「各地から適切に復興の手助けをしてくれる者を集めただけで、これ程早くイシの村が復興するとはな⋯⋯これもお前の人望故か」
「仲間が居てくれるお陰だよ、僕一人じゃこんなにすぐ人手を集められなかったもの」
「仲間、か⋯⋯。俺はお前達に、お前に相応しい仲間として在れているのだろうか」
「相応しいも何もグレイグは僕らにとって、とっくに頼もしい仲間だよ」
「そうだといいのだが⋯⋯。何せ、お前達の正式な仲間となってまだ日が浅いからな。邪神討伐さえ終えれば仲間である必要も⋯⋯お前の盾である必要すらもすぐなくなるだろう」
「そんな寂しいこと言わないでよ、ネルセンの試練だってまだ残ってるのに⋯⋯」
「それも俺達ならばもうすぐ終えられるだろう。⋯⋯もっと早く、王やホメロスの異変に気付いていればお前達の仲間になるのも早かったのかもしれないが。実際は敵対期間が長く、お前を悪魔の子として追い掛け回していた身だからな」
「僕にとっては⋯⋯グレイグはちゃんと話せば分かってくれる人だと思ってたから、仲間になるのが遅いか早いかは気にならないけどな」
「そう言ってくれるのは有難いのだが、どうにもまだ仲間としての自信がなくてな⋯⋯」
「じゃあ⋯⋯イシの村で僕と二人で暮らしてみる?」
「⋯⋯⋯⋯いきなり話が飛び過ぎやしないか」
「一緒に暮らしてみたら、もっとお互いのこと分かるんじゃないかなぁと思って」
「邪神討伐後の事を言っているのだろうが⋯⋯俺などと暮らしても面白味無いのでは。まして母君のペルラ殿はどうするのだ?」
「母さんに相談したら、村長の家にお世話になるからあんたの好きにしていいよって言ってくれたから、邪神討伐前に一緒に暮らしてみてもいいんじゃないかなって」
「それは⋯⋯基本帰る拠点をイシの村にするという事か? それならば他の仲間も共に居るべきでは」
「それもそうなんだけど、そういうことじゃなくて⋯⋯うーん。僕にとっては、仲間のみんな大切だけど⋯⋯グレイグは特別なんだよ」
「俺が⋯⋯お前にとって特別だと?」
「今すぐ答えを出さなくていいから、考えてみてくれないかな」
「うーむ⋯⋯ならば、他の仲間に相談してみても良いか? お前と二人で暮らすとなれば、自ずと他の者にも伝えねばならんし」
「そう、だね⋯⋯そうしてみるといいんじゃないかな」
◇◆◇◆◇◆
「⋯⋯ゴリアテ」
「あら~、どうしたのかしらんグ・レ・イ・グ? 出来ればシルビアの方で呼んでほしいんだけど~」
「あぁ、すまん。シルビア、少し相談があるのだが」
「アタシに!? 何かしら、何かしらっ?」
「そんなに興味津々で迫らないでほしいのだが⋯⋯。ジュイネの事で、ちょっとな」
「ジュイネちゃんが、どうかしたの?」
「うむ、実は⋯⋯復興したイシの村で、二人で暮らさないかと言われたのだが」
「えっ、ステキじゃないの~! 返事はもちろんOKなのよねん?」
「いや、その⋯⋯何だ、すぐに答えは出さなくていいと言われたので、他の仲間に相談しているのだ」
「やだ~グレイグったら、何を迷う必要があるわけ?」
「ソルティコでの修行時代の、大人数で宿舎していたのとは訳が違うからな。家の中に二人きり⋯⋯だぞ。しかも20も歳が離れているというのに」
「やぁねぇ、歳の差なんて関係ないじゃないのよ。大切なのは気持ちよ、き・も・ち!」
「気持ち⋯⋯。ジュイネは言っていたのだが、俺はジュイネにとって特別なのだそうだ。俺には⋯⋯その意味する所が判らんのだ」
「んもう、深く考えないでそのまま受け取ってあげたらどうかしらっ?」
「俺がジュイネにとって特別⋯⋯という事をか? しかし、俺は別にジュイネに特別な事をした覚えはないのだがな。世界を救う勇者の盾になるとは言ったが⋯⋯」
「ジュイネちゃんには、アタシ達が判らないような特別な想いがグレイグにあるんじゃないかしら。それとも⋯⋯アナタがジュイネちゃんに対する本当の特別な気持ちを忘れてるだけかもよん?」
「俺がジュイネに対して、忘れている事があると⋯⋯?」
◆◇◆◇◆◇
「ロウ様⋯⋯、少々時間を頂いても宜しいでしょうか」
「どうしたんじゃグレイグ、わしの秘蔵本ピチピチバニーを読みたいのかのッ?」
「い、いえ⋯⋯そういう事ではなくて」
「───ほう、ジュイネがお主と二人だけでイシの村で暮らしたいとな? 実の祖父のわしではなく、お主と⋯⋯」
「や、やはりジュイネが共に暮らすべきなのは祖父であられるロウ様に他なりませんよね⋯⋯」
「いやいや、ジュイネがそうしたいと決めた事ならばわしは何も言う事はないぞい。⋯⋯しかしグレイグよ、わしに相談するという事はお主、迷っておるのか?」
「迷いというか⋯⋯私ではジュイネと暮らすのに相応しくないのではと。⋯⋯本心では、共に暮らしたいと言われ嬉しくはあれど、複雑なのですよ。悪魔の子呼ばわりし、ジュイネには数々の無礼を働いてしまいましたから⋯⋯」
「牢屋にぶち込んだり馬に乗ってボウガンで狙い撃ちしたり、崖に追い詰めたり一度見失っても執拗に追い込んだりした事かの?」
「⋯⋯普通なら根に持たれていてもおかしくないのですがね。と言いますかロウ様、それはやはり全部ジュイネから聞いたのですか」
「以前わしが聞き出したんじゃよ、グレイグにこれまでどのように執拗に迫られたのかと⋯⋯」
「さぞ、うんざりしていた事でしょうね⋯⋯」
「いや、そんな事は無かったの。ちゃんと話せば分かってくれるはずだからと、何とか話せる機会はないかと模索しておったぞ」
「そ、そうだってのですか⋯⋯。その機会というのが、あの命の大樹での事だったのですね⋯⋯」
「うむ⋯⋯大分時間は掛かってしまったがお主とも和解出来こうして仲間となってくれた。それとは別に⋯⋯わしらの知らぬもっと深い部分でお主らは繋がっておるのかもしれんのう」
「(もっと深い部分で、俺とジュイネは繋がっている⋯⋯?)」
◇◆◇◆◇◆
[セーニャに相談]
「⋯⋯えぇ!? グレイグ様、ジュイネ様とお二人で暮らす事になったのですか?!」
「いや、その⋯⋯まだ決まった訳ではないのだが」
「ですが、ジュイネ様の方からグレイグ様と暮らしたいと仰ったのでしょう? ⋯⋯ずるいですわ、グレイグ様っ」
「ず、狡い⋯⋯とな」
「私だって、ジュイネ様と暮らしてみたいのですよっ? ジュイネ様の大好物のシチューだって、作って差し上げたいですし!」
「そ、そうか⋯⋯ならば俺からジュイネにそのように伝えておこう」
「おっ、お待ち下さいグレイグ様⋯⋯!? そんな簡単に私に譲ってどうするのです? グレイグ様はジュイネ様と二人で暮らしたくないのですか?」
「暮らしては⋯⋯みたいのだが、俺にはその資格が無い気がしてな」
「資格の問題ではありませんよ。⋯⋯グレイグ様、私は知っているのです」
「何を⋯⋯だ?」
「ジュイネ様がグレイグ様を見つめる時⋯⋯どこか寂しげな眼差しを向けるのを。グレイグ様も、気づいているのではないですか?」
「! あぁ⋯⋯それは何とはなしに気付いてはいたが、何故かは問えずにいてな」
「⋯⋯私も、時々ですが今のお姉様やジュイネ様を見ていると、胸の奥がきゅっとしてしまうんです。寂しいような、心苦しいような⋯⋯そんな気持ちがして。もしかしたらジュイネ様もグレイグ様にそんな気持ちを抱いているのかもしれません」
「(寂しくて、心苦しい⋯⋯。そう言えば、何だ⋯⋯ジュイネとふと目が合った時に、寂しげな表情で目を逸らされた時は俺も⋯⋯心苦しい感じがした。まるで大切な何かを思い出せないような、もどかしい感覚が───)」
◆◇◆◇◆◇
[ベロニカに相談]
「ふーん⋯⋯いいんじゃない? 邪神討伐後に拘らないで今からジュイネと暮らしちゃえばいいのに」
「いや、そんな簡単な話では⋯⋯」
「簡単でしょ、難しく考えてるのはあんたの方よグレイグ」
「む⋯⋯」
「まぁ何ていうか、ジュイネも物好きよねぇこんな融通が利かない相手と暮らしたいだなんて。あたしだったら息詰まるわよ」
「は、ハッキリと言ってくれるものだな⋯⋯」
「本当の事でしょ。⋯⋯あたしの知らない間に、どんな固い絆で結ばれちゃってるんだか」
「そのように、見えるのか?」
「何となくだけどねぇ。⋯⋯ジュイネはあたし達が知らない何かを知ってるみたいだけど、それを隠してるわけじゃなくて多分、あたし達の方が覚えてないのよ」
「⋯⋯⋯?」
「ジュイネはきっと、あんたと紡いだ大切な絆を覚えてる。今ここにいるあたし達とは別の意味でね」
「俺が仲間になったのはあくまで、魔道士ウルノーガを共に倒した後勇者の星の異変を調べる為であってその上で、邪神討伐という目的を得てこうして共に居る訳だが⋯⋯」
「今はそうね、けど、前は違うんじゃないかしら。だからジュイネは、複雑な気持ちを抱えつつもそれでもグレイグと一緒に居たいんじゃない?」
「(“以前”の俺とジュイネに⋯⋯紡いだ絆などあったのだろうか)」
◇◆◇◆◇◆
[カミュに相談]
「は? ジュイネがあんたと暮らしたいって? 何でだよ」
「その⋯⋯何だ、ジュイネにとって俺は、特別⋯⋯なのだそうだ」
「ほーん、特別ねぇ⋯⋯。あんだけ追っかけ回されちゃ無理もねぇか?」
「むぅ⋯⋯」
「ったく、オレの方が一番最初にジュイネの仲間になったってのによ。おっさんは最後だぜ、最後。しかもオレはジュイネの相棒だってのに⋯⋯敵対してた上に後から来たおっさんに割り込まれちまうとはなぁ」
「な、何やら⋯⋯すまん」
「謝るなよ、余計惨めじゃねーか。⋯⋯なーんてな、仲間になった順番なんて大した問題じゃない。ジュイネにとって、特別かそうじゃないかの違いだけだな。んでもってその特別が、ジュイネにとっちゃあんただったってわけだ」
「お前にとっては⋯⋯ジュイネが特別なのだろう。このままで、お前はいいというのか?」
「逆に聞くが、あんたにとってジュイネは特別じゃないのかよグレイグ」
「⋯⋯⋯───」
「何でそこで黙るかねぇ⋯⋯素直じゃねーな。それは結局あんたが決める事だ、オレとしちゃジュイネが決めた事なら何も言うこたぁねぇけどな」
「(俺にとって、ジュイネは───)」
◆◇◆◇◆◇
[マルティナ姫に相談]
「そう⋯⋯ジュイネはグレイグと暮らしたいって言ったのね。ならグレイグは、デルカダール王国に戻る必要は無いわね」
「そうなのですか⋯⋯!?」
「まぁ帰省くらいは全然構わないけど。貴方の部屋は使用人にいつでも綺麗にしておいてもらうわね」
「は、はぁ⋯⋯とはいえ私はまだ決めかねているのですが」
「───ジュイネを悲しませるつもりなら、私が許さないわよグレイグ?」
「ひッ⋯⋯?!(な、何だ⋯⋯姫様が一瞬魔物のように見えた⋯⋯き、気のせいか)」
「って、ごめんなさい。これは貴方達の問題なんだから私が口出しする事じゃないわね。ジュイネの申し出を断ったとしても私がグレイグをお仕置きするような真似はしないから、安心して頂戴?」
「はッ⋯⋯。しかし、姫様から見て私は⋯⋯ジュイネと暮らすのに相応しいと思われますか?」
「相応しい、相応しくないは関係ないんじゃないかしら。結局はグレイグ、貴方自身がどうしたいか⋯⋯だと思うわよ」
「(俺自身がどうしたい、か⋯⋯)」
「ジュイネは⋯⋯グレイグに盾で居続けて欲しい訳ではないと思うの。あくまでグレイグ自身として、傍に居てほしいんじゃないかしらね⋯⋯」
「───⋯⋯」
共に暮らす件について、グレイグはジュイネを呼び出した。
「すまない、ジュイネ⋯⋯やはり俺は、お前と暮らす事は出来ない」
「⋯⋯⋯⋯」
「他の仲間の意見を聴いても、自分の中ではっきりとした答えが出なくてな⋯⋯そんな俺が、お前と暮らすべきではないと思うのだ」
「⋯⋯⋯そっか」
「せっかくの申し出を断わってしまい、本当に申し訳ない⋯⋯」
「そんな、いいんだよ謝らなくて。これは⋯⋯僕のわがままでしかなかったんだから。グレイグの判断は、正しいよ」
「⋯⋯⋯⋯」
「ちょっと⋯⋯一人で神の岩の頂上まで行ってくるね」
グレイグに背を向けて神の岩の方角へ駆け出すジュイネ。
「(一人で行かせてよかったのだろうか。邪神討伐までは、俺はジュイネの盾だというのに⋯⋯。しかし今は一人になりたいのだろう、そっとしておいてやらねば)」
⋯⋯それから数時間経ち、夕方になって雨が降り出してもジュイネは神の岩から戻らなかった為、麓で待っていたグレイグは流石に心配になってきていた。
「(ルーラで家に戻ったのだろうか⋯⋯、一度ジュイネの家に行ってペルラ殿に尋ねてみるか)」
「⋯⋯あらグレイグ様、ウチの息子見ませんでした? グレイグ様がまだイシの村に居るなら、息子のジュイネも居るはずなんだけどねぇ⋯⋯。あの子の大好きなシチューを作ったから、一緒に食べようと思ったんだけど」
「ジュイネは神の岩の頂上に行ったまま、まだ戻っていないようだが⋯⋯」
「あら⋯⋯、あの子小さい頃は何かあるとよく神の岩の麓に行っていたけど、今はもう成人だし頂上まで行けてしまうからね。暫く神の岩に居るって事は、相当思い詰める事でもあったんじゃないかね⋯⋯」
「(俺がジュイネと共にイシの村で暮らすのを、断ったからか⋯⋯?)」
「グレイグ様、あの子を迎えに行ってやってくれませんかね。あの子⋯⋯貴方と二人で暮らしたがってたし、一人で居てもやっぱり寂しいと思うんですよ。あの子は時々独りでいようとする強がりな傾向があるけど、実際は寂しがり屋で信頼してる人に傍にいて欲しい子だからね⋯⋯」
「(やはり、強がりか⋯⋯)承知した、すぐに迎えに行こう」
「どうか⋯⋯あの子をお願いします。あの子は、グレイグ様の事を心から慕ってるようだから⋯⋯」
「(何故、そこまで俺を───ジュイネ)」
弱く静かな雨が降り続く神の岩の頂上へ、滑りやすい岩に苦戦しつつ何とか向かうグレイグ。
「(ジュイネの姿が、見えない⋯⋯? ルーラでイシの村から出て行ってしまったのだろうか。いや⋯⋯まさか俺を置いて行くはず───む?)」
頂上付近をよく見回してみると、洞窟側の出入口近くの端に、顔を膝に埋め蹲って座り込むジュイネの姿があった。
「ジュイネ⋯⋯そんな所にずっと居たのか。雨で身体が冷えて、風邪を引いてしまうぞ。ペルラ殿が、シチューを作ってお前を待っている。⋯⋯帰ろう、ジュイネ」
「⋯⋯⋯⋯、いやだ」
「俺がお前と暮らすのを断ったのが、そんなに堪えたのか⋯⋯?」
「そういう、わけじゃない⋯⋯」
顔を覆ったまま消え入りそうな声のジュイネ。
「⋯⋯⋯⋯。ならばジュイネ、剣を抜いてくれ」
「え⋯⋯?」
グレイグからの思わぬ言葉で、ジュイネは蹲っていたのから徐ろに顔を上げる。
「時に剣は口以上に本音が出るという。⋯⋯本気で、闘ってみないか」
「⋯⋯⋯⋯、いいよ」
ジュイネはゆっくり立ち上がり片手剣を抜いて構え、グレイグも大剣を引き抜き双方共真っ直ぐ向き合う。
ジュイネとグレイグは無言で激しい剣撃でぶつかり合い、夜が耽けても勝負は夜通し続いた。
───そんな中グレイグにはある光景が、ジュイネからの強力な剣の一撃一撃によって鮮やかに蘇ってくる。
最後の砦⋯⋯ゾンビ師団長とその他軍勢に対し二人だけで戦い勝利した事⋯⋯
魔物の巣窟と化したデルカダール城へ二人で潜入しホメロスと対峙した際誓った、勇者を守る盾となる事⋯⋯
二人きりで強敵の常闇の魔物を倒して太陽を取り戻し、正式な仲間となる際に跪きジュイネに命を預け、ジュイネから笑顔と共に手を差し伸べられたグレイグは笑顔を返し、その手をとって立ち上がった事⋯⋯
枯れ枝のように痩せ細った祖父を助けようと冥府へ向かったジュイネを見守った事⋯⋯
世助けパレードに半ば強引に参加させられ、ジュイネはパレード服に、グレイグはピエロの格好をして行進した事⋯⋯
モンスターカジノで魔物化していた姫を共に助けた事⋯⋯
仲間の妹を救う為黄金城へ赴いた事⋯⋯
危うく全滅しかけた所を救われた事⋯⋯
ジュイネの仲間の死を共に悔やんだ事⋯⋯
神の乗り物を釣り上げ各地を飛び回った日々⋯⋯
皆心をひとつにし勇者の剣を一から創り上げ、天空魔城へ突入した際にはジュイネを身体ごと庇い護り抜いた事⋯⋯
魔王の元まであと一歩という所で罠に嵌められ、魔王の元にはジュイネ一人で行けと言うホメロスにグレイグは、“剣たる主を一人にはさせん”と言い返した事⋯⋯
現在の記憶を手放し、また仲間として受け入れてもらえるのだろうかという不安を抱えつつもグレイグは、世界を救い直しに過去へ遡る事を決意したジュイネを断腸の思いで送り出した事───
その他にも様々な事があり、数えきれないほど紡いだ絆があった事を。
(あぁ、そうか⋯⋯。そういう事、だったのだな⋯⋯ジュイネ)
「グレイグ⋯⋯、泣いて⋯⋯?」
剣撃の手が止まるジュイネ。
つと大剣を手放し、グレイグはジュイネを離すまいと強く抱き留める。
「ちょっ⋯⋯痛いよ、グレイグ」
「すまん⋯⋯だが暫くこのままでいさせてくれ」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「本気の剣と剣での語り合いで、思い出したのだ⋯⋯。俺とお前の本来の世界での出来事を」
「──────」
「あれほど濃密に紡いだ絆を忘れるとは⋯⋯俺はとんだ大馬鹿者だな。辛い思いをさせてすまなかった、ジュイネ⋯⋯」
「本当は僕しか覚えていられないはずだったのに⋯⋯思い出してくれただけでも、うれしいよ」
ジュイネはグレイグを強く抱き返す。
「これでもう、迷う意味は無くなった。⋯⋯共に暮らそう、ジュイネ。これからは、ずっと一緒だ」
「───⋯⋯、うん」
end