるウメノチカラたちに首を傾げた。
「ん? ウメノチカラにカネケヤキ、それにバリモスニセイじゃないか。どうしてここに?」
「シンザンに集められました。あなたが作った蹄鉄を見せてやろうと」
「そうか、そんなに大したものじゃないけど・・・・・・シンザン。蹄鉄は荷台に積んであるから降ろしてくれないか。クレーンを使うのも手間だ」
「え? うん・・・・・・?」
蹄鉄とクレーンという単語が繋がらず、とりあえず言われるまま荷台に上がったシンザンの目の前にあったのは、頑丈なパレットに結束された何かだった。
これは何だ、少なくとも蹄鉄じゃないぞと思いながらもとりあえず荷台から『それ』を降ろす。
ウマ娘の力を以てしてもかなり重いと感じる重量を持つ謎の代物だった。
「トレーナーさん、これなに?」
「
疑問が解消されないままシンザンは結束を引き千切って梱包を解き、布と金属がくっついて出来ているらしいそれの全貌を明らかにする。
頑丈な革や布を強固に縫製して作られたそれに、いくつもの金属製のパーツで構成されている。
蹄鉄じゃないのかと困惑し、引っくり返して靴底を見れば、
補強の役割を果たしているのか『Ω』の形の真ん中のスペースにはT字型のブリッジが張られ、爪先の部分は金属製のカバーに覆われている。
そして
疑問符の洪水に脳内を押し流されているシンザンに、トレーナーが意気揚々と解説を始めた。
「まず蹄鉄の内側にブリッジが張られてるだろ? それは補強の為だ。蹄鉄自体も素材を選び抜き分厚くした事で衝撃や摩耗にも強い。
そして爪先を金属でカバーすることで最も力のかかる部分を頑強に保護してある。関節の可動域との兼ね合いには本当に気を使ったぞ。
さらにブーツの部分もあちこちの会社を当たって特別に頑丈な革を─────」
「え、トレーナーさんトレーナーさん。これってこのブーツそのものを含めて1つの蹄鉄ってこと??」
「そういう事だ。早速履いて歩いてみてくれ」
いそいそと急かしてくるトレーナーに従い、シンザンは未だ心の整理がつかないままその
なるほど足や
ただ、重い。
本っ当に、重い。
脚力自慢の自分でも重い。
よいしょ、と1歩前に歩いてみると、
「違和感はあるか?」
「重いんだけど」
「重いだけなら問題ないな」
「これさ。蹄鉄と爪先の部分は分かるんだけどこれ、
「それは単なる重りだ」
「は???」
「シンザン。俺はずっと考えていたんだ。トレーニングで走りたがらないお前を、どうすれば上手く鍛えられるのか」
ぽかんと口を開けて絶句するシンザンに、トレーナーはしみじみと語り始める。
「不真面目なトレーニングで勝てるほどレースは甘くない。ご褒美で釣ってもその場凌ぎにしかならない。根本的な解決策を俺はずっと考えていた」
シンザンの耳と尻尾の動きが止まった。
「あの事故が起きたのはそんな時だ。脚力に道具がついていけないと判明した時、ただ蹄鉄が壊れただけならこの考えには至らなかった。靴も一緒に壊れたのを見て、まず蹄鉄と靴を一体化させる方法を思い付いたんだ」
シンザンの耳がぺたりと倒れた。
「そこからは・・・・・・ハハ・・・・・・天啓という他ないな。蹄鉄と靴を合体させて、やはり重量が
─────いっそこれを逆に滅茶苦茶に重たくして、ウェイトトレーニングを兼ねさせれば全てが片付くんじゃないか? ってさ」
シンザンが尻尾を脚の間に挟んだ。
「これが『答え』だ。特別に頑丈に使った蹄鉄と靴を一体化させる事で全体的な強度を底上げし、さらに重量を限界まで度外視する事で足腰の鍛錬も同時に行う正に一石二鳥の『最適解』。
足の筋力を測ったのは元々重くなる事が予想されたからだけど、ここまで役に立つデータになるとは予想してなかったな」
滔々と語るトレーナーに言葉を失うシンザン。
何歩か後ろに下がりながらその様子を見ていたウメノチカラにカネケヤキ、バリモスニセイはそこで3人同時に理解した。
自分達はウマ娘とトレーナーとの心温まるやり取りではなく、友達が処刑される瞬間を目の当たりにしているのだと。
胸を満たす感情の落差は如何程のものだろう。
それでも何かを訴えようと口をぱくぱくさせているシンザンに、トレーナーは春風のような爽やかさで言い切った。
「よし。じゃあ今日からそれを履いて、早速トレーニングを始めようか」
─────ウメぇ。ウメぇ。あいつオニだあ。
その日の晩。
バッキバキになった全身をうつ伏せにベッドに横たえてめそめそと訴えるシンザンを、ウメノチカラは哀れみの眼差しで見つめていた。