DQ11短編集   作:風亜

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 ※ネタバレあり。過去編の復興後のイシの村での神の岩の頂上でのイベントに手を加えた話。主ベロ。主人公の名前はオリジナル。


ベロニカとのひと時

 復興したイシの村で一緒に暮らし始めたジュイネとベロニカは、神の岩の頂上を訪れていた。

 

 

「ここが神の岩の頂上ね。絶景だわ⋯⋯!」

 

「ふふ、そうでしょう? 一度ベロニカと二人きりで来てみたかったんだ」

 

「ふーん、そう。⋯⋯ねぇジュイネ、あたしを選んで良かったのよね?」

 

「え? うーん⋯⋯」

 

「何でそこで考え出すのよ、あんたが言い出したんでしょっ!? 復興したイシの村で、一緒に暮らさないかって!」

 

「そうだっけ? ベロニカが僕と一緒に暮らしたいって言ったんじゃ」

 

「はぁ?! 言ってないわよそんな事!! んもう知らないわ、一人で神の岩降りてやるんだからっ」

 

 憤慨したベロニカが踵を返して下山しようとするので、ジュイネは慌てて引き止める。

 

 

「待って待って、冗談だから! ⋯⋯ベロニカを選んで良かったに決まってるじゃないか」

 

「あっそ! それでいいのよっ。全く⋯⋯あんたもあたしに冗談言うようになったのね。あんなに頼りなくてぼーっとしてたのに⋯⋯今も大体ぼーっとしてるけど」

 

「そんなに、頼りなかったかな⋯⋯」

 

「そうねぇ⋯⋯ひと目見た時からあんたが勇者なのは気づいてたけど、一緒に旅を始めた頃なんて何なのこのひょろ長い貧弱男、ほんとにこいつは勇者の力なんて持ってるのっ?て、疑ったものよ」

 

 その当時を懐かしみつつも、手厳しい事を言い出すベロニカに面目が立たないジュイネ。

 

 

「はは⋯⋯すごい言われよう⋯⋯」

 

「大体あんた、ここぞって時に頼りないのよ! あたしとセーニャ、みんなで守らないとあんたってすぐ倒れそうになるんだもの。⋯⋯というか、実際何度倒れたかしらねぇ」

 

「⋯⋯ごめん」

 

 思い当たる節が幾つもあるのと、そのせいで余りにかけがえのないものを失ってしまった事を思い返しジュイネは俯く。⋯⋯その落ち込んだ様子に焦ったベロニカは、言い過ぎたと感じ褒め言葉を掛けようと試みる。

 

 

「えっ、ちょっと、真に受けなくていいのよ? 今じゃその、あたし達がジュイネに頼る事の方が多くなったし、勇者として随分強くなった⋯⋯と、思うわよ?」

 

「そうだと、いいんだけど」

 

「あたしがそう言うんだからそうなのっ! もう、何か調子狂うわね⋯⋯。いい加減自信持ちなさいよ、このベロニカ様が直々にあんたを褒めてやってるんだからっ」

 

「ふふ、そっか⋯⋯ありがとう、ベロニカ」

 

 柔らかな笑みを向けられ、ベロニカは少し恥ずかしくなり一度顔を背けるものの、次の瞬間には心配そうな表情をジュイネに向ける。

 

 

「ジュイネ⋯⋯、あんた疲れてるんじゃない?」

 

「え、そんなことないよ。邪神だってまだ倒してないし、まだまだ鍛えなきゃならないし、疲れてなんていられないよ」

 

「あんたねぇ⋯⋯そういうのを疲労と言うのよ。今ここで、休んで行きなさい」

 

 ベロニカの言葉に、きょとんとするジュイネ。

 

 

「え? ここで??」

 

「そうよ。天気も良いし空気も澄んでるし、絶景スポットでしょ? これほど骨休めにぴったりな場所ないじゃない」

 

「それは、そうだけど」

 

「⋯⋯じれったいわねぇ、あたしが休めって言ったら休むのよ! ───ほらっ」

 

「うわっ、急に引っ張らないで⋯⋯?!」

 

 片手を強くベロニカに引かれ、ジュイネはドサッと仰向けに倒れる。

 

 

「ベ、ベロニカ、休ませ方が大胆だよ⋯⋯というか、やっぱり寝てられないよ。ここ、復興して平和になったように見えていつ飛行系の魔物とかが襲って来るとも限らないし」

 

「つべこべ言わない! 万が一魔物が襲って来てもあたしの強烈な呪文で返り討ちにしてやるから安心なさいっ」

 

 ジュイネが起き上がろうとするのを片手で制すベロニカ。

 

 

「あんたは確かに、頼りになるようにはなったけど⋯⋯心配なのよ」

 

「ベロニカ⋯⋯?」

 

「傍に居るはずなのに、どんどん遠くに行ってしまう気がして⋯⋯ジュイネが忽然と消えてしまいそうで、怖いのよ」

 

 その悲しげな表情が、ジュイネの胸を締め付ける。

 

 

「⋯⋯大丈夫だよ、僕はベロニカの傍から急に消えたりしないよ。───だから、ベロニカも約束してほしい。今度は僕の傍から消えたりしないって」

 

「え、今度はって───」

 

「ふう⋯⋯日差しもあったかいし風が心地良い。本当に、眠ってしまいそうだ」

 

 ベロニカの疑問をよそに、微笑んで目を閉じるジュイネ。

 

 

「そのまましばらく眠ればいいじゃない。───あたしがしっかり守っててあげるから。あんたは⋯⋯ぼーっとしてるように見えて頑張り屋だからね」

 

「⋯⋯出来れば、ベロニカの膝枕が良かったな」

 

「なっ、何言い出すのよ。まぁ確かにこの姿じゃあんたの頭も乗せてあげられないか⋯⋯また身体が成長するまではお預けねー」

 

「大人に一時的に戻れる、あのペンダントは?」

 

「あれ、ねぇ⋯⋯一度使うと結構魔力使うのよ。ここぞって時の連携に使う分にはもってこいなんだけどね」

 

「そっかぁ⋯⋯じゃあ無理強いは出来ないね」

 

 少し残念そうなジュイネに、ベロニカはふと呟くように問い掛ける。

 

 

「ねぇ⋯⋯ほんとにこれで、良かったの?」

 

「⋯⋯どういう、意味?」

 

「あんたがあたしの為に⋯⋯あたしの為だけじゃ、なかったんだろうけど⋯⋯あんたが、何かとても大きな事を成し遂げたのは、何となく分かるのよ」

 

「⋯⋯⋯⋯」

 

「けど、それって同時に失ったものも大きかったはずよね。あんたは⋯⋯納得してるの?」

 

「納得してなかったら、僕はここに居ないよ」

 

「そう⋯⋯。余計な事聞いたわね、ごめん」

 

「いいんだ。───失って尚芽生えたかけがえのない絆は、ちゃんと僕が覚えてるから」

 

「あんたって、ほんとに⋯⋯」

 

 ジュイネの言葉の意図する所はベロニカにはよく分からないが、自分の知らない出来事を独りで背負っているらしいジュイネをもどかしくも愛おしく想う。

 

 

「⋯⋯すう」

 

(あ、寝ちゃった⋯⋯って、元々あたしが休めって言ったんだっけ。───今はゆっくりお休みなさい、ジュイネ。あんたとはまだまだ、これから長い付き合いになるんだから⋯⋯ね)

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

(──あれ、いつの間にか寝てた。ん⋯⋯??)

 

 おもむろに目を覚ましたジュイネの目線の見上げる先に、子供姿ではない大人姿のベロニカが。

 

 

「ふふーん、どおジュイネ、お望み通りにしてあげたわよっ?」

 

「!! 大人⋯⋯の、ベロニカの、膝枕⋯⋯」

 

「何赤くなってるのよ、可愛いわね」

 

「え、でも、大丈夫⋯⋯? 魔力をかなり消費するんでしょ?」

 

「まぁね、けどあんたの為だしこれくらいはね」

 

「⋯⋯⋯⋯」

 

「そ、そんなにまじまじ見つめないでよ。恥ずかしいじゃない!」

 

 ぺちっとジュイネの額を片手ではたくベロニカ。

 

 

「あいたっ。⋯⋯子供のベロニカは可愛くて、大人のベロニカは綺麗だね」

 

「へっ? そ、そんな事言ったって、何も出ないんだからね!?」

 

 ジュイネの素直な言葉に、ベロニカは顔を真っ赤にする。

 

 

「ふふ、やっぱり大人ベロニカも可愛い」

 

「あぁもう、あんたあたしをおちょくってるでしょ───あっ」

 

「あ⋯⋯いたっ」

 

 ベロニカの身体が不意に縮んでいったと思うと、膝枕の支えを失ったジュイネは後頭部を軽く地面に打ちつける。

 

 

「あー、時間切れみたい⋯⋯やっぱり長くは持たないみたいね」

 

「けど膝枕してもらえて休めたし、満足だよ」

 

「そう、ならいいけどっ。⋯⋯じゃあそろそろ二人で家に戻ろうかしらね⋯⋯って、あら⋯⋯??」

 

「ベロニカ⋯⋯!」

 

 立ち上がった拍子にふらついたベロニカを、寝そべっていたジュイネがすぐ身体を起こしてベロニカを支えた。

 

 

「あっはは⋯⋯ごめん、ちょっとだけ疲れちゃったみたい」

 

「もしかして、僕が寝ている間中ずっと⋯⋯?」

 

「あんたの⋯⋯そのサラサラな髪、ずっと地面につけっぱなしじゃ可哀想だと思っただけよ」

 

「ベロニカ⋯⋯ありがとう。じゃあ今度は僕がベロニカを抱きかかえて行くよ」

 

 言いながらお姫様抱っこをするジュイネ。

 

 

「わっ、ちょっと急にそれは反則よ⋯⋯っ」

 

「疲れたでしょ、僕の腕の中で眠ってもいいんだよ」

 

 間近で微笑され、恥ずかしくも心地いい眠気に誘われるベロニカ。

 

 

「な、なにカッコつけてるんだか⋯⋯まぁいいわ、あんたの腕の中で眠ってあげる。───ありがとね、ジュイネ。これでもあんたには本当、感謝してるんだから、ね⋯⋯」

 

「僕も⋯⋯ベロニカには本当に感謝してる。ありがとう⋯⋯お休み、ベロニカ」

 

 

 

end

 

 

 

 

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